酪農家はえらい!
牛乳を産み出しているのは実際に牛と向き合っている生産者、すなわち酪農家です。

乳業会社ではなく、飼料会社でも農水省でも組合でもなく、ましてや獣医師ではありません。真の意味で無から有を産み出しているのは酪農家(生産者)だけです。その他の乳業界の構成者(生産周辺者)は獣医師も含めて全員、酪農家が生産した牛乳のおかげで仕事が成り立っています。

酪農家は生産し、経営し、休みもなく働きます。牛を観察し、難産を介助し、栄養学を学び、牧草を作ってサイロに詰め、牛の病気を治療し、発情を見つけて人工授精をし、遺伝改良にこり、機械が壊れたら修理し、電気工事も溶接も大工仕事も土木作業もペンキ塗りもなんだってやります。組合や銀行や乳業メーカーとつきあい、税金に頭をひねり、従業員のトラブルに困り、糞尿処理に悩み、センセーショナルなマスコミに怒り、熱しやすい消費者に落胆し、穀物高騰に頭を抱え、それでも前向きに立ち向かっていきます。そして彼らは牛が好きなのです。牛飼いという生き方が好きなのです。

なんて尊敬すべき、愛すべき人たちなんだろう。

これだけですでに生産周辺者は生産者に対し敬意を払わなくてはならないはずなのに、生産者に対し周辺者は古来「援助を受ける者−援助する者」「指導される者−指導する者」「科学的知識を持たない者−持つ者」「下位の者−上位の者」といった関係性でコミュニケーションを取ってきました。そのいい例が、酪農組合や獣医師の間に存在する「指導」という言葉です。この言葉にはすでにこれらの古いパラダイムが含まれてしまっています。これからはこの古い関係性をパラダイム転換し、生産者と生産周辺者の間に 対等者・協同学習者 としての関係性を築いていくことが、畜産現場のコミュニケーションにおいてすごく重要です。あくまでも畜産業の主体は生産者。それを取り巻く私たち生産周辺者が行う活動を表現する時、指導という言葉は避け、「支援」「バックアップ」「アドバイス」という言葉を使います。生産者主体で、生産周辺者のもつ知識や技術をリソースとして使っていただきたい、という風に表現します。

酪農家の皆さんも、そのような気概を持って「ボスは俺なのだ」と思ってください。

私たち獣医師に対しても「よろしくご指導お願いします」なんて言わないで、「アドバイス頼むよ」って言ってください。私たちもプロの誇りを持って、酪農家が真に必要とする技術・情報を提供できるよう、日々精進して御期待に応えていきたいと思います。