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かめない総入れ歯


●かめない総入れ歯とは●

かめない総入れ歯とあっていない総入れ歯は、すこし違います。あっていなければ、勿論かめません。ここでは、あっていてもかめない場合があるということで話を進めます。

入れてから、患者さんが、あってかめる入れ歯と言って下さっても、うちとけてくると(時間は掛かりますが)、小松菜が噛み切りにくいとか、塩辛が食べにくいとか、パンの耳が食べにくいとか、お餅を食べると、入れ歯が浮き易いというお話を患者さんから、頂戴します。

また患者さんによっては、食べられるという話も伺います。訓練で食べられようになるという話もお聞きします。

この明暗をわけるのは、ただ運動神経の差だけなのか、他に原因があるのだろうか?いろいろ患者さんを見ているとどうも与える咬合が 影響しているような気がしてきます。これの解決を目指していますが、入れ歯の常識で考えると少し変だなという部分があります。また組み立て直しの時期に来ている感じがします。乞うご期待下さい。 有頂天になると、ものすごく難しい患者さんが来院され、その鼻っ柱をへし折られ、挫折して、考え直し、工夫を重ね、よさそうという感触を得て、患者さんに試し、その結果をえるという、牛の歩みに似た試行錯誤をまた生真面目にやり抜くしかないと思います。


●振るえを伴う病気●

甲状腺が腫れるバセドウ病が有名です。甲状腺の機能亢進症になると、ふるえます。ふるえそのものが、問題でなくて、甲状腺の機能亢進ということが問題ですから、そちらをなおさなかったら、治療にはなりません。

パーキンソンというのもあります。ふるえ自体は、ほとんどの運動の障害になっていません。けれども、それで治療しないと、だんだん筋肉がこわばり、動かなくなって動作もゆっくりになりますし、そちらのほうが困ります。

1.ふるえそのものが治療の対象になる、本態性振戦があります。

2.ふるえが窓口になり、病気が診断されるもの。(甲状腺の機能亢進症、パーキンソンなど)


●本態性振戦のふるえは、特定の姿勢、動作で起きる●

本態性振戦のふるえは、手でいえば、何かを持とうとすると起こる。コップの水が飲めない。

パーキンソンは、逆で、手はふるえていても、お茶を飲むときには、ずっと止まっていて、飲めます。

手が一番多いが、首もふるえる。声がふるえるかたもいます。

1.顎のふるえというか、首全体がふるえているので、声が二次的にふるえる人

2.横隔膜がふるえる人で声にふるえがでる人がいます。

精神的な緊張状態で筋肉の緊張度が変わる。ある決まった程度の緊張状態が出来た時にふるえる。それは、ある姿勢をとったときだったり、精神的負荷がかかったりしたときにふるえが、起こります。


●本態性振戦は中高年に多い●

本態性振戦は、ほとんど40歳過ぎです。特に首のふるえは、60歳過ぎです。

本態性振戦のふるえは、範囲が広がる。右手だけだったのが、左手もふるえる。

ふるえは、状況依存性です。


●パーキンソン病との違い●

パーキンソン病は、じーっとしているとふるえていて動作しようとすると止まるか、ふるえが非常に軽くなる。

本態性振戦は、じーっとしているとふるえないが、何か物を取ったり、持ったりするときに、ふるえます。

首のふるえかたも方向が違う。パーキンソン病では、縦にふるえて、よしよし振戦ですが、本態性振戦では横にふるえる、いやいや振戦です。


●ふるえは2種類ある●

横にゆらすいやいやふるえと縦にするよしよしふるえがあり、いずれも義歯をお口から外すように作用します。

いずれのふるえでも非常に義歯を難しいものにします。これからこの解決策を見つけようと思います。


●不随意に筋肉が痙攣するのが難しい。●

不随意に筋肉が痙攣すると、食べている時、上の入れ歯のあたるところと下の入れ歯のあたるところが絶えず変わり、上下の入れ歯 を絶えず動かすので、入れ歯に粘膜のあたりが出て、痛みが出ます。入れ歯の動きを止めたいのですが、あたり方が絶えず変化するので、調整の使用がありません。 年齢が上がれば、このような筋肉の動きが多かれ少なかれ、発現し始めます。高齢者の入れ歯は経験者であっても難しくなります。筋肉の不随意運動は誰にも止められません。 このような方にどのような咬合を与えるかがポイントです。いろいろと試行錯誤を繰り返しています。 少しづつですが、良い結果になりそうな咬合が分かりかけてきました。時間をかけて解明したいと思います。 大学でならった咬合では、不可能です。常識はずれな咬合ですが、入れ歯を動かさないという意味でこの辺に真理があるなという手応えがあります。ただ垂直圧の力を弱める方法まで未だ解明されて入ません。 また他の注意しなければならない要素もでてきましたが、これはなんとかクリアー出来そうです。どのような力が良いのか、計測できないので、感覚の問題の解明はまだまだ、先でしょう。感覚の計測が最後に残りそうで、これが一番 治療をする者にとり、分からない部分です。やはり入れ歯は、患者さんにとり、異物なのです。しかし異物ではあるが、最低限の異物にしないと。この最低限のところに感覚の世界があるので、やはり、入れ歯は、難しい。


