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2003/11/9


レコーディング・レポート

伊佐津和朗(vib)クインテット

2003年11月2日(日) @ Space Velio

伊佐津和朗(vib)
八木敬之(ts)
藤沢由二(p)
篠 宏昌(b)
高橋 徹(ds))

伊佐津氏は大学のジャズ研時代の仲間で、本業は歯科医なのだが、実はオタク系名バイブ奏者でもある。大学卒業後、お互いに色々引っ越ししたりしてあまり近いところに住んだ覚えはないのだが、なんとなく1年に1度ぐらいの頻度でライブに出させて貰っている。丁度1年ぐらい前にも、彼の現在の住処である長野方面で演奏したなあ。伊佐津氏はジャズミュージシャン業界にも様々なコネを持っており、共演者もそのたびに代わって、結構素晴らしいメンバーとやらせて貰うことも多かった。

さて、今回はその伊佐津氏からのお誘いで、土曜日に銀座のクラブでライブ兼リハ(笑)、同じメンバーで日曜日にレコーディングという豪華ダブルヘッダー企画。最近すっかり演奏機会が減っている私としても、こんな楽しい企画は万難を排して参加しないとウソでしょう。

というわけで、ライブはおいといて、レコーディングの方のレポートを。実際レコーディングなどというのは、例のNYレコーディング以来なワケで、決まってからの数ヶ月は大変楽しみに待っていたのだった。怠惰な私としては、このために特別に練習するということも無かったが。


場所は、Space Velioというところ阿佐ヶ谷の駅にほど近い住宅街の中にあるスタジオ。個室ブースにはなっていないが、そこそこに広くて天井の高いフロアに、パーテーショんを使って各人ゆったりと位置を取り、リラックスして録音できる。なんでもジャズボーカリストの人がオーナーだかで、アコースティックな音楽の録音に向いているそうな。ちなみにサックスの音はAKGのThe Tubeとかいう真空管を使ったマイクで録りました。他のマイクと比較が出来ないので何ともいえないが、結構生々しい感じで良かったと思う。

MTRは、いまや定番なんだろうなというPro Tools。このスタジオにはStuderの24chマルチなどというのも置いてあるのだが、まあ、あの3-4センチの幅のあるテープの掛け替えとか考えちゃうともうなかなか使う気にならないんだろうなあ。Pro Toolsなら同じセッティングのまま平気で何時間でも録れるからなあ。

レコーディングは昼の12時から18時までの6時間。セッティング及び撤収込みなので、これでアルバムひとつ録音しようと思うと結構つらい。マルチを使うといっても、同じフロアで生音出しながらやっていて隣の音を拾っちゃったりしてることもあり、基本的に差し替えは不可の一発勝負。うむ、ジャズだ。

時間もないので、録音はサクサクと進む、というか進まざるを得ない。初めは音の録れ具合をチェックするために何回かコントロールルームでプレイバックを聞いたが、段々2回ぐらい録ってプレイバックも聞かずにOKで次、とかいうことが普通になってきた。なるほど、昔のPrestigeとかBlue Noteだとかのレコーディングはこんな感じだったのだろうなあ。

ライブではないので、ソロのコーラス数は出来るだけ短くコンパクトにというコンセプトですな。ブルース3コーラスとかだと、あまり何も出来ないのだが、それでもいろいろ工夫しようとして失敗、というパターンの繰り返しだったような気もする。まあ、それが実力っちゅうモンだね。

<マイクが光っていて格好良い>


というわけで、トラブルなどもなくレコーディング無事終了。折角だから若干ネタバレ気味であるが、録音した楽曲についてちょっと書いてみる。ランダムに思い出して書いており、当然CDの曲順とは違うはずなので為念。ちなみに、選曲は全てリーダーである伊佐津氏。バイブオタクの本領発揮といったところだろうか。

<Reunion Blues>

ミルトジャクソンの有名なブルースナンバー。もともとは4小節のいかにもというパターンを3回繰り返して終わりという単純な曲なのだが、今回は誰のアレンジだが知らないが、8ビートっぽいパターンの上にモダンなコードを付けて、ついでに結構格好良いVampまでついてという豪華アレンジバージョンでやってみました。もしかすると最もこのクインテットらしい曲かもしれない。

<Groove Junction>

いわゆる循環モノ。アルト奏者のルードナルドソンの曲らしい。ハッピーなメディアムの4ビートは今回この曲しかなかったかも。私的にはあんまりソロが上手くいかなかったような気がする。

<Bunda Amerela>

これはピアノのデュークピアソンの曲なのかな。明るいボサノバです。前の2曲もそうだが、このバンドは基本的に私のサックスと伊佐津氏のバイブのユニゾンでテーマを演奏する典型的なバイブクインテット。どの曲もテーマの所は結構いい感じだと思うんだけどどうかな。

<Off Minor>

いわずと知れたセロニアスモンクの名曲だが、今回はピアニストのシダーウォルトンのアレンジバージョン。シダーウォルトンはこのアレンジを何回か録音しているようなのだが、私がよく知っているのは"First Set"というレコードに入っているもので、サックスはマイルスバンド加入前のボブバーグが吹いている。端正なピアノトリオに押しの強い音でブリブリと吹きまくるボブバーグのサックスと、レコードジャケットのいかにもチンピラ然としたボブバーグの容貌がとても印象的だった。今回はそのアレンジの再現ということで、私の中では最近事故で亡くなったボブバーグに捧げるつもりで吹いてみました。全然似てないけど。

