フランスに学ぶ「ディクテーションを授業に」
朗読を聞き取り、書き取るディクテーションを、学校のカリキュラムの中心に据えている国がある。フランスである。
小学校に入りたての6歳の子どもたちですら、毎週、何回か、ディクテーションのテストを受ける。
朗読を聞いて、文法の「誤り」、発音の「ミス」を聞き取り、耳にした文章・単語を正しく綴る、ディクテーションのレッスンだ。
ディクテーションをカリキュラムの柱としているあたり、さすがフランス、自分たちの言語に誇りを持っている国のことだけある。
このディクテーション、教室での授業に限ったものではない。フランスを挙げた国民的なハビットになっていて、毎年行われる全国コンテストは「チャンネル3」からテレビ放映され、サッカーなどスポーツを押しのける人気番組になっている。
昨年のコンテストへの出場者は、実に50万人。テレビ放映された決勝戦には176人が勝ち残り、「文法の罠、複雑な綴り」に満ちたテキストの聞き取り、書き取りに挑戦した。
放映番組名は「黄金の辞書」。2時間続きの番組を、300万人のフランス人が視聴したという。
この国のディクテーションは、まさに「フランスの情熱」(ル・モンド紙)である。
日本でも、ディクテーションを国語の正課に全面的に採り入れてはどうだろう。
聞き取りと書き取りで、子どもたちの日本語能力は相当、向上するはずである。
英語のテストに限定しがちなディクテーションを母語の教育に生かして行く――これもまた、わが国の教育を再生するための検討事項のひとつに違いない。
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ランドセル追放で教科書革命
成人式も終わって、そろそろ、新入学の春……。
うーん、ちょっと早すぎるかも知れませんが、ピカピカの1年生がデビューする日も間近ってことで、勘弁していただきましょう。
きょうは、ランドセルに関する話題です。
ランドセルって結構、重いですよね。とくにちいさな子どもたちにとっては。
登下校で毎日、背負って歩くって、たいへんなことです。下手したら、背骨を痛めたりして……。
そんな重いランドセルを追放する動きが、アメリカのカリフォルニア州で出ています。正確には、追放する動き、というより、追放することが決まった、というニュースです。
カリフォルニア州議会で、追放令……つまり、法律が決まって、来年7月からスタートすることになったんです。一定の重さ以上のランドセルは禁止します、子どもに背負わせてだりはいけません、って法律が昨 年9月に州議会で通って、州知事のデービスさんが署名したんですね。
制限重量をどのぐらいにするかっていうのはこれからですが、法律ができたことでさまざまな波紋が生まれています。
ランドセル……アメリカではランドセルっていわなくて、バックパックっていうんですが、中身でいちばん重いのは、教科書ですね。
それで、カリフォルニアでは教科書を持ち運ばなくていいようする動きさえ出て来た。
ハメットという町の教育委員会で決めたことなんですが、子どもたち1人ひとりに教科書を2セットずつ支給することにしました。そうすれば、同じもの家と学校に置いておけるから、バックパックに詰めて運ばなくてもいいわけですね。
まあ、こういうことができるのは、裕福な町の教育委員会に限られますが、法律ができて慌てているのは、教科書会社だそうです。
カリフォルニアって大きな州で、ここで使われて教科書は、全米の13%も占めるんだそうです。だから、教科書会社にとっては大事なマーケットで、ここを無視するわけにはいかない。
そこで、超軽量紙に印刷するなど、対策に頭を痛めているそうです。
簡単なのは、1冊の教科書を何冊かに分割することですが、そうすると値段が15%も高くなる。値段を高くしても買ってくれればいいんですが、買ってくれない可能性も大きい。
ほかの州のこともあるし、はてさてどうしたものやらと、アタマを抱えているそうです。
こうした重いバックパック(ランドセル)追放の動き、実はカリフォルニアだけではありません。全米に広がる運動になろうとしているですね。
ニュージャージー州やマサチューセッツ州でも州議会で、同じような追放令を審議している。
これが進むとどういう事態が起きるか?
そらくは教科書のCD化、あるいはネットで好きなときに好きなだけ読んだりダウンロードできる「ヴァーチャル教科書」の誕生へと行き着くはずです。
重いバックパック、ランドセルの追放は、教科書の姿を一新する、革命的な可能性を秘めているわけです。
ところで、アメリカの教科書って立派なんです。日本の検定教科書と比べると、厚さがだいぶ違う。だからバックパックの重さが問題になるんですね。
しかし、薄っぺらなものとはいえ、日本の教科書の重さも結構なもの。そろそろ、対策を考えるべき時期かも知れません。
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受験生諸君 「スピルバーグ効果」、知っていますか?
