三ツ峠山 標高1785M

 だいぶ前に沢野ひとし著の「てっぺんで月を見る」という本で、三ツ峠のことが載っていた。

関東周辺の人には富士山の眺めのよいことで知られているそうだが、新潟育ちの自分にとっては

富士山自体あまり馴染みが無い。そこで特に行く山も決めず乗った早朝の西武線を中央線方面に

乗り換え、さらに富士急行線に入る。電車の中はハイカ−であふれている。

みんな三ツ峠で降りるのだと思うと多少うんざりするが、なんと降りたのは三組程だった。

ほっとしつつ山の方を見上げると、真っ青な空に映える見事な三つ峠の姿があった。

ここら辺の人は毎日この姿を見ながら過ごして居ると思うと羨ましい。

百名山の深田久弥は、少年時代、白山をみて育ち、やまへの思いを強めたというが、小さな角田山

を見て育った自分とはスケ−ルが違うわけである。


   

 ここからの登山道は歴史が古く、大学の山岳部ボッカ訓練の場として悪名が高いらしい。

そんな道を、リュックのなかはおにぎりだけで、俺はのぼってゆく。

のぼり始めは、植林こそ少ないが、いかにもお役所的な意味の無い自然公園??の建設工事現場があり腹立たしい。
『日本の建設省と環境庁は環境破壊に全力を尽くしている』
という言葉に激しくうなずきつつ登ってゆく。
と、突然、富士山がその雄大な姿を見せた。

何回か富士山を振り返りながら登ってゆくと、やがて荒々しい岩肌が現れる。

ここは岩登りのゲレンデとして有名な所らしく、数組のパ−ティ−がへばりついている。

自分もそのうちやり始めるのかどうかわからないが、どちらにしても信頼できるパ−トナ−が要るだろう。

そんなことを思いながらゲレンデの下を過ぎてゆく。
  

 途中から、一人の中年カメラマンと抜きつ抜かれつ登ってゆく。冬の澄み切った空に映える富士山

はどこから見ても圧倒的で、「なかなか前に進まないな」とうれしい悲鳴をあげる。

フィルムは何本あっても足りなさそうだ。       

 最後の急な巻き道を登りきると、広い山頂となった。眺めはすばらしいが、静かな登山道と違い

ひとがあふれている。どうも裏のほうにバスでだいぶ上までこれる道があるらしい。

どうりで、三つ峠の駅でオババハイカ−は降りないはずである。でも俺のほうが5倍は楽しんだのだ。

 ミ−ハ−オババ軍団に別れを告げ、俺は河口湖への尾根道を、昼飯も早々に下りはじめる。

静寂を取り戻した山歩きとなるころ、すすき越しに見える富士と、また出会えた。