SCM概要:『業務範囲と全体最適化』 02/03/10 BACK
全体最適化はサプライチェーンマネジメント(SCM)では必須の言葉です。しかし、それを具体的に説明する人は少ないようです。全体最適化とは一体どのように考えれば良いものなのでしょうか。
■ 範囲での全最適化とは
@商品を仕入れて、保管し、顧客からの注文によって、ピッキング・納入するプロセスで全体最適化を考えてみる。
Aまず業務範囲を仕入だけでみる。この場合は、仕入価格だけが評価指標になる。大量に安く仕入れることができればそれが最適になる。後工程で発生する保管費用や売れ残りはここでは考慮しない。
B次に業務範囲を仕入・入荷・保管の範囲で考える。この場合は、仕入価格だけでなく、入荷形態(パレット、入荷時間、等)を考慮した入荷コストと保管能力・保管コストまでのトータルコストを最も安くできるやり方が全体最適化になる。
C次は業務範囲を仕入・入荷・保管だけでなく、受注・ピッキング・納入までに広げる。この場合は、欠品というサービス水準、ピッキングコストが低くて済む保管形態、ピッキングコスト・配送コストが少なくて済むバッチ設定が新たに全体最適化の指標に加わってくる。
D全体最適化とは、上記のように範囲によって考慮すべきことが変わって(追加されて)くる。それらの中で何を重視して業務を行うかということである。
■ 全体最適の評価指標は
@対象とする範囲の中で全体最適化ということで考慮すべき事柄は変わって(追加されて)くる。しかし、評価項目は全てスループット(粗利と表現しても良い。社内に残るお金)と在庫(キャッシュフローを良くする)と経費(オペレーションコスト)の3つで表現される。
Aこの3つは、優先順位がある。一番目はスループット、2番目が在庫、最後が経費となる。企業は発展しなければならないことや、利益額に結びつきやすいことから考察された結果である。
Bスループットは、企業の可能性を表現している。固定費投資による事業で、無限の利益をもたらす可能性が最も高いものである。その為、これを一番目の全体評価指標にすべきである。
C在庫は、キャッシュフロー経営として注目されている指標である。在庫を持つことで毎年20〜30%は在庫費用がかかると言われる。経費とは桁が違う。その為に在庫が2番目の指標になる。
D経費は固定費という事業の基盤である。これを必要以上に削減することは、事業そのものが意味をなさないことであり、蛸が自分の足を食うのと同じことである。
Eこの3つの指標はTOC(制約条件管理)で言われていることである。決してTOCからスタートして考えた訳ではないが、これに行き着いた。
■ 全体最適化で運営する為には
@実際に業務を行う場合、その状況下において最適コスト等の計算はできない。計算根拠となるデータもないし、リアルタイムに計算をやる時間もない。その為、予め業務ルールを設定しておき、それにより行動することになる。
A仕入・物流・営業の3部門が集まり、全体最適化というものを共通認識として協議したら、自分のエゴはかなりなくなって行く。本来のToBeイメージに近い形で意思統一が図られるであろう。但し、部門評価の制約がないことが前提である。
B会社の利益を獲得するための全体最適化であれば、細かな管理は却って邪魔になる。儲かるかどうかの判定としてスループット・在庫・経費の3つで判断すれば、そのレベルが最適な管理になる。入って・残る金と支払う金の残りが利益なのである。
「全体最適化」はこの言葉だけでは何の意味もありません。こういう言葉は早めに止めて、その内容や意味することを具体的に議論し、決めてゆくことが必要です。
入江 淳一(IDC)