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 潜水士テキスト改訂に伴う補足

 

 このたび潜水士テキストが改訂されましたが、以下の補足を座右において、旧テキストを見れば、旧テキストでも受験はできます。

 

潜水士テキスト改訂の主たる目的は、段階的に移行してきた国際単位系(SI)の採用が計量法の改正により正式のものになり、テキスト内での表示を全面的に改正するため、そして、現在の作業潜水がヘルメット式潜水からフーカー式潜水に移行していることから、高気圧作業安全規則の一部改正が行われたことによるものです。

さらに浮上時の停止に安全停止(セーフティストップ)が付け加えられました。

 以下にその内容を説明しますが、上記以外については、受験に大きな影響を与える改訂はありません。

 

圧力単位について

 具体的には

 1気圧=760mmHg≒1s/cu≒0.1Mpa≒水深10m

であり、圧力単位として従来のs/cuからMpaに移行するもので、これについてはすでに練習問題集では対応してます。

 

国際単位系(SI)の採用に関連して、改訂テキスト31ページの「1−2−5 水圧」の部分が書き換えられています。

「水中にある物体には、どの面にも、(垂直方向に)均一の圧力がくわわることになる。そのため、同じ水深のところでは深度系を上向きに置いても、下向きに置いてもその示す深度(圧力)は同じになる。水(流体)の持つこの性質を「パスカルの原理」という。」

これは1−2−2 流体内の圧力の分布と伝達(パスカルの原理)でも説明がなされています。

受験問題としては、ポイントになるところです。

 

 古いテキストでは、「4度Cの温度における純粋な水1立方センチの重量は1gである。」という記述があったものが新テキストでは削除されましたが、受験問題では水の標準状態が 4度Cであることはまだ引き続いて出題される可能性はあります。

 

 改訂テキストでは、水圧を説明するために円柱を図示して、パスカルの定理により、上方向の力と下方向の力が釣り合っていることから、加えられる圧力を重力加速度と質量によって説明しようとしています。従来は、単位面積を押す力を重さと考えてs/cuで表現していたのですが、国際単位系では、力の単位をニュートンという単位を使って表現します。質量1sの物体に1m/ の加速度を与える力を「力の単位」としてその名をニュートン(記号はN)とし、1平方メートルに1ニュートンの力がかかっている時に1Pa(パスカル)といいます。なお、気象用語としてはヘクトパスカルを使用しますが、ヘクトとは102 で、メガとは106 で、その上はギガ、109 になります。

 

 単位面積を押す力が圧力です。このことは従来とかわりません。その力の定義が単なる重さから、

 力(物体にはたらく力)=質量(物体の)×加速度(物体が得る加速度) に変わったわけです。

 地球上にあるもは地球の重力(万有引力)によって地球の中心の方向に引かれています。この地球の重力によって物体が得る加速度を重力加速度ど言います。
物体にはたらく力(地球の重力)の大きさはその物体の質量に重力加速度をかけることによって求められます。地球上での重力加速度の大きさはわかっているので、物体の質量がわかれば物体にはたらく力がわかることになります。圧力は単位面積あたりにはたらく力のことです。」

  これを受けて、テキストの水圧の説明も改訂されました。

水中ではパスカルの定理により、上から加わる力と下から加わる力は同じ位置では同じですから、円柱の下の面で上から加わる力、つまり水圧は、円柱の上の面に加わる力に円柱の密度に体積をかけた質量にさらに重力加速度をかけた、すなわち物体を動かす力を加えたものとなります。

 

フーカー潜水について

現在、ほとんどの作業潜水は、フーカー潜水(デマンド式の送気潜水)で行われるようになってきています。テキストで大きな部分を割いているヘルメット式は、過去の技術になりかかっています。

フーカー式と、ヘルメット式とは送気式ということでは同じですが、フーカーはスクーバの親類です。(マスク式はヘルメット式の親類) 高圧則では、フーカーもヘルメット式も送気式ということでまとめていましたが、ヘルメット式にかかわる規定をフーカー式にそのままあてはめると無理が生じる部分がでてきます。

