西日本新聞のコラムより

2000年4月から、地元の西日本新聞に月に一度「田舎へGO!」というコラムを書いています。掲載時は文字数の関係や担当編集者の表現チェックなどで少々手が加わることが多いのですが、今回は原文に近い形で紹介します。

 

2004年1月〜2004年7月
「久しぶりの親戚大集合」(福岡県豊津町)
「大切な人にだけ紹介したい」(熊本県小国町)
「名人とコンニャクづくり」(熊本県小国町)
「家庭料理はスローフード」(熊本県水俣市)
「農村料理のおいしさ再発見」(熊本県水俣市)
「こだわりの手づくり豆腐」(福岡県福岡市)
「本物の体験を大事にする宿」(大分県耶馬溪町)
「眺めのいい農家レストラン」(熊本県小国町)
「子どものように育てた卵」(佐賀県三瀬村)最新(一番下に)最新
以下、つづく…



2000年4月〜12月
大分県安心院町・長崎県大瀬戸町・宮崎県五ヶ瀬町・長崎県西海町・フランス・オー
ベルニュ地方・熊本県小国町・福岡県立花町・熊本県水上村・熊本県砥用町

2001年1月〜12月
宮崎県西米良村・熊本県水俣市・熊本県玉名市・佐賀県三瀬村・大分県大山町・大分
県竹田市・大分県中津江村・福岡県犀川町・熊本県南小国町・大分県別府市・熊本県
阿蘇町

2002年1月〜12月
大分県豊後高田市・福岡県筑紫野市・熊本県牛深市・宮崎県北郷町・大分県安心院町
・長崎県大島町・福岡県志摩町・福岡県福岡市・大分県安心院町・大分県真玉町・熊
本県水上村

2003年1月〜12月
福岡家豊津町・大分県安心院町・熊本県水俣市・熊本県南小国町・大分県玖珠町・福岡県福岡市・福岡県浮羽町・大分県玖珠町・大分県国見町・大分県中津江村・熊本県水俣市

 

 

 久しぶりの親戚大集合
 ここ数年、盆正月はまめに帰省しています。楽しみは、妹が連れて帰る甥っ子と遊ぶこと。二歳半と四カ月の甥っ子二人はそれぞれにかわいくて、絵本を読んであげたり、だっこしたり。一緒に集落を散歩して、近所のおばちゃんに「あら、子ども?」と声をかけられたり。ちょっとだけ“おかあさん体験”です。
 今回は、それに加えて「久しぶりの親戚大集合」がありました。私が小さい頃は、母親の実家に母親のきょうだい四家族、いとこ十人が集まって、にぎやかにお正月を迎えていたのです。今年はおばあちゃんが病院から戻るというので、「それなら」とみんなでおしかけました。
 大きな机を並べて、みんなでおかずとお酒を囲みました。いつのまにか大人になったいとこたちがお酒を飲む姿は、なんだか不思議でした。だけど、話題になるのは相変わらずの昔の思い出話。集まると必ず話題にされるみんなの子どもの頃のエピソードなんだけど、まるでドリフの「わかりきったコント」を見るような安心感があります。のんきに笑えます。
 二十代の頃は、こんな田舎の“家族”や“集落”をとっても重く感じていたけど、そんなニッポン的なつながりが、少し温かく思えるようになってきました。これも、各地の農村に出かけて“疑似帰省”してるせいかな。

(2004年1月27日掲載)

 大切な人にだけ紹介したい
 「うちの町で“商家民泊”ができるようになったよ」と熊本県小国町の知人が教えてくれました。商店街の元時計屋さん(今はギャラリー)が、自宅の蔵を改装して、会員制で少しずつ人を泊めはじめた、というのです。
 「歴史の重みを伝えて、つなげていきたいんです」と商家民泊「ササク蔵ブ」の北里純二さん・香代さん夫妻。ひいおじいちゃんの佐作(ささく)さんが建てた、二階建て・築百一年の蔵を片付けるのに三年半。百年分の古道具がザクザク出てきたそうです。
 だから蔵も母屋も部屋のあちこちに“お宝”だらけ。かわいい照明、タンス、火鉢、調理具、鏡、酒器に大工道具…まるで骨董屋さんです。夕食も、蔵から出てきた塗り膳と器に盛られます。一つひとつのエピソードを聞いていると、ホント話が尽きません。
 いつしか地域の話、人の話へ。「この商店街にはいいお店がいっぱい。車で通り過ぎるだけじゃなく、ぜひ歩いてみて」。昼はおそば屋さんなのに夜はフランス料理を出す店、おいしいお肉やさん、ワカモノが改装したバー、映画館など、北里さん夫妻が地元の魅力をたくさん教えてくれました。
 宿のノートに「ここは、大切な人にだけ紹介したい」と記入が。私もそんな気持ちです。会員制・要予約、一泊二食五千円。お風呂は地元の温泉で。
 「ササク蔵ブ」(ギャラリー北里)=0967(46)3311

