合唱劇 鹿踊りのはじまり

2002年 合唱団じゃがいも第7回委嘱作品 作曲:林 光  原作:宮沢賢治
                                        初演:2002.10.26山形テルサホール(第29回定期演奏会)

   
  合唱劇 鹿踊りのはじまり
                                (委嘱初演)

   テキスト 宮澤 賢治
   作曲・指揮 林   光
   演  出  加藤  直
   照  明 安達 俊章
   アコーディオン 佐藤 芳明
   パーカッション 



 

 

 

 

 

 

演奏会に寄せて
                          林 光

  「鹿踊り・・・・・・」を書いてからでなくては死ねない、なんてはじめは冗談で、でもそのうち冗談で言うのはなにやら不謹慎に思えるようなトシになって、実のところまだまだ準備不足のような気がしながらもエイと決心してとりかかったのが、この作品である。
 1945年に出会い、1977年にはじめてその詩に曲をつけ、1986年にはじめてオペラを書いた宮澤賢治サンとのつきあい。1977年の「鼠たちの伝説」(佐藤信)からはじまった、呼び名はいろいろ変わるが〈合唱劇〉の経験。1970年にジャズシンガー安田南が歌った「センチメンタルジャーニー」いらいの加藤直との共同作業。そして1986年いらいの〈じゃがいも〉との日々。それらすべての流れがひとつに合流して、きょうの「鹿踊り・・・・・・」はあるのだと思っている。
 〈じゃがいも〉にとってもことしは一つの転機であろう。ずうっと〈じゃがいも〉の練習場で育ってきた二世たち。かんじんの一世団員たちよりも先に歌を覚えてしまっていたかれら。ここ数年はかれらのために子供組を組織して、そのための曲を挿入したりしていたのだが、いまやおとなの仲間入りをして合唱団の中核に迫ろうとしている。かれらの本格的な参加によって、〈じゃがいも〉の音色は変わろうとさえしている。
 ところで、脱稿してから気がついたのだけれど、これまで〈じゃがいも〉のために書いた「狼森と笊森、盗森」「かしわばやしの夜」に、こんどの「鹿踊りのはじまり」を並べると、これはちょうど、「注文の多い料理店」から抜粋した素材による、イーハトーブ開拓誌の三部作になるのだ。こんなことにいまごろ気がついた迂闊さと、気がつかなかったから果たしえたものかもしれない不思議とを天秤にかけて、はて、どう評価したものかと困っているところなのである。
追伸
 いまごろになって、たいへんなことに気がついた。
 賢治サンは書く。〈鹿踊りのほんたうの精神〉と。
 それは、民俗芸能「鹿踊り」の解説なのだろうか。それとも、民俗芸能「鹿踊り」にはない〈ほんたうの精神〉のはなしなのだろうか。

 演奏会に寄せて
                          加藤 直

 “じゃがいも”がボクにとって特別なグループであり大事な合唱団だとすると それは音楽や歌との本当の付き合い方を教えてくれたからに他ならない。“本当の とはまた大層な”と言うなかれ。これほど肩肘はらず気楽に自由に音楽や歌と一緒する諸君、諸嬢は見たことないのだ。本当、気楽に音楽と付き合う なんぞと言うと 目ん玉ひん剥く御仁もどこやらに御出でかもしれないが 後生大事に抱え込むのをやめて一度肩肘はらずに付き合ってごらんなさい。音楽ばかりかこの世界が新しい姿となってあなたの眼前に現れること請け合いますよ。
 実際 作曲家林光と自分たちの子供“子じゃが”と別け隔てなく関係を持ってしまう驚くべき大胆不敵。それは才能にまで昇華した自由と言えるだろう。羨ましいかぎりだ。

→ オペラ・鹿踊りのはじまり(オペラシアターこんにゃく座:2005年5月)
→ テキスト・鹿踊りのはじまり


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