(2001/12/19) (47)
南の島から人類救済薬、サモアからエイズ特効薬誕生!
南の島、サモア(Samoa)。火山と珊瑚礁ならなる、南太平洋の楽園です。人口17万人の島国。
その島からエイズの特効薬が生まれました。
サモアの熱帯雨林の木の皮から、抽出された驚異の物質――プロストラチン(Prostratin)。
これがエイズ(HIV)ウイルスを退治する特効薬だということが分かったんです。
薬として出回るのは2003年、再来年になりますが、あと1年とちょっとの我慢。もう少し待てば、世紀の新薬ともいうべき。人類を救済する特効薬が出回ることになるわけです。
それにしても、どうしてサモアからすごい効き目のものが発見されたのでしょう?
その発見に至るドラマを紹介したいと思います。
きっかけをつくったのは、ポール・コックスというアメリカの植物学者でした。
大学で教えていたコックスさんは、いまから15年ほど前、奥さんと4人のお子さんを連れて、サモアに出かけたのです。
楽園で気楽な生活を、と考えたからではありません。
その数年前、コックスさんのお母さんが癌でお亡くなりになりました。
つまりコックスさんは、母親のあだをうちに、癌に効く自然の特効薬を求めて、サモアに渡ったんです。
サモアには手付かずの熱帯雨林があって、そこにきっと特効薬があるはず、そう信じて一家を挙げて移住したわけです。
実はこのコックスさん、青年の頃、モルモン教の宣教師としていちど布教に来たことがあり、サモアのことをよく知っていたのですね。
移住して間もなく、その熱帯雨林が島外の製紙会社によって伐採されかかるピンチが訪れます。コックスさんもまた、村の長老と一緒にブルドーザーの前に立ちはだかって抵抗したそうです。
アメリカの保護団体に呼びかけたりして、ついに熱帯雨林を守る切るわけですが、そんな騒ぎが収まった1988年のある日、現地でママラと呼ばれている木の皮が肝炎などの病気に効くことを知ったそうなんです。
教えてくれたのは、エペネサ・マウゴアさんという女性のヒーラー(病気を治す人)でした。
ママラの木の皮でつくる薬の実際の効き目に驚いたコックスさんは、これはひょっとすると癌にも効くかも知れないと、早速、サンプルをアメリカの研究機関に送ったのですね。その結果、癌にはあまり効かないけれど、エイズにはよく効くことが実験で確認されたんです。
ママラの木の皮に含まれるプロストラチンという物質が効き目の正体だということも突き止められました。
エイズ・ウイルスっていうのは、体の中でいったん姿をくらまし、その後、一気に増殖するのだそうですが、このプロストラチンというのは、エイズ・ウイルスがどんなところ隠れても追い詰めて追い出してくれる。エイズの侵された細胞の分裂を促進し、他の治療薬の効き目を増大させる働きがあるほか、正常な細胞をエイズ・ウイルスから守る働きがあるそうなんです。
コックスさんは友人とともに、このプロストラチンの特許を管理し、薬品化を進めるため、「エイズ研究連合」というNPO(非営利団体)を米国に設立、これまで製薬会社などと折衝を続けてきたのですが、臨床実験も年明け間もなく始まることになり、ついに製品化の道が開けることになったわけです。
このコックスさんが偉いのは、それで金儲けをしようと考えていないことですね。NPOが製薬会社から受け取るお金(利益)の20%を、サモアの人々(サモア政府)に還元するっていうんです。
それだけじゃありません、7%をコックスさんを受け入れてくれた村に、0.4%をいまは故人となった、歴代のヒーラーの遺族に贈るそうなんです。
いわば「第1発見者」であるサモアの人々……とりわけヒーラーの人たちに恩返しをしよう、ママラの木の皮にプロストラチンが含まれることを、ちゃんと知っていたサモアの島民に敬意を表し、きちんと利益を分配しようというわけです。
いい話ですね。でも、これじゃないんです。
コックスさんは、エイズで苦しんでいるアフリカなど貧しい人々のため、無償で新薬をプレゼントすることも考えているそうです。
南の島サモアから生まれた人類救済・特効薬、プロストラチン。
コックスさんのような純粋でひたむきな人が現われたからこそ、神様はそっと、その特効薬の在り処を教えてくれたのかも知れません。
(2001/12/18) (46)
ジンジャーが行く
「ジンジャー」ってご存知ですよね。知る人ぞ知るで、知ってる人にとってはちっと新しい話じゃないですが、知らない方も多いはず。なので今朝は、この「ジンジャー」について紹介することにしましょう。
ジンジャーっていうのは開発コード・ネームでして、正式には「ヒューマン・トランスポーター」……
「人間運搬機」っていうんです。
一人乗りの乗り物で、「自動バランス装置付きスクーター」って言う方もされています。
このジンジャーの公開実験が今月3日の月曜日、ニューヨークで行なわれました。それ以来、もう大変な人気。「21世紀のスクーターだ」「これからの都会の足になるに違いない」など、すごい評判なんです。
さすがに、車(自動車)にとってかわるようなものじゃありませんが(いや、部分的にとってかわるかも……)、スクーターとかバイクなんかを時代遅れのものにしかねない、まさに革命的な乗り物として、実用化されようとしているわけです。
発明したのは、ディーン・ケイマンという男の人(49歳)で、ミニ・エジソンというべき有名な発明家なんです。糖尿病患者たちを救うインシュリン・ポンプとか、階段を昇れる車椅子などの実用化に成功した人で、そうした画期的な発明の特許を150以上も持っている人なんですね。
で、この「ヒューマン・トタンスポーター」、「人間運搬機」のジンジャーですが、デザインはとてもシンプルです。
オートバイだと車輪が2個、前と後ろについていますよね。ところがこのジンジャーは左右に車輪が1個ずつついていて、車輪と車輪をつなぐ軸の上の足場に、立ったままで乗るんです。
イメージできるでしょうか? 言い方を換えると、直径40センチほどのタイアをはいた車輪が左右に1個ずつあって、人間は固定されたその2つの車輪をつなぐ横軸の足場(幅は50センチぐらい)にちょこんと乗るだけでいいんです。腰の高さに足場の横軸から突き出したハンドルがあり、立ったままでハンドルを握って、それだけでOKということなんですね。
方向転換は体の重心を移動するだけで、ちゃんとカーブも切れるんだそうです。足場のところについたセンサーが1秒間に100回も、重心の移動を感知し、ジャイロスコープの原理を生かして、無理なく曲がることができるそうです。
動力源はバッテリー(蓄電池)。最高時速は19キロ。6時間の充電で24キロ、走ることができるそうです。充電にかかる電気代は、1日分で10円ちょっと。
階段は無理ですが、ちょっとした勾配なら平気だそう。
遠くまでドライブ、隣の町まで時速60キロで一走りってわけにはいきませんが、都会の足としては十分、使えるんじゃないかって、ぐんぐん評価が高まっているそうなんです。
このジンジャーを、アメリカの郵便局(ポスタル・サービスっていうんですが)、年明けから、実験的に使いはじめることになりました。フロリダ州など2ヵ所で、ジンジャー20台を使った郵便配達実験に乗り出すそうなんです。
オリンピックのあったアトランタ市でも市役所が数十台購入し、テストすることが決まりました。
観光業務に使うんだそうです。
郵便局やアトランタ市が購入するのは業務用タイプで、重さ40キロ、価格が96万円もする機種ですが、一般の歩行者用は重さ30キロ、36万円。
一般用の発売は1年後がめどだそうです。
この調子だと、日本にも再来年あたりには上陸する、でしょうね。
問題は、値段がちょっと高めなのと、歩道の通行が認められるかどうか、はっきりしないことなんだそうです。
歩道走行もオッケイになると、爆発的に普及することもあり得るそう。
日本の警察庁あたりも、道路交通法をどうするか、検討を迫られることになるでしょうね。
ぼくなんかの好みで言えば、自転車で十分ジャン、っていう気がしないでもありませんが……
日本にもジンジャー旋風が巻き起こるか? 注目されるところです。
(2001/11/27) (45)
蒙古海軍 7人の水兵、なお健在!!
