やっぱり言葉
日常語は英語ですが、国が定めた公用語は「アイルランド語」とされています。アイルランドにはアイルランド語が存在していましたが、お隣イングランドの何世紀にもわたる征服によって現在ではごく限られた地域でしか日常的に使用されていません。学校でのアイルランド語教育を始め、国営のアイルランド語専用ラジオ局やテレビチャンネルなどで、アイルランド語の復興に努めていますが、残念ながら今後英語にとって変わるということはなさそうです。
さて、日本に住んでいた頃、よく「アイルランドの英語ってすごい訛りなんでしょう?」と聞かれました。古い英米小説を読んでいると、ときどきアイルランド人が登場してひどい訛りでしゃべる、などという一幕に出会ったりしますよね。確かにアイルランド人の英語は、日本で習っていた英語=アメリカ英語とは全く別物です。特に田舎のお年寄りの英語は、何度か聞き返さないと分からないぐらい難解です。あるイングランド人の友人が、ある時こんな話をしてくれました。「もしあなたが地元の人たちの英語が難しくて理解できなくても、落ち込むことはないわよ。私の友達がフィークルに遊びに来た時、私の隣人と話をして30%ぐらいしか分からなかったぐらいだから!」
「アイルランド訛り」といっても日本の方言と同じように、地方によってまた全然違います。ダブリン訛り、クレア訛り、ドニゴール訛り・・また、例えばクレア訛りの中にもエニス訛り、タラ訛りなど町やエリアで特有のアクセントがある場合もあります。私にはまだここまでの区別はつきませんが、カウンティー(県)によるアクセントの違いの中には分かるものがいくつかあります。日本と違うところは、みんなそれぞれ違うアクセントで英語を話しており、無理に訛りを直そうとしたり、自分の訛りを恥ずかしいと感じてはいないことです。アイルランド人は地元意識が強く、どこのカウンティー、町の出身かということが非常に大事なので、初対面でも相手の話す英語のアクセントでだいたいの出身地が分かると、それを話のきっかけにしたりしているようです。
アイルランド人が好んで使う言葉に「Lovely」という言葉があります。天気、音楽、場所、食事、老若男女に至るまで何にでも使える便利な言葉です。直訳すると「素敵な、素晴らしい」という意味ですが、アイルランドではレジでお釣りをもらった時にもこの「Lovely」を使ってしまいます。日本でよく使われる言葉として習った「Pretty」(きれいな、かわいい)、「Cool」(素敵な、粋な)などの単語はアメリカの英語から来ていて、10代、20代の若者の中には使う人もいますが、アイルランドにおける地位はまだまだ低いようです。「英語」とひとくくりに言ってもいろいろな英語があります。「どの英語が正しい」というのではなく、その土地で培われたオリジナリティー溢れる英語はとても面白いし、どれも魅力的です。アイルランドの英語が訛っているわけではなく、世界のどの地域の英語もその土地ならではの発音の仕方、使われ方をしていると考える方が自然なような気がします。そのため、同じ英語圏でも言いまわしやアクセントで話が通じなかったりということはしょっちゅうですが。
あ い さ
つ
アイルランドのどの地方でも同じだと思いますが、歩いていて、もしくは車に乗っていても、人がきちんとあいさつをしてくれるのが、こちらに来た当時とても新鮮でした。「How
are
you」と声をかけてくれたり、手をちょっと挙げたり、にこっと笑って頷いたりと人それぞれですが、これはとても気持ちがいいなと思います(中にはパチッとウィンクをしてみせる人もいます)。都市では知り合いでない限りこのようなあいさつは交わしませんが、アイルランドの田舎では初めて会う人に対してもするのが普通です。道で誰かと会った時は、大概「How
are
you」と言われますので、もしもアイルランドの田舎を旅していてこのように声をかけられたら、知らない人だからと無視せずにあいさつを返してみましょう。聞き方と返し方は状況によって違いますが、いくつかパターンがあるようなので、まとめてみました。
聞き方
(Hello)
how are you ? (2人以上の時はhow are ye ?)
