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紫式部

.     十 月 句 会 吟 行 (互選)
                    

5 紫苑咲く二間つづきの虚子旧居         三浦 政子
4 信濃路の田毎に稲架の乾きをり
3 秋気澄むのぼり下りの旧街道
3 くらべみる白と紫式部の実
3 味噌倉の通しトロッコ秋の風
1 菊咲くや二十七貫力石
1 紅葉して八幡宮の大欅
1 あのあたり浅間と云へり霧の中
1 栞りたき蔦の紅葉や大欅


5 路地細くめぐりし句碑や式部の実        横手  季
3 指でなぞる笠石句碑や一位の実
3 句碑巡る浅間は霧に隠れをり
3 町並みは古きロマンや柿熟るゝ
2 白壁に朝顔映る古館
1 触れてみし欅の古木初紅葉
1 虚子舊居一巡りして秋の暮
1 紫苑の丈計る人をり虚子舊居


3 霧少し霽れて浅間の裾らしき          薄井 逸走
2 閉められていれば覗かん秋の堂
2 乗り降りのなき山の駅蔦紅葉
1 来てみれば浅間は霧に隠れをり
1 秋冷や一番線に列車待つ
1 秋冷や柱時計は刻を打つ
1 秋冷の雲低くして暮れにけり
1 トンネルを抜ければ霧の駅となる


2 秋風や舟石玉石力石              松原 利恵
1 真向に浅間半分霧流る
1 傘石の頭なでやり新松子
1 秋深し虚子愛用の矢立あり
1 信濃路のさくら紅葉はまだ早し
1 名の知れぬ茸抱き込む大けやき
1 その中に黄葉のあり呑竜寺
1 りんご喰む風は信濃の香を乗せて


2 三層の霧にはばまれ浅間山           三浦 秀水
2 葉をつけた渋柿一つころがりぬ
1 散歩路紅葉散り敷く宮居かな
1 信州は麺と決めおり走り蕎麦
1 廃線の旧舎はレトロ蔦紅葉
1 朝顔を見上げる高さ味噌老舗
1 ほおけたる紫苑は五本虚子居宅 
   

3 コスモスの少し悲しき虚子の道         杉山佐都子
1 柿たわゝくずれし屋根を侵しおり
1 打ち粉音聞きて伝授の蕎麦すゝり
1 信濃路の秋色めぐり食めぐり
1 曇天をゆさぶりたきし吟行路
1 つた紅葉駅石垣にはりつきし


3 虚子の句碑ある御社は秋寂びて         中村如水
1 神苑のけやき大樹は薄紅葉
1 虚子庵の庭に紫苑の乱れ咲き
1 稲架ぶすま見つゝ信濃のそぞろ道


2 山の中霧の底なる刈田かな          花岡上尾亭
1 松茸や雨くるらしき空仰ぐ
1 ゆれゐるは大木ならず秋の暮
1 稲刈の遅れがちなり葱の村


3 秋雲に触れて傾く大けやき           坂井 翠波
2 大欅天蓋として秋の句碑
1 蔦紅葉茂るままなり無人駅


2 霧深くみえざる浅間を返りみる         小山田柏泡
1 ホーム背に蔦紅葉して無人駅
1 虚子庵に紫苑の句を添え紫苑咲く




   吟行句会(二)

5 高梯子とどかぬ先の木守柿           三浦 秀水
2 狭霧消え目覚め初めたる佐久の町
2 小流れの水は脹れて枯尾花
2 湯泉煙を透かす紫苑の崩れ咲き
2 稲架襖濡れて重たき今朝の雨
1 八幡宮落葉の積もる広さあり
1 山並は黒く静かに秋の暮
1 芒の穂丈けて隠れる杣の家
1 山紅葉彩さまざまに違いあり


4 枯葎夜来の雨にうなだれて           松原 利恵
2 山襞に添うて朝霧消え失しぬ
2 秋茄子の紫紺の香る朝の膳
2 秋雨をはじきかけ込む佐久の宿
1 ありなしの風に紅葉の舞い上手
1 あこがれた宿の夕餉に茸なし
1 朝霧や山並添いに流れをり
1 朝霧をすっぽり抱く浅間山


4 葡萄喰む種を出すとか出さぬとか       三浦 政子
2 佐久平それより遠き山の霧
1 高原の爽気いっぱい窓開けて
1 留守宅の犬のことなど秋深し
1 地場産の秋野菜売る宿の朝
1 畑隅の小菊の色のくくられし
1 高原の小松菜青し雨あがり


5 秋灯を消されて奈落仕舞風呂          横手  季
3 秋桜雨にしだるる終ひの色
2 眠れぬと云いつつ寝入る夜長人
1 秋雨に濡れて菜園青々と
1 宿売店松茸高価に香をはなつ
1 秋深し身をゆだねたる野天風呂