NHKの大河ドラマも、いよいよクライマックス……。
蒙古水軍の博多来襲が近づいています。
水軍……今風に言えば海軍(ネイビー)ですよね。
その蒙古海軍が900年近く前、博多沖でカミカゼ(台風)の直撃を受け、壊滅したものと思っていたら、それがどっこい、細々とではありますが、いまだ健在なんだそうです。
でも、北条時宗が戦った当時の蒙古って、ジンギスカンが世界制服を企てた大帝国でしたよね。中国や朝鮮を征服していたわけですから、海軍ぐらい持っていたって何の不思議もありませんが、いまの蒙古――モンゴル共和国は海なんかない「内陸国」。なのに、どうして「海軍」があるのか?
実はモンゴルの北の方に、フヴスグル湖という大きな湖があるのですね。その湖を舞台に、小さな海軍が1920年代から、活動してきたそうなんです。
モンゴルはご承知のように、10年ほど前までは共産主義政権下にありました。中国とも隣合わせていますが、親ソ路線――ソ連寄りの路線を採っていたわけです。
だから、モンゴルの海軍も制服はソ連海軍と同じものを着ていたし、いまでも着ているわけです。
そういうモンゴル海軍って、どのぐらいの規模を誇っているのか?
エンジンのついた動力船はたったの1隻、スークバータール号。兵員はわずか7人という、超ミニ海軍なわけです。
指揮官というか、リーダーはバトバヤン大尉。
7人のなかでは、このバトバヤンさんだけが、泳げるんだそうです。他の6人は、みなカナヅチ。
おまけに、バドバヤン大尉以下、全員が海を見たことがない。
なんだか、みんなで応援したくなるような、頼りない海軍ですね。
鎌倉時代の蒙古水軍とは比べものにもなりません。
このモンゴルのミニ海軍、フヴスグル湖でどんな活動をしていたかというと、別に軍事行動をしていたわけでなく、石油の輸送任務にあたっていたそうです。北岸のソ連の石油基地から、モンゴル国内に石油を輸送するのが、最大、唯一の任務でした。石油を満載した3隻のバルジを引っ張って、湖を南北に縦断する、125キロの兵站活動。そんな輸送活動に年に100回も従事していたそうです。
そんなモンゴル海軍が民営化されたのは、1997年のこと。石油輸送も代替ルートができてしまって、追い詰められてしまった「7人の水兵たち」ですが、全員、根っからの「海の男」―いや、湖の男たち、おれたちが辞めてしまったら誰が船の面倒をみるんだ、やっぱり、ここで生きるしかないって、踏みとどまって、いまなおがんばっているんだそうです。
それで、いま何を仕事にしているかというと、時々やって来る、観光客の湖ツアーの案内役なんだそうです。
湖めぐりを終えたあとは、湖畔でジンギスカンのバーベキュー。そこで、モンゴル海軍に伝わる船乗りの歌を歌うんだそうです。「空色の湖、鏡のような湖水をよぎってスークバータール号は行く」って歌詞なんだそうです。
そういう「7人の水兵」にも、実はでっかい夢があるそうです。
モンゴルは内陸国ですが、中国の天津の港まで鉄道が延びてるだそうです。その天津の港を拠点に、海運事業に乗り出したい、って言うんですね。
いずれモンゴルの旗をはためかせて、7つの海を駆け巡りたい、そんな夢を抱いているんだそうです。
ますます、応援してあげたくなりますよね。
実は7人のうちの1人が、旧ソ連に留学して、外洋の航海術を勉強したことがあるんです。ほんとうは「魚の養殖」(コード番号1012)を学ぶはずだったのが、ソ連側の手違いで「航海術」(同1013)を勉強することになった。抗議したけど、とりあってくれなかったんだそうです。
でも、その知識がこれから生きることになるかも知れない……。
けなげにガンバル「7人の水兵たち」を、いちどでいいから海を見せてあげたいですね。
福岡市あたりが、彼らを招待してあげられないかしら?
(2001/11/20) (44)
ビン・ラディンは核を持っているか?
パキスタンの有力紙「ドーン」が、ビン・ラディンとの単独会見の内容を掲載、核を保有しているとの発言を紹介したことで、このテロリストがほんとうに核爆弾を持っているのか、世界中の関心が集まっています。
持っていたらそれこそ大変です。核によるテロリズムの可能性があるわけですから。
このビン・ラディン発言を受けて、フーンというイギリスの国防大臣が英BBCの番組で、大変なことを言いました。聞き流せない重大な発言です。
ビン・ラディンには核爆弾の製造能力はない、という発言なんです。世界中の不安を静める狙いだったのでしょうが、一言、多かった。「ビン・ラディンは核兵器に転用できる核物質は持っているだろうが…
…」と、思わず口走ってしまったんですね。
ビン・ラディンが兵器レベル(ウェポン・グレード)の核物質を持っている……これって実は深刻なことなんです。
核物質(おそらく、濃縮ウラニウムとかプルトニウムを指しているのでしょうが)があれば、核爆弾はつくれなくとも、ふつうの爆弾と一緒に爆発させることができる。そうすると。周辺を放射能で汚染できるのですね。核物質を使う、こうしたやり方を「ダーティー爆弾」っていうんです。
ビン・ラディンはふつうの爆弾を持っているし、造れるはずですから、フーン大臣の発言は、「ダーティー爆弾によるテロがある可能性があります。みなさん、怖がってください、不安になってください」と言ったも同然なんです。
それでは、ビン・ラディンは核物質をどこから入手したのか?
この疑問に対する答えはひとつ。パキスタンでなければ、ロシアですね。それも、どちらかというと、ロシアから流れ出た可能性が強そうです。
チャールス・カーチスという西側専門家によると、ロシアからの核物質流出問題は「仮説」……仮定の問題じゃなく、すでに現実の問題なんだそうです。つまり、現に起きている。
たとえば、これは未遂に終わったことですが、ウラル地方のロシアの核施設から、高度に濃縮されたウラニウム(これをHRUといいます)が18.5キロが横流しされかかったことがあるそうです。
あるいは、これは旧ソ連のグルジアで昨年、起きたケース。HRU1キロ近くの盗難未遂事件が起きたんだそうです。
発覚していないものもおそらく、あるはず。そう見るのが自然ですね。ビン・ラディンのアルカイーダが金に糸目をつけず、ひそかに買い取って保管している……事実はたぶん、そういうことなんだと思います。
では、なぜ、ロシアから核物質が流出するのか?
旧ソ連崩壊後の社会混乱が最大の要因です。ロシアにはいまも、10ヵ所の核兵器を開発する秘密都市があって、75万人が暮らしているそうです。そのうち、科学者は10000万人から25000人。
各施設のフェンスは破れ、ドアに鍵がかかっておらず、警備員も給料が十分、支払われないので、どこかに行っちゃっている、というような状況も、一部かどうか知りませんが実際にあるんだそうです。
保有する核物質(これは核兵器化されたものを除く数字ですが)も膨大で、なんと600トン。
これはロシアが保有する、核ミサイルなど核兵器4000基分の核物質量と同じ数量なんだそうです。
これでは、流出しないほうが不思議ですね。もっとも、ロシアのプーチン大統領は「根拠のない伝説だ」といって否定していますが……。
ビン・ラディンは保有している核物質をどんな形で使おうとしているか?
アフガンの戦闘にはおそらく、使わないでしょう。ダーティー爆弾をアフガンの戦場で使えば、汚染されるのは自分たちの土地だし、爆発させても米国の地上軍がいなければ、何の意味もありません。
使うとしたら、やはりテロでしょうね。
でも、アメリカのたとえばニューヨークで爆発させれば、たいへんな被害が出る。米軍の核の報復もある。
とすると、使うとしても最後の最後、よほど追い詰められたときでしょう。
使われないことを祈るのみ、です。
最後に、ロシアの核物質の管理強化についても、これを機会に見直さなければなりません。
実はアメリカが濃縮ウラニウムを買い込んで、原発の燃料の転用するプログラムも進んでいるのですが、なかなかはかどらないそうです。
核という悪とテロという悪。2つの悪の除去が、21世紀国際社会の課題です。
(2001/11/07) (43)
どうなるパキスタンの核爆弾 オペラ作戦・第2弾、発動か?
