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ハーズマンの仕事は、牛を快適にすることである
−牧場で働くみなさんへ − |
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| 皆さんの仕事を、ハーズマン(herdsman)と言います。「牛群を管理する人」という意味です。この仕事を職業として選択されたあなた方は尊敬に値します。たぶん、牛や動物が好きで、あるいは牧歌的な雰囲気にあこがれてきた人が多いのではないでしょうか。しかし、そのあこがれと、牧場の現実とのギャップにとまどっているかもしれません。この牧場、どうですか。初めて来たときどう思いましたか。この牧場の最新式の設備や、牛の頭数など、あまりの生産性の高さに圧倒され、まるで工場のようだと感じてしまい、自分の中にあった田園風景は甘かった、輸入牛肉や乳製品に対抗するためには、あるいは牧場が儲かるためには、1頭1頭の牛に愛情を注いでいるひまなどないんだ、従業員は日々の作業をこなすだけだ、などと思ったら大間違いです。なぜか? それは、牛の健康なくしては、生産性の向上は望めない、という大前提があるからです。 |
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| 今日、仔牛の販売価格や乳価の下落に見られるように、酪農情勢は年々厳しさを増しています。そんな中で、この牧場は生き残りをかけ、規模拡大、省力化によるコストダウンに挑戦しています。より安く、よりおいしい、そして安全な牛乳を安定して供給する、そういった社会のニーズに応えるべく努力しているわけです。とことん効率を追求しているため、一見、牛たちはないがしろにされていると感じてしまうかもしれませんが、むしろ逆で、小規模のつなぎ飼いの牛舎に較べても、より快適な暮らし(自由に動け、いつでもエサが食べられるなど)をしています。 一般の消費者は、家畜の生産性の向上というと、何かしら、動物をいじめてむりやり搾取して、その結果、家畜が不健康になってしまうというイメージを抱いている人が多いようです。ここの所は、ベテランの臨床獣医でもはき違えている人がいますからよく理解して下さい。少なくとも酪農においては、これは誤りです。牛を健康に快適にしてやらないと、最高の乳量と乳質は得られないのです。世間一般の人からは、逆説的に聞こえるかもしれませんが、乳牛の生産性と福祉は両立するのです。むしろ、両立していなければ、本当の意味で生産性が上がったとは言えないのです。 どうか、初心を失わず、牛たちに愛情を注いでやって下さい。牛が少しでも健康に快適になるよう心を配ってあげて下さい。そしてそのために、少し勉強して、牛にとって何が快適なのかを知っていなくてはなりません。 |
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| 牛の扱い方 優しく接する。でも、ナメられないように。 怪我をしない(人間が)。自分よりも力の強い動物であるということを忘れないで下さい。不用意に背中を見せると発情牛などに突かれることもあります。 牛にストレスをかけない。報復はしない。痛かったら、自分は人間で相手は牛だと言うことを10秒間かみしめて下さい。その牛の行動を読めなかった自分を反省すること。プロのハーズマンとしての修行が足りなかったのです。 「畜産学とは行動学である。」(フィル・ヘルフター) 一緒にパーラーに入った人があまり働かない人だったとしても、牛に当たらない。そんなことをしても何の利益もありません。新人さんには優しく教えてあげましょう。一日の仕事に追われるあまり、いらいらして牛に当たっていませんか? これは新人に限らず、ベテランの人も自省してみて下さい。そう言う私自身、毎日反省しています。 牛はとても臆病で敏感なくせに、好奇心旺盛で鈍感でもあります。牛を驚かさない。急に人間が出現すると非常にびっくりするので、遠くから声をかけながら近づくようにします。できるだけ棒などは使わない。牛を追うときも黙って棒でペシペシ叩くのは最悪。声、音で追うようにしましょう。 牛は追うと走ります。牛と競走しない。牛も人も怪我をしてしまいます。逃げられたらあきらめて1からやり直しにします。 スタンチョンにつながっている牛と牛の間に入ると押しつぶされます。(これはあんまり痛くないけどね。)牛に蹴られたくなければ、ぴったりくっつくか十分離れるようにします。くっつくときは牛を選んで下さい。臆病な牛にくっつくとヒーッと言って死ぬほど怖がります。 乳房に触れるとき、いきなりさわると蹴られることがあります。ほかの場所(足など)を触って、さあ今からさわりますよと予告してからさわるようにします。 スタンチョンをロックしているときに不用意に前から牛に近づかないようにします。急に牛が下がって首を痛めたり、またスタンチョンを壊してしまうこともあります。誰かが牛の後ろにいるときは特に注意して下さい。直検や種付け、治療などしているときは絶対に牛を驚かさない! |