そこで、現実に行われている作業潜水にできるだけ沿うものにしようと努力されて高気圧作業安全規則の改正が行われたものと考えられます。

 

まず高気圧作業安全衛生規則の改正を見ます。

改訂テキストの300p〜01p、空気槽に関する部分、第8条 Aの2が全面的に改正になり、Bが追加されました。

 

Aの2 「予備空気槽の内容積は,次のイ又はロに掲げる場合に応じ、それぞれ、イ又はロに定める式により計算した値以上であること。

イ 潜水作業者に圧力調整器を使用させる場合。

 V=40(0.03D+0.4)/p

ロ イに掲げる場合以外の場合

 V=60(0.03D+0.4)/p 」

 

イ は、フーカー式であり、ロは従来型のヘルメット式、マスク式と考えてよいでしょう。

圧力調整器(デマンドバルブ)のついた、イのフーカーは空気消費量が少ないので40という数字、ロの従来型のヘルメット式マスク式は、従来の数字で60になっています。今回の改正で、イの40を使った数式が新たに付け加えられました。

 

さらにBでは

B「第一項の送気を調節するための空気槽が前項各号に定める予備空気槽の基準に適合するものであるとき、又は,当該基準に適合する予備ボンベ(事故の場合に必要な空気をたくわえてあるボンベをいう。)を潜水作業者に携行させるときは、第1項の規定にかかわらず、予備空気槽を設けることを要しない。」

つまり、これまでは送気を調節するために空気槽とは必ず別に予備空気槽を設けなければいけなかったのですが、送気を調節するための空気槽が規定の大きさがあれば、兼用させて良いというわけです。

さらに、潜水作業者が予備ボンベを背中に着けていれば、船上に予備空気槽は設けなくても良いことになりました。

この予備ボンベは着用を義務付けられてはおらず、フーカー式では、船上の予備空気槽を使うか、それとも、予備ボンベを背負って行くかどちらかを選択すれば良いということです。もちろん、併用しても規則違反にはなりません。

 

さらにその次の第9条、

(空気清浄装置、圧力計及び流量計)も改正されました。従来は(空気清浄装置及び流量計)であり、圧力計は規定されておりませんでした。

第9条「事業者は、潜水作業者に空気圧縮機により送気する場合には、送気する空気を清浄にするための装置の他、潜水作業者に圧力調整器を使用させるときは送気圧力計を、それ以外のときはその送気量を計るための流量計を設けなければならない。」

従来は何が何でも、フーカー式でも、規則の上では、流量計を設けなければならなかったのです。フーカーは圧力調整器を付けて、潜水士が吸い込んだときだけ空気が流れます。空気の流れは脈動するわけで、流量計をつける意味が殆ど無かったのです。今後は圧力調整器を使用するフーカー式では、流量計の位置に、送気圧力計が設けることになりました。

 

 305pの第28条も改正になりました。

 第28条「事業者は、空気圧縮機又は手押ポンプにより潜水作業者に送気するときは、潜水作業者ごとに、その水深の圧力下における送気量を、毎分60リットル以上としなければならない。」

 これは従来どおりです。今回の改定ではAが付け加えられました。

「 A 前項の規定にかかわらず、事業者は、潜水作業者に圧力調整器を使用させる場合には、潜水作業者ごとに、その水深の圧力下において毎分40リットル以上の送気を行うことができる空気圧縮機を使用し、かつ、送気圧をその水深の圧力に0.7メガパスカルを加えた値以上としなければならない。」

 吸った時だけ空気が出てくるデマンド方式のフーカーと、空気が流れつづけるヘルメット式と同じ送気量で規定されているのでは、せっかくデマンド方式にして空気量を節約する意味がありません。今回の改正で、60リットルから40リットルになりました。また、フーカーの圧力調整器を快調に動かすためには、その水深の水圧よりも0.7から1.0メガパスカル高い圧力を送らなければなりません。もちろん、フーカーは最初からそのような送気圧で作動していたのですが、これを追認した形になります。この送気圧を計るために送気圧力計が流量計に代わって設けられることになりました。もちろんこれも、従来もそのように行われて来たことの追認です。