(Hello) how are you, are you well
?
How's life ? (How's life with you ?)
How are things ? (How are
things with you ?)
How's it going ?
How are you doing ?
How are
you keeping ?
How are you getting on?
返し方
Not so bad
(now).
Not too Bad (now).
(I'm)grand (又はfine, great), how are you ?
(又はyourself ?)
そう、つまりいつでも「悪くないよ」、「元気よ」なのです。日本ではよっぽど長い間会っていなかった友人などに「元気だった?」と尋ねることはありますが、アイルランド人はこれを毎日聞きます。これは飽くまであいさつであって、いちいち「いやあ、今日はちょっと胃の調子が悪くて、それで・・」などと真剣に答える必要はないのです。スウェーデン人の友人は、初めてアイルランドに来た時はこのあいさつに慣れるのに苦労したと言っていました。「聞かれるたびに、私体調悪そうに見えるのかなあ?って思ってたの」とのことです。ちなみに、「Hi」というあいさつもアメリカ式で、アイルランドのお年寄りはほとんど使いません。
ついでにアイルランド流「ありがとう」と「さよなら」についても簡単に記してみました。
「ありがとう」
Thank
you (very much).
Thanks (very much).
Thanks a lot.
Thanks a
million.
Ta.
「Thanks a
million」はアイルランド独特の言い回しだそうです。直訳すると「100万回ありがとう」みたいな感じでしょうか??これは他の英語圏の人にとって、とてもユニークに聞こえるらしいです。最後の「Ta」(発音も「タ」!)というのは「Thanks」の略で、使う人は多くありませんが、ときどきお店のレジなどで耳にします。「Thank
you so much」もときどき聞きますが、あまり定着はしていないようです。
「さよなら」
Bye. (又はBye
bye.)
( I'll )See you. (2人以上の時はSee ye.)
God bless. (又はGod bless you.
2人以上の時はGod bless ye.)
Take care.
Mind yourself. (2人以上の時はMind
yourselves)
Good luck.
Slan.
( I'll )See you (2人以上の時はSee ye.)with
the help of god
最後の「See you with the help of
god」は、誰かがこう言っているのを聞いたことは一度もないのですが、とても古い言いまわしだそうです。「神の助けがあったらまた会おう」という意味で、つまり「神の助けがなかったらこれがあなたに会う最後かもしれませんよ」という含みがあるわけです。「God
bless」はそのまま「神のご加護がありますように」という意味です。誰かがくしゃみをした時も、周りの人がよく言います。「Mind
yourself」もアイルランドらしい言い方だそうです。最後の「Slan」(「スローン」と発音)とは実はアイルランド語で、「さようなら」という意味です。これはときどき耳にします。
アイルランド人の名前
苗
字
