第2章 印旛沼の概況

1.沼の諸元

 印旛沼は、千葉県北西部の下総台地のほぼ中央北部に位置し、昭和27年には隣接の手賀沼とともに「県立印旛手賀自然公園」に指定された風光明媚な湖沼で、当時の沼の姿は、第2.1図に示すように(出典:独立行政法人水資源機構千葉用水総合事業所、「千葉用水総合事業所の概要」、平成16年1月発行)、ローマ字のWに似た地形を成していた。しかし、現在の地形は、前図に示した、かつての沼の中央部が、前述した昭和期の「印旛沼開発事業」によって埋め立てられ、第2.2図に示すように(出典:独立行政法人水資源機構千葉用水総合事業所、「千葉用水総合事業所の概要」、平成16年1月発行)、北印旛沼(以下、西沼と称す)と西印旛沼(以下、北沼と称す)に2分され、捷水路で結ばれる形となっている。
沼の面積は、北沼(6.26km²)と西沼(5.29km²)を合わせて11.55km²と、開発事業以前(約29.0km²)に比べ約半分に縮小したが、水深は平均で1.7mと、むしろ開発事業以前(0.7~0.9m)に比べ倍近く深くなっている。
その他、沼の諸元については第2.1表(出典:「千葉県環境生活部水質保全課」より作成)に示すとおりである。

第2.1表 「印旛沼開発事業」後における印旛沼の諸元
諸元 北印旛沼 西印旛沼 合計
水面積(km²) 6.26 5.29 11.55
湛推量(万m³) 1,500 1,270 2,770
周囲長(㎞) 15.00 13.81 28.81
流域面積(km²) 77.6 412.2 489.8
水深(m) 平均;1.7、最深;2.5
管理水位(m) ・灌 漑 期:Y.P.2.5m
・非灌漑期:Y.P.2.3m
滞留日数(日) 22.8
印旛捷水路(㎞) 4.31
備考:①干拓前の水面積は約29.0m
   ②周囲長および印旛捷水路は指定延長(北総地域整備センターより)

第2.1図 「印旛沼開発事業」前における印旛沼の地形

第2.2図 「印旛沼開発事業」後における印旛沼の地形


2.沼の利用

 印旛沼は水産、レジャー、親水、観光などのほかに、上水道、工業用水および農業用水の水源として利用されている。中でも、後3者の用水源としての印旛沼は、千葉県民の“命”はもとより、日本経済の一端を担う“命”の水がめである。
 沼に河川や流域から直接流入する水量は、第2.2表(出典:独立行政法人水資源機構管理事業部監修・発行「水資源開発施設等管理年報」より一部抜粋し、作成)に示すように、年によって変動がみられるが、最近5カ年(平成12~16年)の平均では4.123億トンである。そしてこの内、利用水量として、工業用水、農業用水および上水道が5カ年平均で、それぞれ1.613億トン(流入水量の39.1%相当)、0.661億トン(16.0%)、0.429億トン(10.4%)で、残りの1.420億トン(34.4%)は利根川に放流されている。
一方、これらの5カ年平均の利用水量を昭和44年から平成16年の36年間における平均(累年平均と称す)と比較してみると、工業用水は4.6%減、農業用水が4.6%減、また水道用水は6.9%減と、いずれも減じている。これらの理由については、工業用水は企業での再利用、農業用水は国の農業政策に基づく減反、そして水道については企業における省エネ努力がそれぞれ影響しているものと思われる。