2003年、新しい年。
大学進学を目指す受験生諸君にとっては、暮れも正月もなかったのではないでしょうか?
されど、されど、やはり「受験」。大学進学が、何か、人生最大の岐路、これで人生が決まってしまうと思い詰めている諸君も多いかと思います。
そんな受験生、あるいは受験生を持つ親御さんのための話題を用意しました。
受験生必見(聴)の「スピルバーグ効果」に関するお話です。
「スピルバーグ効果」……耳慣れない言葉ですね。ご存知の方はたぶん、いらっしゃらないのではないでしょうか。
スピルバーグとはあの世界的に有名な映画監督のこと。その名前を借りて「スピルバーグ効果」って言葉をこしらえたのは、アメリカのプリンストン大学の研究チームなんです。
デールさんとクルーガーさんという2人の研究者が、名門大学に入学できなかった人たちがその後、どんな人生を歩んだか、追跡調査をしたんですね。
その結果、たとえばハーバードやプリンストンといった一流の名門大学、有名大学にすんなり合格した人よりも、アプライ(受験申請)をはねられた人の方が、より成功した人生を送る、ってことがわかったんです。
で、発見したこの事実、真実に「スピルバーグ効果」って名前をつけた。
実は、あのスチーブン・スピルバーグ監督って、有名大学受験失敗者なんですね。
カリフォルニア州サンノゼのサラトガ高校ってところから、UCLA(カリフォルニア州立大学ロサンゼンルス校)の映画学科を受験するんですが、受け入れてもらえなかった。
そこで仕方なしに無名大学のロングビーチ州立大学に入るんです。
そしてそのあと、これも有名な南カリフォルニア大学を受けるんですが、これも不合格だった。スピルバーグ監督って、だから、すごい落ちこぼれだったわけです。
でも、彼には才能と粘りがあった。ロングビーチ時代に制作した映画が評判になって、直接、ハリウッドからお呼びがかかるんです。
有名大学から拒絶されたことに負けなかったですね。
この話、実はワシントン・ポスト紙の教育コラムニストのジェイ・マシューズさんの記事で教わったですが、プリンストンの研究チームの暫定的な仮説によれば、有名大学に合格することより、そういう難関に挑戦したこと、狭き門を目指したことで、その人はすでに名門大学レベルの「素材」になっている。だから、あとはブランド名に頼らず、自分で自分の人生を切り開けばいい、ってことらしいんです。
つまり、挑戦したことですでにその人は「逸材」であり、その才能、可能性を伸ばすかどうかは、その人の考え方と努力しだい、だというんですね。
マシューズ記者はこうしたスピルバーグ効果の典型的な例として、グレッグ・シーグマンさん(30歳)のケースを取り上げています。
シーグマンさんはシカゴ郊外の高校に在学していたころ、超優等生でした。だから、当然のように、ハーバードやスタンフォードといった名門大学にアプライした。
でも、結果はすべて不合格。
いったいとどうしてこんなことに、と調べたら、推薦状を頼んだ高校の先生が「この生徒はおたくの大学ではついていけません」って書いていたことがわかったですね。
それを知ったシーグマンさんは呆然自失、ガッカリもいいところだったといいます。
でも、彼は負けなかった。プレーリー大学っていう地元の無名大学に進んで、卒業後、レストランのドアマンをしながら、代理教員として学校で教えたりしているうち、自分と同じように、一流大学に入れなかった若者のための食事会(ブランチ)を組織し、たがいに励ましあう場を作った。
自分自身は、これまた超一流とはいいがたい、ニューオルリ-ンズにあるトゥレーン大学(あのベストセラー作家のジョン・グリシャムもたしか、ここの出身ですね)に進学。さらに、こんどここそ、名前の通ったノースウエゥタン大学を優等の成績で卒業するんですね。
でもシーグマンさんは、ノースウエスタンの卒業式に出なかった。ブランド大学の卒業証書を手にすることのつまらなさ、はかなさを知ると同時に、自分がなすべきこと、人生の目標を悟ったからです。
シーグマンさんは昨年(2002年)11月10日の30歳の誕生日を機に、「11−10−02財団」というものを自ら創設しました。例の週に一回の食事会を継続する一方、夢に破れながら、それでも夢を見続けようとする若者たちのため、大学奨学金を贈る財団をつくったんです。
有名大学に滑り込みで合格することより、難関に挑戦すること、それ自体に意義がある……これって、日本の私たちに通じる真実のようです。
「スピルバーグ効果」――ことしも、有名大学受験失敗組がゴマンと出るはずですが、そういう受験生たちこそ、人生において自ら輝くことのできる人材、素材なのかも知れません。