入れ歯が、合っていても、この不随意な筋肉の痙攣は、歯茎にとり痛みと感知する。これを人工歯咬合調整、粘膜面調整では解決できない。打つ手は余りありません。患者さんは、かめば、痛がります。 そのとき、歯科医師は、ひとり孤独に問題解決のため、あてどもない旅に出るようなものです。原因を直す方法がなく、入れ歯の当たりだけで直そうとします。顎の揺れさえ止まれば、改善できますが、それが不随意運動のため止まらない。顎関節も年齢とともに平坦になり、移動しやすくなると、ふるえと近似したことが起こります。 そのため高齢者の入れ歯は、難しくなります。内科医は手足、首のふるえは精査しますが、顎のふるえはあまり見ないようです。歯科医は顎のふるえは良く確認するが、投薬加療が出来ません。顎の振るえは、歯科医にとって、厄介な問題で、治療、加療を台無しにすることもあります。


●筋肉の協調運動ができない人●

筋肉の協調運動ができない人に与える咬合は、通常のかみ合わせを与えても、入れ歯が動いてうまくいかない確率が高い。常識をやぶる発想が必要です。2002年9月以降 、やりはじめた咬合は、手応えをかんじつつあるが、もう少し様子を見る必要があります。創意工夫です。ノーベル賞をとられた小柴昌俊、田中耕一さんも創意工夫の賜物でしょうが、歯科では、決してノーベル賞は、取れません。取れないどころか研究費すべてが,歯科医持ちという現況です。つたない臨床の腕ですが、一隅は、私でも照らせることもあります。


●入れ歯●

震える人の入れ歯は難しい。入れなければならないので作りますが、吸着する入れ歯は難しい。 上の入れ歯の吸着が出れば万歳です。ゆれの程度に入れ歯の性能が左右されます。ここでも力学の原理原則に支配され、揺れが微妙に入れ歯を、外す作用になる時、ものすごく困難になります。


●噛めない入れ歯●

噛むという動作は本来、無意識の動作ですが、総入れ歯の場合、顎がいつも真っ直ぐに動かないと、上下入れ歯が当たる所がいつも変わるので、そのために入れ歯が動いて噛めなくなります。 噛むところが一定していないと、なかなか上手に噛めません。これは患者さん自身が訓練で乗り越えるしかありません。 患者さんの努力が期待される部分です。合わない入れ歯は、歯科医師により、よりあうように出来ます。ですから合わない入れ歯と噛めない入れ歯は、新製義歯では、違います。義歯が古くなりますと、合わなくなり、また、噛めなくなりますが、慣れている義歯なので、あまり違和感は感じません。新製義歯の場合、最初は噛み込む位置を気にしながら一定の位置に噛み込む努力を することが大切です。次にあわない入れ歯について述べます。


●薬剤の影響と入れ歯●

催眠鎮静剤,抗パーキンソン剤,抗てんかん剤,抗ヒスタミン剤,筋弛緩剤,消炎鎮痛剤,抗潰瘍剤,利尿剤,去痰剤は、口腔ないの唾液分泌を減らすので、 入れ歯が粘膜をこすり、噛めません。唾液という天然のクッションが働かないためです。


サヨウナラ!あわない総入れ歯


●総入れ歯につく形容詞●

好ましい形容詞では、あう、合う、かめる、噛める、痛くない、動かない、上手な、よい、

好ましくない形容詞は、反対に、あわない、合わない、かめない、噛めない、痛い、動く、下手、悪いなどがあります。


患者さんの側から感じるのは、大きく分けて、痛み、合っていない、動く、の3要素だと思います。動くので痛みを感じ、食べると 動くので、その結果、 噛めないという不満が積もり、下手な技術で作った悪い入れ歯という烙印を押されるのでしょう。 つまり、動くため、かめない、笑えない、しゃべれない入れ歯になるのでしょう。


