管内(内径、塗装)についての考察

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問答」では、 外から見て判断できる「巻き」「塗り」「材質」と耐久性・音色などの関係について 一般的な知識をまとめました。
しかし、実際に音が出るときは管内の空気が振動するわけですから、 外から見えにくい管内の状態のほうが影響が大きいと考えられます。
篠笛などの横笛を製作される方にとっては特に関心の深い話題ですね。
笛の性能に関係していると思われる要素をリストしてみます。

【管の内径分布】

篠竹の場合、一般に根元のほうが太く、先端のほうが細くなっています。(図1、太さの変化は誇張)
この形状は「逆円錐管」と呼ばれます。
太いほうを歌口側、細いほうを管尻側として横笛を作るのが一般的です。
一方、蓬莱竹や塩ビパイプでは、だいたい太さが一定の「円筒管」です。(図2)
(天然の竹にはばらつきがありますので、円筒管に近い篠竹、逆円錐管と見たほうが良い蓬莱竹もあります。)
図1・2:逆円錐管と円筒管
・逆円錐管と円筒管では、音の高さ・音色・オクターブ比・音量などの要素が、どのように違うのか?
・逆円錐管の傾斜(最大内径と最小内径の比率)を変えると、どのように違いが出るか?
・円錐管(ラッパのように、管尻のほうが太い)の場合は、どうなるのか?(オーボエ、サックス型)
・歌口付近のみを円錐管にするとどうなるか?(西洋フルートの頭部管)
・管尻部分のみを円錐管(ラッパ状)にするとどうなるか?(クラリネット型)
・実際の竹の場合はテーパー(傾斜)が直線的でなく、ふくらんだりしぼんだりしているでしょう。 曲面テーパーの影響は?
・能管は、歌口と指孔の間に「のど」という、内径が狭くなった部分があります。その影響は?
・能管と逆に、歌口と指孔の間の内径を広げると、どういう結果になるか?

【参考になる研究】
★逆円錐管の曲面テーパーと音の高さ(開口端補正、調律に関係します)
Bingoさん: 「バロック・リコーダーの内径形状と基本音の共鳴振動数」
→「直線テーパーよりも内径が広がると、音の高さが下がる」という結果になったそうです。
→「管の中央を狭くすると、基本音は上がるのに対して第2倍音は下がり、オクターブが狭くなる」という興味深い結果も報告されています。

★能管の「のど」と音の高さの関係、プラ能管の自作
中根東八幡社さん: 「塩ビ管(水道管)で能管を作る」
→「能管の『のど』(内径が狭い部分)は、呂音(第1オクターブ)にはあまり影響しないが、甲音(第2オクターブ)の歌口側の音程を下げ、管尻側の音程を上げる効果がある。そのため、能管の甲音は音程が圧縮されて微分音になる。」という、非常に明瞭な結果が出ています。

※推測ですが、逆に「のど」の部分の内径を広げると、甲音の歌口側の音程が上がり、管尻側の音程が下がる方向に作用するのではないでしょうか。つまり、一般的な横笛のオクターブ比の改善に役立つかもしれません。
内径の盛り・削りによる調律技術が発達している尺八では、この「のど」部分を広げる調律方法も行われているそうです。

【管内の塗り重ねの厚さ】

管内に塗料を塗ると、塗膜の厚みだけ内径が狭くなります。(図3、厚みは誇張)
図3:管内を塗ると内径が狭くなる
全体の内径が狭くなることによって、どの程度の影響があるのか定かではありませんが、
・全体の調律が少しだけ高くなる?
・調律のバランスが少し変わる?
ことが予想されます。
また、歌口・指孔の壁に塗り重ねた場合は、その穴の内径が小さくなる効果があると考えられます。

OH!zanさんによると、塗膜の厚みの目安は
・漆を薄く塗ると0.01mm
・カシューなど、合成塗料は0.03〜0.05mm
だということでした。これを無視できる厚みと考えるか、 けっこう大きな差だから計算に入れておくべきと考えるかは、経験で判断するしかないでしょう。

【簡易試算】
内径13mmの円筒管で、八本調子唄用篠笛を作成するとして考えてみました。
カシューを2度塗りすると内径(直径)が0.05×2×2=0.2mm狭くなる計算です。
狩野さんの実験(中根東八幡社神楽)を参考にして、開口端補正への影響を試算します。

【筒音】
内径13mm、実効管長340mm(八本調子、筒音):開口端補正32.4mm
内径11mm、実効管長340mm(八本調子、筒音):開口端補正24.2mm
この実験データ補完値から、内径と開口端補正の直線補完近似式を求めると
開口端補正=4.1×内径−20.9

カシュー2度塗り後の内径=12.8mmなので、開口端補正31.58mmです。(-0.82mm)
塗り前後での周波数の比は波長に反比例しますので、 (32.4+340)/(31.58+340)=1.0022倍
この周波数変化は、約3.8セントの音程上昇に相当します。

【運指「七」】
内径13mm、実効管長120mm(八本調子、運指「七」):開口端補正45.5mm
内径11mm、実効管長120mm(八本調子、運指「七」):開口端補正34.5mm
この実験データ補完値から、内径と開口端補正の直線補完近似式を求めると
開口端補正=5.5×内径−26

カシュー2度塗り後の内径=12.8mmでは開口端補正44.4mmとなります。(-1.1mm)
塗り前後での周波数比は(45.5+120)/(44.4+120)=1.0067倍
つまり、約11.6セントの音程上昇に相当します。

【結論】
筒音が約3.8セント上がると予想される。
運指「七」の音が約11.6セント上がると予想される。
運指「七」が、筒音に対して約7.8セント上がると予想される。
調律のバランスが狂うわけです!

これは、ものすごくアバウトな試算ですが、プラスマイナス5セント〜10セントの精度で調律を行いたい人にとっては、無視できない狂いが生じることになります。

【管内の平滑度】

管内が平らでなかったり、ゴミが付着している場合、空気の摩擦によって何らかの影響が生じるはずです。(図4、凹凸は誇張)
図4:管内の凹凸
例えば、
・摩擦が大きくなる→音速が遅くなる→開口端補正が長くなる?(音が低くなる?)
・「管の長さ方向に並行な溝」が適度にある場合、響きが良くなる?という説もあります。
これはもう、複雑すぎて理論では説明できないでしょうね。経験が頼りです。

2006/08/11

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