提言(案)(第二次案)
      「人と技術を大切にする経営」への転換を

     =中途退職者の防止、技術の伝承は急務です=8.25

                     2006年10月  日本共産党石川島委員会      

はじめに

石播やIHIMUにおいて、04年度、中途退職者が急増し、人事部門が「若手退職対策プロジェクト」をつくり、原因や対策を検討していますが、その後も退職者が後を絶ちません。また、定年退職者や中途退職者の増加にも関連して、技術・技能の伝承が困難になっています。こうした状態は、ものづくり産業として重大な岐路にあると思います。将来にわたり安定的な経営をつづけていくうえで、中途退職者の防止と技術・技能の伝承問題は、急いで解決しなければなりません。

中途退職者防止のために、また、技術の伝承のために、共通して必要なことは「人と技術を大切にする経営」への転換です。

IHIでは「特別対策」は終了しましたが、将来にわたって安定的な経営にしていくためには、劣悪な労働条件を改善し、技術力を維持・向上させ、製品開発力を高めることが必要です。そのためには、目先の利益優先の経営をつづけるのではなく、「人と技術を大切にする経営」への転換を明確な方針にして、展望と意欲をもって働きつづけられる職場にすることです。私たちは、こうした立場からこの「提言」をまとめました。職場の皆さんとともに考え、よりよい「提言」にしたいと思います。ぜひ、率直なご感想、ご意見をお寄せください。

 

※アンダーライン、削除などは、この間に労働者のみなさんから寄せられた意見にもとづいて、補正したものです。引き続き、積極的に批判的なご意見をお寄せください。

 

1.「高齢基幹職処遇制度」の見直しを

この06年4月に、70名余の基幹職が退職し、関係会社に移籍になっています。

基幹職の人たちは、度重なる賃金切下げの扱いを受けたうえ、「高齢基幹職処遇制度」によって雇用が脅かされ、人間としての尊厳が傷つけられています。この制度は、55歳になると関係会社に移籍するか、自分で就職先を見つけてくるかなど、会社への長年の貢献は省みずに職場から追い出す、まったく無慈悲な制度です。そのため、基幹職がそれまでに培い、蓄積してきた技術や知識、経験が企業の将来に十分生かされません。「HASに移籍しておいて、『技術の伝承』とは、会社は何を考えているのか?」という声があがるのも当然です。

この制度により、基幹職は事実上55歳定年になっています。50歳を過ぎると先が見えてくるため、業務への意欲や後継者を育てる意欲が削がれてしまいます。それだけではなく、あとにつづく若手の人たちは、基幹職の扱われ方を目のあたりにしているために、この人たちの意欲をも奪う結果になっています。

この06年4月には、200名を越す多くの人たちが基幹職に昇格しました。これらの人たちは、「Eワーク制度」のもとで、サービス残業を強いられてきました。「Eワーク制度」では、業務実態から適用除外の人が多数いることから、これらの人たちを基幹職にすることによって、時間外手当を少しでも少なくするための人事ではないかという声も聞こえてきます。新任の課長(主査)には、来年度は5%の賃金カットが待っているようです。4月からカットすると減収になるためとのことです。賃金カットや事実上の55歳定年が待ち受けているのでは、若手の基幹職や課長代理(SA)の人たちから意欲と活力を奪ってしまいます。

最近では、基幹職に替わる人がいないために、関係会社に移籍するなどして、それまでの職場で働きつづけるケースも見られますが、抜本的にこの制度を見直すことは、中途退職防止のために欠かせません。

 

2、成果主義賃金制度の抜本的見直しを

石播では、2002年に成果主義賃金制度が導入されました。もともとこの制度は、総額人件費の削減を目的に導入されたものです。この制度では、賃金を上げるためには、成果をあげることが求められます。「知恵を出し、立派な仕事を成し遂げた人に、ふさわしい賃金や一時金を支払うことができるしくみ」として導入されました。しかし、会社のアンケートでは、「現在の処遇制度は、自分自身の仕事の成果が給料や一時金につながるような仕組みになっていますか」との設問に、「感じていない」が23%、「どちらかと言えば感じていない」が23%と、半数近くの人が、給料や一時金につながらない制度と感じています。

しかも、この制度の導入により、職場で助け合い、教えあって仕事をすすめる気風が奪われ、活力も低下し、「上意下達」の経営がつづいたこととあいまって、活力が低下し、企業業績にも大きな影響を及ぼしています。先行して導入した企業では、挑戦する気概が失われていることが大きな問題になっています。石播でも、長時間過密労働を強いられ、メンタルヘルスが大問題になっています。03年には東ECにおける疾病休業のうち、メンタルヘルスが第1位で、約2分の1を占め、30代に多いと報告されています。

こうした企業に自分の将来を託すわけにはいかないと考え、中途退職者が増えるのも無理のないことです。しかし、転職先でも同じ「成果主義」が導入されていては、IHI以上の苦労が強いられるのではないでしょうか?

