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2001年1月29日


ジョーヘン私論



  • 某どうでもいい掲示板で、成り行き上ジョーヘンダーソン(Ts)について書かなくてはいけなくなり、書いてみたら結構長くなったので、折角だから保存しておこうということでアップします。本当はこんなことをやっている場合ではないのだが。

  • 最後の問題については、いまのところ誰も反応してくれないのですが、また別途書きましょう。

 
なにやらプレッシャーを掛けられたような気がして(笑)なんか書いてみようと思ったら掲示板にあるまじき長さになってしまいました。

以下あくまで私見なので、そのつもりで読んでいただくとありがたいです。

<ジョーヘンの「スタイル」について>

ジョーヘンという人はジャズテナーの歴史に残る「スタイリスト」だなあ、と思います。ある意味、ウェインショーターやコルトレーンと並べて扱ってもいいくらいかもしれません。ここで「スタイリスト」というのは、非常にユニークな自分のスタイルを確立している人、ということで、ちょっと聞けばすぐその人とわかる、とでもいいましょうか。で、そのスタイルですが、60年代初頭のデビューの頃から殆ど変わっていません。よく考えると相当革新的なスタイルで、どうやって身に付けたんだか想像もつきませんが、突然変異型、あるいは天才型の人なのかもしれません。

特徴としては

(1)密度の濃いゴムみたいな音色

わかりにくい表現で申し訳ありませんが、ビヨンビヨンとしてなんかゴムみたいなんです(笑)。ちなみに、ジョーヘンはセルマーのラバーというジャズの人はまず使わないマウスピースを長年愛用していますので、それもユニークな音色に貢献しているかもしれません。決して大きい音ではないと思うのですが、密度が濃いため、マイクにのせると非常に迫力があります。

(2)ビバップ的なフレーズとアウト/クロマチックなフレーズの混在

イントネーションがビバップ的で、使っている音はアウトっぽいといいますか。というと、ジョーロバノとかクリスポッターとかを思い浮かべますが、もしかするとこういうスタイルを確立したのははジョーヘンだったかもしれません。

(3)オーバートーン、フラジオの多用

両者とも、コルトレーンが使用して普及したテクニックですが、特にオーバートーンに関しては、ジョーヘンのほうがいろいろと効果的に使っているような気もします。これは、マイケルブレッカーにも相当影響を与えているはずです。

(4)でも、深刻にならないソロ(笑)

上記3要素が揃うと、なんとなく暗い演奏になりそうですが、そうはならないのが不思議です。なんとなくユーモラスで「軽い」感じが漂うソロが多いような気がします。ピョンピョン跳ねるような八分音符のせいかもしれません。ソロの全体構成も、あまりワザとらしさが無くて、全体的に飄々とやっているような気がします。

 

「スタイリスト」であるが故に、ジョーヘンの演奏はその後のテナー吹きに少なからず影響を与えていると思います。上に書いたように、マイケルブレッカーは音色・オーバートーンなど相当影響されていると思います。ジョーロバノも、マイケルブレッカーとまた違う面で(フレージング・リズム)影響があるような気がします。日本人ですと、植松孝夫さんがほぼそのままって感じです。

 

<レコードレーベルに見るジョーヘンの歴史>

さて、結構一貫したスタイルを持っているのに「スタイルが変化している」と思われるのは、レコードレーベルとそのプロデュースのせいだと思われます。ここで、ジョーヘンのキャリアを契約レコード会社を中心として整理してみます。

第一期 (1963-1967?):ブルーノート時代

日本でいういわゆる「新主流派」の一員として、オリジナルを中心に録音をして、演奏家、作曲家、リーダーとしてそれなりの評価を確立した時期。日本で一番人気が高いのはこの時期のレコードかな。

第二期(1967-1975):マイルストーン時代

当時の新興レーベルマイルストーンと契約。ジャズ界全体の混乱のせいもあったのかもしれないが、それなりに強力なメンバーと相当強力なことをやっている割にはあまり評価されていないと思われる時代。プロデュースが下手だったのか、後半にはフリーだとか中途半端なフュージョンみたいなものに手を出して、なんとなくジャズ界から忘れられていく。

第三期(1976-1985):暗黒時代(笑)

特に決まったレーベルと契約せず、半分引退みたいな印象のある時代。とはいえ、演奏の質が下がっていたわけでも、ミュージシャンの間での評価は下がっていたわけでもなく、80年代初頭にチックコリアがよくサイドマンで使っていた(「ライブアットモントルー」とか)。先日書いたフレディーハバードのライブもこの時期。そういえば、81年(?)にオーレックスジャズフェスティバルで来日して、ジョーファレル、ブレッカー兄弟、フレディーハバードと並んで演奏したりしましたが、なんとなく相手にされていなかったなあ。私がはじめてジョーヘンの名前を知ったのはこのときです。

第四期(1985-1991):再評価時代

1985年に、新生ブルーノートの目玉として契約し、"The State of the Tenor"というビレッジバンガードでのライブ録音を出し、批評サイドから思い出されて(笑)再評価を受ける。山中湖ジャズフェスなんかにも、ハンコックのバンドで来てました。

