スキンダイビング スキルアップ教室 マニュアル
趣意
経験者スキンダイビング
辰巳国際水泳場の主催行事としてスキンダイビング講習が毎年行われている。回数を重ねて申し込みされる人も多くなり、初心者向けの講習では物足りない、もったいないということで、スキルアップ教室、さらに経験者のスキンダイビング教室となった。
スキンダイビングは、とくに難しい技術があるわけのものでもない。ただひたすら泳ぎ、潜るだけのことである。しかし、限度を超えるとたちまち意識を失ったり、溺れたりする。
限度を知ることと、できるだけきれいなフォームで効率よく泳ぐことが大事である。
スキンダイビングフアンのために
スキンダイビングの良さは、@手軽に誰でもできること、A荷物が多くないこと、である。手軽く南の島での休暇に水中を楽しむことができる。スキンダイビングだけで十分というフアンも少なくない。今、子供たちのため、高齢者の生涯スポーツとして、スノーケリングが推奨されている。スノーケリングとは、息をこらえて潜らない、水面遊泳だと定義づけられている。水泳、海水浴よりも安全であるために、スノーケリングベストという救命胴衣をあらかじめ着けて、水中をのぞき見ながら水面をゆったりと泳ぐ遊びである。
絶対安全と言っても、だれかに見ていてもらう、教えてもらう必要はある。スノーケリングの指導ができる程度の実技を身につけてもらう。このスキルアップ教室の目標の一つである。ただし、スノーケリングの指導者講習は、理論的な講習、救急蘇生法などが含まれるために、この講習をそのままスノーケリング指導者講習にするわけには行かない。
スクーバダイビングを目指す人、スクーバダイビングのカードをすでに持っているひとのために。
しかし、やはり目指すところはスクーバダイビングという人が多い。現在のスクーバダイビングは、BCDという浮力調整装置を使う。BCDは浮力調整のみならず救命胴衣の役割も果たすので、泳げなくても、基礎となるスキンダイビングの経験が無くても溺れなくなった。
しかし、昔も今も、スクーバダイビングの基本はスキンダイビングである。スキンダイビングで、水に慣れ、潜ることに慣れた後にスクーバダイビングを行うのが安全である。逆にスキンダイビングの練習を経ないでスクーバダイビングに入ることは危険があると言っても良い。今、普通に行われているスクーバダイビング講習は、3泊4日と短い。短いスクーバダイビング講習にはスキンダイビングの練習がほんのわずかしか含まれていない。それを補うとともに、すでにCカードを持っているのだが、この教室に来たと言う方も少なくないはずである。その人たちのために、できるだけスクーバダイビングの基礎になるスキンダイビング、またスクーバダイビングの講習に入るべきスキンダイビング練習もこの教室のプログラムに含ませることにした。
理論
ハイパーベンチレーション
息をこらえて潜る時には、息を八分目ぐらいにしておいた方が良い、などと言う人もいるが間違いである。息こらえのスキンダイビングは、出来るだけ沢山の酸素を体の中に取りこんで、これをできるだけ長持ちさせて、潜る時間を長くする。だから、肺一杯に吸い込んで潜る。
試しに、息を八分目で潜ってみよう。とても苦しいことがわかる。息を調えて肺一杯に吸い込んで潜るようになる。さらに深呼吸を何回か繰り返すとより長く苦しくならずに潜れることがわかり、潜る前に深呼吸をするようになる。
息をこらえていると、次第に苦しくなる。苦しさに耐えかねて呼吸をはじめてしまう。もしも、苦しくなくて、そのまま息を止めていれぱ、やがて酸素不足になり死んでしまう。酸素不足にならずに呼吸をはじめるからこそ生きていられるのだ。
深呼吸を繰り返えすと長く潜れる。深呼吸の繰り返しは、肺の中、身体の中にある炭酸ガスを身体の外に洗い出してしまう効果がある。人間は生きるために、体内で酸素を燃やし炭酸ガスを生成している。体の中で生成した炭酸ガスがある限度をこえると呼吸中枢を刺激して、はやく炭酸ガスを排出してしまうように促す。炭酸ガスが排出されずに、さらに蓄積されると、呼吸中枢への刺激が強くなり、息をこらえていられなくなる。