日本経団連は「職場内のメンタルヘルス問題は、従業員本人のみならず、職場の作業能率・モラールの低下を招き、経営上の重要問題となる可能性がある」「よい人間関係が存在しない荒涼たる職場に高い生産性は望めないし、問題解決能力を期待することはむずかしい」と述べています。ここには、自らが招いたことへの危機感はありますが、反省と改善の意思はありません。日本経団連も、制度として問題があることを認めるような制度は、抜本的な見直しが必要です。

 

3、「Eワーク制度」の抜本的見直しを

「ES勤務制度」に代わって導入された「Eワーク制度」は、裁量権のない労働者にも裁量労働制を適用し、基準賃金の13.5%の手当を支給していますが、サービス残業を温存する制度です。

もともと「ES勤務」制度は、E職の人たちを管理監督者として扱っていましたが、労基署の指摘を受けて、E職の人たちへの適用を除外したものです。「Eワーク制度」導入の時に、「ES勤務制度がだめだから、Eワーク制度でいいのか」という声があがったように、「ES勤務制度」が違法だったことへの反省が全くないまま、新たに「Eワーク制度」を導入したのです。「ES勤務制度」にしても「Eワーク制度」にしても、一定額以上は残業代を支払わなくてすむ制度です。そして、基幹職になれば手当が支給される以外には残業代は支払われなくなります。

E職で、「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」を適用されている人たちが、裁量権をもっているかどうか、勤務実態にもとづいて、法に照らして検討し、制度の抜本的な見直しが必要です。また、「裁量労働」に該当する人には、本当の裁量権を保障し、余裕をもって働けるようにすることが必要です。

 

4、青年がのびのび働ける職場環境づくりを

IHIMUでは、「特別対策」で賃金カットがつづき、低賃金のための生活が困難になり、退職する若手が後を絶ちません。その上、休日が減らされ労働条件が低下しています。また、仕事量が多いために心身の疲労が蓄積され、現業の職場でも精神を病む人が増えています。これでは、将来に希望をもてず、働きつづけることに疑問が広がり、退職する人が増えるのは当然です。労働者の苦労と努力を、企業の業績の改善に結びつけられない経営者の責任が問われています。また、現業青年の自立できない低賃金の是正が急がれます。

製造業でも派遣労働者を導入できるようになり、IHIMUの現業職場では、3分の1から2分の1の労働者が、協力工になっている職場が多くなっています。このため、チームワークがうまくとれずに協力工を使う側も、使われる側も苦労が多くなっており、製品の品質や安全でも重大問題になっています。人数さえそろえれば、製品ができるものではありません。会社は「若年層・未熟練社外工への集中的な技能伝承の実施」を掲げていますが、非正規雇用労働者に技能を伝承しても、会社の都合で派遣が打切られれば、せっかく伝えた技術も途切れてしまいます。これでは伝承する側もされる側も身が入らないことになります。

採算性や効率からだけ生産体制を考えたのでは、ものづくり産業として行き詰まってしまいます。技術や経験、知識を蓄積した年輩労働者や基幹職の人たちが余裕をもって働きながら、技術・技能の伝承ができるような条件をつくることが求められています。「日本の、韓国や中国に対するアドバンテージはモノづくりを中核とした総合力にある」(IHIMU・今清水社長)と言うのならば、職場のモノづくりに携わってきた人たちを大切にし、技術の伝承が確実に行なえるように、労働条件を改善することが当然です。

 

5、「規制緩和」路線を改めることが不可欠

職場での「人と技術を大切に」する経営への転換と同時に、小泉内閣のもとですすめられてきた「規制緩和」の路線を改めることが不可欠です。

今、日本の資本主義は、「格差資本主義」(『日経ビジネス』06.7.10)や「過労死大国」(『週刊 エコノミスト』06.7.25)と言われるような、格差の拡大や長時間・過密労働による過労死が大問題になっています。ここまで日本の労働者の状態悪化が深刻になり、また、格差がひどくなった原因は、自民党政府と財界の、新自由主義の経済政策路線にもとづく「規制緩和」政策の推進にあります。