●総入れ歯を動かないように作る●

*動かない*

現実問題として、全く動かない総入れ歯をつくることは出来ません。かならず僅かであるが動きます。その動きが、その人の許容性の範囲であれば、大丈夫なのですが、 許容性は、計算して求められる値ではありません。許容性の大きい人でも、骨が出っ張っていれば、出っ張った骨のまわりの歯茎(土手)は少し動いても痛みます。 可及的に動かない入れ歯ならできます。


動かない入れ歯はあるのか、かまなければ動かない入れ歯は可能でしょう。しかし非現実的です。動く原因はかむからです。 歯の山とそれに対合する他の歯の谷がお互いにかみあってこそ、かみきれるのですが、山と谷が一致するところに行く間に他の場所と接触すると入れ歯は、動きます。山と谷が一致するまでぶつからないようなコースをいつも取れる人は、入れ歯は動かず痛くありません。 これは、運動神経が関与します。そのひとの運動神経に依存しています。これが上手にいくようにリハビリが入れ歯には必要です。顎のゆれているひとは、リハビリに時間がかかります。

*あっている*

どの粘膜の状態にあわせるのか---印象操作が問題

レジンが変形しないものと仮定して、どのくらいの圧が加わった歯茎(土手)の変形にあわせるのか。それを印象操作で取りうるのだろうか?

最後は使った状態の入れ歯の状態の歯茎(土手)の面しか信用できないのではないか?噛んだ状態の印象を一回の印象操作で取れるのだろうか? 圧力を受け入れられるような歯茎(土手)に仕立て上げなければ、こすられれば、よじれて、痛みがでるので、鍛えた後に入れ歯をいれるべきです。その方が、歯茎の色がきれいです。


*レジンの変形をゼロに*

重合操作が問題

歯茎(土手)の面が理想的に取れていたと仮定して、レジンの変形をゼロにできるのだろうか? 完全ゼロは不可能です。


誤差との戦いです。目に見えない誤差との戦いをしなければなりません。可及的に誤差をゼロに近ずけるしかないと思います。印象、咬合採得、重合などすべての操作でゼロ に近い誤差にしないといけません。


●合う入れ歯●

上の相反する矛盾にたちむかって、入れ歯の動きを可及的にゼロに近ずけるには、入れ歯をひとつ作り、入れ歯の形で使用してもらって から、悪いところをなおしていってから、ここでよいでしょうと患者さんが満足されてから、基本的に最終段階で少量レジンで仕上げるしかないと思います。 ここでよいという入れ歯ですから、完成後、痛みもほとんど訴えませんし、今までと同じかんじで食べられます。あう入れ歯なのですから、結果も良好です。 合う入れ歯とは、患者さんの状態にあわせていく入れ歯です。あわせていけば、必ずあう入れ歯、あっている義歯になります。

一回一発、印象で重合の保険仕様では、あう入れ歯の出来る可能性は低いと思います。

洋服でいえば仮縫いをしてさらに本縫いをする作業が必要です。入れ歯もかり縫い本縫いしてあうように仕立て上げる作業が必要ではないでしょうか。すべて一回でやろうとするから無理があります。 当然あわない入れ歯になる確率が非常に高くなります。難症例義歯では、仮縫いを何回かやらないと上手くいかない場合がほとんどです。


このような工夫をすると下顎総入れ歯もすいつく、あった入れ歯になる可能性もあります。印象に工夫、咬合採得に工夫、重合に工夫して、患者さんの違和感をへらしながら、歯茎(土手)のアイロンがけで 圧力にたえられる歯茎に変えてから完成義歯に仕上げていきます。

その時、顎が偏位する(顎がゆれる)人は、噛みこむ位置がずれるので、歯科医の腕だけでよい入れ歯にすることが出来ません。そのくせをなおすリハビリをしたあとでないと、 まな板の端っこで包丁を使うようなもので、入れ歯がはずれやすくなり痛みが出ます。

舌の位置にも注意してください。

舌の位置、噛みこむ位置の注意は患者さん本人がやらなければなりません。

入れ歯になったら、必ず舌の位置、噛みこむ位置を確認しながら使用するようにしましょう。安全運転のため、いつも車の状態を確認してから乗るのと同じです。


●患者さんにしかできないこと●

あって噛める入れ歯にするために、患者さんは、舌の位置に注意し、顎がゆれないように、かみこむことを注意してください。 ここのところは患者さんに実行していただかないと、本当にあっていてかめる入れ歯になりません。自分自身で習得するものです。