アフガンへの攻撃続行で、隣のパキスタン情勢に世界の注目が集まっています。
なによりも、パキスタンの核爆弾に。
この国でビン・ラディン支持の反米デモが吹き荒れています。
米国に追随し、生き残りをはかるムシャラフ政権。それがいつまで持つのか、わからない状況になっています。
政情が不安定化するなかで、核爆弾はどうなっていくのか?……この1点に、世界の関心がピンポイントで注がれています。
アメリカに『ニューヨーカー』というクオリティー・マガジンがあります。その高級雑誌に、セイモア・ハーシュがまたまたすっぱ抜きの特だね記事を載せました。
セイモア・ハーシュ……米国のフリー・ジャーーナリスト。
ご存知の人はあまりいないと思います。
でも、この人、ジャーナリズムの世界では知らない人はいない、たいへんな敏腕記者です。フリーになる前は、ニューヨーク・タイムズの特だね記者として鳴らした人です。
ベトナム戦争のときの「ソンミ事件」(米軍による住民虐殺事件)をスクープしたのも、この人。日本がらみでは、サハリン沖での大韓航空機撃墜事件を調べあげ、『目標は撃墜された』という本を発表、真相に迫っています。
このハーシュ記者が、『ニューヨーカー』で、こんな暴露記事を書きました。
アメリカとイスラエルの特殊部隊が共同で、パキスタンの核を「奪取」する作戦の訓練を続けているというのです。
パキスタンでクーデターが起き、ムシャラフ政権が倒れ、イスラム過激派寄りの政権ができたら、そのとき、作戦を実行する。パキスタンの核爆弾を持ち出すとともに核施設を破壊し、過激派の手に渡らないようにする、という狙いだそうです。
実はこのハーシュ記者、以前、『サムソンの選択』という本を書き、イスラエルの核武装の実態を暴露したこともあって、中東や核の問題にも詳しい人。
だから『ニューヨーカー』の記事は、「事実」とみるほかありません。パキスタン情勢が今後、ますます流動化したら、クーデターが起きる前にも作戦は決行されるかも知れませんね。
そこで問題は、パキスタンが現在、核爆弾をどれぐらい持っているか?……です。
米国エール大学の権威ある専門家、ナヤン・チャンドラ氏によれば、ヒロシマ型の半分の威力のあるのを25発前後、保有しているらしい。
ミサイル搭載の核弾頭ではなく、戦闘機で運ぶ核爆弾だそうです。
98年5月、核実験に成功したパキスタンの核開発のメッカは、イスラマバード郊外、カフタ(Kahuta)にある「カーン研究所」。
パキスタン原爆の父といわれるカーン博士の名を冠した核製造施設です。年にラクラク、核爆弾6発分の濃縮ウランを製造する能力を持っているそうなんです。
この研究所で指導的な立場にあった科学者が、メムードという科学者が他の2人の科学者とともに、最近、パキスタン政府に逮捕されました。
このメムードという人は「聖なるコーラン財団」を開設する、イスラム原理主義の核専門家。アフガンにもたびたび通っていたそうです。
取り調べには米国CIAも加わり、ビン・ラディンに核爆弾、あるいは核物質が流れていないか、事情聴取が進んでいるそうです。
核爆弾でなくても、核物質をふつうの爆弾で爆弾させれば、放射性物質が飛散して、核爆弾に近い効果を上げることができる(これを「ダーディー(汚い)爆弾」というのですが)……だから濃縮ウランやプルトニウムといった核物質の管理にも注意しなければならないわけです。
ところで、イスラエルとアメリカの特殊部隊の「パキスタンの核・一掃作戦」が実際に行なわれるとすると、どうなるか?
たぶん、核爆弾の備蓄基地を急襲して大型輸送ヘリなどで国外に持ち出すのでしょうが、同時に、さっきの「カーン研究所」といった施設を空爆などで徹底して破壊するはずです。
実際にイスラエルは、戦闘機によるミサイル攻撃で核施設を破壊する作戦を、すでに1度、決行し、成功しています。
「オペラ作戦」といって、1981年7月7日、戦闘機8機を飛ばし、イラクのバクダッドの郊外にある核施設を徹底破壊したのですね。
この攻撃が失敗していたら、イラクは核武装に成功していたのではないか、と言われています。ヒロシマ型5発分の濃縮ウラニウムを、核の原料として運び込まれようとしていたのを察知して、予防措置に出たのだそうです。
そのときの攻撃隊の隊長が、なんと現在、アメリカ駐在イスラエル大使を務めるディビッド・アイブリー氏。
歴史は繰り返すといいますが、今後どうなるか、被爆国・日本のわれわれとしても気になるところです。
(2001/10/17) (42)
エジプトのスラムに灯る希望の光 社会を底辺から建て直すプロジェクト
全世界を揺るがした同時多発テロ事件。ニューヨークの世界貿易センタービルなどに、イスラム過激派によるハイジャック機が突っ込んでから、もう1ヵ月以上が経ちました。アフガニスタンでは、ビンラディン率いる「アルカイダ」と、それを支援するタリバン退治で、米英の空爆が続いています。
世界貿易センタービルの北タワーに自爆攻撃をしたテロリストのリーダーは、アッタというエジプト人でした。33歳。おそらく操縦桿を握っていたものと見られています。
エジプトのカイロ大学工学部の出身。卒業後、ドイツのハンブルク工科大学に留学、都市計画の研究をしていたエリートです。父親はカイロの弁護士。2人いるお姉さんは大学の教授と医者という、良家のひとり息子でした。
その彼がドイツ留学中に、過激思想に染まっていく。ニューヨーク・タイムズ紙の調査報道によると、イスラム原理主義者となったのは留学中のことで、この頃、アフガニスタンのビンラディンの軍事キャンプで訓練を受けたそうです。
アメリカ憎し、アメリカと結託したアラブ支配層憎し……アッタ容疑者もまた、そんなテロリストの怒りを燃やし、貧困といった社会的な不正義をなくそうと、彼なりにテロリストの悲しい決意をかためていったのでしょう。
ムバラク政権が親米路線をとるエジプトもまた、社会的な不平等が際立った国です。金持ちと貧乏人の落差がとても激しい。アッタ容疑者は、エリート階級の一家の生まれですから、裕福な家の子である自分が許せなかったのかも知れません。
しかし、それにしても、あんなバカなことはするべきでなかった。せっかく都市計画を勉強していたんですから、できればその知識を社会改革に役立ててほしかった。残念でなりませんね。
そう思ったのはほかでもありません。アッタ容疑者が生まれ育ったエジプトに首都カイロで、底辺から社会を建て直していく、コミュニティーづくりのプロジェクトが、世界の関係者が注目するなか、いま始まろうとしているんです。まさに草の根からの街づくり、底辺からの都市開発……アッタ容疑者の「都市計画」と大いに関係するプロジェクトが緒につくこうとしているのです。
カイロに50万人の貧民が住む大きなスラムがあります。マンシエット・ナスールという有名なスラムです。スラムの南にカイロのごみ捨て場があって、そこにザバリーンというごみ拾いが群がり、命をつないでいく。
このスラムが形成されたのは、30年ほど前から。カイロに行けばなんとかなると、田舎で食いはぐれた人たちが流れ込み、勝手に自分で家を建てて行ったんですね。
脱貧困の再開発プロジェクトが始まろうとしているのは、マンシエット・ナスールのなかの「エズベット・バーキイト」地区。ドイツの開発NGO、「GTZ」のメンバーがこの地区に乗り込んで、南米ペルーの経済学者、フェルデナンド・ソト氏のアイデアを実地に移そうとしています。
それがどんな仕組みかというと、不法に建築物を建てた居住者に「自由保有権(Freehold)」という権利を与えるんです。違法な建築であっても持ち主に変わりないので、自分のものだという権利を認めてあげるんですね。そうすると、その建物を担保に、お金を借り、そのお金でたとえば底地(土地)を買い取ることができる(そうなると、晴れてオーナーになるわけです)。あるいは事業を立ち上げて、お金を回転させていく。
そうした回り始めたマネーを使って、地区の道路整備や学校建設など、地域づくりに充てていく、というプロジェクトです。
ぼく(大沼)は1990年当時、新聞社の特派員としてカイロに住んでいて、カイロ大学工学部の前を車でしょっちゅう通っていました。アッタ容疑者がちょうど、カイロ大学を卒業する頃のことですね。ぼくはもちろん、アッタ容疑者とあったこともありませんが、自爆テロになんか走らないで、せっかくの命をどうしてもっと建設的なことに使えなかったのか……残念でなりません。
ハイジャックのカミカゼ体当たり攻撃で貧困はなくなりません。
同じイスラム圏のバングラデシュでは、「グラミン銀行」という、貧しい人から、それも女性を優先して無担保でお金を貸す「民衆銀行」が大成功を収めています。
草の根の現場から、底辺のその場所で、社会をよい方向へと築き上げていく。その仕組みを考え、プロジェクトとして現実に動かしていく。
この方が実は大事であり、まっとうな道筋ではないでしょうか?
