部分最適:『掛け声だけのゼロベース』          02/10/27       BACK

経営トップの「従来の常識に囚われるな。ゼロベースで新しく構想しろ!」という勇ましい掛け声はよく聞くことができます。しかし、掛け声倒れになっている例が少ないないようです。

■ 「ゼロベース」の意味

@文字通り従来の枠に捕らわれない柔軟な発想で考えることである。
A従来のやり方を踏襲するのではなく、従来のやり方の良い点はそのまま残し、悪い点をドンドン刷新することである。
B今のやり方は過去の経営環境の中で創り上げてきたものである。しかし、経営環境は変わっている。新しい環境に対応するには新しいやり方でなければならない。
C従来の方式の改善型ではなく、あるべき姿を検討して、創り上げること。

■ 「ゼロベース」で進めることの障害

@トップからの「ゼロベース指示」を受けて具体的な構想を行っても、総論ではOKとされるが、具体論では全て潰されてしまう。例えば、
・受注方式(EDI等、時間)等従来の顧客との取引ルールを変えようとしても、現状と異なり、顧客からの要望と反する、顧客を説得できない、顧客からの売上が減る、という言い訳で旧来のやり方を変えることはできなくなる。
・納品形態(専用伝票、時間)等従来の顧客とのルールを変えようとしても、同様に顧客からの要望と異なり、そんなこと顧客に言えないという理由で現状通りに落ち着く。
・製品数を絞り込もうにも、絞ればその分売上が落ちるという営業部門の声を真に受けて、結果的には何も変わらない。渋れば、コストが下がり、営業のポイントが集中化されて良い結果が生まれると思うのだが・・。
Aトップは、「ゼロベース構想」は一部プロジェクトに指示を出すが、それ以外のほとんどの部署に対しては、「ゼロベース」に従いやり方を変えるよりは、早く数字を出せという異なるメッセージを出している。その為、現状を変える構想を認める土壌にない。
B総論ではOKだが、各論になるととたんにリーダーシップが亡くなる人がいる。
・営業所の集約を総論で決めても、どこを閉鎖するかが決まらない。自分がかっていた営業所は思い入れがあり、廃止しない。個人的な好みで決めている。
・OBからの意見があると、自説を引っ込めてしまう。
C総論OKで、各論ではリーダーシップを発揮できず、ゼロベース構想の遅れは膨大なものになる。プロジェクトメンバーも次第にやる気を無くしてゆく。

■ ゼロベースを進ませる為には

@ゼロベース構想チームは、総論的な目的・進め方を明確にし、全社の幹部に対して意識的に目的・進め方を何回も浸透させる。
A総論賛成・各論反対は議論の常なので、具体的なことについての方針を出してゆく方針検討委員会のようなものを設定し、定期的に協議を行い、方針を出してゆく。
B各論の中で、何故新しいやり方が良いのか、現状通りが如何に中期的な利益を阻害するのかを明確に説明してゆく。

「ゼロベース」で考える。言うのは簡単ですが、非常な困難が付きまとう作業です。そして、それ以上に困難なのが、「ゼロベース」構想に従い社内の方向を変え、そのことによる顧客等の関係者を変えて行くことです。総論だけなら誰でも言えます。具体論の上に立って、方針を出すことがトップになる人の要件になっているのです。

                                  入江 淳一(IDC)