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スイング・ジャーナル誌への寄稿

スイングジャーナルというのは日本最古のジャズ雑誌です。ジャズ界の文芸春秋とか婦人公論とでもいったらよいでしょうか。そのライターの友達から頼まれた原稿で,年末に発売になる「モダンジャズ読本97」という別冊に収録されることになったそうです。しかも私の顔写真付き。主旨は「今年発売された話題盤を斬る」ってなもんでしょうか。有名なジャズ喫茶主人である後藤某とならんでの掲載です。
評しているマイケルブレッカーという人は,私の敬愛するコンテンポラリーサックス奏者です。実際以前は彼のテクニックと音楽に本当に憧れて「あんなふうに吹きたい」と常々思っていました。その後あっさりと無理だと悟って方向転換しましたが。
そのサックス吹きが今年の夏頃に発表した"Tales from the Hudson"というアルバムについての感想文です。このアルバムは超豪華メンバーによるある種のセッション形式をとっているのですが,音楽としてはいわゆる「ジャズ」に留まっていて,若干残念に思っていました。では。

"Michael Brecker /Tales from the Hudson "
を聴いて



このアルバムでの演奏を聴いてみて再確認したのは、彼がことサックスを吹くことについて「不器用」といっていい程のこだわりを持っており、逆に「音楽」に対しては相当あっさりしているのではないかという以前からの思いだった。自分のスタンスで楽器を吹ければどんな音楽でも喜んでやってしまう、「昔気質の職人」的な人なのではないか。ライブではたまにその職人ならではの狂気がみえる。

そんな彼には、必ずや傍らに彼をプロデュースしてくれる相棒が必要だった。BBの兄ランディ、ステップス・アヘッドのマイク・マイニエリ、そしてこのアルバムの前のリーダー3作のプロデューサーであった朋友ドン・グロニック。思えば、初リーダー作から前作"Now you see it.. (you don*t)"までは、確実にその音楽の幅を広げていた。個人的には、前作はジャズともフュージョンとも表現のしようがなく、しかも限りなく刺激的な「マイケルブレッカーの音楽」がつまった歴史的なアルバムだと思っている。加藤総夫氏は「フレーズ死すともアイディア死なず」と評していたっけ。

さて、今回はその朋友ドンを失って(レコーディング中は病気静養中だった)、初めて自らのアイディアでアルバムを作る立場になった。これだけのメンバーを集めてストレートな「ジャズ」を演奏するのが彼のアイディア。だいたい演奏が悪いわけは無く、マイケルのソロも音色、フレーズ、アイディア構成、どれをとっても文句の付けようが無いし、サイドマン?もおしなべて好演している。曲も格好良い。それで?

何かすっきりしないのである。たまたまマッコイとの競演盤、ハンコックのニュー・スタンダーズと同時期にリリースしたのがまずかったのかもしれない。もう50歳にもなろうという彼に刺激を求めようとするのがいけないのかもしれない。しかし熱狂的なファンとしては、激情的なソロの中に狂気を、静かなバラードの中にふっと笑みが漏れるアイディアを発見して喜びたいのである。願わくば次作でそれらがキラリと見え隠れする音楽が再び聴けることを。

八木敬之/サラリーマン



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