中田誠君のダイビング「生き残りハンドブック」を読んでいる。買ったのはずいぶん昔で、1999年の出版だ。買った時にも斜め読みしたのだが、ばかばかしいと放ってしまった。
今、ま
自己責任について
中田誠君のダイビング「生き残りハンドブック」を読んでいる。買ったのはずいぶん昔で、1999年の出版だ。買った時にも斜め読みしたのだが、ばかばかしいと放ってしまった。
今、また自己責任のことなど書いているので、読みなおした。これが面白いのだ。
「こ れを読めば潜水事故で死なない:鷲尾」を前に紹介したけれど、問題なく中田さんの本が面白い。鷲尾さんは業界の人だけれど、中田さんはアンチ業界だから、 それも面白い理由の一つだけれど、筆力で、中田さんはすごい。面白く書く術を知っている。だからたくさん売れているのだと思う。
アマゾンで見たら、¥1 一円からあった。買ってみると良い。
これだけ宣伝したのだから、僕も言いたい放題言わせてもらう。
まず、例によって自分の事故、これが彼のルーツだ。
次 に多香子が見ることになった最後の景色と題して、パウイ(PAUI)のマスタースクーバトレーナーの資格を持つ中村さんのツアーに参加する。パウイなん て、鷲尾さんでは絶対に書けない。そこが面白い。中村さんは、「身長180cm弱で、スポーツマンとして体力に優れ、救急処置、溺者救助に関する専門的訓 練を受けていた。
ツアーは神津島で、海が時化ていたので、島の裏側にあるきれいなタイドプール千両池に行く、そして、泳いだあと、多香子さんは 腹痛を起こして、海側の岩の陰で用を足そうとする。そして、高波のために海にさらわれる。仲間の男性が飛び込もうとするのを中村さんは二重遭難をおそれ て、引きとめる。そこにフィン・マスク・スノーケルがあるのに、溺者救助の資格のある中村さんも飛び込まない。結局、救助を呼びに行った仲間と同行してき た木工所の所長が飛び込もうという段になって中村君も飛び込む、彼女が落ちてから、50分後である。そして島を回って救助にきたボートに引き上げるが、落 命した。
実はこの事故は僕も良く知っている。ご両親から相談を受けたことがある。しかし、僕は自分では書く勇気はない。中田君が書いてくれたから、引用の形で論ずることができる。
一つ重要なポイントがある。このとき、陸上にはクーラーボックスがあったのだ。十分に浮力がある。中村君は、二重遭難を引きとめる冷静さがありながら、こ のクーラーボックス使わない。この点が訴訟で問題になって、60%の過失責任を請求される。溺者救助の第一は、浮力体を使うことを教えられているはずだ。
ところで、インストラクターの皆さんだったらどうするだろう。講習会で、ITC受講生に聞いたことがある。全員、飛び込むであった。
僕 だったら?今の僕はたいしたスポーツマンでもないし、溺者救助の訓練は嫌いだから受けていないが、とにかく飛び込む、そして、全身傷だらけになっても、波 に乗って、岩に登ろうとする。力尽きて二人とも死ぬかも知れない。彼女をあげて、自分が死ねばベスト、最悪、彼女が死んで、自分が助かったとしても、それ は仕方がない。
だからパウイは信じられない。レスキューコースなんてお遊びだ。自分を殺して人を助けるのがレスキューのはずだ。
イン ストラクターが100%悪いというのだが、裁判の結果、多香子さんも40%の過失があると、中田さんの本に書いてある。どこが本人の責任なのだ。インスト ラクターに指示されたことを丸ごと信じたからだろうか。22歳の女の子が腹痛で岩の陰に回った時、波の高さの危険が判断できるのだろうか。
せっかく中田誠先生の著書を紹介したからもう少し使わせてもらおう。
事故にならずにすんだ「出来事」という章で、自分で危なかったなあ、という体験をした人からアンケートをとっている。
36例あげているが、全部というわけではないが、共通して言えることは、スキンダイビングをやらない人、やらなかった人が多く、ほとんど全員がガイドとかインストラクターに頼っている。