第2.2表 印旛沼における流入水量と利用水量
流入水量
(億トン)
利用水量(億トン)
工業用水 農業用水 上水 合計
昭和60年 4.199 1.790 0.747 0.496 3.033
平成元年 4.933 1.543 0.639 0.439 2.621
平成5年 4.470 1.612 0.415 0.400 2.427
平成10年 3.852 1.550 0.600 0.429 2.579
平成11年 3.584 1.544 0.646 0.448 2.638
平成12年 3.487 1.549 0.650 0.446 2.645
平成13年 4.003 1.603 0.741 0.434 2.778
平成14年 3.601 1.633 0.639 0.484 2.756
平成15年 4.530 1.659 0.585 0.406 2.685
平成16年 4.992 1.620 0.691 0.374 2.685
平均 4.123 1.613 0.661 0.429 2.703
累年平均 1.690 0.693 0.461
備考①平均は最近5カ年(平成12~16年)の平均
  ②工業用水は五井・姉ヶ崎工業地区、千葉工業地区、JFEへの給水合計
  ③累年平均は昭和44年~平成16年の36年間の平均

 なお、第2.3図(出典:印旛沼土地改良区「印旛沼土地改良区(支区別)排水流域図」より作成)には印旛沼における上水および工業用水の取水施設および農業用の主な揚・排水機場の位置、そして第2.3表にはそれらの施設に対応した諸元(出典:「印旛沼土地改良区」の資料より作成)を示した。

第2.3図 印旛沼における上・工水用の取水施設と、
農業用の揚水および揚排水施設の位置

第2.3表 印旛沼における上・工水用の取水施設と、
農業用の揚水および揚水排水施設の諸元
  施設の種類 施設名称 第2.3図
の対応番号
総能力(m³/秒)
灌漑 排水
流域面積(ha)
用水量 設備容量
西








上・工水用
取水場
県営水道(印旛沼取水場) A 2.07  
工業用水(印旛沼浄水場) B 3.34  
工業用水(佐倉浄水場) C 5.00  
農業用
揚水機場
一本松機場 12 2.732 884.0
保品機場 12 0.434 140.6
飯野機場 2 0.465 157.2
飯野第2機場 4 0.171 57.32
萩山機場 5 0.112 36.38
瀬戸江川機場 6 0.057 18.4
師戸機場 13 0.159 58.3
岩戸機場 14 0.104 36.6
吉田機場 15 0.859 287.8
手繰機場 17 0.419 142.2
臼井第2機場 1 0.036 13.3
農業用排水
専用機場
飯野台機場 3 1.73 269.0
師戸機場 13 2.667 510.0
岩戸機場 14 0.80 288.0
吉田機場 15 0.859 210.0
手繰機場 17 2.002 599.0
臼井第2機場 1 4.233 451.0






農業用
揚水機場
吉高東機場 11 0.071 24.4
山平機場 7 0.155 50.0
吉高機場 10 1.764 588.5
宗吾機場 8 0.820 283.8
甚兵衛機場 9 1.670 546.9
農業用排水
専用機場
吉高機場 10 10.28 1,658.0
宗吾機場 8 13.50 2,950.0
甚兵衛機場 9 3.81 249.0
【備考】①用水量:農業用水計画(印旛沼開発施設)19.12m³/secに対する機場個別の水利権
    ②赤部分:排水流域面積


(1)工業用水

 工業用水は、第2.3図に示したように、西印旛沼の2カ所で取水されている。一カ所(第2.2図に示した“B”の地点)は川崎製鉄(株)(現・JFEスチ-ル(株)東日本製鉄所)によって第一期工事として昭和36年(1961年)に着工し、昭和38年(1963年)に竣工、そしてその後、第二期工事として川崎製鉄(株)と千葉県が共同で建設を行い昭和47年11月(1972年)に完成した印旛沼浄水場である。送水能力は28万m³/日で、JFEスチ-ル(株)東日本製鉄所(1.8m³/sec)と京葉地区工業地帯(1.54m³/sec:千葉市新港地区、市原市、袖ヶ浦市の臨海部に立地する企業)に給水されている。
 他の一カ所は(第2.3図に示した“C”の地点)、佐倉市の鹿島川河畔に千葉県が五井姉ヶ崎地区の企業(現在では市原市、袖ヶ浦市、佐倉市の企業)に給水するため建設した40万m³/日〔昭和42年3月(1967年)と昭和45年4月(1970年)にそれぞれ同じ能力の20万m³/日を完成〕した佐倉浄水場である。 
 なお、佐倉浄水場での取水については、通常時は鹿島川の河川水、そして低水期には印旛沼の水を合わせて行っている。