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| 牛の動かし方 牛にとってのイヤーな距離、イヤーな位置を覚えて下さい。臆病な牛と、そうでない牛、また人によってもその距離は微妙に変わります。人間があっちを向くと、イヤーな距離は縮まり、手を広げて体を大きく見せると距離は伸びます。(私は以前から「イヤーな距離」と呼んでいたのですが、最近の乳牛行動学では「逃走距離」と言うそうです。)新人にありがちな失敗は、@牛を逃がす、Aいて欲しくないところにぼーっといる、のどちらかです。 離れている牛をスタンチョンにとめるとめ方 |
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| 常識を働かせる 夏の暑さは乳牛にとって大きなストレスです。また冬の寒さも、風が強く体感温度が下がる日はストレスとなります。このような気象条件の時は、牛たちは牛舎内のより快適なところへ移動します。こんな日に、繁殖検診などの作業の都合で牛をスタンチョンにロックしたらどうなるでしょうか。ロックされた状態では、エサは食べられるけれども水も飲めず、寝そべることもできず、廊下に立たされた小学生と同じで、つらいものです。暑い日差しや強い風をよけて移動することもできません。こんな日には、私たちはなるべく早く検診を終了させようと努力します。このように、牧場の仕事には全て優先順位があり、それぞれに折り合いをつけながらやらないといけません。あまりに牛にストレスがかかると判断したら、中断することも考えなくてはなりません。そこでは常識を働かせて下さい。糞を除去するのも、ベッドメイキングをするのも、牛をより快適にしてやるのが目的です。過酷な気象条件の下では、いつもの仕事をそこそこでやめておいた方が、牛にとって快適な日もあるかもしれません。 糞の除去やベッドメイキングそのものが目的になってはいけません。牛を狭い通路に押し込めて、一生懸命掃除をしている新人さんをよく見かけます。仕事に集中するあまり、牛が見えていないのです。 |
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発情、病気など牛個体の観察 |
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牛群全体の観察:どの程度のストレスを受けているか |
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| 飼槽通路での注意 当たり前のことですが、エサがちゃんと常に食べられる状態にあるかどうか確認して下さい。エサが押されているか、なくなっていないか。また、気付いたら必ずエサを寄せて下さい。それが最大の乾物摂取量を得るのに最も重要なことです。飼槽が空になっているようなら、飼料の給与量を増やす必要があるので、その旨報告しなければなりません。 なるべく糞のついた足で飼槽を歩かないで下さい。飼槽の細菌数は、夏場の二次発酵を促進します。お金も手間もかかっている飼料の重要性を理解して下さい。それをクソ足で足げにするのは、牛に対しても、エサを作った人に対しても大変失礼なことです。飼槽の衛生について意識を変えて下さい。また、エサの中のひもや、ビニールなど異物を拾って下さい。金属異物が出たら問題にして、出所を徹底的に調査するようにします(金物病:牛の創傷性第二胃心膜炎の予防)。 |
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| 牛舎内での注意 ベッドの糞、汚染された敷料を落とします。ベッドメイクの係の人だけがやればよいのではありません。気付いた人がその場でやります。通路に石が落ちていたら拾って外に出します(蹄病の予防)。ループ、スタンチョン、ゲートなど牛舎が壊れていないか、牛にとって危険な状況ができていたら早急に修理する必要があります。水周り:水槽はきれいか、水はちゃんと出ているか、水漏れはないか、それによりベッドが濡れていないかなど注意して下さい。 ゲートの開け閉めには特に注意して下さい。牛が混ざったら大変なのです。牛舎の中では自分のいる位置にも気を配って、意味なく牛にプレッシャーを与える位置に立たないようにして下さい。暑いときは、扇風機がちゃんと回っているか確認してください。スタンチョンロックの外し忘れがないか確認してください。その他、牛にとって危険やストレスになるものがないか気を配ってください。 |
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| パーラーでの注意 パーラーでは特に、牛を脅かしたり興奮させたりしてはいけません。動物は驚いたり興奮したりすると交感神経が興奮し、アドレナリンという物質が出ます。これは乳をおろすホルモンであるオキシトシンという物質と拮抗するため、パーラーで牛が驚いたり興奮したりすると、乳を下ろさなくなったり、搾りきりが悪くなったりします。(びくびくしている初産牛が乳を下ろさないのはこのためです。)そうして生産性が下がり、乳房炎の原因ともなります。 |
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| 最後に・・・ 我々が相手にしているのは生き物です。 繰り返しになりますが、どうか、初心を失わず、牛たちに愛情を注いであげて下さい。ハーズマンの仕事は牛を快適にしてやることです。動物は正直です。必ず応えてくれます。
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