合唱劇 雪 渡 り

2003年 合唱団じゃがいも第8回委嘱作品 作曲:吉川 和夫 原作:宮沢賢治
                                        初演:2003.12.13山形 市中央公民館ホール(第30回定期演奏会)

   
 

 合唱劇 雪 渡 り
                          (委嘱初演)

   テキスト 宮澤 賢治
   作  曲 吉川 和夫
   演  出 山元 清多
   照  明 安達 俊章
   美   術  神保  亮
   クラリネット 郷津 隆幸
   マリンバ   平下 和生
   チェロ    茂木 明人
 

 

 


演奏会に寄せて
                     山元清多

  はじめて〈じゃがいも〉の演奏会を手伝わせてもらったのは一昨年の11月でした。それまで芝居や「こんにゃく座」のオペラを演出したことはあったのですが合唱の演出をするのは初めてでした。けっして「歌」の邪魔をしないこと、「歌」が伝えようとしていることを手助けすること、それだけを心がけて、最小限の「モノ」と最小限の「動き」をサジェッションしたつもりです。というより、それしかできなかったと言った方が正直でしょう。
 でも、結果的にはそれがよかったのだと思います。いろいろやりすぎて、焦点がズレたりせず、とても透明感のある舞台ができあがったことに自分でもびっくりしたのです。それは、ぼくにとっても初めての経験であり、発見でした。
 「最小限」などと言いながら、けっこう面倒な注文を出したじゃないかよ、と〈じゃがいも〉たちは言うかもしれません。たしかに、大人の団員たちはぼくの勝手な提案に戸惑ったかも知れません。でも、子ジャガたちはじつに心強い味方でした。ぼくがどんなに突拍子もないアイディアを持ち出しても、あっという間に準備して何回かの練習で、見事にやってのけてしまうのです。それで、ぼくは合唱だ「じゃがいも」に子じゃががいることの意味がはじめて理解できたのでした。子じゃがたちは、大人のジャガイモの付属物でもオマケでもない、小さいけれど合唱団になくてはならない立派な〈イモ〉なのだと。山形とういう風土を踏まえていること、大人と子どもがいっしょに歌うこと、それが〈じゃがいも〉の他にない特色なのだと−。

合唱劇〈雪渡り〉に寄せて
                     吉川和夫

  オペラ〈虔十公園林〉を、合唱団じゃがいもの皆さんが「合唱劇」として上演してくれたのは2年前のことでした。山形に「じゃがいも」という素敵な合唱団があって・・・という話はずいぶん前から聞いていましたから、これは嬉しいことでした。
 その後、鈴木義孝さんから、賢治の原作による新しい合唱劇を書いてほしい、演出は山元清多さんで・・・という、またまた嬉しいお話をいただき、いつか「雪渡り」を出来たらと思っているという、鈴木さんの独り言のような言葉を私は聞き漏らさず、あ、あれは人間と狐の子どもたちの歌合戦みたいなシーンがあるから、大人と子どもが一緒に活動する「じゃがいも」にはピッタリじゃないかなと思い、一も二もなくお受けしたまでは良かったのですが、作曲はすっかり難航してしまいました。
 何が難しかったかと言えば、「歌合戦」や登場人物たちの台詞以外の、まるで「語り部」のような文体をどうするかでした。そのことを考えているうちに、春が過ぎ夏も終わり、秋風が吹きはじめてしまった! 遅々として届かない譜面に、さぞかしイライラされただろうと思うのですが、それでもメンバーの皆さんは完成を粘り強く待ってくださいました。
 すでに定評の固まっている作品を演奏することは大切です。でも、自分たちのための新作に挑戦することも、それに劣らず大切なことで、たとえ「曲がなかなか出来てこない」というリスクを背負ってでも新作上演にこだわり続ける「じゃがいも」の姿勢には、本当に頭が下がります。
 「雪渡り」には大人は登場せず、人間の子どもと狐の子どもとの対話、心の交流が描かれます。ですから、この合唱劇では大人も子どもも入り混じって、みんな「子ども」です。
 鈴木さんから「楽しく練習しています。こどもたちも大好きです。大きな声で歌っています」というメールが届くたびに、あぁ早く紺三郎や狐の子たちに会いたいなぁと思っているのです。

→ テキスト・雪渡り 

→ 舞台評 山形発−全国に広がる「合唱劇」 合唱団じゃがいも30回定演


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