歯があれば、歯槽骨がありこれが歯のまわりを取り囲み、歯のうける衝撃などすべてを引き受けてくれます。しかし歯を失うと、歯槽骨は吸収し、顎骨のみになります。これはもともとその上に歯槽骨があって、働いているのです。そのうしなった歯槽骨のまわりには、まだ歯があれば、歯槽骨があります。
しかし炎症(いわゆる歯槽膿漏は、辺縁性歯周炎という病名です。炎症を伴う疾患なのです。)の影響で、骨は様々に変化します。形態、強さ、硬さ、性状など変化します。大小不均等に、なっていきます。もともと顎骨は入れ歯を支えるように出来ていません。顎骨は、歯槽骨とともに歯を支える役目がありました。
体の成長と共に大きくなった組織は、25歳ぐらいをピークに少しづつ、成長発育の力がが弱まります。40歳頃から、中年と呼ばれる様になると、若いときほど活発な活動ではなくなります。60歳以上になると、もっと活発ではなくなります。歯槽骨、顎骨もその運命には逆らえないのです、その修復能力は年齢と共に弱まっていきます。
その弱まっていく顎骨の上に入れ歯をおき、機能させるしか方法がないのです。不利な条件のなか、入れ歯をなんとか、安定させなければなりません、しかも加齢と共に、条件はますます悪くなっていきます。難しくなるのは、加齢のためです。加齢のために、歯槽骨、顎骨、筋肉その他の神経などの組織も変化します。若い頃よりも、弱くなります。
粘膜の下の骨は、入れ歯になった直後は、歯槽膿漏などで、骨が不均一でかろうじてつっかい棒つきで家(入れ歯) を支えている状態です。なんとか、入れ歯が乗っかっている状態です。それを支えている地面は、石交じりの瓦礫です。それが段々と(経年的に)骨が低くなると、ほとんど砂に変化していきます。 かろうじてバランスだけで家が建っているのと同じです。
第二の秘密は経年的に顎骨の変化が生じ、もろく弱くなりつつ、低くなります。 顎骨が低くなってしまっていて、高い空中戦をやるには、入れ歯が安定しなくなってきます。顔つきを犠牲にしてでも、ある程度の空中戦が出来るようにしないと噛めません。空中戦ができるのは、顎骨のお陰です。これも入れ歯の秘密のポイントです。
ある時急に、前の入れ歯が痛くて使えなくなったので、新調しようと、歯科医院を訪れ、作ってもらってはみたものの、前とは違った噛み心地である、下手なやつだと思われるでしょうが、前に作られた時よりも、顎骨の条件が経年的変化で、作るのに、すこしづつむずかしくなります。
すなわち、年を取るほどに、入れ歯の支える条件が悪くなり、使う人の能力も落ち、作るのに難しさが加わってきます。段々と入れ歯は難しくなるという、という法則に縛られます。すなわち諸条件が悪くなっていきます。 なくなったあの先生の入れ歯がよかったというたぐいの話です。やさしい時期につくれば、名人になれるのも、入れ歯です。なくなった先生では、入れ歯を作ってと依頼も出来ません。
入れ歯の安定とは、力学の法則に支配されているという点での患者さんのご理解と協力を得られないならば、患者さんにとり、三人のしゅうとに仕えるより辛い入れ歯になります。この無知のため、歯科医師は、患者さんの説得から始めなくてはなりません。
入れ歯を作って入れてから患者さんの要求がはっきりしてくる場合もあります。 勿論力学的に無理な注文です。しかし患者さんの理解と協力が得られない場合、歯科医師が三人のしゅうとに仕えるより辛くなります。力学の前に打つ手がなくなります。歩み寄りの道を講じなければ、入れ歯の性能が悪いままなので、人間関係は悪くなるばかりです。患者さんが頑固でなければ、この切羽詰まった状況から、すこしずつ脱出出来ます。
前向きな人、柔軟な心の持ち主は、柔軟な対応ができるので 安心です。いつも柔軟な思考の人ばかりではありません。三人のしゅうとに仕えるよりーーー患者さんの性格に左右される要素もあります。
入れ歯されど入れ歯ーーーやはり、むずかしいものです。ほんの僅か浮きながら吸着をつけるのは大変です。この微妙なバランスをつくるために、人工歯の並べる位置に苦労しています。並べて見て、使ってみて、粘膜よりはるか高い空の上で衝突を繰り返す空中戦を通じて良い悪いが決まります。歯科医学が咬合が分かっていないための結末です。
しかも歯茎は微妙に動きます。歯茎という粘膜は、もともと、入れ歯(義歯)を支えられるように出来ていない。つまり押されれば、痛むのです。難しいはずです。また顎骨も同様です、ですから入れ歯(義歯)にしないことが、人間の本来の姿なのです。
つまり、入れ歯(義歯)は、無理やりに、歯のないところに入れようとしています。最後の非常手段です。そこの所をよく理解して下さい。歯を失ったのは、自己責任です。しかも歯科医は、頼まれて作り上げようとしています。悪戦苦闘しながら、何が原因なのか、絶えず考えながら努力しています。なにも患者さんと喧嘩するために入れ歯を作っているのではありません。何とか安定させようと、苦心、苦戦、工夫しているのです。
患者さんの義歯をかめるようにするほど、歯科医師が食べれなくなるのが現状です。莫大な時間をつぎ込んでの、かめる、痛くない、吸着のある入れ歯です。それでも条件によっては、吸い付きません。しかし機能は、少し劣りますが、食べたりのんだりの働きは出来ます。
歯科にも手遅れがあります。一番の手遅れは、心を開けない人かもしれません。しかも心開くはやってみないと何ともいえません。 やはり入れ歯は近いご近所のウマの合う歯科医で作ってもらった方がよいと思います。ご近所と仲良く出来ない人では、話になりません。
