SCM構築:『長期取引契約』 03/05/09 BACK
長期取引契約はSCM(サプライチェーンマネジメント)の中に出てくるテーマの1つです。長期契約にはどのようなメリットがあり、それを実現するにはどのようなことが必要なのでしょうか。
■ 長期契約とは
@購入が必要になった都度に、購入先を調べ・合い見積もりを行い・価格交渉をするのではなく、一定期間(1年間程度)は同じ取引先から購入するという取引形態である。
A取引相手を広くし少量づつの取引ではなく、絞った少数取引先と長期的な取引・多量取引を行うものである。それを背景にして価格交渉も有利にできるようになる。
B例え購入するものがその都度違っていても、この分野はこの購入先に発注すると決めておいて年間決定にする方式もある。
■ 長期契約のメリット
@都度取引相手を決める場合には、多大なコストがかかる。購入側では、複数の取引先候補を探す、打診をする、回答結果を把握する、交渉事務手続き、多くの相手と交渉する。この多大な業務時間解消がメリットになる。
A販売側にも、見積を作る、見積を出す、条件を調整する、価格を交渉する等の業務コストがかかる。しかも見積は他の仕事に対する割り込みであるため、被害が大きい。ここでも効果は同様に大きい。
Bさらに大きな効果になるのが購入スピードである。都度に購入先候補と価格交渉をやっていると、そこで発注行為が止まる。受注から出荷までのリードタイム上で調達リードタイムは重要だが、そのかなりの日数は価格交渉をしていたということもある。調達リードタイムが長い場合は、生産現場ではやむを得ず在庫を持って対応することになる。
C互いに腰を据えて長期的な付き合いになると、共同で企業間取引の課題解決に進めやすい。例えば、図面情報をEDIで渡し迅速に見積を回答するしくみや、カタログを電子データで常時改訂するとか、互いの強みを生かして設計するとか、技術面での交流もできるようになる。
D合い見積もりを取り、多くの取引先と交渉しても、大きな効果は得にくくなっている。変な見積を見破るという目的であれば、別の方法を採るべきである。取引の前提を変えなければ、大きな効果は出なくなっている。それならば、信頼関係を基盤とした緊密な関係を作った方が有効である。
■ 長期契約の実現のために
1)販売側
@長期契約を提案することは、なかなか切り出せてないようである。
A現在、当て馬的・急場凌ぎ的な取引先としか評価されていなければ、長期取引を持ち出してもとても相手にされない。現在の評価に自信がない為に、大きな提案をしにくい。
B買ってくれという姿勢であるため、長期契約の話を出しにくい。売る側の都合しか認識していない為だ。これは顧客のメリットにもなるのだから、これを大いに主張すれば良いのだが、購入側のメリットを検討・提案するという習慣がない。
C取引を製品の品質・コストという「もの」でしか評価していない。業務コスト・小ロット・リードタイム・購入側の在庫低減という「こと」的な効果を考える習慣がない。
D長期取引を実現するには、購入側と販売側が対等のパートナーになり、共同してさらにその先の顧客に対応するということである。そういうパートナーとしての意識がない。自社を購入側よりも下に置いて、恐縮することが営業だと勘違いしている。
E売上目標で締め付けることが管理だとする会社が多く、如何に重点取引先に絞って深い対応をするという方針を出している企業は少ない。取引先数は多いほど良いという、かつての成功法則から脱却できていない。その為に、売る側の提案内容も変わらない。
2)購入側
@従来から叩くことが購入価格低減の中心だった。その為、販売側も余計なことは言わなくなった(提案しなくなった)。調達先をパートナーとしては見てはいかなった。
A購入側も長期契約に目が向く企業はまだ少ない。
B長期契約にすれば業務負荷は下がる。しかし、それを計数的に把握・評価ができないために、強い主張とすることができない。
C逆に業務負荷軽減は楽をすると捉えられ、評価を下げられる場合がある。業務量が減っても人数を減らされるだけで、自分の負荷は変わらない、その為に業務コスト減という発想にならない。
D購買部門長は購買部門をより少ない人数で行い、業務コストを減らすという役割を持っている。しかし、それを購買部門の人数減(権限縮小)としか考えない人もいる。管理者の評価は部下の数で決まるという価値観である。
E都度価格交渉をやれば、購入価格が下がり利益につながるという考えを持っている。実際には、調達リードタイムが長くなり、過剰在庫・死蔵在庫になっている企業が多い。逆に利益を損ねている。環境ははっきりとスピードを要求しているのに。
企業間で協力し合って良くしていく、その先の顧客のために連携をつなげてゆくことがSCMです。しかし、SCMという言葉は浸透し、ITは導入されても、日常業務の従来意識を払拭するまでは行っていません。普段何気ない業務の中に、如何に古い価値観(今となっては利益を阻害する価値観)が潜んでいるかを自分たちで認識しなければ、会社は変われないのです。
入江 淳一(IDC)