●入れ歯の特徴●

1.大量生産がきかず、個別生産なので、生産性がかなり悪い。むずかしいと、予想できないほどの時間がかかる。

2.患者さんが来院後、作業に入らなければならない。事前にある程度のものを準備できない。印象(かたどり)して、はじめて作製準備に入れます。

3.ひとりの患者さんの入れ歯をつくる。そのひとに合うようにする必要があるが、各個人によって要求が違う。

4.痛みに対する感覚は、すべてそれぞれ違う。痛みに強い人、弱い人、混在する。感覚の世界が支配する。許容範囲の狭い人が時々いる。わるいことに、許容範囲は、事前に分からない。

5.入れ歯は、道具であるので、その使いこなしに運動神経が関与します。運動神経は、人によって違いがあります。年齢とともに落ちるものです。顎がゆれはじめると、同じ場所でかめないので、入れ歯が転覆して、痛くなり噛めません。きゅうに入れ歯のむずかしさが加速されます。だんだんとどちらがわかに2.5cmずれられるとお手上げです。通常2oの範囲のずれに対応できますが、センチでは単位が違いすぎます。 それをミリ単位にするリハビリが必要です。このリハビリ期間は歯科医師にとり、修羅場です。センチの単位では、即、激戦地の最前線です。せめてミリの単位であってくれれば、良いと思います。年齢があがり、運動神経も落ち始める頃は、もっともむずかしくなります。時間もかかります。くせになってしまったら、直すのも、一苦労です。 しかも、くせなので無意識に顎をゆらすのですから、入れ歯を外しにかかる動きなのですから、痛みがでます。痛みという二重の追い討ちがかかります、どんなにうまくつくられた入れ歯でもひとたまりもありません。ここは本人が自覚して、くせを直して、2oぐらいの範囲であたるようしなければなりません。野球でいえば、コントロールの悪い暴投投手(患者さん)のキャチャー(歯科医師)みたいなものです。すごく難しく大変です。この状況になれば、根気だけです。一定のところにかみこみが、できるようになるまで、待つしかありません。まな板の端で包丁をつかわれるのと同じですので 危険(痛み、傷になる)があります。ほとんどのむずかしい症例は、かみこむ位置の不安定にあると思います。

6.入れ歯は、偽歯(ぎし)です。にせものですので、本物と同じ能力はあたりまえですが、ありません。無理なことは、むりですが、最善を尽くしても、本物には、かないません。本物の歯は総義歯の場合、全て無くなってしまっているという厳然たる事実しかありません。責任は患者さん自身が負うものでしょう。

7.価格に保険と自由診療という、2つの設定価格が存在する。一物ニ物価という、矛盾がある。どちらでも選択の自由が患者さんにはあります。しかし保険で最高のものを、望まれてもよほど良い条件が重ならない限りーーーむずかしいのではないでしょうか。普通でもピッタリその人にあう入れ歯は、一回ではできないと思います。

●サヨウナラ!あわない総入れ歯●

あわない総入れ歯にさようならしたいのですが、ここに難問があります。

ご承知のように、総入れ歯はそれ自体かむ動作を致しません。机の上においた総入れ歯に”はい、かんで下さい”とお願いしても、かんではくれません、動きもしません。かむのは、その総入れ歯を使う人が、意識してかむとかめる様になります。 総入れ歯の能力は、その使用者が、その人のおかれた条件で引き出すものです。道具の性能は、その使用者の勉強、学習で高まります。 それは、他人により、うまくなるわけでは、決してありません。他人依存ではなく、本人しだいです。自力本願で他力本願でないということです。

ある程度使いこなすまでの指導は歯科医師でも可能です。使いこなすのは、患者さん自身です。患者さん自身が、考えながら上手くなっていくのです。 入れ歯は、あっている入れ歯はつくることは可能です。でも使いこなすのは患者さん自身です。どんなによい名馬をもっても、馬に乗れなければ、名馬かどうか実感できません。

入れ歯の料金は、あった入れ歯を提供する時間の料金です。あわせる作業は、ひとそれぞれ、かかる時間が違います。掛かった時間に支払いをして頂いていると思っていただければ、世間でいうほど、高いものではないと思います。

よい入れ歯をいれるための責任の半分は、患者さんにあります。現在歯茎にあっている入れ歯は 作れます。これが出来ない責任は歯科医師にすべてあります。それを使いこなすのは、患者さん自身で、責任もすべて患者さんにあります。意外と難しいのは、顎のゆれのクセの是正です。顎のゆれを自覚してから、クセの是正をしなくてはなりません。 自覚して、ゆらさないという意識をもつ事です。その意識をもてない人は、ながくかかります。ですから料金も2階建てにするほうがよいと思います。