<In the Wee Small Hours of the Morning>

私は聞いたことが無かったのだが、結構有名なスタンダードらしい。バラードです。私はソロのみ。上手くできたかは・・・CDの出来上がりを待とう。

<My One and Only Love>

大スタンダードですね。普通のバラードで演奏。私はサビメロとソロ。ロリンズみたいに吹いてみようと思ってコケたような気がしてます。

<The Metal Melter>

ミルトジャクソンがCTIレーベルに吹き込んだレコードに入っている曲。いかにも70年代しかもCTIという時代の臭いのする8ビートの曲です。今回のクインテットでやってみると、サビのあたりがちらっとステップスっぽくなったりして面白かった。

<Caravan>

ある意味今回の目玉かも知れない(笑)。デュークエリントンの名曲だが、伊佐津氏がどこかから見つけてきた謎のアレンジで全員モノ凄く苦労しながら演奏。あまりの困難さに、「最後まで通す」ことが最優先目標になってしまった。テーマの部分は私がでたらめにやっているように聞こえますが、実は譜面どおり吹いてます。多分(笑)。

<Fascinating Rhythm>

ガーシュインの名曲。私はお休みでバイブカルテットでやたら小粋に演奏しています。これが本来伊佐津氏が狙っていたアルバムコンセプトに近いと思うのだが。

<Sunflower>

これは誰の曲なんだろう。伊佐津氏のバイブと藤沢氏のピアノのデュオで美しく聞かせます。


今回の楽曲、あるいは編成というのは(ちょっと凝ってはいるけど)、私が普段よくやっていて、自分では得意だと思っているモノに近い。今まで、幸いなことにCD、ビデオなどに何回か参加させて貰っているが、実は結構フュージョンっぽいもの、あるいは4ビートでもモードっぽいものが多く(それはそれで好きなんだけど)、今回のようなオーソドックスなジャズはあるようで無かった。せいぜいTV-JAZZの「猿の軍団」位かな。そう言う意味では、まあ、自分らしい演奏がかたちに残せて大変ラッキーだった。

とはいえ、ソロのサイズや演奏時間の問題もあり、全体的に力が入りすぎていてちょっとワザとらしいというのも否めない。構成やソロ上の出し物を考えすぎて消化不良だし、テーマやソロにしても必要以上にオーバーブロウ気味になってしまった。もう少し強弱・緩急というのが付けられれば良かったとも思うのだが、まあ、これも結果論。自らの実力と思わなければ。でも、こうなると欲が出るモノで、今回のような良いメンバーでライブレコーディングもしてみたいなあ。あるいはテナートリオで好きなだけ、とかね。

改めて、このような機会を与えて貰った伊佐津氏初めメンバーの皆様に感謝です。どういう形になるか判らないけど、自主制作とはいえ、ジャズに強いDisk Unionなどの専門店で流通させるようなことを目論んでいるらしいので、世の中でどんな反応があるのか、とても楽しみではあります。


さて、折角なのでついでにメンバー紹介も

<伊佐津和朗 (Vibraphone)>

今回のバンドのリーダーであり、CD制作のプロデューサー。前述の通り大学時代からの仲間。この人のジャズバイブオタク振りは多方面に知れ渡っているようで、ミルトジャクソンやボビーハッチャーソンは言うに及ばず、全然聞いたことの無いようなレコード・CDを何百枚と持っている。なんでも、「日本バイブ協会」でも中心人物として活躍しているそうだ。長野で歯科医を開業しているのだがそちらの方でもオタク振りを発揮。去年訪問する機会があったのだが、いくつかある治療席の前にそれぞれiMacが置いてあったり、医院のくせにサーバー室があったりと、完全デジタル化された歯医者を営んでいる。あのあたりの患者さんが羨ましい。

(↑今調べたら、日本”バイブ”協会ではなく、日本”ヴァイブ”協会が正しい名前だそうな。、確かに”バイブ”だと違うモノを想像する人もいるかも知れない(笑))

<藤沢由二(Piano)>

大学のジャズ研の後輩、実は高校のブラバンの後輩だったりもする。大学卒業後プロになり、多方面で活躍中。基本は中央線系の硬派な演奏で、派手さはないがこの人が入ると音楽が全体的にしっかり引き締まった感じになる。以前から伊佐津バンドを中心に何回か演奏しているが、毎回冷静で素晴らしい。たまにはぶち切れたパフォーマンスも見てみたいモノだが。

<篠 宏昌(bass)>

この方とは今回が初対面。少なくとも2日間のお付き合いの中ではベーシストらしい寡黙な方で、演奏も堅実かつサポーティブな印象。でもバイオを見ると、クリヤマコトさんのCool Jiveとか、トンガったグループでも演奏されていたらしい。また演奏できる機会があると嬉しゅうございます。

<高橋 徹(drums)>

この人との付き合いも10年ぐらいになるのだろうか。いまや若手と言うより、中堅となってきた感があるが、初めて演奏したときは、まだ彼がプロになりたての頃だった。ミュージシャンはプロになってしまうとあまりCDやレコードを聴かなくなってしまう人もいるのだが、この人はリスナー系オタクとしても大変な人らしい。伊佐津氏と話が合うというのだから相当なんだろう。古いモノから新しいモノまでよく聞き込んでおり、伝統的なハードバップ系の演奏を基本とするが、それに留まらずよく工夫し、よく唄う演奏をする。日本ジャズ業界で独自の存在感を持ったドラマーになっている。さすが第一線で活躍しているプロだけに、今回のレコーディングでは演奏、録音両面でいろいろなアイディアを出してレコーディングをリードしてくれた。



ついでに、レコーディング終了後の打ち上げでは、高橋くんが阿佐ヶ谷の最高にゴキゲンなホルモン焼屋につれていってくれました。テッポウにホッピーで乾杯!

<炭火ホルモン「友ちゃん」。写真だとよく分からないけど、各テーブルの七輪で煙りだらけ>

 

※写真は全て伊佐津氏撮影

 

   



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