ここまでが、息こらえの第一相と呼ばれる。これを乗り越えて息を止めていると、やがて、横隔膜が激しく上下するように痙攣して呼吸を再開せずには居られなくなる。これが息こらえの第二相である。この段階をこえると水中では、水を吸い込んでしまう。人間の肺そのものは筋肉ではないから自力で空気を吸い込むことはできない。肋骨で囲まれた胸郭の中に肺が入っているのだが、胸郭の下部にある横隔膜が上下することによって、ふいごの働きをして、肺の中に空気が吸い込まれる。この横隔膜が痙攣するように上下するのだから、呼吸を開始せずにはいられない。
深呼吸を繰り返して、炭酸ガスの濃度を下げてしまうと、苦しくなるまでの第一相までの時間が長くなる。なかなか苦しくならないのだ。
深く潜ると水圧で体が圧迫される。肺の中に吸い込んでいる空気も圧縮される。酸素も圧縮されて濃くなっている。酸素が濃くなるので、深く潜るほど、苦しくなくなる。
水面に浮上しようと上がってくると、体を圧迫している圧力が小さくなり、体の中の酸素も圧縮が解けて膨張して薄くなる。薄くなって酸素が欠乏状態になる。人間の脳は特に酸素消費が大きく、酸素が無くなるとたちまち機能をうしなってしまう。酸素が薄くなると、脳が機能しなくなる。つまり意識を失ってしまう。浅いところまで上がってくると、身体の中の酸素が限度を超えて薄くなる。脳が要求する酸素が得られなくなり、失神する。水面に近づくと失神するので、ので、シャロウオーターブラックアウトと呼んでいる。
深く潜るために、大きな深呼吸を1分から2分間繰り返して、身体の中の炭酸ガスを洗い流してしまうことを、超換気、ハイバーベンチレーションと呼んでいる。超換気をして炭酸ガスレベルを下げることは一般のダイバーにとっては失神の恐れがあり危険である。
浮上して水面近くまでよがって来て失神するスキンダイバーを横から見ていると、水面までもう少しというところで、体が勣かなくなる。意識を失ったために息をこらえつづけることが出来なくなり、口から息を吹き出して、まるでスローモーション撮影のように沈んで行く。すぐに助け上げて水面の空気を吸わせれば、回復する。助け上げなければそのままだ。
ハイパーベンチレーションは、深く潜る競技、アプネアなどと呼んでいるが、アプネア競技への出場のためには必要な技術であるが.一般のスキンダイバーにとっては危険である。
安全のために
バディシステム
水中では、救急車は来ない。助けてくれる人がいなければ、自分も助ける人にならなければ危険である。ダイビング活動はすべて二人一組のバディシステムで行うことがルールである。これは誰でも知っているのだが、どうすれば良いのかわからない。
バディシステムは危機通報システムである。自分のバディが見えなくなったら、何か変調があったら、すぐにガイド、インストラクター、近くのダイバーに知らせる。これが第一である。今、一人の指導者が6人までの初心者ダイバーを引率し、管理することができると定められている。実際には6人には目が届かない。6人が二人ずつの3バディ、三つまでなら目が届く、そしてその三つがなにかが起こったら報告してくれれば、6人までの管理ができる。バディシステムに甘えてしまうと、通報をしてくれないバディも居て、事故が起こる。インストラクターは、ガイドダイバーは、いつも心配して注意を払っている。
しかし、とにかくバディが大事である。
水の中では、緊急事態にならなくても、ほんのちょっとの手助けが必要になる場合が多い。スクーバダイビングでは、時々、タンクのバルブを開くことを忘れて溺れる人がいる。バディがバルブを開いてやれば何事もない。バディは何をしていたのだろうね、ということになる。ちょっとしたことで、海底に拘束されることがある。海底に放置されているロープに足を取られたり、釣り人が引っかけてしまった釣り糸に絡んだり、スキンダイビングでは海底に拘束されることが、致命的な事故になる。スキンダイビングでもバディシステムは絶対である。