第五期(1991-現在):「ジャズ最後の巨匠(笑)」時代

1991年にヴァーブレーベルと契約。「Lush Life (ビリーストレイホーン曲集)」「So Near So Far (マイルス曲集)」「Double Rainbow (アントニオカルロスジョビン曲集)」「Porgy and Bess(ガーシュイン曲集)」等、企画ものを連発してヒット。ジャズの巨匠としての評価を確立する。一番初めにも書きましたが、基本的にスタイルは変わっておらず(歳をとったせいか若干渋めになりましたが)、選曲、共演者選定、プロモーションを含め、まさにプロデュースの勝利といえましょう(恐らく当人は言われたとおりのことをやっているんでしょうが)。

とはいえ、ハービーハンコック、ジョンスコフィールド、ジャックデジョネットなどの大物があっさりと共演者に名を連ねるのは、やはり当人が「ミュージシャンズ・ミュージシャン」である証左かもしれません。共演者といえば、ヴァーブ最初の「Lush Life」でウィントンマルサリスが珍しくサイドマンとして名を連ねたのが、批評家サイドには効いたのかもしれません。

<私の好きなジョーヘン>

さて、ここまで書いて、ようやくお薦めレコード、というより「私の好きな」レコードであります。改めましてこれは私見であることを強調しておきたいと思います。

まず、第一期はジャズの歴史の本などでよく取り上げられるレコードが多いですし、「絶対にこれがいい」というのもありませんが、強いて言えば、ワンホーンの「Inner Urge」が好きですね。

第二期です。 もし、「ジョーヘンのリーダーで一番好きなもの」といわれたら、私は1971年の「ジョーヘンダーソン・イン・ジャパン」と答えるでしょう。その名の通り、日本に単身来日したときのライブで、日本のトリオをバックにホゲホゲ・バリバリ吹きまくっております。実は、このレコード長らく廃盤で、私も比較的最近(5年程前?)聞いたのですが、そのときの印象は「ブレッカーみたいジャン!」というものでした。当然ながら実際は逆で、ブレッカーをはじめとするその後のテナー吹きがバイブルとしてお手本にしたレコードだと勝手に想像しております。

以下、余談です。よく「ジャケットがいいレコード(CD)は中味も良い」といった話がでますし。ある面真実だなあと思うわけですが、逆は必ずしもあたっていないという例がこのレコードです。とにかくジャケットがダサい(上半身裸のジョーヘンが床に座っている写真にかぶせて、全面に「ジョーヘンダーソン・イン・ジャパン」という小さい文字がカタカナで印刷してある)。十数年前に中古屋で見ても決して手を出さなかったのはこのジャケットのせいです。

さて、話を戻してこの時期他のレコードとしては、In Pursuit of Blackness とLive at the Lighthouseというのが好きです。前者は一部、後者は全部がライブな訳ですが、トランペットのウディショウ、ドラムのレニーホワイトが 物凄い演奏をしてます。 さらについでですが、物好きな方のために、このマイルストーンの時期の録音を全部集めた「マイルストーンイヤーズ」というボックスセットのCDが出ています。出たときは、「こんなもの誰が買うんだ」と思いましたが、結局買ってしまいました(笑)。おかげで上記の「インジャパン」が聞けたわけです。但し、あまり冴えない録音も一杯あるのでご注意を。

第三期は、上に書いたチックコリアのライブやフレディーハバードのライブですかね。

第四期は・・・やはり上に書いたブルーノートのライブ盤ですかね。ベース・ドラムのトリオということで、比較的地味ですが。

第五期ですが、どれをとってもまあそこそこに聞けるでしょう。私の個人的な趣味としては、「So Near So Far」でしょうか(ジョンスコとアルフォスターが演奏しているので)。「ビッグバンド」も好きですね。この時期になると、私の場合、ジョーヘンを聞くというよりは回りの共演者を聞いているような気もしますが。

 

<作曲家としてのジョーヘン>

いまや、スタンダード演奏家みたいになってしまいましたが、実はこの人60年代に格好いい曲を一杯書いています。代表作として、「Recorda-Me」 「Homestretch Blues」 「A shade of Jade」 「Carribbean Fire Dance」 「Black Narcissus」などですかね。あと、「Blue Bossa」はケニードーハムの曲ですが、いまやジョーヘンスタンダードといってもいいでしょう。この人、これらの曲をしつこいほど何度も録音してます。 問題は、殆どの曲が、ジョーヘンのスタイルにマッチすべく作られているところで、あまり他の人はやらないし、やっても恐らく格好良くないと思われるところです。よって、いい曲ばかりだと思うのですが、Recorda-MeとBlue Bossa以外はあまり採りあげられていないようです。ちなみにRecorda-MeはStepsの日本での演奏が"Smokin' In the Pit"で未発表音源として最近CD化されました。

 

<さて、ここで問題です(笑)>

一番上に「よく考えると相当革新的なスタイルで、どうやって身に付けたんだか想像もつきませんが」などと書きましたが、ジョーヘンが影響を受けたミュージシャン(テナー奏者)というのがやはり存在します。実は最近そのミュージシャンのベスト盤の選曲をジョーヘン当人がやってコメントを書いていたりします。さて、そのテナー奏者とは誰でしょう。

 

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この文章を書くにあたり

http://allmusic.com/cg/x.dll?p=amg&sql=B6716

を参照しました。



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Author: Hiroyuki Yagi  Email: hiroyuki.yagi@nifty.com



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