昔から、歯科医は、入れ歯でインフォームドコンセプトを取ってきました。ですから主治医の先生とよく相談して下さい。


●一人では踊れない●

It takes two to tango. タンゴを踊るには二人いる。何よりもパートナーと息があわなくてはならない。まして華麗に踊るには---入れ歯も一緒に踊る人がいればこそ

はやく最良のパートナーを見つけられることを祈願します。一人相撲ではいけません。時々,歯科医師に過剰な要求をして一人踊りする患者さんもいます。全てを叶える事は出来ません。


●さあ!かめる入れ歯にしましょう。●

あっている入れ歯なら必ず、かめる入れ歯になります。但し使い方に注意しなければなりません。ゆっくりですが、かめる入れ歯になるはずです。 しばらくしてかみにくい原因がわかれば、さらにかめるようになります。しかし顎がゆれて、たえずかみこむ位置のぶれるかみ方をしていては、なかなか原因がつかめませんから、顎のゆれが極力すくなるなることが必要です。

あっている入れ歯を外すように使えば、かめません。外すように使う最大の原因は、顎の使い方で、顎がゆれていて、かみこむ位置がかみこむ度に違う事です。これは、患者さんが、意識しないと直りません。すこしずつゆれの範囲を小さくしていく患者さんの努力にかかります。歯科医は、僅かな手助けしか出来ません。

顎のゆれは、前後、左右、斜め、上下とあります。

またゆれ幅が大きいもの、小さいもの、不規則なもの

また顎の開け閉めの時だけでなく、入れ歯でかんだ状態で入れ歯ごと揺らすものなど様々あります(入れ歯で歯ぎしりでは入れ歯もその下の骨もたまらない、入れ歯が安定しないはずです)。 遊びのようにされる方も居られます。またお口をモゴモゴと、たえずされる方もいます。

そのとき入れ歯がはずれるので、患者さんは、入れ歯が”落ちる””ゆるい”という表現をします。はずすように入れ歯を使用しているのですから、落ちてあたりまえ、はずれてあたりまえです。顎をおおきくゆらせば、あっている入れ歯でもおちてもおかしくないし、緩く感じてもおかしくありません。要は入れ歯の使い方があるのですから、入れ歯の使い方を守らなければなりません。入れ歯を動かす事により、折角辺縁封鎖している入れ歯の端に空気を入れて、自分で辺縁封鎖を解除しているので、外れやすくなります。

この顎を揺らすクセを取り除くのが、最大の問題で、肝心なことです。これがとれれば、間違いなく、かめない入れ歯から、かめる入れ歯になります。

しかし、クセなので、本人が自覚していないので、まず自覚させることより始めなければ、なりません。 またクセを取り除くというのは、大変な事です。部分義歯のころからあった、ひどくなったクセをとるのは、そのクセの歴史の長さから、大変な努力を必要とします。

ここの部分が入れ歯の良し悪しにつながる一番難しいところです。クセを取るーいうのは簡単、とるのは大変です。他の入れ歯のホームページには書いてないと思います、教科書にもないのですが、患者さん が不満をもつ原点だと私は思います。顎をゆらすということは、いい入れ歯にならないということです。パーキンス病などでこきざみに顎をゆらすかたの入れ歯は、教科書でも有病者の入れ歯で、難しい入れ歯にあげられているほどですが、病的でない人でも 顎をあたってはいけない所まで動かされると、入れ歯は力の作用で必ず、外れます。クセが、人間関係をずたずたにし、もつれあわせ、ねじったものにし、入れ歯を難しくします。やっかいな存在です。

クセですのである時、再発する事もあります。再発防止のため時々、歯科医院でのチェックが必要だと思います。なくて七癖、顎をゆらすクセだけはつけないほうが、良い。

クセをつけると、クセのため、入れ歯の動きが大きいので、入れ歯を支える骨を早めになくし、骨の幅、高さがへり、かみこむと支えがますますなくなり、かみこみに耐える場所が狭まりだんだんとかみにくくなります。そうなると歯の並べられる位置が極端に制限され、ますますかみにくい入れ歯に必然的になります。次第に悪循環になっていきます。その難しい状況のもと歯科医師は、配列に四苦八苦しています。手遅れにならないよう、祈るしかありません。

