スクーバダイビング基礎トレーニングマニュアル
通常のスクーバダイビングは、次に示す11の動きで成り立っている。
1.エントリー
2.水面休息
3.水面移動
4.潜降
5.着底 ・停止
6.離底・浮揚・中層停止
7.水底移動
8.水中移動
9.浮上
10.水面移動
11.エキジット
水に慣れたダイバーは、これらほとんどの動作を無意識におこなっている。陸上を歩くのに特に意識しないのと同じである。
水になれていない初心者は、ひとつひとつについて折り目を付けて、形に留意しながら練習する。
注意:フィンワークについて
スクーバダイビングは、泳ぐダイビングである。魚のように自由に泳ぎまわれる人類の夢をかなえたものである。
だから、練習といえば泳ぐこと、泳ぐ練習であり、泳ぐ練習・スキンダイビング練習のくり返しで水に慣れ、水中での安全を獲得する
しかし、スクーバダイビングでの水中行動は、緊急事態を別として、水面移動、水中移動、水底移動、すなわち移動の他は、できるだけフィンを動かさずにできることを目標にする。また、後述するように、水底移動はゆったりした動きである。
そこに、スクーバダイビングは泳力などいらないという誤解が生じている。
1.エントリー
水面にスクーバを浮かべて、水面で着ける。
BCDの取り扱いに習熟する効果があり、また実際の海では、ボートダイビングの時に役立つ技術である。
BCDに空気を八分目ほど入れて水面に浮かべ、腹の部分で締めるベルクロのベルト(カマーベルトと呼ぶ)を両側に開き、肩のベルトをゆるめておく。レギュレーターは下に垂らしておく、レギュレーター がBCDの上に乗っていると背中にセカンドステージが入ってしまう。
肩のベルトに腕を通しながら、背中をBCDに乗せて、肩のベルトを締めながら体を起こす。腹のベルトを締め、後ろに手をまわしてセカンドステージを取り、くわえれば、潜降の準備完了である。
2.水面休息
BCDに空気を八分目ほど入れて、肩の力を抜き、足の力も抜いて、フィンの先をのばし(爪先を伸ばすこと)顔を水面に完全に出して休息する。スノーケルはくわえない。
BCDの種類によって浮く姿勢に差がある。
フィンは動かさないこと。
3.水面移動
基本的にはスノーケリングである。
4.潜降 フットファースト
水面休息から身体を水平にする。フィンを動かさずにいると足の部分が自然に沈んでくる。この時に、水に背中を寄りかからせるのではなく、前方の水に寄りかかるように身体を前に倒すと前傾姿勢になる。
前傾姿勢を維持しながら、BCDの空気を抜く、自然に潜降して行くはずである。
(プールで、ウエットスーツを着ていない場合、特にウエイトを着ける必要はない。)
ウエイトが少ないと沈みにくい。1キロ程度の不足ならば、息を吐き出して、肺の空気を抜くと、沈む場合もあるが、初心者はこのために呼吸のバランスを崩して、パニックになる恐れがある。慣れてきたならば、有効である。
沈まなければ2キロ、ウエイトを追加する。
潜降を開始したら、2mまで沈む間に、ということは直ちにだが、BCDにワンプッシュ、もしくは2プッシュ空気を入れる。
BCDに空気を入れる場合には、インフレーターを押しきりにはしないで、チョンチョンと押す感じで短く押す。これを便宜的にワンプッシュと呼ぶ。
空気をいれてやらないと、潜降速度が速すぎて、墜落してしまう、墜落すると、耳抜きの余裕が無く、耳が痛くなる。この時、初心者は無意識のうちに、沈まないようにとフィンを動かす。海でのことだが、潜行するときにフィンで掻いて潜降速度をゆるめると、海底の砂をもうもうと巻きあげることになり、周囲の迷惑になる。
前傾姿勢の維持、フィンを動かさない。この二つを注意する。
前傾姿勢が維持できないと、尻餅をつく形での潜降になり、潜降失敗である。海が深ければ、そのまま墜落して事故になる。浅い珊瑚礁であれば、珊瑚礁爆撃となる。
潜降 ・ヘッドファースト
スキンダイビングのヘッドファーストと同様に、頭を下にして、潜り込む。スキンダイビングの練習を積んでいれば難しくはない。フットファーストよりも簡単かも知れない。
状況に応じてフットファーストでもヘッドファーストでも、どちらでも選択できるようにしておく。
ヘッドファーストで潜り込み、水深3mで身体を起こして、後はフットファーストで降りて行く。ウエイトをオーバーにしなくても、潜り込めるので、ベテランはヘッドファーストを好むが、耳が抜けにくい初心者には、フットファーストを勧める。ヘッドファーストで潜降すると、透明度が悪い場所では、バディがはぐれてしまう恐れがある。
5.着底 ・停止
出来れば水底の上50cmに停止したい。
出来なければ静かに両膝をつく。実際の海では、ウニとかカサゴなど尖った生物、毒のある生物に注意する。生物にできるだけ衝撃を与えないように着底する。
膝立ち着底は潜水の途中でも、観察、記録、撮影をじっくり行いたい時にとるポジションである。対象に対する接近は、膝立ちでじわじわと這うようにして近づく。被写体を逃がさずにすむ。膝立ちから、肺に空気を吸い込んで、浮力を調整しながら、身体を前に倒して上半身を被写体に接近させることもできる。鎌首をもたげた蛇のような動きである。
メンバー全体が停止して集まりバディの確認をしたり、残圧の確認をしたり、インストラクターがクエストに書く指示を見たりするときにも膝立ち停止が良い。
