双子について

双子の子宮

・直腸検査で双子が診断できるの?

できます。しかし100%ではありません。私自身の過去のデータに当たってみたところ触診のみで75%くらい、超音波エコーを用いた場合で93%の確率で見つけています。40日前後の妊娠鑑定において、2つの妊娠黄体と2つの羊膜嚢、超音波ではtwinlineと呼ばれる特徴的な所見で双子を見つけることができます。(双子の診断について獣医畜産新報 JVM Vol.59 No.5 2006 に拙文を投稿しておりますので、ご参照下さい。)

・妊娠鑑定で双子を見つけた場合、片方を手で圧迫してつぶすこと(羊膜嚢破砕)で、単胎にできるか?

スペインのLopes-Gatius先生は双子妊娠牛を33頭集め、11頭ずつ3群に分け、次のような実験をしました(2005)

・無処置群 11頭 3頭が自然に流産、残り8頭は双子を出産。
・片方だけ手でつぶした群 11頭 11頭すべて双子両方とも流産。
・片方手でつぶし、流産防止のためCIDRを入れた群 11頭
6頭が両方流産、4頭が単胎無事出産、1頭は双子を出産。

3頭は自然に流産するので、残りは8頭。4頭を単胎にできたというこの処置は、すなわち成功率5割ということです。 やってみたいですか?

・何故双子が増えてきたの?

近年双子は増加傾向にあります。この現象は特に高泌乳牛群において顕著です。この理由について、学会で最近定説となっている、2個排卵の機序について以下に記します。
遺伝改良の進んだ高泌乳牛は飼料摂取量が多いため、消化管への血流量が多くなっています。消化管で吸収した栄養を肝臓へ運ぶため、消化管を通った血液は一旦「門脈」と呼ばれる血管に集まって、そのすべてが肝臓に入ります。すなわち、高泌乳牛では肝臓に流入する血液量が大きくなっています。
発情ホルモンは肝臓で代謝されるので、肝臓への血流量が増えると発情ホルモンの代謝が早くなってしまいます。つまり現在の高泌乳牛は、排卵前の発情ホルモンが昔に比べ早く低下します。(最近の牛の発情が弱く短くなっているのはこういうことだったのです。)
発情ホルモンは発情を起こさせるだけでなく、次の卵胞が育ってくるのを抑える働きもあります。ホルモンの代謝が早いと、主席卵胞の出すホルモンだけでは次席卵胞の発育を抑えきれず、主席と次席の出すホルモン量を合わせてやっと第三の卵胞の発育を抑えることができ(親分の力が弱くなるとナンバー2が台頭してくるようなもの?)、結果、2つの成熟卵胞ができ2つ排卵する確率が高くなるということです(Sangsritavong, 2002; Vasconcelos, 2003; Wiltbank et al., 2004)。

・双子は予防できる?

1回の飼料給与量を1/4に減らし頻回給餌に切り替えると、同じ飼料摂取量でも肝血流量の急激な上昇を抑えることができて、性ホルモン濃度の急激な減少を防止できる可能性があるというデータを、Vasconcelosという研究者が示しています。つまり、「スラグフィード(ドカ食い・かため食い)」を起こす要因、すなわち暑熱ストレス・サシバエ・定員過剰・起立困難なベッド・蹄病・EBS(空の飼槽症候群)などを除去し、少量頻回給餌やこまめなエサ押し、削蹄、ベッドの管理などをすることで、双子を減らせる可能性があります。またスラグフィードは飼料摂取量低下の大きな要因ですので、これに取り組むことはとりもなおさず牛の健康と生産性の向上につながります。

・早めに乾乳し分娩時に注意繁殖ボード

双子を見つけた場合、繁殖管理ボードなどに大きく表示(写真)して、分娩時まで意識するようにします。双子は流産率が高く、両側性で8%、片側性で35%が90日までにロスした(Lopes-Gatius, 2004)という報告もありますので、分娩まで十分に警戒し、再発情があった場合はすぐに獣医師に妊娠再確認を依頼しましょう。また、双子妊娠牛は2週間早めに乾乳し、クローズアップも10日ほど早くします。これは、早産するものが多いことと、胎児の栄養要求量が単胎の場合に比べ、急速に増加するためです。分娩前からハイリスク牛として扱いクローズアップの飼料を変更するなど、双子妊娠牛のための特別な管理プログラムがいろいろと提案されています。双子妊娠牛はむしろ無乾乳の方が良いと勧める獣医師もいます(Santos 未確認)。さらに、胎勢異常を起こして難産となるものが多いので分娩時には注意します。またごく稀に双子の片方が死亡して吸収され、単胎となって出てくるものもあり、それが雌であった場合はフリーマーチンの確認が必要です。

現在双子の発生率は、牧場により5%〜15%であり無視できません。「双子は調子悪い」「双子は仕方ない」とあきらめず、積極的に管理に取り組んで、双子の予防につとめ、双子妊娠牛を摘発し、見つけた双子妊娠牛には特別な管理を行って、母子ともに元気に分娩させましょう。

2007.5.7. Kazunori Ishii

 

赤アッガイ「愁うることをもちいざれ 宜しく方便を求めて 必ず本願遂ぐべし」(心配することはない てだてを講ずれば 必ず目的を達成することができる) 鑑真和上