LA SUB X
2006年5月26日 米国カリフォルニア州 サンタモニカ・シビック・オーデトリアム
Isamu hinerin Horiuchi, Manabu jobless Takashima, Kuniaki big crybaby Hamajima
Special Thanx to Kei “Hooker K” Maeda

 

[Report by Isamu Horiuchi]

「ニヒルな天才」ことR1ジム(旧rAw)のリコ・チャパレリが、5月の末に世界のトップ選手を集めたグラップリング大会を企画している、という話自体はかなり以前から伝わってはいた。が、春になっても特に具体的な企画が発表されることもなく、本当に実現するのか、半信半疑だった者も多かったはずだ。


が、5月に入ってから急激に話が具体化。主催者はどこから調達してきたのか、そうとう潤沢な資金をつぎ込んでいるようで(リコはプロデューサー的存在で、チケットやホテルの手配や映像関連の仕事はリング・オブ・ファイアーという名義のグループが取り仕切っていた。LAの不動産会社が大口スポンサーとなり一大会につき8万ドル(約900万円)の資金を提供し、計3度、つまり24万ドル(約2700万円)を用意しているという噂も)、ブラジル、日本から名だたる超一流選手たちの招聘を次々と決定、豪華カードを実現させてみせた。リングアナには、UFCでおなじみのブルース・バッファー。会場はサンタモニカ・シビック・オーデトリアムという、普段は演劇や市民の集いなどが行われているような、綺麗な公共の建物を使用。試合模様を映す巨大なスクリーンも設置され、リングサイドのVIPテーブル席の客には飲食物が用意される豪華さであった。ただしチケット料金も破格で、VIP席の最高価格は325ドル、スタンドの最低料金も60ドルという、ほとんど無謀な価格設定だった。

案の定、宣伝不足もあいまってチケットの売れ行きはさっぱり伸びなかったらしく、大会数日前になって、LA近辺で有名な格闘技ショップ「プロギア」で45ドル以上買い物をした者にはチケット無料提供、さらに大会当日には60ドルの席を35ドルに値下げするなどの対策を敢行。やや遅きに失した感もあったが、それでも熱心なファンがスタンドの5割ほどを埋めることとなった。多数の有名格闘家が顔を見せたフロア席も合わせると、1000人以上の人間が集まっていたと思われる。グラップリングが浸透している西海岸だけに、宣伝を怠らず、当初から適正な価格設定をしていれば、より多くの観客を集められたことは間違いなく、そこは惜しまれるところだった。


 
肝心の試合の方は、これだけのメンバーを揃えただけに、またマッチメイクのセンスも光り、見応えのある試合が続出した。

観客の満足度は極めて高いものとなったようだ。試合後にインターネット上に書き込まれた感想のほぼ全てが絶賛であったことからも、この大会の成功ぶりが伺える。客席のグラップリングへの理解度の高さ、アメリカならではのノリの良さも大会の雰囲気を盛り上げていた。たとえ立ち技での膠着が続く試合展開が見られても、ブーイングではなく、選手達の気持ちを盛り立ててアクションを促す声援が多く飛んでいた。このへんは同じ米国カリフォルニア州でも、翌日に行われたUFCにおける客層とは大きく異なるところだ。








ただ、第一回大会ということもあって、ルール等にまだ改良の余地が見られたのも事実。素晴らしい大会であったことを前提の上で、以下いくつか問題点を指摘したい。まず、この大会の大きな特徴である、極度の「サブミッション重視」のポイントシステムについて。本大会ではこれを受け、グラップリング大会としては異例なほど足関節狙いに行く選手が続出した。なにせ通常の柔術やグラップリングでは「アドヴァンテージ」しかもらえない関節技の「キャッチ」ポイントが、この大会においては、(通常は最大得点を得られる)マウントやバックマウントの3倍もの価値を与えられているのだ。選手達が、まったく点数をもらえないパスやスイープより、効率の良い足関節で攻めようと考えるのも自然なことだろう。

結果として場内を沸かせたとも言えるのだが,特に足関節師として知られているわけではない選手達までキャッチポイント狙いの足関節に走りがちで、むしろ彼らの真価が見えにくくなってしまった面も否めない。実際、足関節で勝負が決したのは、極端な実力差があった藤井恵×ミシェル・ミルス戦のみ。あとは「芸術的なパス&スイープ技術の持ち主達による、極まらない足関節の攻防」が増えてしまうことになった。いかに観客を飽きさせず、選手の良さを引き出すか。このスポーツにおけるルールのデザインの難しさが垣間見えた。



     
また、最高得点であるキャッチを与える判断をレフェリーの主観に頼らざるを得ない、という点にもやはり問題が感じられた。もっとも主催者側もそのへんは考えていたようで、「関節技のキャッチポイントは、相手に激しいディフェンスを余儀なくさせた場合に与えられる」という基準を前もって提示していた。が、足関節合戦の多かった今大会では「強烈に極まっているように見えるが、仕掛けられた側の選手が表情を変えず平静を装っている」というような場面も何度か見られ、レフェリーは非常に難しい判断を強いられていたようだ。





その他にも、LYOTO×ラファエル・ロヴァートJr戦では二度行われた延長戦が、それ以降は一度になる等、ルールの施行において不徹底な面が見られた。また、4分×2Rという区切りは、膠着を防ぐという狙いをよく果たしていたが、それでも試合時間のほとんどがディフェンシブな立ち技の攻防に費やされる試合もあった。今度はホリオン・グレイシーが主催する大会のように強制的なグラウンド移行システムの導入、あるいは投げ技へのより大きな評価等、色々と対策を講じてもらいたい。



とまれ、グラップリングというスポーツはまだ世に普及し始めたばかり。試行錯誤があって然り。主催者側は今大会の成功を皮切りに、「プロフェッショナル・サブミッション・リーグ(PSL)」の発足を発表、今後も興行を続けていく方針を打ち出している。西海岸においては、グラップラーズ・クエスト等の各種アマチュア大会、アブダビ大会、ヒクソン・グレイシーの「ブドー・チャレンジ」と合わせてグラップリングがさらにブレイクする下地ができつつあるようだ。今大会を訪れた日本のIF-PROJECTの浜島さん(7にコメント有り)との連携も含めて、今後の展開におおいに注目、期待したい。

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