僕としては、こういう人たちはあまり難しい海には行かない方が良いのではないかと思う。
中にはものすごいのがあった。ガイドとじゃれあってバルブを閉められたというのがある。
そして、水深8mから緊急浮上したと書いてある。
こういうところが中田さんの本の面白いところなのだが、下手をすれば殺人罪だ。日本ではじめてのダイビング事故で殺人罪で書類送検なんてことになる。
事故の原因はショップの教えぶりで、あんまり教えすぎると自立して勝手に潜りに行っちゃうのでショップの経営には望ましくないことですから。という意見もあった。
中田さんの解決方法は、いかにして信頼できるショップを選ぶか、信頼できるインストラクターを探すかである。
そのあたりが僕と意見がちがうところで、パウイの中村さんのように、強いインストラクターでも、インストラクターなど頼りにならないと書いていながら、頼りになるショップ、インストラクターを探す。
僕の意見は、もう、インストラクターもショップもガイドも、自分の命については頼りにならない。どんなに優れていてもダメである。
割り切らなくてはいけない。自立した上で、協力しあって楽しい、グループを見つける。ショップを見つける。インストラクターやガイドダイバーと付き合う。
自分は自立しているから、ショップやインストラクターに費用をとられるのは嫌だ土いうならば、一人で出かければ良い。それが、どれほど危険なものか学習できるはずである。
僕の周辺は、僕を守ってくれるお客ばかりだから、僕も安全、みんなも安全だと思っている。高齢である僕をフィジカルに守るのが嫌ならば、どうぞ他所に行って欲しい。スクーバダイビングはメンタルな活動だと思っている。僕はメンタルな面で皆を守る。
望ましいインストラクター編で中田さんは、「男性であろうと女性であろうと、講習を行うインストラクターは、フルに器材を装備した事故者を浜まで曳航して引きづり上げるだけの体力が必要です。」と書いている。
今の僕は当然失格だし、女性インストラクターのほとんどは失格する。昔、僕もそのように考えていたことがあって、1967年発足の日本潜水会は、1973年に全日本潜水連盟になるまで、女性はアシスタントどまりだった。
女性インストラクターの1号は、女優の応蘭芳で、彼女は大奥女優だったけれど、そのころのPADYのインストラクター講習で、伊豆海洋公園の岸でファイアマンキャリーで事故者を引きづり上げた。今一歩で脳天逆落としになるから、担いで上げるのはやめたほうが良いけれど。
僕は、女性であろうと男性であろうと、泳ぐ早さが必要だろうと400mを7分以内という基準を作ったが、65歳で、7分が切れなくなった。インストラクターをやめたくないから、アシスタントにその基準を適用して、こちらもバディで指導している。
インストラクターは、必ずバディで、という基準を設けた方が良いのではないかと思う。
中田さんは、「あなたが講習中やファンダイビングの時に事故に遭ったら誰があなたを助けてくれるのですか」と書いている。助けてくれそうなインストラクターを選べということなのか、誰も助けてくれないという答えなのかちょっとわかりずらい。
誰も助けてはくれないのだ。
ついでに書いておくけれど、ゴリラのようなインストラクターでも、もしも4人のグループを引率して、事故になったら、助けてくれるのは一名様だけだ。その一名様は、先着順なのか、そのショップでフルセットを買ってくれた人なのか。どちらだろう。
良心的なインストラクターならば、先着順、商売熱心なインストラクターならば、購入したお客様、いずれにせよ、2番目以降は、もうダメだ。全日本潜水連盟 で40年近い歴史で、賠償責任保険を適用した死亡事故が2件あったが、そのどちらも、先着一名様を救助して、二番目以降のメンバーの事故だった。
前回
最後の方で例に挙げた二つの事故ですが、もう少し詳しく説明します。実際にあったことなので実名とか場所とかは書くわけには行きません。
