連休で暇なので、昨年アメリカで録画してあった Ken Burns Jazz の第9話をみた。
この回は50年代後半、チャーリーパーカーが死んだ後あたりの話が中心で、ロリンズとかコルトレーンとかマイルスとか出てくるのだが、その中のちょっとしたエピソードで、ビリーホリディ(vo)の晩年の話が出てくる。
私はあまり詳しくはないのだが、ビリーホリディという人は、レスターヤング(ts)と1940年代に数々の名演を残しており、男女の関係にあったかは分からないが、少なくとも共演者としては極めて仲が良く、ある意味お互い「特別な人」だと思っていたらしい。しかし、何時の頃からか、何かの原因で関係がぎくしゃくし、レコーディングやライブでも殆ど顔を合わせなくなっていた。
その二人が、テレビの収録で再会することになる。そのときのエピソードが、スタジオに居た関係者によって語られるのだ。
テレビの収録というのが、"Sound
of Jazz"という番組。米国でもジャズを大々的に(しかも真面目に)フューチャーするテレビ番組というのはこれが初めてだったらしい。マイルスがコルトレーンやギルエバンスと共演している白黒の映像があるが、これもこの番組の一部だ。
で、ビリーホリディとレスターヤングのふたりも、オールスターバンドに呼ばれて演奏することになった。これが本当にオールスターで、サックスで言うとコールマンホーキンスとかベンウェブスターとかそうそうたるメンバーが並んでいる。
二人の過去を知るプロデューサーが、気を利かせてどうにかレスターヤングに伴奏をさせようとするも、レスターヤングが固辞してみたり、ビリーホリディもなにやらわざとレスターヤングを避けてみたりと収録直前までぎくしゃくした感じが続く。
さて、いざ収録となったとき、一応オールスターバンドの片隅にレスターヤングが座る。そのときまで彼がソロを取ることにはなっていなかったらしい。
ここからはそのまま映像が残っている。
曲はFine and Mellowというビリーホリディ自らの作ったブルース。唄の後で、まずはベンウェブスターが1コーラスソロを取る。すると、突然レスターヤングが毅然として立ち上がり、いかにも、ではあるが、気合いの入ったソロを1コーラス演奏するのだった。
このソロの間に、それを聞いているビリーホリディの顔が写されるのだが、これがいいんだなあ。なかなか説明しづらいが、笑っているような、泣いているような、嬉しいんだけどあんまりダイレクトに表現するのを差し控えているような、昔の思い出に浸っているような、今の演奏を楽しんでいるような、うなずいててみたり、首を横に振ってみたり・・・いかにも幸せそうな感情とでも「昔には戻れない」悲しみの感情が混ざっているような気がして、つい泣けしまうのだ。実際事情を知る調整室の人々はこのハプニングを見てみんなで泣いていたらしい。
さて、テレビの収録でつかの間の再会を果たした二人だが、結局よりを戻すことはなく、その1年数ヶ月後にまずレスターヤングがNYのうらぶれたホテルの部屋(家を出て安ホテルを転々とする生活だったらしい)で死に、その2ヶ月後には麻薬中毒がひどくなったビリーホリディも後を追うように亡くなるのであった。
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