テロ法案の審議も重要なことですが、テロの狂気や憎しみが育たない、社会的な土壌づくりはさらに重要なことでしょう。
小泉首相や真紀子外相には、カイロのスラムのプロジェクトや、バングラデシュの民衆銀行をサポートするといった、より実のある国際貢献を考えてもらいたいですね。
(2001/10/10) (41)
愉快な 愉快な ニセ(IG)ノーベル賞
ノーベル賞のシーズンです。西澤潤一先生(前東北大学学長、現岩手県立大学学長)、気になりますね。
なんといっても、光通信を発明した、日本のノーベル賞最有力候補、ことしこそ、ぜひ受賞してもらいたいですね。
ところで、このノーベル賞に対抗して、「IGノーベル賞」というのがあるってこと、ご存知ですか?
IgNobelこれって、英語でいうとノーベル(高貴な、高潔な)の反対語、「不名誉」そのもの、といった意味なんです。
ノーベル賞といったら、たいへんな名誉なんですが、このイグ・ノーベル賞は不名誉の代名詞。
といって、イグ・ノーベル賞に選ばれることも、ある意味でとても名誉なことなんです。
なんといっても「誰も真似することのできない、誰も真似すべきでない」科学的な成果に贈られる賞なんですから。
ひとことで言えば、ノーベル賞のユーモア版、おかしなおかしな業績に対して毎年、贈られているんですね。
審査機関は、米国のハーバード大学が出している科学ユーモア雑誌の「あり得ない科学年報」誌。
こんな愉快な雑誌が、過去1年間、世界で発表された、「真似もできない、真似すべきでない」研究レポートを洗いだし、そのなかから、これはハンパじゃない、これって本当にすごいっていうのを各分野で選んでいるんです。
さて、ことし2001年のIGノーベル賞、その授賞式が今月の4日、ハーバード大学のサンダース劇場で開かれました。
ことしの受賞者は10人、そのうちに7人が、なんと自費で授賞式に出席したそうです。
IGノーベル賞って、つまり、ただの不名誉賞じゃないんですね。ある意味では名誉なことなんです。だから、式にわざわざ駆け付ける。
他の人がやらないことに挑戦するって、大事なことじゃないですか。それが認められたわけだから、身銭を切ってでも授賞式にやって来る。認められて嬉しいんです。
当日は会場に1200人もの学生や研究者が集まって祝福したといいますから、相当なものです。
さて、ことしのIGノーベル賞、どんな人が受賞したかというと、まずは「平和賞」。
リトアニア(バルト諸国)のマリナウスカスさんに贈られました。「スターリン・パーク」というテーマパークをつくったのが、授賞理由です。
粛清、粛清で反対派を殺しまくったあのスターリンの悪行を、旧ソ連に支配されていたリトアニアでバラしてみせたというのが評価されたんですね。これは凄い。
お次は「経済学賞」。アメリカのミシガン大学とカナダ・ブリテッシュ・コロンビア大学の経済学者が共同受賞しました。死亡したとき相続税ってのがかかりますよね。で、長生きすると相続税率が軽減されるとわかったなら、長生きする方法を見つけ出す人が必ず現れるって、証明してみせたそうです。
「公衆衛生賞」も負けてはいません。インド・バンガロールのインド人学者が「鼻毛抜きは全世界の若者に共通した現象である」ことを突き止めたんだそうです。ご苦労様、というしかありませんが
「医学賞」はカナダの学者にもっていかれましたね。モントリオールのマックギル大学の研究者が受賞しました。「頭上に落下したココナッツの実でどんな怪我をするのか」突き止めたというのですから、これまた太平楽です。
すごいのは「宇宙物理学賞」です。これはもう、極めつけですね。「地獄」がこの宇宙のどこにあるか、突き止めた人が、アメリカのミシガン州にいるんです。
それによると、地獄ってブラックホールにあるんだそうです。地獄の科学的要件を満たす場は、この宇宙にブラックホールしかないって論文を発表したっというんです。この人で、きっと極楽に行くんじゃないんですか。
まあ、ざっとこんな調子なんですが、このIGノーベル賞、1991年の創設で、ことしで11回目を迎えた新しい賞なんです。ユーモアと同時に痛烈な皮肉、批評もあって、年々、評判が高まっているんですね。
皮肉というか諷刺の代表例は、1996年の「平和賞」。フランスのシラク大統領に贈られているんです。
授賞理由は、ヒロシマ50周年をムルロア環礁での核実験で祝った男だっていうんですね。
日本の佐藤栄作さんも、ほんとうはこのIGノーベル平和賞ぐらいでよかったんですね。あれは間違いだったなんて、本家本元のノーベル賞関係者から言われなくすんだのに。
こうした諷刺の対象は別として、ほかの授賞者はみな、大真面目でひとつことに取り組んだひとたちだから、バカにしてならないんですね。
研究とか発明って、こうしたところから生まれるものなのじゃないでしょうか?