アイルランド人の苗字で最も多いのはMurphy(マーフィー。ビールの銘柄にもなってます)だそうですが、アイルランドにはこの国特有の苗字がたくさんあります。O'Connor、O'Connell、O'Dea、O'Hara、O'Sullivanなど頭にO'の付く苗字は典型的なアイリッシュネームと言っていいでしょう。頭にMac(簡略系でMcと綴る場合もある)の付くMacMahon、MacNamara、MacGuinness、MacEvoyというのもあります。ちなみに某大手ファーストフード店の「Mc」はスコットランド系の苗字です。アメリカ、イングランド、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどの国々には、アイルランド系の人々が住んでいますので、映画俳優などの名前を見て「あ、この人はアイルランド系なのだな」ということが分かったりします。
英語の訛りと同様に、苗字にも地方色というのがあります。日本でも「この村には金子さんが多い」とかありますよね。私もときどき自己紹介をすると「静岡の方ですか?」と聞かれることがあります(祖父が静岡の出身)。アイルランドの場合は日本人の苗字よりも更に限定されるような気がします。苗字を聞くとどこの出身かということが分かる場合が多いのです。例えば、MacNamara、Caseyなどは典型的なクレアの苗字、O'DonnellやDoherty、Hegartyはドニゴール(Co.Donegal)、Ryanはティペラリー(Co.Tipperary)、O'Keefeはケリー(Co.Kerry)など、他にもたくさんあります。
さて、フィークル周辺に多い名前というのももちろんあります。Minogue、MacGragh、Purcell、Hayes、MacNamara、Tuohyなどです。そして、同じ苗字の人は親戚関係であることが多いです。最初フィークルに移り住んできた頃はこのことに気づかなかったのですが、少しずつ「あの二人は従弟だよ」とか「彼のお祖父さんにあたる人があの人だよ」という地元の人たちの親類関係が見えてきて、またしばらくすると「この二人苗字が一緒だけど、声もそっくりだし何となく顔も似てるし・・もしかして兄弟?」などという推測が本当に当たってしまったりして、「結局みんな親戚同士なのね!」ということがやっと分かってきました。
ずいぶん前にアメリカ人の男性が初めてアイルランドを訪れて、「どうやら僕のファミリーももともとアイルランドから来たみたいなんだ」と言っていたのですが、私の夫は彼の苗字を聞いた途端、「君の家族はゴールウェイ県、しかも東側のクレア県の境界線に近いどこかの出身に違いないよ!」と断言していて、アメリカ人の彼もびっくりしていたようでした。
ファーストネーム
ほとんどの人がファーストネームで呼び合うのが普通です。だからときどき、「あの人の苗字なんだっけ?」と分からなくなることがしばしば。
特徴として、例えばPatrickは英語読み、Padrig(ポードリッグと発音)は同じ名前でもアイルランド語読みと、アイルランドでは同じ名前でもふたつの読み方(綴り方)があるということです。これは子供が生まれた時に役所に届け出る出生届に出す名前がどちらか、ということで決まってきます。他にも例えばアイルランドの名前でSean(ショーン)は英語読みのJohn、Seamus(シェーマス)はJames、Donal(ドーナル)はDonald、Maraid(マレード)はMargaretなどがあります。もともとヨーロッパのファーストネームは聖人の名前ですので、アイルランド語読みのこうした名前もこれと同じです。(ちなみにPatrickはアイルランドの男性の名前で最も多い名前で、アイルランドで最も名高い聖パトリックという聖人の名前から来ています)
また、Patrickという名前がその人の正しい綴り(パスポートの名前)でも、人からはそのままPatrickと呼ばれていたり、もしくはPaddy、Pat、Patsy、Pa(発音もパァ)、Packieなどいわゆる「愛称」で呼ばれています。これは、最初に両親がどう呼ぶかということで決まってくるようです。また、年齢に応じてPatと呼ばれていた人がPaddyとなることもあるとか・・。
人によってはファーストネームとセカンドネームの頭文字を取ってPJ(ピージェイ。Patrick