 ここで注意しなければならないのは、送気圧力計で測定する圧力ですから、当然ゲージ圧であり、したがって「その水深の圧力下における送気量」とは、その水深の水圧に相当する圧力の空気という意味であり、環境圧ではありません。

 疑問点としては、フーカー式で船上の予備タンクを使用する場合、最高の潜水深度の圧力の1.5倍では、その水深の圧力に0.7メガパスカルを加えた値に到達しないのですが、1.5倍以上ということで、理解してください。

 

高気圧作業安全規則改正にともなうテキスト内容の改訂 

 高気圧作業安全規則改正にともないテキストの内容も改訂されました。

 

 従来は緊急用(ベイルアウトボンベ)と呼ばれていたフーカー式潜水に携行するボンベが、予備ボンベ(ベイルアウトボンベ)と表現されることになりました。なお、ベイルアウトとは、脱出と言う意味です。

 予備ボンベの取り扱いについては、スクーバのボンベに準じます。

 「予備ボンベは始業前に、充填圧力を確認する。また終業後は水洗いを行い。錆の発生の有無と外観にキズや破損などないかを確認し、内部に0.5Mpa〜1Mpaの空気を残して保存する。」

 

 フーカー式潜水器の流量計に置き換えられた圧力計については、「一ヶ月に一回以上、圧力計本体のキズ・破損等の異常の有無、作動状況、圧力計指示の制度などについて点検する。」(105p)

 なお、この圧力計の点検については高気圧作業安全規則では規定されていませんので、法規の区分ではなく、潜水業務の区分で出題される可能性があります。

 

 フーカー式潜水の送気の方法について、153pに記述がくわえられています。

 「フーカー式潜水については、必要な送気量(呼吸量)が個人や作業内容によって大きく異なるとともに、潜水作業者が息を吸うときにのみ送気されるという送気のシステムになっている。このため、高圧則においては、作業者の要求に応じて常に適量の空気を送ることができるよう、空気圧縮機の能力としての送気量の基準を定めることとし、その値を「その水深の圧力下において毎分40リットル以上」と規定されている。

 また、フーカー式潜水では、一般にヘルメット式潜水に比べ送気ホースが細いために送気抵抗が大きくなるが、作業負荷が大きい作業などでも何ら抵抗なくスムーズに圧力調整器の弁が開いて十分な量を吸入することができるようにする必要がある。このため、潜水作業中において一定の「送気圧」の確保が必要となるが、当該送気について、高圧則においては、上記に加え「その水深の圧力(大気圧を除く)に0.7メガパスカルを加えた圧力以上」と規定されている。」

 これは、高気圧作業安全規則改正の説明ですが、注意する点は、その水深の圧力(大気圧を除く)で特に大気圧を除くという説明がなされていて、環境圧(絶対圧)ではなくて、送気圧がゲージ圧で示されることを明記してあることです。

 

潜降及び浮上についてのテキスト内容の改訂

 

 この改訂は高気圧作業安全規則の改正とは直接に関係はありませんが、現在、潜水作業及びスポーツ潜水の分野でも広く行われている安全停止(セーフティストップ)についての記述がテキストに書き加えられました。

 162p

 「労働強度が大きいときや潮流が速いとき、また寒冷時など悪条件下で潜水を行った場合には減圧症にかかるリスクが大きくなるので、浮上スケジュールを求めるとき、水深または潜水時間の稿で適合するものよりも1ランク上の欄を採用して方が無難である。また潜水深度と潜水時間の組み合わせが途中の浮上(減圧)停止を必要としない、いわゆる無(停止)減圧の範囲であっても水深6もしくは3mの位置で数分間停止することが、減圧症防止上きわめて効果的である。これを安全停止(セーフティ・ストップ)と呼んでいる。」

 164p

「無停止減圧の範囲内の潜水の場合でも、水深6もしくは3mで安全停止を行った方がよい。」

 

 受験問題を作りやすい部分・表現ですから十分なチェックが必要です。