【キリスト教入門講座】 70 2001.02.16
旧約の始まり(12)
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《わたしは四十年の間、荒れ野であなたたちを導いた》(申命記二九章四節)とあるように、イスラエルは、シナイ契約を交わした後、約束の地の周辺に着きながら、四十年(一説に拠れば二十年)もの年月を、荒れ野と呼ばれる場所で過ごしました。実は、この期間は、イスラエルが一つの民族になるための大切な時間で、この放浪時代の間に、イスラエルの中に十二部族という人為的な組織が作られていきます。約束の地への侵入、定着も、この十二の部族単位で行われました。その後、定着に伴う人口増など、外的な要因によって、十二を構成する部族の名称は一部変わりますが、それでも、十二の部族で一つの国家を形作るという姿勢が貫かれたのです。これが、アンフィクチオニーと呼ばれる、いわゆる、十二部族連合です。 ヨシュア記を見ると、華々しい戦闘の記録ばかりが並べられていますが、実際の定住の過程では、むしろ、平和的定住の方が殆どだったと言われています。しかし、平和的に定住をすれば、当然異教を礼拝する者たちと、聖所を共にし、場合によっては祭祀をも共にする事になります。このような状態の中で、偶像礼拝は、むしろ日常茶飯事だったと思われます。もっと時代の下がったサムエル記上一〇章のサウル王の塗油の場面でも、異教の祭祀に関係のありそうな人々や異教的口寄せの様子などが違和感なく描かれています。この時代の考古学資料は、至る所の遺跡から数多くの偶像を発掘しています。それでも、ヨシュア記の中には、偶像礼拝は描かれず、士師記のなかでもその記述は大士師の活躍しない時代にだけ限定されています。そこで、カナン定着の歴史を聖戦で彩った事、十二部族連合のこの時代を、理想の時代として、あえて、偶像礼拝の痕跡を最小限にとどめている事、そうではあっても、大士師の時代以外を描く時には、王の不在=民の自分勝手という描き方をする事、この三つは、歴史的事実というより、むしろ、申命記史家たちの歴史思想の現れとして考えておいたほうが良いでしょう。 |
| 今週は、申命記史家の著作から、最初の二作、ヨシュア記、士師記を取り上げ、それぞれのアウトラインおよび、背景となる時代史を見ていきます。次週は、サムエル記の概説、その次に列王記を取り上げます。 | |
☆ ヨシュア記のアウトライン。
1.序:ヨシュアの継承(1章)
2.カナンの征服(2〜12章)
中央部の制圧(2〜9章)、6章エリコ、8章アイでの戦いを含みます。
南部の制圧(10章)、南部カナンの5人の王との戦いが描かれています。
北部の制圧(11:1〜15)、ハツォルを盟主とする北部カナン連合との戦いです。
占領地と、征服された王たちの列挙(11:16〜12:24)
3.領土の配分(13〜22章)
序:主からの命令(13:1〜7)
モーセによる配分(13:8〜33)
ヨシュアによる配分(14〜19章)
逃れの町、レビ人の町(20〜21章)
内輪もめの記録(22章)
4.ヨシュアの告別の言葉(23〜24章)、24章にシケム契約と、ヨシュアの死(29f)を含んでいます。
☆ 士師記のアウトライン。
1.序:カナンの征服と不信仰の始まり(1:1〜3:6)
2.それぞれの士師とその時代(3:7〜16章)
最初の士師たち(3:7〜31)、オトニエル、エフド、シャムガルの3人です。
デボラとバラク(4〜5章)、女性士師デボラと戦士バラクの物語です。5章がデボラの歌です。
ギデオンとその子(6〜9章)、9章のアビメレク物語で血の継承が否定されています。
小士師たちの時代(10〜12章)、トラ、ヤイル、エフタ、イプツァン、エロン、アブドン。
サムソンの物語(13〜16章)
3.この時代の、その他の出来事(17〜21章)
ダン族の移動(17〜18章)
ベニヤミン族による内紛(19〜21章)、
《そのころ、イスラエルには王がなく、それぞれ自分の目に正しいとすることを行っていた》というまとめが印象的です。
☆ ヨシュア〜士師の時代の闘い。
ヨシュアの時代、イスラエル民族は、ヨルダン川以東の高地を離れ、約束の地、カナンの山岳地に侵入していきました。そこには多くのカナン人の都市国家が既に存在し、イスラエル人たちは、彼らと戦わざるを得ませんでした。しかし、ヨシュア記6章にある都市国家エリコの攻城戦に見られるように、カナン人の国家も、その多くは、内部に異分子として、イスラエルに呼応するような人々を含んでいました。従って、征服戦と言っても、しばしば、支配者の交代に過ぎないことも多かったのです。
こうして侵入したイスラエル民族が、最初に遭遇した敵は、ミデアン人、アラム人等の後から侵入してきた遊牧民たちでした。彼らの一部は、仲間として加えられ、一部は略奪をしただけで遊牧民として去り、一部が周辺に別の王国を作り定着します。これらの、エドム、アンモン、アマレク、ミデアンなどの小王国が、次なるイスラエルの敵として現れてきます。この過程は、誰がパレスチナの東半分の覇者となるか、の闘いだった、と見ても良いでしょう。イスラエルは、小さな都市国家に分裂することなく、十二部族連合という当時としては稀有の国家組織をもって、この地域に君臨し、最終的に東パレスチナを統一したのです。この時点で、平野部の西パレスチナは、海岸に入植した、ペリシテ人の都市国家連合によりほぼ統一されていました。ここに、次のサムエル記の時代背景となる、イスラエル対ペリシテという対立の構図が出来上がったのです。