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2002/3/10

私はソロの時ナニを考えているのか?(2)


<テーマを吹く>

テーマというのは別にアドリブでは無いので、ソロとは関係無いと思われるかもしれないが、実は相当影響があると思っている。なんというか、テーマの吹き方とか、そこで出てきたバンド全体のサウンドやリズム感によってソロの内容も変化すると思われるのだ。テーマとアドリブを別に考えちゃうと、相当格好悪くなるような気がする(初心者の人には結構ありがち)。

テーマを吹くときに考えているのは、まず「どんな音色で吹くか」。サックスはギターやシンセサイザーのように、スイッチひとつでがらりと音が変わるわけでもないが、ピアノやベースよりも口の形やら息の吹き込み方で音色が変えられる楽器であって、それをどのように選ぶかで曲の雰囲気が変わってくる。大まかには「リアルトーン(バリバリした感じの固い音)」か「サブトーン(ちょっとホワイトノイズが入った感じの柔らかい音)」かの選択。

当然ながら「唄い方」も考える。特にバラードなんてのはテーマの部分の唄い方で曲の殆どが決まってしまうようなもんで、そこはそれ、いろんな可能性を考えて吹くことになる。唄い方というのは、「音程」「ダイナミクス(音量およびそれをどう変化させるか)」「音を出すタイミングと長さ」「装飾(ビブラートとか、ちょっとしゃくり上げて吹くとか)」さらには、「音域(同じメロディでもオクターブ変えて吹いてみたりする)」などなど。結構いろんなことを意識的にあるいは無意識的に考えてはいるのだ。

これらの要素をひとつひとつ別個に考えていると大変なので、私の場合、実際にはパッケージで考えているような気がする。と言ってもも分からないだろうから簡単に言うと「〜風に吹く」ってやつだ。例えば

  • Confirmationのデクスターゴードン風
  • What's Newのグロスマン風
  • My One and Only Loveのブレッカー風

みたいな感じ。別に曲によって特定のプレイヤーが決まっているわけではなく、例えばMy One and Only Loveはロリンズ風にやっても良い。「〜風」というのはあまり厳密なものではなく、あくまでさっき書いたようないくつかの要素の組み合わせ。例えばデクスターゴードン風にやろうと思ったら、そこで、音色、タイム感、装飾みたいな要素はほぼ規定されるため、そこを目指してCPUを動かすことになる。さらに言えば、「〜風」というのが半自動的にできるとすれば、CPUは別のことに使える。

個性の表出であるはずのジャズという音楽において人真似などとんでもない、などという人もたくさんいるとは思うが、いくら真似しようとしても当人になりきることは出来ないのであまり心配することはない。特にサックスの場合は身体も楽器の一部なので、身体のつくりが違う限りいくら真似しようと思っても当人と同じ音色が出せるわけがないのだ。実際私が「〜風に吹こう」と思って演奏してみても気づく人は殆どいないはずだ(単に真似が下手だからだという説もあるが)。個人的な考えで付け加えれば、ひとりに限って真似するよりいろんな人を真似する方がいいとは思うけど。

重要なのは、それぞれのプレイヤーの持っているエッセンス(「音色」「音程」「ダイナミクス」「タイミング」「装飾」「使用音域」の組み合わせ)をそれなりに理解して再現しようと試みることだと思う。テーマでその手のことをよく考えて演奏することは、アドリブのアプローチを有る程度規定することであって、CPUの負荷的にも楽になる(これがいいか悪いかは議論があるかもしれない)。さらにいえば、それらの組み合わせをあえて変えてみることが、いわゆる個性のある演奏をするための道かもしれない。

当然だが、この「〜風」というのはバックのサウンドによって規定される部分が相当ある。まさかfragileの曲でデクスターゴードン風とはいくまい。逆に、いい加減なセッションなんかだと、こちらが「〜風」と意識することによってバックもそれらしい感じになったりすることはよくあることで、それによって全体のサウンドが規定されるともいえる。リズム隊の立場で考えれば、「サックスは「〜風」できたけどこっちはあえてそれに流されないで違うことをやってやろうじゃねえか」と思う人もいるだろうし、そういう試みは面白い効果を生むかもしれない。

さて、いままで書いてきたのは、サックスひとりでメロディを吹く場合。ギターとユニゾンとか、ラッパとハモリとかの「アンサンブル」の場合はずいぶんと違う。これはあくまで私の場合だが、CPUは主に「音程」と「タイミング(吹き出し吹き終わり)」の制御に使われる。リハなどがあって、アンサンブル上のキメごとがある場合はそれを守ることに神経を集中したりする。まあ、これは当然だが、こうなってしまうとアドリブとの整合性というのはあまり問わなくてもいいかなあという気になる(本当はいけないことですが)。

というわけで、(3)に続く。

(1)はこちらから。


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