John、Patrick Joseph、Patrick Jamesなど)やTJ(ティージェイ。Thomas John、Thomas
Joseph、Thomas
Jamesなど)と呼ばれている人たちもいます。また、まれにファーストネームでなく苗字の短縮形で呼ばれている人(O'loughlinはロッキー、O'Donnellはドンなど)もいます。
天気・・体感温度
「How are
you」のあいさつが終わると、すぐさまその日の天気の話を始めるのがアイルランド流です。
アイルランドの天気といえば、低い雲がどこまでも続き、晴れ間がのぞいたかと思うと突然の雨、また曇ってまた雨、というようにはっきりしないことがとても多いです。もちろん、一日中晴れの日や、雨の日、曇りの日もありますが、「明日は全国的に晴れですが、ところによっては雨が何回か降るでしょう」というあいまいな天気が多いのは事実です。こちらに来た当初は、こんな天気でも天気予報があることと、それを熱心に見ているアイルランド人がときどきとても滑稽に思えてなりませんでした。
そんな気まぐれな天気なので、突然の雨に見舞われることは珍しいことではありません。日本では「明日は雨」と言われれば翌朝雨が降っていなくても折り畳み傘などを持って外出しますが、こちらは「降られるかもしれないし、降られないかもしれない」わけですので、傘をあらかじめ持参する、という考え方があまり浸透しているようには見えません。しかもこのような天気の時は、雨は降っても通り雨程度のものがほとんどで、長くは降らなかったり降ってもずぶ濡れになるほどではないので、みんな眉間にしわを寄せながら平気で歩いていたり、お店の屋根の下や大きな木の下などで雨がやむのをのんきに待っていたりします。日本のように酸性雨が体に触れるのはよくないという話もこちらでは聞いたことがないし、雨にはとても無頓着な、まさに雨の国です。
気温は年間を通して涼しく、夏でも20℃代前半ぐらいまでしか上がりません。(とは言え、ここ数年ヨーロッパ全体も異常気象で、アイルランドも30℃前後まで気温が上がりましたが)ですから冷房設備というものは基本的にはありません。冬は0〜10℃まで下がります。しかし緯度のわりには大西洋側から来る暖流のおかげでマイナスになるようなことは真冬の早朝を除けばほとんどないといっていいでしょう。ですから日本のようにはっきりとした四季はなく、気温も夏と冬で30度も差があるわけではないのです。
面白いのは、例えば夏に15度しか気温が上がらなくても、アイルランド人の中にはちゃんと「今は夏!」という感覚があって、ノースリーブに短パン、サンダル姿だったりします。私は真夏でも寒ければセーターを来ているし、夜の外出にジャケットだって羽織りますが、アイルランド人の友人に会うとまるで常夏の島にでもいるような格好で、つい笑ってしまいます。
しかも、アイルランドは風がよく吹くために体感温度は実際の温度よりも冷たく感じられます。気温の低い冬の日に、強い雨と風があると外に出るのが心底億劫に感じられます。この「体感温度」ですが、私たち日本人の体感温度とアイルランド人のそれとはかなりギャップがあるようなのです。例えば、私がインナーにシャツ、厚手のセーターを着込んでいる横で、夫はTシャツ一枚で「寒くない」と言っていたり、私が「ぬくぬく暖かくて快適な室温!」と思っている時に、友人に「この部屋にいると暑くて干上がっちゃいそう」と言われたりします。これは勝手な推測ですが、アイルランド人は寒さに対してまずは「我慢する」という感覚が備わっているのではないかしら?と思います。
ですから、誰かの家を訪ねたりした時に体感温度が違うために、私にとっては耐えられないほど部屋の中が寒いということがあります。自分だけ寒くて他の人たちは平気なわけですから言い出すこともできず、結局コートを着たままお茶を飲む、なんてことにもなりかねません。アイルランド旅行を計画中の方は、このことに注意が必要です・・・!?