(2)上水道

 上水道は、第2.2図に示した県営水道印旛沼取水場(第2.2図に示した“A”の地点)で佐倉市臼井田地先の印旛沼の表流水を取水し、約9.6km離れた千葉県柏井浄水場〔昭和39年12月(1964年)認可、第三次拡張工事で計画され昭和43年7月(1968年)に完成〕に送水し、そこで高度浄水処理
※1(オゾン処理+活性炭処理)をして、市川市と浦安市の全区域、また千葉市、船橋市、習志野市および市原市のそれぞれの一部区域に配水している。

※1高度浄水処理とは、臭気原因物質(ジオスミンと2-メチルイソボルネオ-ル)やトリハロメタン前駆物質である有機物質をオゾンの強力な酸化作用によって分解、その分解物等を粒状活性炭で吸着除去する処理

 ここで、上水道の水源として印旛沼の歴史を遡ってみると、県水道局の当初計画では、第三次拡張工事で建設された西側施設は、印旛取水場から取水した印旛沼の水を浄化、また第四次拡張工事で建設された東側施設は木下取水場で取水した利根川の水をそれぞれ浄化する計画であった。しかし、西側施設が稼働して間もない昭和45年(1970年)にはカビ臭(異臭味)問題が発生したことによって2年後の昭和47年6月(1972年)には、その抜本的な解決を図ることを目的に県水道局内に「水質問題研究会」を発足させた。その結果、当初計画を変更し、東側施設でオゾン処理と粒状活性炭処理を併用して完全徐臭を目指す工事を行い、昭和51年4月(1976年)には約22億円の事業費でオゾン処理施設、また昭和55年4月(1980年)には約72億円の事業費で粒状活性炭施設がそれぞれ完成した。そしてこれにともなって、印旛沼の水は東側施設で浄化され、今日にいたっている。このため、印旛沼の上水コストは江戸川(栗山浄水場)や利根川(北総浄水場)を水源とする処理費に比べて、それぞれ4倍および3倍強の高さとなっている。また、印旛沼の水は、昭和55年(1980年)以前までは利根川の水と一緒に処理されていたが、以後は上述したような水道障害等の問題もあって、印旛沼の水は別系統で単独に処理されている。
ちなみに、印旛沼の水を飲料としている市町村は、上述した全区域あるいは一部区域の6市に加え、渇水時には佐倉市、八街市、富里市、四街道市、酒々井町の計11市町を合わせ、全体で水道人口は千葉県総人口の約4分の1弱に相当する約140万人である。このような実状からして、水源としての印旛沼の価値は、問題と課題を多分に含みながらも、計り知れないものがあり、沼の浄化は焦眉の急を告げているといえる。

