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2002/4/21 私はソロの時ナニを考えているのか?(6) <フレーズを吹く> さて、序盤戦を何とかこなして、ソロも中盤戦に入ってきた。ここは基本的に手探り状態から抜け出して、序盤戦でなんとなく作ったアイディアや雰囲気を発展させていく段階といえる。 とはいえ、盛り上がりというのも考えなくてはいけないので、いわゆる早い曲なら8分音符あるいは16分音符といった「流れるようなフレーズ」なるものを吹いたりしなくてはいけない。さてどうするか。 もしかして誤解をしている人もいるかもしれないが、いわゆる即興演奏であるからといって、例えば十六分音符全てを一音一音吟味して吹くことは不可能なはずだ(キースジャレットのような天才や、あるいは何かしらヤバいモノをキメちゃっているときは別として)。すなわち、即興演奏とは言え、多くの場合はなにかしら前もって準備した「フレーズ」なるものを組み合わせていく作業になる。CPUは自分のメモリに蓄えられているフレーズを、どの部分で出すかというのにパワーを使っているわけだ。 「得意なフレーズ」と「どこ」を判断する接点のひとつとなるのがコード(あるいはコード進行)である。例えばF#m7-B7とくれば自分の持っているAかBが使えるはずだと思ってそこにアテるわけだ。ここで面白いのは、あるフレーズを吹き始めたとすると、次の瞬間はそれをどう着地させるかを考えているということだ。すなわち、(少なくとも私の場合は)2小節で完結するフレーズを持っていたとしても、それを最後まで吹ききって終わりというわけではなく、その途中で別のアイディアを探して変化させることが多いと言うことである。 言い換えると、F#m7-B7が出てきたとき、このコードシーケンス(これが二拍ずつの一小節だとしよう)で使える手持ちのフレーズ(四拍で二小節分のフレーズとしよう)をとりあえず吹き始めて、次の小節がE minorだった場合、E majorだった場合あるいはひねくれてGm7だったりした場合は、それぞれの場合に応じてフレーズを途中で変化させて「取り繕う」ことにCPUの働きを集中させるということである。当然、選択肢としてはコード的に合わないのがわかっていて得意なフレーズとして吹ききってしまうというのもあるが。 こうしてみると、上の例ではじめの一小節目を吹いているとき、CPUは次の小節をどうやって取り繕うかを一生懸命考えているわけで、一小節目に実際に吹いているフレーズについてCPUがあまり使われていないことがわかる。CPUは自分の吹いている音を聞いてそれにレスポンス(取り繕い)しようとしているのだが、実際に楽器と肉体をコントロールしてそのフレーズを「吹く」という作業は他のインターフェース任せにしているともいえる(分かりにくいかな)。すなわち、CPU以外でのオートマティズムというものを働かせる必要があるのだ。これはアドリブの練習をやる上でヒントになる考え方だと思う。 さて、取り繕いの手段はいろいろあって、例えば次の小節のコードに対応した別のフレーズを無理矢理続けて吹くとか、コードトーンやテンションにどうにか辿り着いて終わってみるとか、あるいはさっきも書いたように無理矢理元々のフレーズを吹き続けるか、などだ。まあ、どれでもいいんだが、それはあくまで瞬間の判断なのである。アドリブの能力というのは、この瞬間判断能力、言い換えると、瞬間の方向転換能力、もう少し言ってしまえば「瞬間取り繕い能力」によって決まるのかもしれない。 ジャズのアドリブの面白いところは、曲の中で同じコード進行を繰り返してることであって、例えば一回目のコーラスで「取り繕い」に失敗したとしても、二回目のコーラスで同じアプローチを行って成功させることが出来るということである。実も私もよくやるのだ。本番でやるのもなんか今ひとつなので、意識して「同じ吹き出しで違う決着の付け方をする」という練習をするのは結構アドリブ上達に効くかもしれない。 さて、一番上の方で、「得意なフレーズ」と「どこ」の接点はコード(あるいはコード進行)と書いたが、別にそれが全てではなく、私なんぞはとりあえずコード進行を無視して得意なフレーズを吹き始めてしまうということをよくやる。まあ、これはそのフレーズにもよるわけであるが、なんとなくクロマチックッっぽい、あるいはモーダルっぽいフレーズ、要は調正感覚が曖昧なフレーズは、勢いで行ってしまえると思っている(聞く人が聞けば、「あ、またあいつ関係のないところで例のフレーズ吹きやがって」などとバレるんだろうが)。私の例で言うと、TV-Jazz セブンに入っている「ゲッターロボ」のサックスピックアップの部分などは全くあそこで指定されている調正と関係がないフレーズ−要は「グロスマンフレーズ」−を勢いだけで吹いているのだ。わはは。でも格好良いでしょう?ねえ? 逆に、コーダルなフレーズ、すなわち調正感が明確なフレーズを明らかににはまらないコードの時に繰り出すと、間抜けというか、「間違っている」ように聞こえるので注意が必要である(それはそれでエリックドルフィーみたいで面白いかもしれないが)。 さて、上記のような「取り繕い」アプローチをしても当然着地に失敗することがあるが、その場合どうすればいいのだろうか。結論から言えば、次に何か関連のあるような無いようなことを吹いて「誤魔化す(笑)」わけだが、良い方向に捉えれば、「自らが吹いたことにが次の展開を規定する」という意味で、これこそ「自己フィードバックループ」あるいは「一人コールアンドレスポンス」の実現であり、ジャズの醍醐味そのものと言えなくもない(ちょっと無理があるかな)。 さて、電池もなくなってきたし、(7)に続く。 以前の文書はこちらから。 All Rights Reserved, Copyright (C) 1996-2002, Hiroyuki Yagi
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