SCMの概要:『2つの在庫』          01/07/15       BACK

「在庫は悪」である。トヨタのジャストインタイム方式から始まったこの言葉は、すっかり経営思想として定着したようです。最近は、キャッシュフロー会計のブームにより、在庫を目の敵にする企業が増えてきました。しかし、在庫には2つの捉え方があり、その意味は全く異なります。これを混在している企業が多いようです。

■ 「長期停滞在庫」
新商品を開発・生産したが、見込に反して売れ残り、動かなくなってしまった在庫です。或いは商品の寿命が尽きる時の対応を誤った在庫です。経営にとって最も痛手となります。この在庫が最近急激に問題になっています。この場合は、次のデメリットが発生します。
@ 商品が販売(換金)できない、或いは商品の価値が著しく低下します。しかし、僅かの金にでも換金できた方がまだ良いです。
A 商品を廃棄する場合は、製造原価がムダなだけでなく、廃棄コストが余分に必要です。
B 在庫として保管するには、保管コスト(地代、建物費、保管設備費、保管人件費、棚卸し減耗費、等)がかかります。
この「長期滞留在庫」への対応策は、市場を意識し、実需に合わせて生産・販売するスピーディーな体制作りを構築するか、売手市場の強力商品を開発するしかありません。SCMを行う場合、まずこの在庫に焦点を当てるべきです。

■ 「在庫水準」
これに対し、従来の「在庫は悪」は在庫水準を低くし、その分運転資金を楽にしようという発想でした。
これを実現しない場合は、次のデメリットが発生します。
@ 部品在庫・仕掛在庫・製品在庫は、全て資金が物に変わった物であり、在庫が増えれば資金が寝ることになります。
A 在庫が多いと、生産・物流での保管場所が必要になり、作業性を落とす要因になります。

しかし、定番的(作っても近い内に販売できる)な商品が問題になるケースはあまり多くありません。より高度化を目指す場合に取り上げるテーマでしょう。
この「在庫水準」への対応策は、生産面・物流面を改善し、スムーズなものの流れを実現することです。管理水準と共に現場の実力が必要です。年輩の経営者の場合、かって流行していた「在庫水準」に意識が行きそうな傾向があるようです。

このように2つの在庫を使い分けて、経営目標を設定するべきです。

                                       入江 淳一