西澤潤一先生が色紙に書く言葉は、いつも同じ。いつも、どこでも、こう書くのだそうです。
「愚直一徹」
ガラスのファイバーのなかを光を通して通信するだれも考えつかなかったことを考え出したわけですから、これまた凄いことですね。
このIGノーベル賞の授賞式では、ほんもののノーベル賞の受賞者がメダルを渡すことになっています。
西澤先生には1年でも早く、ほんものノーベル賞を受賞していただき、IGノーベル賞の授与者役を演じていただきたいですね。
(2001/10/2) (40)
シカゴ 読書の秋 1冊の本
秋です。読書の秋。
秋の夜長に、本のページをめくる。活字の世界にひたって、想像を膨らます。
読書家の季節がやってきました。そこで、読書にまつわる話題をひとつ。
アメリカはシカゴ。五大湖地方を代表するこの街は、ニューヨークに次ぐ、全米第2の都市です。シカゴというと、マフィアのアル・カポネなんかを連想する方も多いと思いますが、自由の精神がみなぎる、とても文化的な都市なんです。
アメリカの性文化を改革したという、あの「プレイボーイ(Play Boy)」誌も、ここシカゴで発行されています。
オプラ・ウィンフリーという、全米最大の読書クラブを主宰する黒人女性もここにいて、全米放映のテレビ番組でメッセージを発信しています。
昔、南部の黒人たちが奴隷制を逃れて脱出してきたのも、このシカゴ。
だから、黒人運動指導者のジェシー・ジャクソン師なんかも、この街に住んでいます。
さて、そういう土地柄のシカゴで今月(10月)の8日から12日まで、ライブラリー・ウイーク(図書館週間)が開催されるのですが、ことしから、とっても面白いイベントが始まったんです。
「ワン・ブック ワン・シカゴ」っていう読書プログラムです。日本語に訳せば「一冊の本 ひとつのシカゴ」……読書の秋、シカゴの街はこの一冊の本を読んで、ひとつにまとまります、って行事なんです。
シカゴこの一冊運動といってもよさそうなこのプログラム、実は市長のリチャード・ダレイさんが音頭を取ってはじめたんですね。シカゴ市民が読むにふさわしい名著を毎年、1冊選んで、みんなで読んで行こう、という市民読書運動なんです。
最初の「シカゴこの1冊」に選ばれたのは、「To Kill a Mockingbird(ものまね鳥を殺す)」っていう、アメリカではとても有名な小説です。
現在、75歳になる女流作家、ハーパー・リーさん作品。1961年の「ピュリッツァー賞」を受賞した、名作中の名作。映画にもなって、こちらはアカデミー賞です。
1930年代の南部アラバマが舞台。白人女性をレイプしたと濡れ衣を着せられた黒人男性について、スカウトという6歳の少女の目を通して語られる物語です。
これをシカゴ市長が「この1冊」に選んだんですね。
この本はアメリカで5本の指に入る、超人気のロングセラー。シカゴ市の図書館ではこれまで、全館合わせて1500冊、蔵書していたそうですが、貸し出し増に対応するため、新たに2000冊を追加したそうです。
本屋さんもペーパーバックを山積みにして売っている。
弁護士会の弁護士さんたちも、この本に出て来る法廷での場面を法廷劇に再現して上演したり、シカゴ市主催の文学シンポジウムも開かれるそうです。
すごいイベントですね。1冊の本が人口700万人の大都市をひとつにつなぎ、心を揺さぶるわけですから。
日本もまた読書の秋。出版社の編集長やってるから言うわけじゃないですが、県知事の浅野さんや仙台市長の藤井さんあたりが音頭をとって、「宮城・この1冊」とか「仙台・この1冊」運動を呼びかけてほしいものです。
宮澤賢治だって、島崎藤村だって、井上ひさしさんだって、候補作はいろいろあります。
藤村の「まだあげそめし前髪の 林檎のもとに見えしとき」っていう有名な詩だって、あれ、実は仙台駅の駅裏あたりのことなんですよ。
(2001/9/11) (40)
ブッシュ政権、本格介入 米中インターネット戦争 新局面へ
アメリカと中国のインターネット戦争が新局面を迎えています。
サイバースペースで繰り広げられる情報戦争、CyberWar。それが日常化し、実はどんどんエスカレートしてるんですね。
で、新局面、というより、戦局はどうなっているか、ということですが、アメリカ政府が、中国政府によるネット接続妨害作戦を打ち破るため、本腰を入れ始めています。
本格介入ですね。
中国当局によるネット接続妨害とは何か?
たとえば、北京に住むパソコン・ユーザーが、中国(自分の国)に関する「西側情報」をネットでゲットしようとします。そして、アメリカの新聞のWEBサイトへアクセスする。
ところが、これがつながらないんですね。中国政府がブロックしてるんです。
ニューヨーク・タイムズの場合、8月初めまで接続妨害されていたそうです。江沢民総書記が同紙のインタビューを受けてからつながるようになりました。
でも、中国政府が「これは人民には見せられない」と決めたサイトは、ブロックがかけられたままです。
「アメリカの声(VOA=ボイス・オブ・アメリカ)」というのをご存知でしょうか? 中国向けに中国語でラジオ放送している、アメリカ政府の機関ですが、この中国語WEBサイトも接続妨害されているんですね。
そこで、ブッシュ政権が何をし始めたかというと、「抜け道サイト」をいっぱい用意する作戦に出たんです。
カリフォルニア州にある「SAFEWEB(セーフウェブ)」というベンチャー企業(これはCIA、つまり中央情報局がスタートアップ資金を出したといわれてます)に、国際放送局という政府機関から資金を投下、中国のネット・ユーザーが「抜
け道」を通じて、どこへでもアクセスできるよう、体制固めを始めたんですね。
米国サイドからみれば、「抜け道サイト」を通じて、中国本土にどんどん情報を流し込み、「民主化」を一気に進めようというわけ。
VOAでは、電波妨害されている空中波に代わって、中国語のインターネット・ラジオ放送を送り込む方針だといいます。
セーフウェブの「抜け道サイト」のサーバーは、現在、100基あるそう。
これをどれくらい増やすか、明らかにされていませんが、アメリカ政府のプロジェクトとしてやるわけですから、おそらく相当な数になるでしょう。
これに対して、中国政府がなんらかの対抗策に出ることは必至ですが、ネットによる情報自由化、ネット上での自由な情報の流れを永遠に食い止めることは不可能なこと。
米中インターネット戦争は、たぶん、米国側の勝利に終わるのではないでしょうか?
中国政府がいくら情報統制したくても、できなくなる状況が生まれつつあるわけです。
ネットが、いまの中国の体制を崩壊させることだってあり得ないことではありませんね。
(2001/9/5) (39)
「大魔神ドール」も、デビュー
久しぶりにマリナーズ情報、まずはイチロー選手の話題から。例によって、シアトルの現地紙、シアトル・タイムズの関連記事をチェックしてみました。
イチロー選手の話題は山のようにあるんですが、以前、紹介した「イチロー人形(ドール)」ブームの「続き」をお伝えしたいと思います。
7月28日の「イチロー・デー」で、「イチロー人形」が2万個、セーフコ球場でファンにプレゼントされました。先着順で配られたのですが、試合開始の1時間も前に底をついてしまったことは、この前、お話した通りです。大変な「お宝」なんですね。
だから、ネット・オークションに早速、登場しました。それも、その日の試合開始前に。
で、こうした「イチロー人形」ブーム、いま、どうなっているかというと、下火になるどころか、ますます燃え盛っているのですね。
現地に「セーフウェー」という、スーパーのチェーンがあります。それが、特注の「イチロー人形」を、ワシントン州内の全店で売り出したんです。
8月21日の水曜日のこと。発売開始時間は、午前7時(24時間営業ですから、こういう時間設定も可能なんですね)。
この「セーフウェー」オリジナルの「イチロー人形」、背丈は18センチほど。
「イチロー・デー」で、球団が配ったものより、ほんのちょっとだけ、小ぶり。お値段は11ドル99セント(この99セントというあたりが、スーパーらしいですね)、日本円で1500円という価格設定でした。
これがどんな売れ行きだったかというと、たとえばカークランドというところにある「セーフウェー」では、朝の6時から、ファンが詰めかけたといいます。
そんな調子で、3万個が、この日の午後までに売れてしまったそうです。あっと言う間に。
そして例によって、その日のうちに、ネットオークションのセリにかけられたそうです。最高40ドル程度で取引されているそうですが??
ところで、いよいよ、遂に「真打」登場!!―――イチロー選手に続いて、大魔神・佐々木投手の「ドール」が、セーフコ球場で配られることになったそうです。
プレゼントの個数は、イチロー選手と同じ、2万個。
8日(土曜日)のゲームを観戦しにきたファンに、先着順で配るんだそうです。
抑えの切り札は、登場のタイミングも心得ていますね。シーズン終盤での「大魔神ドール」の登場です。
日本のファンもゲットしに行きたいところですが、明後日のことですから、ちょっと間に合いませんね。
われらの「大魔神」、佐々木投手の人気も、イチロー選手に負けてはいません。
シアトル・タイムズに、パメラ・アキヤマさん(日系の方ですね)という、33歳の女性ファンの話が出ていました。
彼女にとって、最高の瞬間は、試合前の練習で、佐々木投手に手を振ってもらえるとき。
彼女の最高のお宝は、佐々木投手が吹き込んだ歌のCDだっていうんです。
大魔神はCDも出しているんですね、知らなかった。
パメラさんって方、土曜日の日には、間違いなく「大魔神ドール」をゲットするはずです。前の晩から並んだりして。
こういうファンに守られ、佐々木選手がプレーしている??そう思うとうれしくなりますね。
(2001/8/29) (38)
日本版「タックス・ホリデー」のすすめ
「9月危機」説がささやかれています。「株」は下がるし、国債も値崩れの危機?? 日銀が金融の蛇口をひねって、「円」の大放出に乗り出したはずなのに、このありさま。日本経済は、いよいよもって、剣が峰、切羽詰まってきました。
成り行きを、「世界」が注視しています。日本の経済は世界ナンバー2の規模、それが底割れしたら、世界中が「不況」の谷底に引きずりこまれる、って心配しているんです。
そういうなかで、日本の指導者に対する不信感が高まり、批判が強まっています。
最大の標的は、速水・日銀総裁。
世界経済のオピニオン・リーダーである「フィナンシャル・タイムズ(FT)」紙で、メリル・リンチのチーフ・エコノミストが、痛烈にこきおろすなど、非難の集中放火を浴びています。
金融緩和の発表記者会見での「失言」を批判しているのですね。
デフレを反転させるための金融緩和措置であるはずなのに、当の中央銀行総裁が「これで物価があがるかどうか、私には分らない」と言ったというのですから、あきれてしまいます。
人心を一新するためにも、そろそろ潮時ではないでしょうか? ここらで、たとえばエコノミストの中谷巌氏に、日銀の新総裁になっていただく。そうでもしなければどうしようもないですね。
FT紙には、そういえばこんな記事も出ていました。実は日本の銀行がデリバティブで相当な損失を出していて、実態の公表を引き延ばそうとしている、というんです。不良債権さえ、解決できないでいるのに、こんどはデリバティブでの損失?!