逆に、暑さに対してはどうかというと、30度以上の猛暑になることがないので分かりませんが、いつか夫とポルトガルを旅行した時は、彼は毎日30度以上の気温に体力を奪われ、かなりやつれていました。一方私は「日本の夏より湿気がなくて気持ちいい」と感じていたので、これも慣れかもしれませんね。
経済的!?暖房設備
一般的にはまだアイルランドの家のほとんどに暖炉やストーブ(黒い扉付きのもの)、レンジと呼ばれるオーブン付きのものがあり、薪、泥炭、石炭などを燃やして家を暖めています。最近ではリモコンで電源を入れるだけで火がつくガス暖炉、ガスストーブも増えています。もう一つ一般的なのはオイルを使って水をあたため、そのお湯を壁沿いに設置された暖房機器に流して部屋を暖める方法です。ほとんどの一般家庭には裏庭や家のすぐ外側にこれ用のオイルタンクがあります。しかしオイルやガスに頼った生活はいつか終わりが来るでしょうし、最近ではオイルやガスを使わないでどうやって家を暖めるかということに注目が集まっています。ソーラーパネルを使ってお湯を作る方法や、木を原料に特殊加工したチップ状のものを燃やしてオイルの代わりにするなど、いくつかの新しい選択があるようです。
私が感動したのは、ただ暖炉やレンジの火で部屋をあたためるだけではなく、これらの後ろもしくは内側にバックボイラーと呼ばれるL字型の金属が埋め込まれており、そこに水を通してお湯をあたためる方法です。私たちが今住んでいる家もこのタイプで、レンジを使っている時はタンクのお湯がとても熱くなり、オイルも電気もガスも使わずにお風呂に入ることができます。
日本にいた頃は灯油ストーブ、電気ストーブ、ガスストーブでしたが、こちらは薪や泥炭といったごく身近にある天然資源を燃料にしているのがいいなと思います。燃え盛る火を見つめているだけでもとても幸せですし、煙突から白い煙が出ている様子も絵になります。
水道代のない国
アイルランドに来て衝撃的だったのは、水道代がないということです。これも雨の多い国だからということでしょうか。確かに日本のように、夏に干ばつになって節水するなどという心配とは無縁の国です。
水道代がないとどういうことが起こるかというと、水に対してとてもルーズになります。歯を磨いている間も水は出しっぱなし、食器を洗っている途中で電話がなっても水を止めずにそのままおしゃべり、シャワーは10分、15分一度も止めずに浴びる、ということが起こってくるわけです。日本では「水は地球の大切な資源」と言いますし、古くから「水罰」という言葉もあるほどですが、アイルランドでは「水がもったいない」という感覚がないようです。洗濯にははお風呂の水を使う、食器洗いも効率よく水を無駄に使わない、と母に厳しく言われて育った私にとっては、このアイルランド人の水に対するルーズさがカルチャーショックだったと同時にかなりの抵抗がありました。
アイルランドの水は硬水ですが、基本的には水道水は日本と同じく飲み水として利用できます。「アイルランドに行くたびにシャワーの水のせいで髪の毛がガサガサになる」と言う日本の友人もいますが、私はもう慣れてしまって何の不都合もありません。日本に帰ると、日本の水が妙にサラサラしているようには感じますが。
都市や町の水道管理は各カウンティーが行っており、湖や川からの水を浄化して、各家庭に水道管を通してて支給しています。しかし、ここ数年でずさんな水道管理が次々と発覚し、ここクレアのエニスタウンやお隣のカウンティーのゴールウェイシティー周辺の水道水は誤ってそのまま飲むと腹痛を起こすほどひどく、深刻な問題になっています。
フィークルの村のメインストリートの家の水は湧き水から来ており、これを共有しています。村の中心から離れた家々は、なんと各家が一つ一つ井戸水を持っているのが普通です。水道代がタダなわけです。
ごみの出し方
