・何故双子が増えてきたの?
近年双子は増加傾向にあります。この現象は特に高泌乳牛群において顕著です。この理由について、学会で最近定説となっている、2個排卵の機序について以下に記します。
遺伝改良の進んだ高泌乳牛は飼料摂取量が多いため、消化管への血流量が多くなっています。消化管で吸収した栄養を肝臓へ運ぶため、消化管を通った血液は一旦「門脈」と呼ばれる血管に集まって、そのすべてが肝臓に入ります。すなわち、高泌乳牛では肝臓に流入する血液量が大きくなっています。
発情ホルモンは肝臓で代謝されるので、肝臓への血流量が増えると発情ホルモンの代謝が早くなってしまいます。つまり現在の高泌乳牛は、排卵前の発情ホルモンが昔に比べ早く低下します。(最近の牛の発情が弱く短くなっているのはこういうことだったのです。)
発情ホルモンは発情を起こさせるだけでなく、次の卵胞が育ってくるのを抑える働きもあります。ホルモンの代謝が早いと、主席卵胞の出すホルモンだけでは次席卵胞の発育を抑えきれず、主席と次席の出すホルモン量を合わせてやっと第三の卵胞の発育を抑えることができ(親分の力が弱くなるとナンバー2が台頭してくるようなもの?)、結果、2つの成熟卵胞ができ2つ排卵する確率が高くなるということです(Sangsritavong, 2002; Vasconcelos, 2003; Wiltbank et al., 2004)。
・双子は予防できる?
1回の飼料給与量を1/4に減らし頻回給餌に切り替えると、同じ飼料摂取量でも肝血流量の急激な上昇を抑えることができて、性ホルモン濃度の急激な減少を防止できる可能性があるというデータを、Vasconcelosという研究者が示しています。つまり、「スラグフィード(ドカ食い・かため食い)」を起こす要因、すなわち暑熱ストレス・サシバエ・定員過剰・起立困難なベッド・蹄病・EBS(空の飼槽症候群)などを除去し、少量頻回給餌やこまめなエサ押し、削蹄、ベッドの管理などをすることで、双子を減らせる可能性があります。またスラグフィードは飼料摂取量低下の大きな要因ですので、これに取り組むことはとりもなおさず牛の健康と生産性の向上につながります。 |