どう転んでも最後の最後まで、入れ歯は、力学の原理原則に支配され、ささやかな希望も排除せざるをえないこともある。力学の原理原則が痛みを生み、吸着すら、入れ歯につけます。 骨の残っている量が多いほど、上下の対向関係が正常であればあるほど、いい入れ歯になるのは、力学の原理原則に支配されるからです。
お金をいくらつんでも、上下対向関係をよくしたり、骨量を増やす事は、現在の歯科医学でも出来ません。加齢とともに条件は悪くなります。(骨がゆっくりと減っていきます )条件次第で入れ歯の性能は左右されます。協力を上手く得られれば、90%ぐらいの人に吸着します。しかも吸着力は、その人の条件により変わります、条件に左右されます。患者さんの性格にも左右されます。それほど、むずかしいものだということです。
結論、入れ歯は力学の法則に支配されます。粘膜より高い人工歯での空中戦の力学まで、考えに入れながらつくらないと上手く行きません。そのことがヒミツのとびらへの1歩です。その人の器に合った以上のものは、出来ません。その人の気質、性格にも影響されます。だからこそ、ウマがあう先生を見つけてください。なるべく近所でついてゆけそうな先生を見つけてください。
最後は、患者さんの感覚と術者の知識の積み木細工的理論の実践感覚との折り合いです。患者さんの感覚も変化することもあり、心理的要素が入り込むこともあります。術者は、肉体感覚がないので、理解できない場合もあります。ここに、両者の主張が平行線になると、上手くいきません。
出来ないことがあるという認識を持つことが、解決につながる道です。 お互いに軟着陸する、妥協点を見つける、努力をしないと、永遠に組み合わせを試行錯誤することになります。わずかなバランスの上で成立する入れ歯なのですから、そのバランスは、みつけるのは容易ではありません。条件次第で変化していきます。
一番足りない点は、入れ歯を装着後、患者さんが来院してくれる方が少ないので、 自分で行った入れ歯治療の追跡調査ができないことです。壊れれば来院しますが、修理の対応に追われます。 いい感じで噛めているときの、細かい、人工歯の形が、どのようになっているのか、見たいのですが、なかなかチャンスがありません。これでは、永遠にDentureの良い噛み合わせ(咬合)が本当に分かりません。長くお目にかかれないのは、良いことなのでしょうが、入れ歯の咬合の解析のためには、残念です。
ダメになってこられるよりも、定期的受診をお願いします。患者さんの意識と反対なのですから、なるべくお願いします。 それで、歯科医師が良い入れ歯への目を養い、肥やせます。反省材料にもなります。勉強させて下さい。作り放しでは、何の成果もあがりません。歯科医師は、患者さんに育てられるのです。 改善する点、反省する点が、分かると思います。それを肥やしにしたいと思います。そのためにも、人間関係を、良くして終わりにしたいと思います。
埼玉熊谷ならならいつでも、見せて頂けるのですが(実際は、患者さんの来院は、壊れたり、噛めなくなったときだけ、10年以上来院されません。自分の歯が痛んだときは、すぐに来院されますが)、メインテナンスにわざわざ、遠方より歯科医院に来院される方は少ないし、遠方のかたに交通費をかけてわざわざ来院を促して良いものか悩みます。
インターネットで見たので、質問に答える形で1200文字の入れ歯についての原稿を書いて下さいとの依頼が、7月1日にありました。 しばらく迷いましたが、お引き受けすることにしました。7月10日に入れ歯についての原稿を送りました。10月号に載る予定です。 [総入れ歯にする前に](03/10/20)が原稿です。
最後にお願いします。出来上がった入れ歯を、愛情たっぷり可愛がって、あなたの本物の歯のかわりになるくらいに、使いこなして下さい。これはあなただけにしかできない技です。誰も手助けできません。あなただけで技を磨かなければなりません。
ただ歯科医師は、見守るだけです。技をきわめて下さい。あなたの器が問われます。それを主に精神的に助けるのが、歯科医師です。最後は、患者さんの運動神経の勝負です。
総入れ歯の使い方のまとめです。 舌先で下の入れ歯をおさえると同時に、舌の奥で上の入れ歯をおさえて、入れ歯が浮かないようにして噛んでいます。 舌の前方で下の入れ歯前歯部の舌側を軽く押さえながら、舌の後方を持ち上げ気味に浮かしながら使うとうまく行きます。 舌の後方を下げると歯茎と入れ歯の間に空気が入り、下の総入れ歯が浮き上がり、不安定になるので、このような舌の使い方をしながら、食事 を取るのだと思う。この技術をマスターすれば、食べられます。
舌先を下入れ歯の一点にあてながら、クランク運動のようにしながら、舌をある程度の高さでくねらせて食事をとり、入れ歯に空気が入らないように工夫しているのです。 入れ歯と粘膜の間に空気が入れば、入れ歯は、不安定この上ないものになります。 入れ歯のベテランは、生活の知恵としてこの技術をマスターしています。入れ歯の初心者は、この技術を学んで下さい。初心者は舌の後方を心持上げるように意識して、入れ歯を押さえる動きを 練習するのが、よいでしょう。舌の後方をさげると、入れ歯は浮き上がることを念頭に入れながら、リラックスして練習してください。初めて自転車に乗る時のことを思い出して下さい。 これも知られざる「入れ歯ー秘密」です、秘儀ですね。