99年の労働者派遣法改正で、ホワイトカラーのなかに派遣労働が認められ、03年の改正では製造現場でも派遣労働が認められ、また、04年から、裁量労働制の導入が、それまでよりも容易にできるようになりました。その結果、非正規雇用社員は95年の1,001万人から06年には1,663万人に増加し、雇用者全体に占める割合も21%から33%に増加しています(総務省労働力調査)。裁量労働制の導入、成果主義賃金制度がセットで適用され、長時間・過密労働を助長しています。その上政府は、「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼ばれる制度を導入し、ホワイトカラーを8時間労働制の適用から除外し、年収400万円以上の労働者の残業代をなしにしようとしています。これが導入されると、ホワイトカラーから「残業」という概念がなくなり、残業代なしで働かされることになります。

また、格差の拡大は、非正規労働者の8割近くが年収150万円以下という、最低限の生計費も保障されない異常な低賃金労働者を増加させました。

低賃金の派遣労働者の増大が、正規雇用労働者の賃金を押し下げ、労働者全体の賃金水準を引下げる役割を果たしています。低賃金や労働条件改善のためにも、命と健康を守るためにも、「規制緩和」路線を改めることは欠かせません。

 

6、非正規雇用労働者の賃金・労働条件改善を

98年〜05年の間に正規雇用労働者は461万人減り、非正規雇用労働者は417万人増加しています(総務省の労働力調査)。非正規雇用労働者増加の内訳は、パート・アルバイトが109万人増にたいして、派遣・契約・嘱託など(基幹労働力型非正規)の労働者が、309万人増加しています。労働者の3人に1人、青年と女性の2人に1人は非正規雇用のもとで働いています。そして、政府の調査でも、非正規労働者の8割近くが年収150万円以下という異常な低賃金です。正社員と同じ仕事の責任をもたされているのに、雇用不安に脅かされながら働いています。こうした低賃金、無権利の非正規雇用労働者の増大は、格差社会とワーキングプアと言われるような貧困層拡大の根源になっており、同時に、年金、医療などの社会保障の土台を崩し、日本社会と経済に新たな困難をつくりだしています。

こうした非正規雇用労働者の劣悪な賃金・労働条件を放置していては、正規雇用労働者の賃金・労働条件が切り下げられ、雇用も脅かされてしまいます。労働組合として、非正規雇用労働者の労働条件改善、雇用の安定、均等待遇などに自らの問題として取り組むことが求められています。また、派遣労働拡大などの労働法制の改悪をすすめてきた規制緩和推進の政治を改めることも、同時に求められています。

 

、自由闊達な討論を取戻し、活力ある職場風土を

(1)自由な雰囲気、職場の活力を奪ってきた反共労務政策

石播では30数年の長期にわたって、反共主義による職場支配がつづけられました。その結果、自由な雰囲気がなくなり、上意下達の企業運営がつづいたため、職場で会社施策にたいして意見や批判をする自由や、仲間同士が仕事について自由に話し合うことや、人間的な交流をする自由が奪われてきました。反共主義は、会社が職場に対立を持ち込み、労働者を分断し、労働者の共同や協力を壊すものです。反共主義にもとづく差別支配が、一人ひとりが自由闊達に意見を述べ、自主性を発揮して企業活動に参加する土台を崩し、石播の経営困難の大きな原因になっています。

会社も「野武士作戦06」を展開し、「自由に本音で話し合える職場」「職制の上下にかかわらず自由に意見が言える職場」風土づくりに取り組んでいますが、石播の経営を安定的な軌道にのせるうえで、こうした異常な労務支配を改めることが根本的な問題です。

昨年から今年にかけて、橋梁談合の摘発につづいて、水門とトンネルファンでも公正取引委員会の調査が行われ、社会的な批判が高まっています。こうした不正がつづいていることは、労働者の会社への信頼を失わせてしまいました。

社会的な信頼を取戻し、安定的な経営に転換するためにも、反共労務政策を改めることは、コンプライアンスの中心問題です。

(2)三菱重工は「グローバルコンパクト」(参照)に参加し、差別しないことを宣言

三菱重工は、国連が提唱した「グローバルコンパクト」に参加(2004年)し、「三菱重工コンプライアンス指針」は「差別的取り扱いや性的いやがらせを行わない」ことを明記しています。