(3)農業

 印旛沼を農業の用・排水として利用している主な揚水機場、揚・排水兼用機場および排水専用機場の位置は、第2.2図また揚水・排水施設の諸元については第2.3図にそれぞれ示したとおりであるが、この他にも沼周辺域には大・小の機場が数多くあり、これらを含めた機場(農業用水計画;19.12/秒)からの用水受益灌漑面積は63.0m²(内訳:干拓地;9.3m²、既耕地;53.7km²)におよんでいる。
 しかしながら、印旛沼流域における農業基盤等の実態をみると、ポンプ場の老朽化にともなって維持管理費が増加、流域での土地開発が進み洪水被害が多発、田植えの時期が早まり十分な用水供給ができないなどの問題がある。このような現状と課題に鑑み、現在、農林水産省では、印旛沼地域の灌漑排水施設が安全、かつ合理的に機能し、これまで地域に果たしてきた3つの大きな役割、すなわち首都圏への食料の供給、都市との交流、都市型農業の展開が将来にわたり継続的に発揮されるよう、国営灌漑排水事業「印旛沼二期地区」および関連事業(県営灌漑排水事業、県営経営体育成基盤整備事業、団体営基盤整備促進事業)を実施しようとしている。
 工期は、全体実施設計は平成9年度~平成21年度(1997年~2017年)、事業としては平成22年度~平成30年度(2018年~2026年)で、この事業の関係市町村は佐倉市、成田市、印西市、八千代市、栄町、印旛村、本埜村の4市2町2村、また受益面積(水田)は平成18年3月末現在で4,950ha、受益者数は4,374人である。
そして計画されている主要な工事は揚水の4機場(白山・甚兵衛機場、埜原機場、宗吾西機場、一本松機場)と揚排水の2機場(宗吾北機場、吉高機場)の更新、用水路全延長53.5kmと排水路全延長1.1kmの用排水路を再編整備するとともに、水管理制御施設を導入し、用排水の集中管理を行い、維持管理の軽減を図ろうとするものである。
 なお、これら事業費は総額で約628億円(国営灌漑排水事業:約337億円、関連事業:約291億円)を見込んでいる。

(4)漁業

 印旛沼に生息する魚種、および漁具・漁法は、前述した「印旛沼開発事業」の完成を境にして大きく様変わりした。
開発事業以前の印旛沼には鮭、マルタ、ボラなど利根川から遡上してきた魚種、シラウオ、もつご、きんぶな、ぎんぶな、ナマズ、モクズガニ、スジエビ、マシジミなど在来の魚介類、ビワヒガイ、ゲンゴロウブナ、カワムツ、ゼゼラなどの移入種と、まさに多種多様な魚介類が生息していた。しかし、開発後は、消滅した種も少なくはないが、代わってカムルチ-、ハクレン、オオクチバス、ブル-ギル等の外来種が多くなってきた。
一方、魚介類を漁獲するための漁具、漁法も、開発以前は魚介類それぞれの生理・生態特性に対応して数多くあった。しかし、最近では、漁業資源および魚種の減少によって、かつて漁獲対象によって使い分けられていた約25種類にも及ぶ主な漁具・漁法のうち、現在では張網、船曳網(エビ、ワカサギ、雑魚等を対象)、柴漬(冬は雑魚やエビ、夏はウナギを対象)、竹筒(ウナギを対象)の他に、刺網、置針等が利用されているにすぎないが、この中にあって、コイ、フナ、雑魚など多くの魚種を対象として漁獲できる「張網」は、今ではもっとも一般的に用いられている漁具・漁法である。
第2.4表(出典:千葉県水産総合研究センタ-内水面水産研究所)は、千葉県水産総合研究センター内水面水産研究所が平成15年(2003年)から平成17年(2005年)までの3カ年にわたって行った北印旛沼および西印旛沼での「張網」漁獲調査において確認された魚介類を示している。
これらの結果から魚類の生息状況についてみると、年度によって出現種に変化がみられるものの、3カ年をとおして確認された魚種としては西印旛沼で延べ31種、北印旛沼で26種、また甲殻類は、それぞれ4種および3種であった。しかし、これら結果は、平成10年度(1998)から平成14年度(2002)の5カ年において確認された魚種と比較して〔財団法人印旛沼環境基金編集・平成15・16年版「印旛沼白書」(平成16年11月発行)15頁第2.4表参照〕、西印旛沼では3種、北印旛沼は6種、また甲殻類は北印旛沼で1種とそれぞれ減少を示している。
魚種では、利根川からの遡上と思われるアユ、シロサケ、ビワヒガイ、マルタの4種の生息が確認されなかった。一方、甲殻類は、両沼をとおし全部で4種確認されているが、このうちスジエビ、テナガエビ、アメリカザリガニは沼内で繁殖、そしてモクズガニは利根川から遡上してきたものと考えられている。
しかしながら、近年、外来種であるオオクチバス、ブルーギル、チャネルキャットフイッシュ(別名:アメリカナマズ)などが多くみられるようになってきたことは、これからの、地場産業としての印旛沼の漁業に一つの大きな問題を投げかけている。
なお、北印旛沼では確認されたが、西印旛沼で3カ年をとおし確認されなかった魚種としてはギンブナの1種、またその逆ではアカヒレタビラ、ヤリタナゴ、スジモロコ、ドジョウ、ナマズ、ジュズカケハゼの6種である。