いったい、どうなってるんだ、と叫びたくもなります。
でも、批判をぶつけてばかりいるのも、つまりません。景気回復の「妙手」はないものか、といろいろ調べてみたら、ひとつだけありました。
「タックス・ホリデー」、つまり「税金祝日」を設けて、国民の消費支出を拡大する手であるんですね。
ここでいう税金とは、消費税。消費税を気にせず買い物できる、「税なし祝日」を設定するわけです。
「どこの世界に、そんな、バカなことが?」と、財務省の高級官僚たちは笑うかも知れません。「アホも休み休み言いなさい。税金は休まず、必ず払いなさい」とね。
が、「先例」はあります。どこに? アメリカに。
アメリカでは州(そしてワシントンDC)によって、「販売税(セールス・タックス)」の「ホリデー」をもうけているところがあるんです。時期は8月が一般的。たとえばフロリダ州では、ことしも7月28日から8月5日まで、10日間ぶっ通しで「税なしホリデー」を打ち抜いています。
メリーランド州では、8月10日から16日までの1週間。
ペンシルバニア州では、毎年2月です。ことしは、18日から25日まで8日間、実施されました。
この期間中、5〜7%の販売税(つまり消費税)が免除されるんです。
ただし、全品が無税になるわけではありません。衣類や靴に限って、税を免除するところが多いのですが、ペンシルバニアの場合はちょっと変わっていて、パソコンだけは無税にするっていうんですね。
この「税なしホリデー」、ニューヨーク州が1997年に始めたんですね。それが、各州に広がった。
8月が多いのは、秋の新学期に向け、何かと買い揃えなくちゃならない時期だからです。
日本経済の底冷えのなかで、いちばん深刻なことは、消費が伸びないことです。
「税なしホリデー」は、この消費の低迷を打破してくれるかも知れません。他に妙案がないのなら、ダメもとでやったらいいんです。
「逆転さよならホームラン」にはならなくても、イチロー選手的なバントヒットぐらいにはなるかも知れません。
「プレ構造改革」の記念イベントとして、ことしの歳末あたりに。そう、思い切ってまるまる1ヵ月、ぶっ通し、それも全品目で。つまり、「No(ノー)税月間」です。
小泉首相の指導性に対しても、「世界」から厳しい目が向けられはじめました。
コイズミは日本のゴルバチョフ程度の役回りしか、できないんじゃないか? 日本のペレストロイカに失敗して、途中で失脚する。そこへ、日本のエリツィンが現れ、またまた混乱に拍車をかける、っていう予測さえ出ています。
「タックス・ホリデー」、「No(ノー)税月間」??小泉さん、いかがですか?
(2001/8/8) (37)
海面上昇で、島国が消える?ツバル、全国民集団移住へ
「ツバル」という島国をご存知ですか?
ハワイとオーストラリアの中間にある、赤道直下の太平洋の島国です。
9つの珊瑚礁からなる、トロピカル・アイランド、常夏の島。
「天国にいちばん近い海のオアシス」です。
人口は、わずか1万1千人。主産品はバナナ。南の潮風に椰子の葉がそよぐ、南太平洋の楽園です。
でも、国連の加盟している、れっきとした独立国。ツバル語という、自分たちの「国語」を話しています。ちなみに「今日は」は、「タロファ」。ハワイ語の「アロハ」にとても似ていますね。
そのツバルの政府が先月、オーストラリアとニュージーランドの政府に、全国民というか全島民を受け入れるよう申し入れました。島を脱出して、全員で集団移住する、というんですね。
沈没する船から脱出するように、島を捨て、安全な場所に移住したいっていうわけです。
「ツバル」という、国連加盟の国家がなくなるわけですから大事(おおごと)です。
では、なぜ、天国にいちばん近い、南の島のパラダイスを捨てるのか?
ツバル政府の高官、天然資源・環境省の次官をつとめるラウペパさんは、オーストラリアの新聞、「シドニー・モーニング・ヘラルド」紙のインタビューにこたえて、こう言っています。
「島は穴だらけだ(珊瑚礁の防波堤が決壊し始めている、ということでしょう)。
穴から海水が侵入している。おかげで10年前、15年前になんでもなかったところが、今じゃ、洪水状態だ」と。
高波が島を襲い始め、生活の場がどんどん狭められているんですね。
高波の原因ははっきりしています。
地球温暖化にともなう「海面上昇」――真犯人は、この「海面上昇」なんですね。
極地の氷河が溶けて海に流れ込んでいるのと、水温上昇で海水が地球規模で膨張していることで、海の水位(潮位)が高まっているんです。
ツバルという島国は、最も高いところでも、海抜4.9メートル。この調子でいったら、あと50年で完全に水没してしまうと言われています。
昔、「日本沈没」と映画が大ヒットしましたが、まさに「ツバル沈没」ですね。
地球上にはツバルのような小さな島国が37ヵ国あって、「アオシス(オアシスではなく)」(「小さな島国連合」)っていう組織を結成し、地球温暖化防止を懸命に呼びかけています。
「京都議定書」がもめたときも、必至になって「早期妥結」を叫んでいました。必死になるのは当然でしょう。自分たちの国土が、生活の場が危機にさらされているわけですから。
さきほど、ツバルの主産品はバナナだといいましたが、最近、思いがけない収入源がこの島国に転がり込んできました。インターネットのアドレス(つまり住所)の「ドメイン」ってご存知ですよね。www.なんとか、かんとかと続き、最後に国別コードがつく、例のあれ、です。
日本であれば、www.なんとか、かんとか.jp、イギリスだったら、.ukってわけですが、実はツバルもこの国別コードを持っていて、「.tv」って言うんです。
これが世界のテレビ局の引っ張りダコになっていて、ツバルでは、この「.tv」ってドメインを代理店を通じて売っているんですね。
ツバルが水没し、物理的に姿を消しても、インターネットのバーチャルな世界では「.tv」として残るわけですが、そんなことにならないうちに、なんとかならないんでしょうか?
日本も同じ島国。ツバルの人たちが島を捨てなくて済むよう、救いの手を差し伸べられたらいいな、と思いますね。
(2001・8・8)
(2001/8/1) (36)
イチロー人形、人気高騰
久しぶりにマリナーズ情報、イチロー選手の話題を見ることにしましょう。
例によって、シアトルの河北新報、シアトル・タイムズの関連記事をチェックしてみました。
最近のイチロー選手の話題といったら、やはり、「イチロー人形」ですね。
先週の土曜日(7月28日)は、「イチロー・デー」でした。その名の通り、イチロー選手が主役の日です。対戦相手はミネソタ・ツインズ。
マリナーズ球団では「イチロー人形」を2万個、用意し、先着2万人のファンにプレゼントしたんです。
背丈が19センチ、重さ900グラム。
ボブル・ヘッド・ドール、つまり首振り人形です。
イチロー選手がバットを肩に担いでいる、そんなポーズの人形なんです。髭もちゃんと生えている、けっこう精巧な人形なんですね。
その「イチロー・デー」に、この「イチロー人形」の人気が爆発、ひっぱりダコになりました。
セーフコ球場には前の晩から、数百人のファンが並んだそうです。夜に雨が降ったそうですが、我慢して徹夜で並び続けた。そうして午前10時の開門を待ったんですね。
1人に1個ですが、チケットを何枚も買っているファンは、列の尻尾のところに何回も並び直して、1人で何個もゲットした人もいるそうです。お昼ごろには全部、はけてしまった。
どうしてそんなに、ひとりで何個も「イチロー人形」をゲットしようとしたのか?