日本にいた頃は団地住まいで、ごみはいつ何時でも好きな時に捨てに行っていました。アイルランドでは、町に住んでいる多くの人が民間企業が運営するごみ収集のサービスを利用しています。燃えるごみ、燃えないごみ、リサイクルごみなどを曜日ごと、月ごとに回収してくれるわけですが、もちろん有料です。田舎に住んでいてもこのサービスは利用できますが、私たちを含め多くの人が隣町にあるごみリサイクルセンターに捨てに行っています。月曜日から土曜日まで開いていて、粗大ごみも出せるのでとても便利です。リサイクルごみ以外は有料ですが、回収サービスを利用するよりも安価です。このごみリサイクルセンターはクレアカウンティーによって運営されているので、カウンティーによってごみの出し方は違うのかもしれません。
いずれにせよ、ごみを出すにはお金がかかるというのがアイルランドの常識です。
前回日本に帰省した時はごみの分別が細かくなっていて、ビンや缶はもちろん「プラ」マークのついたプラスチック容器やポリ袋まで分別回収されていて感激しました。ここまでごみの分別が進むと、焼却されるごみがものすごく減ります。母は「燃えるごみよりもプラマークのついたごみの方が断然多い」と言っていましたが、私もアイルランドでこれを痛感しています。日本から送ってもらう食材から出るごみの多いこと。過剰包装とはまさにこのことでしょう。また、日本の食材がプラスチックの袋に入っているのに比べ、こちらの食材は瓶や缶が多いことにも気がつきました。
しかしながら、よく日本で耳にした「欧米ではごみのリサイクル化が進んでいる。日本もこれを見習おう」というスローガンの「欧米」に、アイルランドは入っていなかったなあと思います。アイルランドでごみ問題に焦点が当てられるようになったのはここ数年のことで、リサイクルもまだ始まったばかりです。アイルランドの田舎では、牧草地や森林に車や荷台でやってきて大型ごみを不法投棄する人が多く、問題になっています。よくドライブしていると「ここにごみを捨てると罰金何千ユーロ」と書かれた看板をよく見かけるのはこのためです。
田舎では自分の私有地でごみを燃やしてしまう人もたくさんいます。何エーカーという規模の私有地ですから隣近所に煙が行くという心配もほとんどありません。しかも、アイルランドでは暖炉やストーブでごみを燃やすこともできますから、「外で燃やしても同じこと」という感覚もあるのかもしれません。しかし、見つかると何千ユーロかの罰金が課せられるらしいです。
また、裏庭などにごみを埋めてしまう人も結構いるようです。特にリサイクルの発想がなかった昔は、かなり多くの人が穴を掘ってごみを埋めていたそうです。
ダブリンでは、あるごみ収集業者が「生ごみ」のリサイクルを始めて話題になっていました。都市の生活は忙しくて庭でコンポストを作る人も少なく、野菜の皮などもごみとして捨てていたのが、これを回収することで最終的には土に返すという考え方です。こんなユニークな発想も出てきて、アイルランドのごみリサイクルはこれからという感じです。
日本食三昧、食生活
日本の友人にはよく「毎日何を食べてるの?」と聞かれますが、私たちはいわゆるアイルランドの家庭料理を食べているわけではありません。むしろ、ほとんど毎日和食です。日本から送ってもらった食材や自分たちで作った野菜(畑で採れる野菜についてはアイルランドで畑仕事をご覧ください)、そしてイタリア産の日本米(「日の出」という銘柄・・・でもなぜかShinodeという綴り。パッケージに怪しいお侍さんの絵があります)などを駆使して和食を作っています。
クレアの下に位置するリムリックの大きな町にある中国系食材店に行くと、桃屋キムチの素やかっぱえびせん、できたての豆腐、干ししいたけ、キッコーマンの1リットルの醤油、ミツカンのみりんなどが手に入ります。お米はそれほどおいしいとは言えませんが、少なくとも日本米ですので私たちの食生活には欠かせません。フィークルの自宅から1時間弱の距離ですので、ここにはちょくちょく買い出しに行っています。
逆に、手に入らないものもたくさんあります。まずは何と言っても野菜です。スーパーの野菜コーナーに行っても、ジャガイモ、にんじん、キャベツなど定番野菜ばかりで、葉っぱものの野菜が少ないといつも思います。売っている魚の種類もかなり貧相、値段も高くて悲しくなります。魚よりも肉を摂取する食文化なので、これは仕方がないのでしょうが、アイルランドが海に囲まれた島国であることを考えるとどうしても納得がいきません・・・!