6.離底・浮揚 ・中層停止
身体を前に倒しながら、フィンの先端は海底に着けておき、フィンピボット(中性浮力練習の態勢)の形になる。BCDに空気を入れて身体を浮かして、フィンを海底から離す。このまま水底から50センチ上で水平姿勢をとる。
離底するときには、とにかく、砂泥を巻きあげないことである。
そのまま浮揚して、任意の水深に停止できるようにする。浮揚停止の姿勢は、前傾姿勢、水平、椅子に腰かける姿勢の三つが通常の姿勢である。
水中という流体の中にいるダイバーの姿勢のイメージであるが、前傾姿勢は前にある水に寄りかかるような感じ、中性浮力での浮揚は、水にぶら下がっている感じになっていると良い。
7.水底移動
水底から50センチ上を滑るように移動して行く。水底から50センチ上で完全に水平静止するのは、なかなか難しいが、フィンを少し動かして移動するのはさほど難しくない。ここでも絶対条件は、フィンの動きで海底の砂泥を巻きあげてはいけないということである。
フィンは海底に対して水平になった身体の水平線よりも下に振り降ろしてはいけない。
フィンの足の甲にあたる部分で水を後ろに押すようにする。
フラッターキック
膝は足を上に上げるように折り曲げて、足が水平姿勢よりも下にこないように水を押す。
フロッグキック
蛙足のように水平に水を押す。
あおり足
どれも速く泳ぐフィンワークではない。海底を巻き上げないように、滑るように移動するためのキックである。
フロッグキックはある程度は、速く泳ぐことが出来るが、急ぐときには通常のフィンキックの方が良い。フロッグキックは身体が揺れるので、ビデオ撮影のように、身体をぶれさせたくない場合にはフラッターキックをする。
いずれにしても、中性浮力で身体は水平に浮いた状態でのキックである。
普通、ガイドは、メンバーが水底移動の速度でついて来られるような速さで移動しつつガイドする。
8 .水中移動 中層移動
観察地点から観察地点に速やかに移動する場合、また、撮影のためなどで停止が長引いて、グループから遅れてしまったような時、海底から1m以上上を普通のフィンキックで速度を上げて泳ぐ。
この速度が遅いと、潮に巻き込まれそうになった時の対処ができない。仲間に追いつくことも出来ない。力強く泳げるように練習しておく必要である。
よく、スクーバダイビングでは速く泳げる必要が無いといわれるのは、スクーバダイビングのほとんどの時間が水底移動と停止で終始しているためである。
言うまでもなく速く泳げる力は必要である。
9.浮上
浮上は、ここに述べたスクーバ技術のうちでもっとも難しい。
失敗すると肺の圧外傷を起こす恐れがあると考えられている。
気道が確保されていて、普通の速度で浮上していれば、肺の圧外傷は起こらないと考えても良いが、絶対とは言い切れない。
ボートダイビングでは、潜降索(ボートをダイビングポイントに係留しているブイのロープ。アンカーロープではない。)に掴まって浮上する。ビーチエントリーでは、岸へ向かう斜面の底に沿って泳ぎながら浮上する。
・潜降索に掴まっての浮上は、浮上速度の調節が容易である。
・ 普通のダイビングでは、ガイドは、浮上にはこの潜降索を使うようにガイドしてくれる。しかし、索に掴まらないと浮上できないとなると、索から離れた位置で迷ったりするとパニックになることがある。
・ 深く潜る場合には、潜降索からガイドラインを引いて、必ず潜降索に戻れる工夫をする。
・常に潜降索が使えるとは限らない。潜降索に掴まらないで浮上できるように練習しておかなくてはならない。
・ビーチエントリーでは、ボートの係留索など無いから、浮上の最後の段階では、ほとんどの場合、潜降索の無い浮上になる。
中性浮力を保っている状態、中層での休息・停止、水底移動の状態から、あごを上に伸ばして気道を開くとともに水面を見上げる。この形、あごをいっぱいに伸ばした状態で浮上すれば、肺圧外傷の可能性はほとんど無いと言っても良い。
あごを上げて、身体が立った状態になったら、BCDにワンプッシュして少し浮力をつける。
出来る限り、フィンは動かさないことが望ましい。
上を見上げて気道を確保し、水深2m(海では水深3m)で停止するようにBCDの空気を抜く。5mのプールでは、一回入れた空気をすぐに抜くことになる。空気を入れてから、抜くまでの、その瞬間的な間に、50センチ以上浮きあがってしまう。50センチ浮きあがると、BCDの中、肺の中の空気が膨張するから、気付いたときには、1m以上浮いている。吹き上げである。あわてて空気を抜くと、沈んでしまう。墜落だ。
吹き上げと墜落が恐いので、浮上に先だって、BCDの空気を抜いてしまい、フィンキックだけで浮上しようなどという考えが唱えられたこともある。
難しいのは、浮上にともなってBCDの空気を抜くことだが、とにかく、上を向いて気道を確保すること、呼吸を継続することが大事である。
水底移動とか中性浮力の練習とかをしていて、無意識の内に水面に出てしまうことがある。常に呼吸を連続していれば良いが。
水平姿勢の停止練習は、特に呼吸の継続を意識して行う。
水深1mまで浮上したら、空気を抜き、フィンキックで水面に顔を出す。顔が出たら、BCDに空気を入れて浮力を確保する。
10.水面移動
11.エキジット