”さあ!かめる入れ歯にしましょう。”と掛け声をかけましたが、大変なことを言ってしまった様な気がします。ここらが難しいところですから。


●歯ぎしり●

歯ぎしりが、顎を揺らすクセの根源の様な気がします。

赤ちゃんのとき、乳歯がはえそろい、顎がおきくなるとき、はえた位置より外側に乳歯が移動していくために歯ぎしりは必要です。 歯ぎしりによる咬耗で乳臼歯だ平らになると、もう乳歯の移動は行われません。位置が安定した乳臼歯を目標に、永久歯である第一大臼歯が萌出準備にはいり、出てきます。

また一説によると、我々の先祖が草食のころの習癖の名残りで、本能に近いものという説もあります。

患者さんも歯科医もこの歯ぎしりで切歯扼腕させられます。このどうしようもない問題が一番根深く存在するために、皆が困っているのです。

入れ歯の真の問題点は、ここにあります。入れ歯の作製ミスではないのです。ここを乗り越えて初めてかめる入れ歯になリます。 課題としては真に大きく、時間がかかります。しかも患者さんの双肩にかかる問題です。ここをどうか無事に乗り切ってください。歯科医はほんのちょっとのお手伝いしか出来ません。

ここの努力は、お金では買えません。買えないからこそ、乗り越えられた時の喜びも大きいのです。

Now,let us dance tango.さあ、タンゴを華麗に踊りましょう。


●かむ所を一定にしないとこうなる●

かむところを一定にしないということは、下の歯を用いて現します(下の左アニメ)。上の歯の場合も反対にひっくりかえせば理屈は同じです(下の右アニメ)。上下入れ歯だと 上も下も動きながらかみますので、もっと複雑になります。

下の歯の中央のくぼみにハンマーを作用させれば、その衝撃に耐えられる方向なので歯は長持ちしますが、それをはずれてていつもたたくと 横方向に歯は少し傾き、衝撃力を吸収しようとします。歯の根と歯槽骨の間が少しずつ広がります。ある限界をこえると元にも戻らなくなります。 通常このような歯の使用をすれば、歯が痛くなるので、余りしません。夜寝ている間は、ねむっているので、やる可能性があります。歯の山がハンマーであり歯の谷が、下の歯の上真ん中のくぼみです。 ここに上手く入れないと自分の歯でも上手くかめません。入れ歯になると入れ歯が動き出し、踊るのでうまくかめるはずがありません。どんなにあっている入れ歯でも必ず踊る出すのです。

赤い歯と黒い骨に囲まれた青の空間が広くなると歯はゆれ、抜け出します。いわゆる歯槽膿漏のはじまりです。同じ理屈で歯と歯をあわせておいて, 擦れば歯がハンマーとぶつかるのとおなじです。むしろ全ての歯でやるので破壊力はすさまじいと思います。入れ歯なら、骨が確実に減ります。

山と谷を合わせられるのは歯にセンサーが組み込まれているからです。歯を失うとセンサーもなくなるので、あわせることが、非常にむずかしくなります。この顎のゆれがある限りかめる入れ歯になるのは、なかなか困難です。 入れ歯をはずす力を加えながら使用しているのと同じです。

先人いわく、”入れ歯は作るのに100時間、入れてかめるようにするのに100時間以上かけろ。”これは、故堀江東京歯科大學教授の言葉です。要は、入れ歯を作ってから、あう入れ歯、かめる入れ歯にしなければ、ならないという教えです。これが、本当の入れ歯の作り方だということです。本当の入れ歯をつくると、名人でさえ200時間ぐらいかかるということです。ただ入れ歯を作るだけだったら、こんなに途方もない時間は必要ないですが、かめてあっている入れ歯にするには、この位の時間が最低かかるということです。むずかしくなると、もっとかかるのは、言を待たない。

アニメ画像を2個提示します。歯が抜ける理由と、入れ歯が動く理由を説明するためのアニメです。

歯の場合、一番垂直の力に抵抗できるようになっています。横の力に弱いのです。

入れ歯の場合、さらに条件が悪くなり、黒い骨の上に乗っかっているだけなので、横滑りをおこしやすいので、左右に入れ歯が動きながら、食事をしています。入れ歯の動きを少なくするには、真ん中の窪みでかむようにすることが一番です。歯の端っこの方でかめば、アニメの如く自分の歯は、ゆるくなり、抜けてしまいます(歯槽膿漏とおなじ)。歯を押し倒す力を歯にかけ続けます。 入れ歯なら動いて、かめない、痛い入れ歯になります。入れ歯を押す力を加え続けます。真ん中でしかその力を最小限にうけとめる方法がありません。かむというのは、微妙な事です。トンカチで釘を打つ時、釘の真ん中めがけてトンカチをふりおろしますが、いつもはずれて振り下ろすようなものです。釘の角にあたれば、釘は曲がります。釘にあたらなければ、釘をおさえている手にあたり、手が怪我をします。臼なら真ん中でつかなければ、壊れます。それとおなじことをかむときにやっているのですから 歯も入れ歯もたまりません。いつも一定の位置に一定の軌跡をえがいてかみこむ必要性をご理解ください。 そうすれば、歯槽膿漏を予防でき、入れ歯も安定し、かめるようになる可能性は、ぐっと高まります。

