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重大事故を起こしたことがある講習プログラム

 

1.   プールの底、もしくは海の水底に身体を落ち着けての息こらえ競争、もしくは練習。

 

 以前にテレビ番組で小さなプールをしつらえて、タレントが息こらえをする競争をしていた。タレントと言う人たちは、番組のためならば命をかける。やがて、二分を越え、三分を越える人がでてきた。番組の場合には、カメラも見ているし、見張っている人がたくさん居るから大丈夫だろう。それにしてもそろそろ、意識不明(ブラックアウト)する人が出てくるころかなと思っていたら、危ないからとこのテーマは打ち切りになった。

 人が監視していない状態で、息こらえを長くしようとして、水中で息こらえ時間を長くする練習を独習するのは非常に危険である。限度を越えると、殆ど苦しまずに意識を失ってしまう。自殺にはとても良いかもしれない。

 

2.   水深5m以上のスキンダイビング

 

 講習ではなく、自己責任において行うスキンダイビングは自由である。好きなだけ深く潜っても良い。ただし、だれもそのことで責任も追わないし、救助もできるかどうかわからない。

 事故があれば責任を追及される講習としては、水深5mをスキンダイビングで越えるべきではない。

 

3.   手に余分なウエイトを持ってする立ち泳ぎ

 

 陸上で心拍トレーニングに使用するトレッドミル、水泳で同様の働きをするスイミングミルがあるが、これと同じようなことを簡略にすることができる練習としてウエイトを余分に持って立ち泳ぎする練習があった。

 トレッドミルとは、回転する歩道で回転を速くすれば速く走らざるを得ない構造である。また歩道に傾斜をつけることも出来る。回転と傾斜で歩道に乗って走る選手に意図したとおりの負荷を掛け続けることが出来る。心電図測定機器,血圧測定機器などを身体につけたまま、つまり、コードを身体につけたままで走ることが出来るので、心臓機能のチェックなどにも使用される。

 スイミングミルは、横から観察できる大きなガラス窓のついた小さな水槽で、水流を流してやり水流に逆らって泳ぎ続ける。フォームの改善とチェックができる。

 ダイビングの場合には、水深3m程度のプールで、標準のウエイトを身体に着けた上に、さらに5キロから8キロのウエイトを手に持って、頭を水面上に出して立ち泳ぎをする。これによって、フィンを動かすフォームのチェックもできるし、すぐそばで監視を続けながら泳ぐトレーニングをすることができる。

 優れたトレーニング方法であるが、トレッドミルと同様に、自由に負荷を増やすことができるので、誤って負荷を掛けすぎてしまう可能性がある。

 トレッドミルと同様の成果が期待できるから、監視を強化し、心電図計などを装着して適切に行われれば効果的であるが、市民レベルで認められていないので、一般の講習としては行ってはいけない。

 これに代わるものとして、競泳プールなどで、タイムを測定しながら水平方向にフィン・マスク・スノーケルで泳ぐトレーニングに代えた方が良い。

 水平方向の競泳ならば、自分でペース配分をして泳ぐことができるし、一般のスイミング競技と同様と考えられるので、問題が起こらない。

 

4.   水深2m以上で行う水中脱着練習

 

 スクーバギアーとフィン・マスク・スノーケル、ウエイトベルト、身体につけた全部の器具を水中で脱ぎ、きちんと整理して水底に置き、浮上する。スキンダイビングで潜水して、置いてきた器具のすべてを順番に身体につける。

 後で述べる緊急浮上のためのものと考えられていた時代もあるが、スクーバ器材、フィン・マスク・スノーケルの水中での取り扱いに習熟すること、ウエイトの適正な選択によって水中でのバランスをとること、そして、水慣れするための効果が大きい。

 しかし、失敗すると急浮上するので、水深2m以上で行うと、肺の圧外傷を起こす可能性があるので行うべきではない。また、この練習はプールで行うべきであり、底が泥の場所で行うと水が濁ってしまって何も見えなくなり危険である。

 どの練習項目でも、次第に上達すると上を目指したくなる。この練習も最初は1.2mのプールで行っていても、次は3m、そして5m、ついには10mの水底で行うようになる。これはとても危ない。上達の方向を水深ではなくて、所要時間の短縮に向ける。 習熟とは、手早くしかも完全にできることである。1.5mで、最高タイムは1分を切る。

