日本再生ネットワークの必要性
   
   

  ユダヤ・ロビーの世論戦術  

 

     獨協大学教授 佐藤 唯行 
     イスラエル批判抑える 米メディア等に強い影響力 

   
 
 CM収入で打撃もたらすデモ
 

ユダヤ・ロビーは米政府の中東政策に直接影響力を行使してきたばかりでなく、
イスラエルに対して米国民が抱く好意的言説を維持するために、
メディアに対しても強い働きかけを続けてきた。

「好ましからざる」イスラエル報道を思い止まらせるため、
ユダヤ・ロビーは草の根の会員を動員し、
抗議活動やボイコット運動を当該メディア企業に対して繰り返してきた。
近年でも例えば、
2002年5月に、CNNの某幹部は自局で報道したニュース番組の内容が
反イスラエル的だという苦情のEメールを
僅か1日の間に6000件も受け取ったと述べている。
 
またユダヤ・ロビーは2003年5月に全米33都市に所在する
「ナショナル・パブリック・ラジオ」の支局前にデモ隊を動員している。

同ラジオ局がイスラエルに敵対的な報道を止めない限り、
同局へのコマーシャル依頼を断るよう呼びかけるこのデモの結果、
同局は100万ドル以上のスポンサー収入を失ったと言われる。
 
こうした圧力を恐れ、米国のメディアはイスラエル政府の政策に目をつむり、
またイスラエル政府と米政府との蜜月関係についても
疑問を呈すことは滅多にないのである。
 
ユダヤ・ロビーの努力は主流メディアの報道の現場でも実を結んでいる。
それを示す証左としては
テレビ解説者の大半が
親イスラエル的言説の持ち主で占められている現状が指摘できる。
 
ジャーナリスト、エリック・アルターマンが最近作成したリストによれば、
主流メディアで活躍する解説者、コラムニストの内、
「イスラエルを無条件に支持する者」は61人もいる。
それとは反対に
「アラブの立場を支持し、
イスラエルの行動を一貫して批判する者」は僅か5人にすぎない。
 
全米の諸大学には1000人を超す中東問題の専門家がひしめいているが、
彼等が主流メディアに招かれる機会は滅多にない。
そうした場に招かれる者は
親イスラエル系シンクタンク所属・出身のコメンテーターに
近年、ますます限定される傾向にある。

 シンクタンクも親イスラエル
   
 

メディアと並んで、ユダヤ・ロビーが、その影響力を及ぼそうと努力を続けてきたのが
シンクタンクと大学である。
何故なら両者は世論形成に大きな影響力を発揮するからだ。
 
シンクタンクの世界において、
元々、親イスラエル派のユダヤ人が設立・運営してきたものが
「国家安全保障問題ユダヤ研究所」や「ワシントン近東政策研究所」である。
近年の傾向として、興味深い事実は
元々非党派的立場を堅持してきた老舗のシンクタンクの中に
親イスラエル勢力が次々と拠点を築きあげている点である。
その典型が1927年に設立され、
不偏不党、研究の公共性をうたい文句としてきたブルッキングズ研究所であろう。
長年にわたり、同研究所における中東研究は
イスラエル・パレスチナ紛争に関して中立の立場を堅持してきた。
 
ところが近年、中東研究の拠点が同研究所に付属する新設の
「サバン中東学研究センター」に移管されてより後、
研究・政策提言の方向性は親イスラエル色に染まる
ユダヤ系シンクタンクのそれと変わらぬ立場になってしまった。
その訳は同センターのスポンサー、ハイム・サバンが
米・イスラエル二重国籍の大富豪であり、
熱烈なシオニストでもあるからだ。
サバンのもとで同センター所長に登用されたのが
最強のユダヤ・ロビー「AIPAC」の調査部元副部長にして、
クリントン政権の駐イスラエル大使をつとめたマーチン・インダイクであった。
サバンによる大口の資金提供とAIPAC人脈の導入により、
ブルッキングズ研究所の中東研究の方向性は
親イスラエルへと大きく方向転換を遂げたといえよう。

 大学で教授の発言内容を監視
   
 

ユダヤ・ロビーはまた大学キャンパスの中で、
イスラエル批判を抑え込むという困難な課題も追求してきた。
何故なら学問の自由は大学の中核的価値であり、
それ故、終身在職権を有する教授陣に沈黙を強いることは難しいからである。
米国諸大学キャンパス内のイスラエル批判は
2002年春に勃発した第二次インティファーダに対して
シャロン政権が採った強硬策によって一気に高まった。
この時、ユダヤ・ロビーは大学キャンパス内の世論を変えるために、
イスラエルを擁護する学生活動家育成予算と
大学教授たちが何を書き何を教えているかを監視するための予算を
それぞれ、3倍以上に増額していった。
 
学生活動家から成る監視グループは
特定の教授たちと彼等を雇用する大学に照準を合わせて監視活動を続けてきた。

パレスチナ人の教授、
故エドワード・サイードを雇用してきたコロンビア大学はその典型である。

目下、ユダヤ・ロビーは
イスラエルについて発言を行った教授たちの
発言内容を監視する機構の設立を政府に求め、
連邦議会に働きかけている最中である。
「反イスラエル偏向あり」と判断された教授を雇用する大学には
連邦政府の資金援助を与えなくしてしまう戦術である。
連邦政府をキャンパス監視に動員しようとする目論見は目下のところ成功していない。
けれどこうした目論見がなされること自体、
ユダヤ・ロビーの自信の程を示しているといえよう。