入れ歯の場合、黒い骨の高さが低くなるに従い、入れ歯の動きも大きくなり易いので、難しさが増していきます。そのとき、リズムよく一定のところでかめないと入れ歯はたえず踊ります。

もし、今お持ちの入れ歯が、かめないなら、顎がゆれているか、チェックしてみては、如何でしょう。 もしときどき、はずれるならば、外れる場所を確認して、その内方でかむようにすれば、良いのではないでしょうか?

もし、クセがあると認識されれば、とりあえずやってみて下さい。”唇を合わせ、歯は上下あわせない”ようにして下さい。昼夜そのように心がけてください。夜寝る前に”唇を合わせ、歯は上下離す”と暗示をかけてください。鼻呼吸になり体にも良い事ですから実行してください。 ただし鼻が悪い時は、鼻を直してからにして下さい。 かめる入れ歯は、まず顎のクセの矯正後、その人のお口の形態に可及的にあわせてこそ、出来ます。ただ印象し、配列して、重合してできる訳がない。それなりの時間と手間をかけなければ、出来ません。 顎のクセの矯正は、患者さん頼みですから、いつ矯正できるかの予測すら、立たないことの方がおおい。また十分に矯正出来ない事もあり得ます。歯科医師の一番苦しい時です。 しかも患者さんの協力は、絶対必要な条件です。医患の結びつきを問われる時期でもあります。ここで患者さんとの心理戦を乗り切る事が求められます。

患者さんの直そうという真摯な気持ちを削がないよう、その気持ちがなるべく持続するようしなければなりません。気を使わなければならない、息の抜けない時期です。

顎の動きがある程度とまりだせば、歯科医師は、お口の中の空間に置いた人工歯の位置が適切であったかやっと、はじめて確認出来るようになります。適切な配列かどうか確認しながら、その患者さんの顎関節の動きに同調させるように人工歯の調整をしなければなりません。この段階を経て、かめる入れ歯が出来ます。 顎関節は、直視できないので、想像しながらの作業です。この作業も難しいのは言うまでもありません。

かめる良い入れ歯にするには、誤差を生じる工程に、その誤差を最小にするための工程を何度も何度も重ね合わせて最小な誤差にしてはじめて、できます。時間と人の力を多数投入してこそ出来上がります。その間は患者さんの協力をなるべく維持できるよう努力を重ねながら、神経を使います。協力を失えば、すべてやって来たことは、水の泡に帰します。剣が峰にいつも立ちながら、入れ歯作りは、進行していきます。 患者さんに御協力いただく最大の要点は、舌を適切に使う、顎をゆらさないようにするの2点です。このページの上のアニメで歯と入れ歯の動きをもう一度確認して下さい。入れ歯を動かしながら使っていては、かめる良い入れ歯になるはずがないのです。この2点に神経を集中して、実行して下さい。患者さんの御協力が、必須です。宜しくお願い致します。


●かめる入れ歯でも入れ歯は、少しゆれている。●

アニメ画像を1個提示します。入れ歯では、真ん中でかむ必要があることの説明のアニメです。かみながら顎を左右にゆすられても入れ歯は外れます。

向かって左の歯が上中央のクボミと下中央の出っ張りが、上手くあたると入れ歯は余り動きませんが、左の端でぶつかると、上下入れ歯は大きく動きます。右の端でぶつかると少し上下入れ歯は動きます。左端の時のように大きく動かないのは、御口の内方だからです。

左側の人工歯同士が、上の人工歯に対し、真ん中、左、右と下の人工歯の頬側の出っ張りがぶつかりその時、入れ歯が動く様子が見られます。真ん中、左、右の順番です。真ん中が一番分かり易いと思います。お互いに沈み込むだけです。

入れ歯は、いつもこのような力の働きで基本的に少し動いています。入れ歯の動きが、驚くほど小さいとかめる入れ歯になります。ここに感覚の世界があります。多少動いても平気な人、僅か動いても感じてしまう人。この僅か動いても感じてしまう人が、調整に長いことかかります。わずかずつしか削合できないのです。僅かな削合でも、敏感に感じ取ります。余りいじるよりも、自然な磨耗を待った方が良いと思いますが、削合してなんとかしてもらいたいという、常識が働くのですが、顎関節に協調した動きは、簡単にバーで削って再現が出来ません。斜面をあわせて確度を微妙につくることが困難です。どんなに精巧につくっても、模造品で、偽物です。本物と同じタッチで描けません。まして歯は、立体なのですが、削合面は直線です。そのずれでなかなかピッタリといかないのです。

作っておしまいでなく、それからその人に合うよう、かめるように作り上げる努力が必要なのではないでしょうか?