3 山しぐれ遠峯忽ち雲の中            坂井 翠波
3 含みけり信濃の宿の温め酒
2 山裾に眠る集落秋深し
1 山の駅下りれば濃紅葉薄紅葉
1 新そばを打つ音腹へひびきけり


2 そぞろ寒おしゃべり過ぎて刻を越し      杉山佐都子
2 やわらかき寝息それぞれ秋時雨
2 朝風呂に入りて朝餉の秋茄子
1 朝霧の帯引く浅間姿見ず
1 物の音あつまりて消す秋時雨


1 秋霖に閉ぢ込められて宿燈火          薄井 逸走
1 露店風呂雨は落葉を打ってをり
1 行く秋の梵鐘揺れず黒を増す
1 もみじ葉の振り込むことも露天風呂
1 読みかけの本を閉ぢれば秋の駅


3 サルビヤのまだ盛りなる秋日差し       小山田柏泡
2 八ツ手のみ艶めく秋の露店風呂
1 朝冷えや宿三階の窓の風
1 コスモスの雨に打たれて径狭む


3 秋の朝刻刻かわる山容             中村 如水
1 やゝ寒にベストの衿を立てにけり
1 朝寒や山峰雨にけぶりをり


2 枝つづき欅黄葉の空に入る           花岡上尾亭
1 朝顔や永劫太き蔵の梁
1 山の鳶平らにとびぬ紅葉狩り



    句  評  (みんなで先生)

指でなぞる笠石句碑や一位の実           横手  季
  掌でなぞる・・・・ではどうか(柏泡)

人の顔光ってをりしりんごかな           花岡上尾亭
  顔写すりんごの熟れて艶めけり(柏泡)  
高梯子とどかぬ先の木守柿             三浦 秀水
  高梯子とどかぬ先の柿たわわ  では(政子)

あこがれた宿の夕餉に茸なし            松原 利恵
  佐久の宿期待の夕餉茸なく(政子)




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青梗菜(チンゲンサイ)


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  十一月 句 会 (互選) (特・○○)は特選(選者が今月一番の句と選んだもの)

5 冬めくや疎林に入日燃えてをり (特・柏泡)   横手  季
4 回廊を借りて昼食神の留守
4 冬めくや追ひ焚きをして終い風呂 (特・翠波)
3 神の留守みくじほどけてゐたりけり
3 句碑の辺の風音ばかり神の留守
2 冬めきて青菜のうまみ増しにけり
1 神の留守禰宜の商ふ力餅


3 冬めくや指先乾く厨妻             松原 利恵
2 神の留守あっけらかんと掌を合す
2 冬めくや街路樹すでにささくれし
1 冬めくや童の遊び変りつつ
1 冬めくやまる脊まるめて過疎の女 (特・上尾亭)
1 立冬やここぞとばかり契約す


6 狛犬の貌変わらずや神の留守          小山田柏泡
3 日溜まりに集いし衆や冬めきて (特・政子)
  3 神の留守なれど燈明あかあかと (特・季 秀水)
  1 街路樹も枝払われて冬めきぬ
1 神の留守神を招いて地鎮祭 (特・逸走)


3 意を決し解雇を告げる神の留守 (特・佐都子)  薄井 逸走
2 それ程の落葉でなくて掃き疲れ
2 冬めくや取り残されし都会畑
1 高熱に伏して三日よ神の留守
1 辻地蔵落葉の嵩の中にあり


2 あれやこれ迫れる日々に冬めきて        杉山佐都子
2 快復のきざしなき日々神の留守
2 冬めけり耳を引き締め交差点
1 乳母車ふかぶかと着せ冬めけり
1 風を切るペタルの重さ冬めきて (特・利恵)

2 冬めくや傾くままに道路鏡           坂井 翠波
2 神の留守賽せし音もひそとなる
1 神の留守作務衣の禰宜の神座掃く
1 冬めくや山峡に風吹きやまず
1 冬めくや遠山紺を深めけり


2 冬めくや一歩一歩の札所みち          三浦 政子
2 冬めくやバス終点の時刻表
1 神の留守秩父夜祭りあといく日
1 冬めくや山家の暮し垣間見る


2 間伐の斧こだまして冬めける (特・如水)    三浦 秀水
2 葦刈られ湖広々と冬めける
1 滝涸れて赤壁迫る水潜寺
1 御手洗木の葉のまつわる神の留守
1 神馬小屋木の葉舞込む神の留守