この講習では、バディシステム厳守である。水中でも、プールサイドでも常にバディは一緒に行動しその距離は、陸上では5m以内、水中では手を伸ばせば届く範囲とする。
インストラクターが「バディ」と声を掛けたら、手を握りあって頭上にあげる。
ダイビングツアーでもバディシステムは絶対的なルールである。
自分勝手に動き回る人は、バディのツアー費用を負担して、自分に従属する助手にしておかなければいけない。あるいは、人間関係的に主従を決めておく必要がある。それにしても相手に対する心遣いがなければバディシステムは成立しない。
普通のバディは、対等であり互いに心遣いをして、自分勝手は許されないが、技術の程度が上の人を主として、主副を決めておく方が良い。言うまでもなく主がすべての行動とその結果について責任を持つ。例えばスクーバの場合、相手が見つからなくなったら、副はその場に停止して、探してくれるのを待つ。自分勝手に浮上したり、捜索しようとして動き回ったりしてはいけない。主は責任をもってバディを探し当てる。バディが動かないでその場にいてくれれば、進んできたコースを戻ることで、バディを見つけることができる。後戻りして、居るべきところにバディが居ないと、インストラクターはパニック状態になる。それから先は、ラッキーを期待するしかない。
スキル
フィンで泳ぐ
@水平姿勢 水面がマスクの上縁になるようにヘッドアップ
A足首のスナップを効かせて水を押す。
Bフィンの裏に水を載せて、蹴り上げ、足の甲で水を押すように蹴り下ろす。
水平姿勢
身体を水面に水平に延ばす。
そのままでは男性は水面に浮いていられないで足が下がって直立の姿勢になろうとする。
水平を保つために少しフィンを動かしてもよい。できるだけキックは少なくして水平に浮く。フィンはスタビライザーの役割を果たす。
前傾姿勢
フィンキックをせずに、足が下がって釣りあいのとれた状態が前傾姿勢である。
スクーバで潜降する時にはこの前傾姿勢で降下してゆく。
スキンダイビングでも水面休息は前掲姿勢になる。前掲姿勢では出来るだけフィンは動かさないで休息する。
水平姿勢を保ってスノーケルで呼吸して、5分間過ごす。
足首のスナップを利かせる泳ぎ方
ポールを投げる時でも手首を効かさずに手を棒のようにしては投げられない。
普通のフィンはフィンのブレードで水を押して推進する。
フィンの蹴り降ろし(ダウンキック)蹴り上げ(アヅプキック)の両方で水を効率よ<押すためには、足首を反さないといけない。足首を反す、すなわちスナップを効かせることである。
@ リラックスしてゆっくり泳ぐ
水平姿勢を保って、足首のスナップの反しだけで泳ぐ。膝関節は柔らかくしてリラック
スして泳ぐ
A 通常の泳ぎ
ダウンキック、アップキックで水を強く押すことを意識して泳ぐ。
アンブキックでは膝が曲がってもよいが、ダウンキックでは曲がる角度は少しだけと意識する。決して膝が腹の方に曲がって入って来てはいけない。
B ダッシュ
全力で泳ぐ。足首のスナップを意識する。水平姿勢は、ハイドロプレーンのイメージ。
@ABを交互に行い、繰り返す。
ダッシュの後はリラックスして泳いで休息し、通常の泳ぎに入り、次にダッシュする。
ダッシュの後はリラックス泳ぎで休息する。三つの速度を使い分ける。
水平潜水
潜り込みは、水平姿勢から手を前方に伸ばし腰を折って頭を下にする。入間は頭が重いので、そのままでも潜れるが、前に伸ばした手を一回だけ掻いて潜る。プールの底に頭を打ち付けないように注意する。プールの底に腹を擦るような深さで水平に潜って進む。20mぐらいを目標にする。
25m以上は、この練習の段階では禁止する。足首のスナップ、プールの底に沿った水平姿勢を意識する。
潜る前の呼吸に注意する。
ハイパーベンチレーションの限度。