儲かるからなんですね。高い値段で売れるからなんです。
地元のハンクさんという人は、1番安い外野チケットを12枚も買い込み、人形をゲットしたっていいます。
アメリカでは「E‐Bay」という超人気のネット・オークション・サイト(インターネットで品物をセリにかけて売り買いする)があるんですが、午後1時5分の試合開始前に、なんと50個もセリにかけられたんだそうです。
最高の落札額は178ドル。日本円で2万2千円ちょっと。そういう値段がついたんだそうです。ハンクさんが示した最低希望価格は50ドルだったそうですから、3倍以上の値段がついたってことですね。
いまのところ、このあたりが「相場」のようですが、時間が経つにつれて、プレミアがついていくんでしょう。
「イチロー人気」が「人形人気」にもなっているわけですが、ご本人の人形についての感想は、「眠たそう」の一言、だったそうです。
クールですね、イチロー選手は。
ところで、この首振り人形、ボブル・ヘッド・ドール、別にイチロー選手だけじゃないんですね。
ホームランを打ちまくっているバリー・ボンス選手なんかの人形も出ていて、メジャーリーグ・ファンの間で、ブームになっているんだそうです。
大リーグのボブル・ヘッド・ブームは、1960年代にも一度、あったそうなんですが、これが3年前、1999年のシーズンに復活して、それ以来、コレクション・ブームが沸き起こっているそうです。
こんどのボブル・ヘッドは中国で生産されたもので、、とても精巧にできているのが特徴。ボンズ選手なんか、耳にゴールドのイヤリングを、ちゃんとつけているそうです。
アメリカではこれまで、この種の人形に8000ドル、100万円という値段がついて取引された記録があるそうですが、イチロー人形の相場がこの先、どこまで上がるか、ちょっと見物ですね。
オールスター人気投票N01の実績に加え、ア・リーグの新人王、MVP、ゴールデン・グラブ受賞なんてことになれば、記録更新も夢ではありません。
実はシアトル・タイムズ紙にはもう、イチロー選手がMVPなどを総なめにした場合、今シーズン、どれぐらいのお金をゲットするか、という気の早い「試算」が出ていますので、その数字も紹介しておきましょう。
マリナーズの年俸を含め、なんと700万ドルに達するんだそうです。
700万ドル、日本円で8億7500万円。
さすが、イチロー、「メジャーリーグのトム・クルーズ」と言われるだけのことはあります。
(2001・8・1)
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(2001/7/25) (35)
ペンギンたちが死んでいく?
地球の「温暖化」というより、「熱地獄化」といったほうがよいような猛暑が続いています。まさに炎天、直射日光を浴びた「温室」のなかにいるようなものです。
私たちの住む北半球はいよいよ夏の盛りを迎えますが、逆に南半球はいまが、寒さのもっとも厳しい季節。真冬なんですね。
南半球に逃げ出したい、飛んでいきたいな、とついつい思ってしまいますが、そうかんたんな話ではありません。「温暖化」の影響は、地球をすっぽり覆っていて、北も南、夏も冬も関係ない段階へ来ています。
その代表例が、ペンギンです。南半球に棲む、この鳥の仲間が「冬」にもかかわらず、厳しい状況に追い込まれているのです。
たとえば、南極に近い大西洋の南シェトランド諸島。ここに棲むアデリー・ペンギンというのが、絶滅の危機にあります。
このペンギン、南極から来る流氷が「命綱」だといいます。
より正確に言うと、流氷に付着した珪藻類を、クリルという、小さな甲殻類が食べて、そのクリルをアデリー・ペンギンが餌にしているんです。ですから、流氷が来なくなると、食糧危機になってしまうんですね。
そういう餌の宝庫の流氷が、地球温暖化で島に届かなくなった。南半球の流氷の季節はこれからですが、仮にことし姿を見せないと、それこそ真剣に「絶滅」を心配しなくちゃならない深刻な事態になるのだそうです。
アルゼンチンの南の果て、プンタ・トンボという海岸には、マゼラン・ペンギンというのがコロニーを営んでいます。このマゼラン・ペンギンのコロニーも、どんどん縮小している。この14年の間に30%も、生息数が減ったそうです。
なぜ、減っているのか? このコロニーを、シアトルにあるワシントン大学の研究者たちが調べているのですが、お父さんペンギンが海にえさ捕りに出て、ある日、そのまま帰ってこない、といった「蒸発」事件が相次いでいるそうです。
オットセイのような外敵もいないのに、突然、消えてしまう。
こうしたマゼラン・ペンギンたちの身の上にいったい何が起きているか、これまで謎だったんですが、最近、原因が判明しました。
毒を持った、赤潮のような植物プランクトンに殺られていたんです。温暖化で海水温が上昇し、毒性のある植物プランクトンが発生、それがペンギンたちを突然死に追い込んでいるそうなんです。
私たちのこの世界(南半球)には、ペンギンが17種類いますが、そのうち10種類がこうした絶滅の危機に立たされています。日本の動物園でおなじみの、皇帝ペンギンもフンボルト・ペンギンも、みな「温暖化」に苦しんでいます。皇帝ペンギンなど、すでに「半減」状況といいます。
先日、ドイツのボンで国際会議が開かれ、温暖化に歯止めをかける京都議定書のルールが正式に合意されました。
これは暑さに苦しむわれわれ人間だけではなく、ペンギンを始め、動物たちにとっても、うれしいニュースですね。
ペンギンたちの生息数が回復すれば、それは「温暖化」が止まった、ひとつの状況証拠になるでしょう。
南半球から、そういう朗報が届くのは、これから何年後のことになるやら。
そのまえに、ペンギンたちが全滅しなければよいのですが????
(2001・7・25)
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(2001/7/18) (34)
ゴースト・ソルジャー
「ゴースト・ソルジャー」。
幽霊の兵士、幽霊のような兵隊……
いまこの「ゴースト・ソルジャー」が、映画の「パール・ハーバー(真珠湾)」並みに、アメリカで話題になっています。
こちらは映画ではなく、ノンフィクションの大ベストセラー。つまり本、新刊書ですね。それが、すごく売れている。
「幽霊のような兵隊」という題名から想像がつくように、戦争を題材としたノンフィクション作品です。それも舞台は、太平洋戦争下のフィリピン。
つまり、日本がらみの話なんですね。日本軍についても克明に書かれている。そんな話が大ベストセラーになっているのに、日本人である私たちが、中身を知らないというのでは困る。
そう思って、早速、原書を入手し、読んでみました。
皆さん、「バターン・死の行進」って聞いたことがおありでしょうか? フィリピンのバターン半島で起きた、戦時中の悲劇です。
真珠湾を奇襲した日本軍はフィリピンにも進攻、コレヒドール要塞を占領します。
その過程で米軍兵士が無条件降伏するのですが、そうした捕虜たちを収容所に移すときに起きた事件が、この「死の行進」です。徒歩や貨車での移動の途中、多数の捕虜が命を落としました。
幽霊兵士とは、この「死の行進」の生き残りで、日本軍のカバナチュアンという場所の収容所に入れられていた捕虜たちのことなのです。1945年の年が明けけた時点での、捕虜の数は500人以上。全員が、やせおとろえた病人でした。
こうした幽霊のような捕虜たちを救出する、米軍レンジャー部隊の急襲作戦がこの年、1945年の1月28日夜に決行されるのですが、この救出作戦の一部始終を、このベストセラーは描いているのです。
救出作戦の敢行は、日本軍による捕虜皆殺しを恐れたためです。実際、同じフィリピンのパワラン収用所で、捕虜に対する集団虐殺が起きている。それでかなり無謀な救出作戦に打って出たんです。
フィリピンのゲリラとともに、カバナチュアンを襲った米軍レンジャー部隊は120人。
その現場指揮官だったのが、シアトル出身で、いまなおシアトルで健在な、ロバート・プリンス大尉でした。
(この、プリンスさんが少年時代、シアトルの学校で日系人と机を並べていた、日系社会のよき理解者であること、そしてイチロー選手の大ファンであることは、先日、申し上げました)
結論から申しあげますと、この救出作戦は大成功のうちに終わるのですね。地元のフィリピンの人たちが、カラバオ(水牛)に荷車を引かせて、それに弱り果てた捕虜たちを乗せて脱出に手を貸すんです。
この本には、その救出劇がとてもリアルに、詳しく書かれていて、ハラハラドキドキの連続なんですが、日本人であるぼくが読んで、よかったと思うのは、日本軍の残虐行為について生々しく書かれている一方、戦争という狂気のなかで、人間性を失わなかった日本兵のことも、きちんと記録してくれていることなんですね。
「死の行進」のさなかに、ふらふらになって歩く米軍捕虜にキャンディーを手渡した日本兵。
収容所で栄養失調で眼が見えなくなった捕虜を哀れんで、やさしく接し、食料をそっと分けてくれた、若い日本兵(神戸出身のヒロタという人だそうです)……そうした話も、しっかり書かれているんです。
こういう公平な、フェアーな態度はうれしいですね。著者はハンプトン・サイドという若手のライターですが、敬意を表したくなりますね。
戦争の過去を見つめ直すアメリカに対して、戦争の過去から目をそむけがちな日本。
日本軍がフィリピンに進攻したことを知る人は、だんだんと少なくなり、若い人に至っては、ほとんどゼロに近いのではないでしょうか?
