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2002/3/30 私はソロの時ナニを考えているのか?(5) <ソロの序盤でナニをやるか> さて、前回は1コーラス目の話の途中だったが、ソロへの導入もそれなりにこなし、バンドのタイム感にも安心したところで、私は次に何を考えているのだろうか。 結論から言うと、「吹くべき音やフレーズを探している」という状態なんだと思う。探していると言ってもじっと待っている訳ではなくて、ちょっとずつ、あるいは大胆に何か吹いてみて、その次にナニを吹いたらいいかを考えているというか。格好良く書くと、「自分の中から何かが出てくるのを待つ」といった状態だ。ボクシングで言えば、試合序盤にジャブか何か出してみてリズムを作り、相手の出方を待つというか。あるいはサッカーで言えば、ディフェンスで球を回してみて、それを見た中盤がクルクル動いている間にどこかに隙を見つけていこうとするような状態か。この例えで分かるように、次の作戦(フレーズ)を考える際に見るべきものは「自分」と「自分の周り(スポーツの場合は敵だし、ジャズの場合は他のメンバー、たまには客)」の両方である。 先日購入したボブミンツァーの教則CDでも、インタビューで同じようなことを言っていて、なるほどと改めて納得した。曰く"I am observing what I play and what the band plays"。自分で吹いたこと、それに対してバンドがどのように反応したか(しなかったか)を観察していくうちに次に吹くことのアイディアが出てくるというわけだ。 とはいえ、まずは試しに何か吹いてみることが必要だが、それをどうやって選ぶかが問題だ。これにはいくつかの考え方があるだろう。 ・本当になんの考えもなく適当な音を吹いてみる というのは、実はなかなか難しい。はずしちゃいかんと思うと、それなりに心地よい音を吹こうと思って、意識しないでも、つい1度(ドミソのド)とか、5度(ドミソのソ)とかをプーとか吹いてしまう。別に吹いてはいかんと言うわけではないが、実はジャズ的価値観から言うとあまり格好の良いものでは無かったりするので話がややこしい。かといって、まったくはずれちゃってる音(ジャズの思想的にはナニを吹いてもいいわけで、別にはずれてもいいんだろうが、やはりプラクティカルには格好悪い場合があるわけだ)が出てきたときにはとてもバツが悪かったりする。 余談だが、以前O川さんが、Y口M文さんという偉い人にサックスを習っていたころに聞いた話。そのレッスンではM文さんが決められた曲のピアノ伴奏を弾き、O川さんがアドリブをやるのだが、その途中で1度とか5度とかの長い音を吹いてしまうと、M文さんがパタリとピアノ伴奏を止めて「O川君、いま5度吹いたでしょ」と鋭く指摘し、やり直させたそうである。ちょっとこれは極端な例かもしれないが、こういう人もいるということで。普通の人がテンションノートに違和感を感じるのと全く同じように、M文さんは1度とか5度とかのロングトーンは気持ち悪くて耐えられないんだろうな。こうなるとちょっと病的な気もするが。ちなみに、その世界からもう一回裏返ってドミソの快感に目覚めたというのがA田川さんというピアノの人だそうである。 というわけで、以上の議論から ・コードはわかっているので、それから連想される音を吹いてみる というアプローチが考えられる。当然1度とか5度とかを吹くわけではなく、理論書などで紹介されているそれなりのテンションノートを訳知り顔で吹いてみるわけだ。これも只プーと吹くだけではなく。ちょっと変なタイミングで吹くとか、半音下にちょっと行ってまた戻ってくるとか、テンションノート二つを交互に吹いてみるとか、リズムに変化をつけてみるとかいろんなバリエーションが考えられる。アドリブ練習本にスタンダードのコード進行にあわせて一小節ごとにテンションノートをロングトーンするような練習があるがそれは、この手のアプローチに有効なんだろう。 それの応用ではあるが、 ・コード(あるいはコード進行)に合うとわかっている手持ちフレーズを吹いてみる というのもある。まああまり素直に吹いてしまうのも芸がないので、たとえばあまりワザとらしいフレーズではなくて、アルペジオみたいなやつとか、コンディミ(コンビネーションディミニッシュ)スケールをちらっとだとか、フレーズの一部分だけとか、それこそ「ジャブ」的に吹いてみるという感じだろう。 さて、ちょっと考え方を変えてみると ・メロディで使われている音をちょっと崩して吹いてみる というのがある。これは私もよく使う手だ。モノの本によればソニーロリンズがこれの名手であって "Thematic Improvisation(「テーマっぽい即興」とでも訳すか)"などという分かったような分からないような言葉もある。「ちょっと崩す」と書いてみたが、これは断片だけを吹いてみたり、使われている音をとりあえず吹いてみてそれの上下の音程も付け加えてみたり、といったような感じだ。 さて、今まで適当に書いてきたが、やはりここで重要だと思われるのは、とりあえずなんか吹いてみる、というアプローチと、それによって次に吹きたいことが出てくるまで「ちょっと待つ」ということだろうか。セッションなんかで自分の出来るコーラス数が限られているときには、なかなかこうはいかないもんだが、そこそこの長さが許されている場合はこの「待つ」ということを意識してやってみることは重要なんだろう。特に、バンドのメンバーの質が良い場合は、バンド全体の緊張感が高まって面白い演奏が可能性がある。 まあ、文章なんかももしかすると同じなのかもしれないが、ジャズの演奏の面白いのは、即興といいながらも、「次の瞬間にやることは今やることによってそこそこ規定される」ことにより、なんとなく連続性が確保されることだろう。5秒ごとに頭をクリアにして新たに吹くことを考えるという散文的アプローチもあるが、それではなかなか発展もなく、実はあまり面白みがないような気もする(といいつつ、5秒ごとに全く違うことを出来る人がいたとすれば、それはそれで強力にぶっとんでいると思われるが)。 というわけで、さらに混乱しつつ(6)に続く(かもしれない)。 (4)はこちらから。あと、今日は「特別編」も書いてみたので是非。 All Rights Reserved, Copyright (C) 1996-2002, Hiroyuki Yagi
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