義歯を作るとき、同じ印象を再現出来ない、同じ模型も再現できない、同じ義歯になる、保証はありません。
義歯とは、製造時、保管時に生じる誤差をいかにを少なくするかの勝負です。歪みを最小限にするかにかかっています。 しかもその誤差は目に見えるほどの大きさではなく、変化にも気がつかない程度の小さなものです。レジンの性質は、貴婦人のようだと 言った研究者もいるそうです。微妙なものなのです。
最近の老人の総義歯の症例は、上顎のフラビー、下顎の歯槽骨の平坦化などの症例が増えていますので、ますます難しくなっています。
医ー患の関係は、ギシギシという音と共に、崩れ始めています。良い義歯にするには、時間をかけなければ、無理です。ただし、時間をかけたから、良い義歯になる、保証はありません。
そのなかで良い義歯に可能性は、患者さんの協力と信頼のみです。そのか細いなかで、歯科医師は、努力するだけです。 応分の負担を患者さんがなさって頂けないとよいものになる要素は全くありません。
09年4月に久しぶりに経験しました。 下顎左側第一小臼歯と第二小臼歯のみ残っていました。それの動揺がひどくなったので、抜歯して総義歯にしようとしました。 もちろん今までも義歯の経験があります。ところが総義歯の咬合採得のとき、なかなかうまく行きません。顎がどうやらふらつくようです。 何度やってもほぼ同じ位置になることがないので、やむおえず顔貌から判断して、大体と思われる位置に決めました。 セットした日も、うまく顎の位置を誘導出来ませんでした。翌日痛いと言って、急に来院されました。 同じ位置どころか、前方左側に下顎総義歯がずれています。噛む位置を決めないと調整すら出来ないのですが、噛む位置が、極端にずれて どうにもなりません。患者さんは、緊張しすぎています。顎の疲れを待つため、顎の開け閉めを軽くやってもらいました。 すこしずつですが、顎が戻り始めました。 5月の連休中は、新しい義歯で噛む練習をして下さいとお願い致しました。連休明けの8日に来院されましたが、キュウリのぬか漬けを食べたかった ので食べたら、食べれたとのことですが、まだ早い感じがするとお伝えしました。 患者さんの我慢により、少しづつ良い方向に転がり始めました。 やはり義歯は難しいものです。食べたいものがある方は、良い方に向かうことが多いのですが、時期を早くすると、かみ合わせが定まらずに 義歯をおさめている土手のあちこちを痛みつけますので、要注意です。傷が出来ると、治るのに、思いのほか、時間がかかります。 患者さんは、今まで義歯をうまく入れてもらっていたのに、なんで今回こんな苦労をさせられるのかと訝しげです。 信用をも一遍に失うこともあります。義歯はなにが起こって不思議ではない。痛くて咬めない義歯と吸いついて噛める義歯とは紙一重というこtなのでしょう。 努々、歯医者は義歯に気を許すことができません。患者さんのつらそうな眼が、私の心臓をいつもぶち抜いています。辛く悲しい出来事です。 今回はまだ予断を許しませんが、それは避けられそうです。良かった!よかった!
本当に噛めるような義歯になるには、まだ紆余屈折がありそうで、時間がかかると思います。それで吸いつく総義歯 になるのにはさらにもっと時間がかかります。土手の形状がゴツゴツしているので、少し滑らかになるのに、時間がかかります。