「ゴースト・ソルジャー(幽霊兵士)」――いずれ、日本語訳も出るでしょう。一読、というより、日本人であるわれわれの必読の書かも知れませんね。
(2001/7/11) (33)
夏休み、やーい
あと半月ほどで待ちに待った夏休みです。「学校」から解放され、真っ黒になって浜辺を、野山を駆け回る夏休み???昔はそうだったですねけどね。
アメリカの夏休みは日本より1ヵ月も早く、6月下旬から始まっています。「いいなぁ、うらやましいなぁ」とお思いの方も多いはずですが、そうじぇなくなってきている。
ニューヨークやシカゴといった大都市の子どもたちにとっては、うれしくも、楽しくも全然ない、夏休みになっているんです。
なぜって、休みに入ったとたん、「サマースクール」というのに通って、勉強しなくちゃならなくなったから。
成績の悪い子は遊ばないで、ちゃんと特訓を受けなさい、補習して追いつくんですよ??ってことになっちゃったんです。
たとえば、ニューヨーク市。この全米1の大都会では、今月の2日から、サマースクールがスタートしました。
登録者は第3学年(日本の小3)以上、高校生まで、計32万7千人。公立学校に在籍する児童・生徒の実に3人に1人が参加登録しているのだそうです。
そのうちの4割、14万人は自発的な参加者ですが、残りは強制的に参加させられた子どもたちです。
このままでは、秋の新学期に進級できません、サマースクールで遅れを取り戻しなさいと市教委から、指示というか命令された生徒たちなんですね。
アメリカでは最近、「ソーシャル・プロモーション(社会的進級)」、つまり成績がよくてもわるくても、年齢でもって自動的に次の学年に上がっていく自動進級方式を廃止する動きが広がっています。ニューヨーク市のサマースクールも、これに連動したものなんです。
ところで、アメリカで最初にサマースクールを始めたのは、全米第2の都市、シカゴなんだそうです。
1996年の夏から始まって、もう6年目。ことしは全市で、22万人もの子どもたちが参加しているそうです。
シカゴの公教育システムの全在籍生徒数は43万人ですから、半数以上、2人に1人は、夏休み特訓を受けているわけですね。
こうした流れの背景には、アメリカが「教育再生」あるいは「教育改革」と本気になって取り組み出したという事実があります。連邦政府レベルはもちろん、州レベルでも学区教育委員会レベルでも、「学力」向上に向けた、さまざまな試みが行なわれている。
州の学力標準テストに合格しなければ、いくら在籍先の高校が単位認定しても、高卒の卒業証書を交付しない、なんて厳しい制度も全米に広がり始めています。
一定の成績を上げなければ落第、下手すると卒業もなし??いやアメリカも、ずいぶん厳しくなったものです。
(2001/7/4) (32)
中国共産党古参党員、最後の闘い
きょうはお隣、中国の話。7月1日は共産党結成80周年の記念日。江沢民主席が2時間にわたって演説しました。
20世紀を乗り越え、21世紀を迎えた「革命・中国」の歩みを振り返る一方、経済の開放政策に伴う、汚職や腐敗の一掃に全力を挙げることを誓いました。
「党は腐敗分子の天国であってはならない」と。
喜ばしい結党記念の祝賀の日に、党の主席がなぜ、ことさら党内の腐敗に言及しなければならなかったか?
当然、答えはひとつ、それほどまでに汚職や不正が広がっているからです。
このまま行けば中国人民の党に対する信頼が揺らいでしまう。手遅れにならないうちに、共産主義者のモラルを再確立しなければ……そんな危機意識が、党の指導部の間で強まっているのですね。
実は最近、毛沢東もびっくりしそうな大汚職事件が、東北部(旧満州)の中心都市、瀋陽で摘発されました。現職の市長が、前夫人、現夫人(二番目)、きょうだい、娘と一緒に逮捕されたんです。
役人も捕まりました。その数、なんと100人以上。これはもう一網打尽ですね。
それだけ腐敗が蔓延していたわけです。
主犯というか親玉はもちろん、ムー・スイシンという市長です。このムーという人物、もちろん共産党員で、1998年に市長に就任するのですが、それからがすごい。
スーツはもちろんイタリア製(人民服ではありません)。黒塗りの高級ベンツを乗り回し、海外出張のときは必ず、5つ星ホテルの最高級スイートに泊まる、といった王侯貴族並みの贅沢三昧。
おまけに、29歳の女優を2番目の奥さんにしているんです。最初の奥さんと別れて、すぐ再婚したんだそうです。
この美人の若妻もなかなかのやり手で、80万ドルものお金を、海外の銀行口座に不正送金したことが分かっているそうです。
瀋陽は人口690万、中国第5の大都市とはいえ、市長の給料は知れたものですね。
では、どうしてこんな好き勝手ができたかというと、地元マフィアのゴッドファーザー、リュウ・ヤンという男(これも共産党員)と手を組んで、ショッピング・モールの建設許可といった利権を与えてはうまい汁を吸っていたんです。
このリュウというマフィア、人民代表者会議の代議員ポストに就いていたというのですから笑わせます。
しかし、悪いことは長続きしないもの、権力をほしいままにする市長とマフィア連合軍に対し、抵抗する人が出て来た。
ザウ・ウエイさんという、ことし70歳になるお爺さん。
元人民解放軍の兵士で、毛沢東とともにゲリラ戦争を戦った、筋金入りの共産主義者が、北京の党中央に告発するなど、闘いを挑んだんです。
でも、相手が相手だけに、なかなかうまくいかない。いかないどころか、捕まって、強制労働に従事させられた。「人民を扇動した」って言いがかりをつけられてしまったんです。
けれど、ザウ爺さんは挫けなかった。挫けず、あきらめなかったことが、回りまわって、市長とマフィアの一斉逮捕につながったわけです。
さすが、抗日戦争を闘い抜いた解放軍兵士ですね。革命家のモラルを失わず、老骨に鞭打って腐敗に抗議し続けたわけです。
栄光の中国革命の末路がこんなざまでは死んでも死にきれないと思ったのでしょう。
ザウ爺さんによれば、「党の高級官僚の90%が腐敗している」んだそうです。
虐げられたもの、貧しきもの味方であるはずの共産主義者といえども、権力の蜜の味をしめると、堕落してしまうものなのですね。これは、革命の風化です。
身内の汚職、党内の不正と立ち向かわなければならない中国共産党。
敵は眠れる獅子の身中にあり、ということでしょうか。
(2001・7・4)