海外に暮らす日本人に「向こうでは何を食べてるの?」と聞く日本人の感覚は、食文化が豊かな証拠だと思います。
日本への関心
フィークルの人に「日本人です」と言うと、「ああ、ジャパン!」と言ったっきり、その後特に何もイメージが浮かばないで困っているようです。日本車はたくさん走っているし、日本の電化製品もこんなに定着しているのに、日本のことはあまり知られていません。「トーキョー」という都市の名前は知っていても、どこにあるのか、そもそも日本という国がどこにあるのかも知らない人が多いのではないかと思います。
よく外国人に日本のイメージを聞くと、「ゲイシャ、フジヤマ」などと言いますが、田舎のアイルランド人はそれさえも知らないと思います。また、「日本からです」というと中国の話をし始める人もよくいます。(「長い壁があるよねえ!」(万里の長城のことでしょうね)とか・・)こちらとしては隣国とはいえ違う国ですからしっくりしないのですが、日本人の中にもアイルランドとイギリスがごっちゃになっている人がいるのと同じなのだろうと思います。
また、一般的なアイルランド人の中には「日本は暖かい(暑い)国」、もっと言うと「熱帯(トロピカル)の国」という印象があるようです。ですから、「日本はね、確かに夏は全国的にとても暑いし30度以上になるけど、長〜い島国だし、気候は地域によってずいぶん違うのよ。冬には東京でも雪が降ることだってあるし、アイルランドより寒い地域だってあるのよ」と言うと大変驚かれます。
中には富士山の写真を見て「マウントフジ」と分かる人や禅に関心のある人、日本食が好きな人(毎日味噌汁を飲んでいるとか)もいますがごく少数です。
アジア人に対する差別もあると聞きますが、私は今のところこのような経験をしたことがありません。道を歩いていて興味本位で男性から声をかけられたり、からかうような口調をされたりということはごくたまにありますが、それも差別というほどのものではありません。
質素という美徳
結婚してアイルランドに越してきた時、夫の家には洗濯機がありませんでした。どうやって洗濯をしていたかというと、バケツに洗剤とお湯を入れて、そこに服をつっ込んでそのまま数時間ほったらかし。まあ格好良く言えば「つけおき洗い」ということでしょうか。それから服を絞って、水のしたたる洗濯物を干すのです。乾くまで何日もかかるし、こんな洗い方で本当に汚れが落ちているのか心配にもなりましたが、涼しい気候ときれいな空気のおかげで服は思ったほど汚れておらず、二人暮らしで出る洗濯物の量も限られていたのでそれほど苦ではありませんでした。シーツなどの大きい洗濯物だけは、夫の実家に持っていって義母に洗ってもらっていました。
もう一つなかったものはテレビです。いえ、正しく言えばテレビはあったのですが、常に食器棚の奥に収納されていました。年に数回、夫の好きなラグビーの中継がある時に登場するだけでした。テレビがあると常に見てしまう=時間が無駄になる、ということで私も慣れてしまうとテレビなしの生活は意外にも快適でした。
日本に住んでいた頃はとにかく周りに物が溢れていて、物を買わない生活、持たない生活をするのはとても難しかったように思います。それが、ここアイルランドでの田舎生活は環境がずいぶん違います。田舎なのでお店を物色することがめったになく、まずは物欲がなくなりました。
また、アイルランド人の暮らしぶりを見ていると、その質素な生活ぶりが私にとってはちょっとした衝撃でした。例えばアルミホイルやサランラップは何度も使いまわす、タオルは原形をとどめなくなるまで雑巾などとして使い古す、シミの付いた服や穴の開いた服でも普段着として着続ける、などです。これは、貧乏くさいとかけちとかではなく、むしろ物を大事にするという精神のようで、何も考えずにポイポイと物を捨てていた自分とは対照的でした。
今では洗濯機は大活躍ですし、テレビも毎日のようにつけていますが、この質素という美徳はいつまでも大切にしたい、お気に入りの生活スタイルです。
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