職場から差別をなくすことは、厳しい国際競争や国内での競争に立ち向かう意欲と活力を生み出すうえでは欠かせないことです。この点で、石播は長年にわたる反共主義にもとづく差別支配が、職場から協調・共同して仕事に取組み、経営困難を乗り越える気風を奪ってきました。

三菱重工が、「グローバルコンパクト」にもとづいて差別をやめることを社会に宣言し、企業運営を行ってきたことが、いかに重要なことかは、石播と同じ、厳しい企業競争、過当競争の条件のもとでありながら、三菱は、一定程度、労働者の苦労・努力を業績に実らせて、一時金で石播と大きな差をつけていることにも現れています。

 

国連のアナン事務総長が1999年に世界経済フォーラムで提唱し、2000年に国連本部で正式に発足した。経済活動に伴う諸問題を解決するため、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野に関する普遍的10原則を支持・実践するよう参加企業に呼びかけるプログラムのこと。世界のあらゆる地域から1300以上の企業(2004年4月現在)、国際労働団体、市民社会の組織が参加している。

 

(3) 世界でも日本でも、「反共主義」は時代おくれ

全石播労組が加盟している連合は、国際自由労連に加盟しています(154ヵ国、組合員数約1億4、500万人)が、この国際自由労連は、最近、時代錯誤の反共主義が世界に通用しないことから、反共主義の路線をとらなくなっています。また、国内では、最近、繊維大手のクラボウが思想差別を行っていたことが断罪されました。

この06年9月に第4回アジア政党国際会議が韓国のソウルで開かれますが、この会議には日本共産党が招待されましたています。この会議は、アジア地域の政党が与野党の別なく一堂に会し、アジアの政党間協力を強めることを目指し、政治、経済、社会などの共通の関心ある問題について、話し合う場となっています。この会議に先立ち、日本共産党・志位委員長が党首としては初めて韓国を訪問し、韓国の主要5党すべての代表、院内代表と会談し、日本共産党と韓国の政党や各界との交流の道が開かれました。韓国には、今でも国家保安法があり、共産党は非合法の国ですが、「反共」の壁が崩れつつあります。また、同じ9月に、イスラムの国、パキスタン政府からの公式招待があり、日本共産党代表団が訪問し、世界の平和秩序、テロ根絶の方途、核兵器廃絶について意見の一致を確認しました。

このように、世界でも日本でも、労働運動でも政治でも、反共主義は時代おくれです。企業の不祥事が相次いでいますが、コンプライアンスを掲げるのであれば、憲法に違反する反共労務支配はすぐにやめるべきです。

 

8、連帯を広げ、共同の力で企業再生の展望を切り開こう

石播再生の展望は、一人ひとりが職場の現実、石播のおかれている現実を直視し、意見を交流し、声をあげ、協力・協同して切り開く以外にありません。とりわけ、反共労務支配は、職場から自由な雰囲気を奪い、協力・協同を妨げ、労働組合の団結力を弱めたことから、労働者・国民犠牲の政治に対する社会的な反撃力を弱め、日本を弱肉強食のゆがんだ社会にしてきています。それだけに、反共主義の克服は、私たち一人ひとりの社会的な責任です。

石播を安定した企業経営の軌道に乗せたいという願いは、職場の人たち共通の願いです。また、企業の安定した発展のためには、技術(技能)の伝承が欠かせません。ところが、いまの石播の目先の利益優先の経営は、コスト競争第一主義のために、最も大事な「技術(技能)の伝承」をふみにじっています。また、時代を先取りした技術や製品開発がおろそかにされていることが、労働者のキリのない大変な苦労が会社の業績に結びつかない原因です。「目先の利益優先」から、「人と技術を大事にする」経営に転換させることは、連帯と運動なしには実現しません。

コスト競争第一主義によって技術者を疲弊させ、技術の伝承を困難にしたのでは、石播の企業再生の展望は切り開けません。「人と技術を大切にする」経営に転換して、技術とものづくりの力を確かなものにし、これをアジア経済圏のなかで生かす道を探求することが求められているのではないでしょうか。

フランスでは、高校生や大学生を含む300万人規模の運動で、青年を解雇自由にしようとする政府の法案を撤回させました。そしてラテンアメリカでも、反共主義を乗り越え、民主主義と国民主権の新しい政治の流れが強まっています。反共主義を克服してこそ社会進歩が実現できるということが、今の世界の大きな流れです。

石播でも「ES勤務制度」の適用を除外させた運動の経験をもっています。職場から声をあげ、連帯と運動を広げて、共同の力で企業再生の展望を切り開きましょう。

 

以 上

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