こうなると、神業に見える。

 水中脱着練習は、水深1.2〜1.5mのプールで行う。

 

5.   垂直方向への脱出訓練

 

 スクーバは、持っているタンクの空気が尽きてしまえば呼吸ができなくなってしまう。タンクの空気を使い尽してしまう、「エア切れ」である。昔、残圧計もなく、時計も普及していない、その上にタンクの充填圧も120s/cu(12MPa)であった頃、タンクのエア切れはスクーバの宿命のようなものであった。今では残圧計も完備して、時計も減圧コンピューターの時代に入っている。タンクの充填圧は200s/cu(20MPa)である。エア切れは起こしにくくなった。それでも、エア切れになったらどうするか、練習だけはしておかなければならない。

 

 @フリーアセントもしくはベイルアウト

 水中でスクーバ器材を脱ぎ捨ててフィン・マスク・スノーケルだけを着けた状態で浮上する。

 これは潜水艦からの脱出で行われる手法のコピーであり、一般のスクーバダイビングでは、たとえ空気がなくなってもこんなことはほとんどやらないし、危険も大きい。

 

 Aコントロールアセント

 緊急浮上法の種類とその呼び名は、しっかりとかたまってはいない。指導団体によって同じやり方を別の名前で呼んでいたりするが、一応の区別をしておく。

 ボイアントコントロールアセントは、BCDの空気を少しづつだしながら、浮力をコントロールしながら浮上する方法である。

 スイミングコントロールアセントは、BCDの浮力に頼らずにフィンの力で浮上する。

 いずれも、浮上速度をコントロールしながら浮上する方法であり、一般のスクーバダイビングでは,この方法で緊急浮上する。

 

 Bボイアンシイアセント

窒息死寸前で、死ぬか生きるか一発勝負でBCDに空気を入れてコントロールせずに一気に浮上しようとするものである。しかし、現在売られているBCDはタンクの空気が無くなってしまうと、空気を入れることもできなくなってしまうので、本当に空気が尽きるまでに空気をとりこんでおかなければならない。

 

 どの方法にしろ、垂直方向に浮上する練習を実際にやらない方が良い。この練習で死亡事故がいくつかおきている。もしもにそなえて、緊急浮上法の練習は必須であり、マンツーマンでやれば大丈夫と言う人もいるが、もしもにそなえて練習して、もしもになってしまったのでは洒落にもならない。

 練習はしないのであるが、知識として以下に緊急浮上法のやり方を述べておく。

 

 緊急浮上の方法

 一般に行われているのは、ボイアンシイコントロールアセントである。

 空気が尽き掛けたならば直ちに浮上にかかる。浮上しかけて水面に向かうにつれて、圧力が減少すると、タンクの空気が完全に尽きていても、あと一回ぐらいは吸い込むことができるので、マウスピースを口から放してはいけない。また、水を肺に吸い込んで肺の機能を失わせることがないようにするためにも、マウスピースを口から放さないようにする。BCDの空気を出し入れするインフレ−タを手にして操作が出来るような態勢になり、手を上に挙げてインフレ−タホースを上に伸ばす。これでBCDの空気が排出しやすくなる。頭を後ろに反らせるようにして水面をしっかりと見上げる。頭を後ろに反らせることによって、気道が開いて、肺の中の空気が出やすくなる。

 最初はフィンで数回掻いて浮上を始める。浮上するにつれてBCDの空気が膨張するから、浮上速度が速くなる。浮上が速くなったら、BCDの空気を排出させて浮上速度をコントロールする。水面まであと2〜3mになったら、BCDの空気を全部抜いて、浮上にブレーキをかける。浮上が一旦停止したならば、フィンで掻いて水面に顔を出す。水面に出たならば、直ちにウエイトを捨てて浮力を確保する。

 この方法は、水深20m〜10mからの浮上に適している。

 

 水に慣れていない初心者がこの練習を水深5mか6mからの浮上として行うと、危険が大きい。水深5mか6mであれば、そのまま上がればすむのであって、ことさらに緊急浮上をする必要は無い。

 

 緊急浮上の練習をしてはいけないとなると、どうするのか。水平方向で垂直浮上のシミュレーションになるエアーステーション練習、スノーケリング練習を積み重ねて水に慣れてもらうのであるが、その詳細については、別項で述べる。