第2.4表 平成15年から平成17年の3カ年の張網調査で確認された魚介類
種  名 西印旛沼 北印旛沼
H15~17年度
出現種
15 16 17 H15~17年度
出現種
15 16 17
ウナギ
ワカサギ      
シラウオ      
アカヒレタビラ            
ヤリタナゴ            
タイリクバラタナゴ  
ツチフキ        
ニゴイ  
タモロコ
モツゴ
ウグイ  
スゴモロコ            
オイカワ        
ハス      
ワタカ  
キンブナ            
ギンブナ
ゲンゴロウブナ
コイ
ドジョウ          
ナマズ        
チャネルキャットフィッシュ  
クルメサヨリ      
ボラ      
カムルチー    
オオクチバス  
ブルーギル
トウヨシノボリ      
ヌマチチブ    
ジュズカケハゼ            
ウキゴリ        
アシシロハゼ        
魚類出現種数

31種

26種

スジエビ  
テナガエビ
アメリカザリガニ  
モクズガニ            
甲殻類出現種数

4種

3種


(5)観光

 印旛沼は昭和27年10月(1952年)〔再点検:平成7年5月2日(1995年)〕に隣接の手賀沼とともに、それぞれの沼を中心とした地域一体が印旛・手賀自然公園〔面積:660.6km²、地域;柏市、我孫子市、沼南町(現・柏市)、印西市、本埜村、栄町、印旛村、酒々井町、成田市、佐倉市〕として指定されたが、最近は、都心に近い自然公園として衆人の注目を浴び、貴重な存在になっている。
両沼は四季をとおし、有数の魚釣り場として関東一円のなかでも有名である。また、印旛沼および流入河川に沿ってはサイクリングロードが計画され、平成18年4月(2006年)現在、第2.4図(出典:印旛放水路周辺自然環境整備連絡協議会「印旛放水路サイクリングロ-ド案内図」2002年3月発行)に示すように、阿宗橋を起点として最終計画地点の国道356号線のふじみ橋までの27.3kmの間のうち、栄町の酒直水門までの21.6kmが整備され、沼およびその周辺の自然を楽しむことができる。残りの5.7kmについては、酒直水門の堤防改修工事計画との関連でまだ未着工の状況にある。
一方、沼および沼のほとりで催される行事としては、(社)佐倉市観光協会が4月~10月の期間中に運航する「屋形船観光」、毎年4月初旬頃に佐倉市が佐倉ふるさと広場で開催する「佐倉チュ-リップまつり」、また毎年10月に成田市環境計画課が主催して行う甚兵衛渡し公園を拠点とする「印旛沼クリ-ンハイク」などがあり、それぞれに多くの人々が集い、楽しんでいる〔第2.5表(出典:(社)佐倉市観光協会および成田市環境計画課より聞き取り作成)〕。
 また、流域には故事来歴のある成田山新勝寺(成田市)、宗吾霊堂(成田市)、麻賀多神社(成田市)のほか、松虫寺(印旛村)、竜角寺と栄福寺(栄町)、竜腹寺と龍水寺(本埜村)等の古寺、また学習・教育の場として国立歴史民俗博物館(佐倉市)、成田山書道美術館(成田市)、川村記念美術館(佐倉市)、県立房総の村(栄町)、岩屋古墳(栄町)、房総風土記の丘(栄町)等が数多く存在している。
 なお、印旛沼流域内の成田市、佐倉市と栄町の2市1町、そして流域外の芝山町は、昭和61年(1986年)に『成田国際観光モデル地区』として指定された。しかし、このモデル地区指定は平成17年(2005年)に解消され、代わって現在、千葉県国際観光協議会(通称、テーマ地区)が新たに設立され、今後の新たな活動等について検討が重ねられているところである。

