蹄底潰瘍とヒトの褥瘡の類似点(THMS阿部先生の講義から)

 

褥瘡(じょくそう)とは、床ずれのことで、ヒトの医学において、寝たきりの人がうまく寝返りできず、骨と寝具の間で組織が圧迫されて循環障害が起こり、その部分が壊死してしまうことをいいます。 「圧迫による軟部組織の虚血性壊死」と定義されています。

褥瘡の機序褥瘡グラフ

骨の飛び出した部分が特に圧迫を受け循環障害を起こし、それが長時間になると壊死に至る

人医学の教科書には、褥瘡の原因と予防・治療について、次のようなことが書かれています。

ヒト  
1.体圧分散
  (除圧・減圧) 
:低反発マットレスなどベッドの改良。寝返りをさせる。
2.栄養管理 :痩せすぎると骨が飛び出して痛いのでそれを予防する。
3.基礎疾患の管理 :なぜ寝たきりなのか、その原因を治療する。 蹄底潰瘍の好発部位
4.局所療法 :早期発見・早期治療。

 

牛の蹄底潰瘍には好発部位があります。主に後肢外蹄の、蹄骨端の直下によく起こります。骨とコンクリート床の間で真皮が圧迫されて壊死が起こります。つまりヒトの褥瘡と発生機序が同じなのです。

そこで、上記のヒトの褥瘡の治療方法を、牛の蹄底潰瘍に読み替えてみます。

1.体圧分散
 
(除圧・減圧)

:蹄全体に正しく負重できるように定期的な削蹄を行う。通路にゴムマットを敷くなど、コンクリート床のクッション性の改良。
(床を柔らかくすると、蹄が摩耗しないので伸びすぎる心配をしがちですが、実際は逆で、蹄底への刺激が少ない方が蹄の成長は遅いようです。)
2.栄養管理

:エサのバランスをとってエネルギーや蛋白質の過不足をなくす。
(蹄葉炎など、栄養性の蹄障害を防ぐ。)

3.基礎疾患の管理 :なぜ立ったままなのか、佇立の原因を除去する。
(待機場での拘束時間、寝起きを躊躇させるようなベッド構造、弱い牛が追いつめられるような牛舎構造、お腹が空いているのにエサがない。暑熱やサシバエ。)
4.局所療法 :早期発見・早期治療。


私たちは蹄病治療の研鑚に努めていますが、獣医師が外科処置によって蹄底潰瘍に関与できるのは、最後の「治療」だけです。蹄底潰瘍を減らすのは、削蹄師さんの定期的な削蹄と、酪農家さんの日々の管理にかかっています。

2004/06/27