@ 深呼吸を2回して、胸いっぱいに空気を入れて潜る。
A 深呼吸をしないで、胸いっぱいに空気を入れて潜る。
B 深呼吸をしないで、胸八分目で潜る。
違いを確認する。
マスククリアー
バディで肩を押して座った形で沈めて、マスククリアーの練習。
完全に出来るまで練習する。
マスククリアーの発展
5mはなれたプールの底にマスクを置き、水平潜水でマスクを拾い,泳ぎながらマスククリアーをして、浮上する。
400mフリッパー・タイム測定
水平潜水のフォームがかたまったら.タイム測定をする。
水深5mのプール
垂直潜降
@ヘッドファーストダイブ 頭を下にして、逆立ち状態でもぐる。
Aジャックナイフ 腰をジャックナイフのように折る潜り方
Bパイクサーフェスダイブ 槍の用に突き刺さる潜り方
水平姿勢から手の先が槍のようにプールの底に突き刺さる感じで腰をジャックナイフのように折り、頭を下にして、伸ばした手を掻いて潜り込む。フィンが完全に沈むまでフィンを動かさない。フィンが沈んだら力強くフィンキックして潜降する。
耳抜き
垂直に潜れば耳が痛くなる。鼓膜が水圧で押されるからで、我慢してもぐりこむと鼓膜が炎症を起こす。(中耳炎)無理に潜ると鼓膜が破れて冷たい水が耳の中に浸入して、平衡感覚が失われる。水面に浮上できない危険がある。鼓膜そのものは−ケ月程度で直り、元に戻る。ただし医師の診断を受けて感染症にならないような投薬が必要。
耳の痛みを解消させるには、中耳腔に空気を送り込んで、鼓膜の内外の圧力の均衡を取る必要がある。
子どもの頃、鼻をかむときに両側の鼻口を一度に押さえると、佩菌が耳の中に入るからと怒られた記憶があるはず。これをやれば中耳腔に空気を送り込める。中耳腔と鼻腔の問には、細い管が通じていて、この管を通じて空気が送り込まれる。これが耳抜きである。
水深2mで少し耳の痛さを感じ、3mを越えれば耳が痛くて耐えられなくなる。無理に耐えれば鼓膜が傷つく。耳抜きをしなければ潜降できない。
両鼻を塞いで鼻をかむような動作をバルサルバ法と言う。中耳にストレスをかけるので、ベストの方法ではないが、最も簡単であるから、初心者はこの方法で耳抜きを行うことが多い。
もう一つの方法は、唾を飲み込んだり、あくびのような動作で顎を左右に動かしたりするトインビ一法というやり方がある。慣れればこの方法を薦める。耳に無理がかからないだけではなく、手を使わなくて良いのも利点で、カメラマンなどはこの方法ができないと困ることがある。
浮上
浮上は顎を上げて、水面を仰ぎ見る形になり浮き上がる。その時、指で水面を指し、その指を見上げながら浮上するのも良い。
水面までの距離が50センチくらいになったら、上を向いたまま、スノーケルの先端を下に向けた状態で息を少し吐き出して、スノーケルの管の中に空気をためる。水面に出たらそのまま頭を起こして空気を吸い込むことができる。特に強く吐き出さなくても、スノーケルの管の中には空気が入っているのだから吸える。この方法を置換法と呼ぶ。
スキンダイビングからスクーバダイビングヘ
スクーバタンク使用のエアーステーション
ここではエアーステーションと呼ぶスクーバトレーニングスキルを変形したプログラムをやってみる。
@レギュレーターを付けた空気タンクを浮き上がらないようにウエイトを巻きつけてプールの底に置く。スタートするプールサイドから10mほどの距離に置く。水平潜水があまりよく出来ない人については、距離を短くする。
Aプールサイドから水平潜水で、タンクに行き、バルブを開いてレギュレーターのマウスピースをくわえて、まず息を吐き出してレギュレーターの中の水を排出してから、吸い込んで呼吸を開始する。身体が浮いてしまう人は、2キロのウエイトを着けておく。2回呼吸したら、バルブを閉めて、出発したプールサイドにもどる。
B適当な時間差で次々とスタートさせる。タンクで呼吸している人は、次の人が到看する前にバルブを閉めてもどりかけなければならない。