第2.5表 印旛沼およびその湖畔で催しされた諸行事と参加人数
     行事

年度
屋形船観光
(千人)
佐倉チューリップ
まつり(万人)
国際印旛沼
花火大会(万人)
印旛沼クリーン
ハイク(人)
 平成11 4.05 16.4 30.0  934
   12 3.01 25.0 30.0 1,223
   13 2.69 25.0 30.0 1,039
   14 2.48 21.7 31.0 1,129
   15 2.95 31.0 32.3 1,041
   16 2.57 15.0  934
   17 2.72 22.5   623
備考:①花火大会は平成16年度より中断
   ②
印は天候不順のため参加者が多数キャンセルあり

第2.4図 印旛沼に沿って整備されているサイクリングロ-ド


3.沼の水管理

 印旛沼は洪水(治水)対策をはじめ、上述した上水道、工業および農業等の利水に支障をきたすことがないように、万全の水管理が行われ、水位は灌漑期(5月~8月)にY.P.※2)2.50m、そして非灌漑期(9月~4月)にはY.P.2.30mと印旛沼開発施設によって一定に維持されている。

※2Y.P.とは、Yedogawa Peil(江戸川工事基準面)の頭文字を組み合わせたものである。その意味は利根川水系の堤防など治水事業で使われる基準となる海面からの高さで、通常、地形図の等高線で用いられる標高Tokyo Peil(東京湾平均海面)より0.84m低い位置を0.0mとしている。

 この水位調節は、第2.5図(出典:千葉県企画課編集「水のはなし・2006」)に示すように、長門川の利根川合流地点に位置する印旛排水機場と印旛疎水路の中間あたり(新川と花見川の接点)に位置する大和田排水機場の2つの排水機場、そして長門川と北印旛沼の取り付け部に相当して位置する酒直揚水機場の運転によって行われている。

第2.5図 印旛沼開発の水管理施設と計画水位の断面図

 沼の水、要するに西印旛沼および北印旛沼の水は捷水路をとおして北と西に向かい移動しているが、概して灌漑期には西沼から北沼、そして非灌漑期には、逆に北沼から西沼に移動する傾向がみられる。しかし、年間を通してみると、平水時は、沼の水位が利根川に比べ1~1.5m程度高いため、 西および北沼のいずれの水も自然流下で長門川を経て利根川に流れ出ている。しかし、利根川の水位が上流で降った雨によって沼より高くなった場合には、印旛水門を閉め、利根川から沼への逆流を防いでいる。また利根川と沼がともに増水し、しかも利根川の水位が沼より高い場合には印旛排水機場(能力:92m³/秒)で沼の水を汲み上げて利根川に強制放流している。そして、さらに利根川と沼がともに水位が高まり、なお、かつ利根川の水位が沼より高まった場合には、印旛排水機場と同時に、大和田排水機場(能力:120m³/秒)おいても沼の水を汲み上げ、花見川に落とし東京湾に放流している。
これに対して、沼の水位が、逆に渇水等で通常の維持管理水位を下回った場合(利水容量の低下)には、利根川の水を長門川にとおして酒直揚水機場(能力:20m³/秒)で汲み上げ、沼に注入している。 
 なお、印旛沼開発施設と計画水位の関係を表わす断面図は、第2.5図に示してあるが、治水の安全度については、現実的には印旛沼の堤防が軟弱な地盤の上に築堤されているため、地盤沈下や押さえ盛土の消滅などで脆弱化が激しく、治水容量の不足と相まって、低下をきたしている。このため、県では、対症療法的に堤防の嵩上げ工事を行っているが、関係機関からは治水安全度を高めるための抜本的対策が強く望まれている。