事 故を起こして亡くなった人は、水泳は上手で、屈強な人で、プール講習では抜群の出来であり、海でも安定して見えました。そして、海での二回目の潜水の時で す。透明度は20m以上、水深は20mを越えていたと思います。波もなく、風もありませんでした。10人ぐらいのグループでの講習兼トレーニングで、責任 者のインストラクターは、陸上での総指揮をとり、アシスタントが2名のダイバーを連れて、三人で岸からのエントリーで潜水しました。
予定してい たコースを回って帰りかけた時、一人が不調を訴えて、浮上を始めました。アシスタントはあとを追って水面に浮上し、確保しました。もう一人は、ついてきて いません。一人を浮かせておいて、もどると、もう一人、二人のうちの上手な人の方でしたが、マウスピースを口から外してしまっています。
あわてて、口にマウスピースを押し込みますが、払いのけられ水を呼吸し続けようとします。争いながら浮上するのですが、その間に意識を失い。最終的には命をうしないました。
この事故でどこがまちがっていたか。後で理屈をつけたり、その現場に居なかった人はどうにでも言えるでしょう。二人のうちの一人が急浮上を始めたら、追う以外にない。
これは仕方がない。
海洋実習にしては、深すぎた。これが一番の原因でしょう。そして、初心者から見て、インストラクターは信じてはいけないのだけれど、インストラクターから見て、初心者は
たとえ水泳の達人のように見えても、フィジカル的に抜群に見えても信じてはいけない。
しかし、この事故は、もっと後になって、例えばタンク本数が10本でも20本でも起こりえるパターンだと思います。
一人のインストラクターが一組のバディを見るのは危ない。
インストラクターとアシスタント、あるいはガイドダイバーがバディになって4人、二組のバディを見るようにしていれば、この事故は起こらなかった。10人のグループだったのですから、フォーメーションをそのように作れば良かった。
ダイビング行動のマニュアルがあり、そのマニュアルを遵守していれば、起こらなかったと考えています。
賠償請求の訴えは、陸上で安全管理をしていたインストラクターと、一緒に潜っていたアシスタントを被告として起こりました。
ア シスタントは、賠償責任保険をもっていませんでした。まず、インストラクターは保険で解決できた。アシスタントは夜逃げするしかないでしょう。なんとかイ ンストラクターの保険で、原告にとって、被告は多い方が良い。まず、インストラクターの責任部分を取って、次にアシスタントの分を取ろうとする。弁護士と はそのようなものです。
なんとか、インストラクターの保険で、アシスタントまでカバーするように保険会社にお願いして解決したのですが、当時は まだ、保険会社も保険は支払う方向で営業を展開していました。その後、この保険会社は、契約をしてくれなくなり、別の保険会社と契約をすることになりまし た。今では、保険会社はできるだけ支払わない方向です。
一人のインストラクターが、二人のバディを見るのは危ない。二人が 四人を見る方が良い。二人で6人だったら、どうだろう。普通の講習で、ツアーで、必ず二人のスタッフが見ている態勢をとるのは、コスト的にとても難しい。 そうなると、倶楽部活動の場合、少し上手な、たとえばマスタークラスをフォーメーションの中に入れておく、これが普通に行われている方法でと思いますが、 その時に何かがあれば、仲間のマスターダイバーも被告にされます。
インストラクター、あるいはガイドダイバーの側からみれば、どこからか、絶対に自己責任、なにがあっても人を訴えない、という線を引かなければ、末は破産か、夜逃げ、自殺しか途がない。覚悟をしておくべきです。
もしも、その覚悟があったならば、パウイの中村さんは、命を賭けて飛び込んだのではないかと思うのです。
僕は後で自殺するならば、荒波に飛び込み活路を開きます。
自己責任の線をどのようにして引くか、それが今考えている企画です。