SCM構築:『SCMとロス管理』              04/03/03            BACK


 サプライチェーンマネジメント(SCM)は、「顧客起点による市場引取方式」に自社を造りかえるということです。それならば、それを実現する管理とはどのようなものでしょうか。


■ 顧客起点による市場引取方式

@売れるモノを作る。売れるだけしか作らない。市場変化を素早く掴み、必要な量を見切り、素早く作る、ということである。理想は確定受注生産である。

A商品が市場に評価されれば販売量は上がるが、それは市場が決めることである。供給側の恣意が入っていては判断が歪む。市場に評価された量だけ、適時に作るだけのことである。ここには、目先の売上を上げる小手先の管理は存在しなくなる。

B従来は、今月の売上が足りないならば売りやすい相手に買って貰っていた。それで今月の売上予算達成を果たした。或いは在庫を作り貯め、損益計算書の当月利益予算を達成した。こういう操作ができることが管理者の腕だった。しかし、今の事業環境でこういうことをやると、在庫過多で会社が危うくなる。市場起点の市場引取方式を目指すと、管理のやり方が従来とは大きく変わってくる。


■ 顧客起点に基づくロス管理

@ロスを減らすことが利益につながる。売上よりも利益を重視し、廃棄ロス(デッドストック)を減らし、値引きロス(在庫余りによる値引き販売)を減らし、機会ロス(受注欠品)を減らし、返品ロス(押し込み販売)をなくす、ことが利益につながる。これを個人の判断・頑張りでなく、しくみで実現する。この「しくみ」を作ることが管理者の役割である。

A「市場が必要なものを必要な量だけ提供する」に従うならば、目先の売上を上げる有効策はない。しかし、今の業務には従来からの「売上主義の弊害」がこびり付いている。ロスは多少出ても売上を求める意識がまだ残っている。これからはロス削減を目的にして、各部門の仕事のやり方を作っていかねばならない。需給コントロール部門と製造現場・調達部門との同期化が必要である。現場スピードという実力アップが必要である。また、ケース毎判断ルールが必要になる。これらが市場対応の「しくみ作り」である。市場引取方式になると、管理者の役割・管理ポイントが目先のことから、市場と同期して動く「質の高いしくみを作り上げる」という先を見据えることに変わってくる。

Bこういう管理者役割の変化は今までにもあった。製造現場における熟練者と管理者だ。熟練者は工程の最後にいて、出来上がった製品をチェックし手直しするのが役割だった。しかし、次第に品質は各工程で作り込むように求められてきた。管理者は工程で品質を作り込むことができる人である。両者は不良品を外に出さないという意味では同じだが、その役割は全く違う。管理役割の変化が、工場現場以外でも起こってきたということである。

C対応ルールにないトラブルが発生したときは管理者の出番となる。熟練者にはこうした自分の出番を喜ぶ人もいる。しかし、真の管理者はこうした管理者の出番を減らすことにある。出番がないように、判断基準・対応策をルールに置き換えることである。そのルールを作る段階で、人を育てる。そのルールに基づき重要な判断を行うことで、人は自信を持つ。管理者は自分の仕事を部下に委譲してゆく人である。


あなたの会社では、廃棄ロス・値引きロス・機会ロス・返品ロスはどれほどありますか。このロスの大きさこそが、市場引取方式の実力です。このロスを減らす為に、管理者の役割を目先業務対応から「市場対応のしくみ構築」にシフトしなければなりません。しくみの優劣で事業の勝ち負けが付くようになっています。管理者に期待する役割が変わったということを、明確に示していますか。


                                                            入江 淳一(IDC)