後からつくりあげるための作業の方が、微妙で難しい作業の連続です。

入れ歯をいれる条件は、年齢とともに、悪くなっていきます。唾液の分泌量の減少、支える歯茎の高さの低下、幅の減少、骨が支えきれないほど弱くなる、運動神経の衰えーーーいろいろあります。しかし入れ歯はファジーです。粘膜という加圧されると変形するものの上に直接乗っかっていますので、入る場合もあり、痛みが出る場合もあります。骨の傾斜も影響しますが、骨の傾斜を測定する手立てが、現在ありません。歯を抜いた跡に入れるのですから、抜いた歯の跡がへこみますが、その時の傾きを測定できないのです。その傾斜が、入れ歯を外すようになっていることすらあります。ファジーな環境の入れ歯を確実にかめる入れ歯にするために、歯科医師は、まだまだ学ぶ必要があります。


●結論●

あっていて、かめる入れ歯をつくるためには、患者さんと長い間苦労してつくりあげるもので、患者さんとの信頼関係がその入れ歯に必ず影響します。信頼関係が崩れれば、あっていて、かめる入れ歯になりません。合っている入れ歯は、時間と材料、と知恵をつぎ込めば必ず噛める入れ歯になります。


補足;過去に報道された”NHKスペシャル”で入れ歯は、「噛めない、話せない、笑えない」が3大不満で、この中で 噛める入れ歯は55%位といわれております。約半分の人が不満をもっているということです。約半数の方が歯科医が、いろいろやったにもかかわらず、不満があり、普通に歯科医が作れば、半分の方が不満をもつ入れ歯になるということです。確率的に半分の人が、かめない入れ歯になり、いろいろと工夫しなければ、かめる入れ歯にならないという現実です。 入れ歯はそれほど難しいということです。普通の難しさの患者さんが、医療機関の間をなんども、かめる入れ歯をもとめて、受診している確率も高いと思います。なにしろ確率は、半々に近いのですから。

半数の方が顎がゆれている可能性があり、入れ歯を無意識に使い、その使い方の間違いを認識していないと思います。顎の使い方はトレーニングで、上手くなるものです。そこを認識しないといつまでたっても、平行線で解決しません。

45%の人が、かめない入れ歯をもっているということは、人々が、かめる入れ歯の難しさを認識していないようにも感じますが、それ以上に制度が悪いように感じます。制度が悪いと、医患の対立がおき、その関係が冷え切ります。

安さできたものは、安さで去る。

技術できたものは、技術で去る。

心魅せられしものは留まる。

でも私には、心魅せるものが現在、全くありません。ただいま準備中ですといいたいですが、果たして心魅せるものが完成するのだろうか?ただ生真面目に患者さんに相対するのみです。心魅せる歯科医師ーこれは無理かも!!!???

それ以上に、あっていて、かめる入れ歯は難しい。入れ歯は、赤字になる。保険でつくれるほど簡単ではない。九州、北海道に行くのに、飛行機、船、列車、車、歩きという手段があります。どれで行くかは、それぞれの選択です。


最後に、入れ歯(義歯)は、歯科医師の手を離れれば、あなたの最重要なパートナーです。それを大事にするのも、あなた次第です。大事にすれば、あなたに答えてくれるでしょう。 その性質を最大限に引き出すのは、あなた次第です。タンゴでなく、華麗なワルツすら、踊りこなせます。大事ににして、入れ歯の立場をたてれば、すばらしいおしゃべりだってできます、楽しい食事だって出来ます。それもあなた次第です。入れ歯を作る腕もあるでしょうが、あなたがすばらしいパートナーに育て上げる腕を問われています。 少しの訓練と努力が必要なのです、すこし大変なのは、入れはじめた時だけです。大事に! 大事に! あなたのパートナーを、いたわって下さい。 苦労して作り上げたものですから、なおさら、お願いします。入れ歯を通して、じっくりと自分を見つめ直して下さい。


総義歯(入れ歯)の話
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