2 冬めくや腰痛じょじょに痛みだし        中村 如水
1 短日や不動の滝の荒あらし
1 ビル街の狭間の神も留守と見ゆ
1 巫女溜り華やぎ見える神の留守


1 はじまりも終わりもしずか木の葉ちる      花岡上尾亭



  席 題   七五三(秀水さん出題)

3 七五三バス待つ列の行儀よく          薄井 逸走
2 嫁姑着飾りており七五三            横手  季
2 病床に祖母の目のあり七五三          松原 利恵
2 昔より変わらぬ飴の七五三           杉山佐都子
1 振袖に鳩は追はれる七五三           三浦 秀水




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アークヒルズにて


.   十二月 句 会 (互選) (特・○○)は特選 (選者が今月一番の句と選んだもの)


4 一本の色鉛筆で描く枯れ野 (特・季・佐都子)  薄井 逸走
4 廃線の鉄路そのまゝ枯れ野駅
4 日の当たる枯れ野にひとつ水溜まり
3 やわらかき陽射しのありて冬座敷
3 一両の電車や枯れ野無人駅
1 荒海へ向いて枯れ野の伏してをり
1 冬座敷幸せすぎる不幸せ
1 掛け軸にある右ひだり冬座敷


  4 野の枯れて見えざるものの見えてきし (特・如水)横手  季
4 葱太し赤城颪に真向かひて
2 子等巣立ち夫も旅立ち冬座敷 (特・翠波)
2 冬座敷猫かすがいに老夫婦
2 初霜や土のきらめく休耕田
1 庭枯れて失せし木鋏見つけたり (特・柏泡)
1 寒菊の陽を恋ふ如く庭の隅


4 六地蔵すべて伏し目や枯れ野道 (特・政子)   坂井 翠波
2 冬座敷母の遺影に見詰めらる
2 巡り来て霊峰仰ぐ枯れ野道
1 枯れ野道遙かに仰ぐ磨崖仏
1 冬座敷義士祭を見し気のほてり
1 枯れ野原はるか生計の煙立つ


3 枯野原夕日に傾ぐ地蔵尊            松原 利恵
3 トラックター巧に操りし枯野原
2 ひとときは声のはじける冬座敷
2 置きものの顔燦々と冬座敷 (特・上尾亭)
1 枯野原犬とたわむることラッキー
1 ニコライの鐘の音透ける冬座敷


3 冬座敷真横によぎる鳥のかげ          三浦 政子
2 冬座敷辞すしおどきのなきままに (特・利恵)
2 冬座敷籠れば電話鳴りて止む
1 ゆきあへば会釈してしてゆく枯野人
1 単線の車両ひびかせ枯野ゆく
1 往きなれし老犬が引く枯野みち


2 山の宿きしむ足音冬座敷            杉山佐都子
1 おいでやす和らぐ言葉冬座敷
1 一歩入る凛と張り来る冬座敷
1 雑音を聞きて師走の街急ぎ
1 舞い降ういちょうのさまを見とどけし
1 束の間を枯れ野に遊ぶ孫と婆


4 SLの煙り這わせて枯野かな          三浦 秀水
3 豪農の襖重たき冬座敷
3 曳き上げし川船跡の枯野かな
2 冬座敷暗れるに早き日の流れ
1 一列に枯野でバス待つ過疎の子等


4 墳丘に日のあたりたる枯野かな (特・秀水)   中村 如水
1 総持寺の回廊古りて冬紅葉
1 窓開けて朝の換気や冬座敷


3 冬の蠅寒暖計をのぼりゆく           花岡上尾亭
1 お喋りの記憶や冬のゴマせんべい (特・逸走)






誤配と手違いにより、柏泡さんの投句を句会に出すことができませんでした。申し訳ございません。

 まだ冷えし冬の座敷に招かれし          小山田柏泡
 人気なき冬の座敷の広々と
 陽射し差す障子明るき冬座敷
 そこそこに暇乞せり冬座敷
 草枯れし荒野に落日の早かりし
 年老いて枯野に佇てば風寒し
 夕陽のみ燃えてわびしき枯野かな
 補修まだ荒放題の枯野径




表紙は、六本木アークヒルズのイルミネーションです。
写真クラブの撮影会で、十五日、雪の日の前日に行きました。寒かったこと、寒かったこと。
撮影会は吟行に似ています。同じところで同じものを見て写したはずが、人それぞれで違うのです。
先生の写真には、目の付け所が違うことを教えられます。 構えた位置や角度が少し違っただけでこんなにも違った写真になるのかと関心の連続です。

写真の感覚を俳句に生かせれば、俳句の感覚を写真に生かせれば、 と思うのですがコラボレーションはままなりません。
写真の先生は「季節に敏感でなければ写真は写せない」と言います。うかうかしてられません。

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