(2004年2月24日掲載)

 

 名人とコンニャクづくり
 三月の忘れ雪の中、熊本県小国町下滴水(しもたるみず)集落へ出かけました。
 「街のシロウトにコンニャクづくりを教えてみる」という実験に参加したのです。当然私はシロウト係。先生役のコンニャク名人は、ユキコさんをはじめ集落のおばちゃんたち。会場は、納屋の広いリツコさん宅です。
 まずはコンニャクイモの皮むきからスタート。「かゆくなるかもよ、手袋したがよか」と言われたけど、おばちゃんは素手(平気らしい)。手を動かしながら、会話も弾みます。夏は暑いから、おばちゃんはつい下着一枚で作ることもあるとか。一応オッパイを隠しておかないと「コンニャクに間違えられたら困るもんなぁ、ワハハー」。…愉快な名人です。
 コンニャクづくりは楽しくて、まるで粘土遊びみたいでした。でも、おばちゃんの手でまるめるコンニャクはきれいな丸になるのに、私のはひび割れたりデコボコしたり。簡単そうで、実は難しいのです。
 作業後、みんなでお昼ごはんを頂きました。台所から魔法みたいにドンドンお料理が出てきて、食卓に載りきらないほど。地のもの、季節のもの…典型的なスローフードでした。
 次回開催は未定ですが、決まり次第情報はこのHPに掲載予定(現在作成中、近々いろんな小国情報が登場します)=http://www.oguni-tourism.com/~onb/

(2004年3月23日掲載)

 

 家庭料理はスローフード
 農村の日常の総菜やおやつを展示し試食する催しが、今静かなブーム。
 昨年冬、熊本県水俣市久木野のふるさとセンター「愛林館」が「おいしい久木野 家庭料理大集合」を実施しました。会場は、地元のおばちゃんたち持参の百三十五種類の大皿がズラリ。
 はじめの一時間弱は、お腹をグーとならしつつ眺めるだけ。料理名や料理した人、レシピの書かれた紙が添えています。「絶対これは食べよう。あ、それも」と、指をくわえてジリジリ。試食解禁と同時に、テーブルのまわりにはドッと人垣ができました。
 大根の皮のキンピラ風、ゴボウの昆布巻き、からいもの揚げだんご…。農村の家庭料理は旬(しゅん)のもの、地のものが素材の、いわゆるスローフードです。数ある料理の中で私の印象に深く残ったのは、地元のおばちゃん・小島トシエさんが作った「味煮たまご」。ゆで卵をしょうゆと砂糖で味付けしただけの、シンプルな一品。
 自然と「この料理のコツは?」「それはね…」と参加者と出品者の間でおしゃべりも弾みます。おばちゃんたちは、食べながら「次はアレを出そう」と、もう次の季節の一皿を思い浮かべてた様子。次回は五月九日(日)。料理はあくまで「味見用」で、全員が満腹になるとは限りません。参加は五百円。詳しくは愛林館=0966(69)0485、http://www7.ocn.ne.jp/~airinkan

(2004年4月20日掲載)

 

 農村料理のおいしさ再確認
 最近お出かけの多い熊本県水俣市久木野地区のふるさとセンター「愛林館」で、「おいしい久木野 家庭料理大集合」の第二回目に参加しました。
 地元のおばちゃんたちが、普段の食事で作っているお総菜やおやつを持ちよって展示。よその人もまじってみんなで試食する、食の催しです。
 一回目と比べて今回は、並んだ料理が風流に変わりました。前回容器のまま並べられていたおかずが、きれいな大皿に盛られて、緑の葉が添えられていたり。食材の彩りも素敵。演出にも気を配って、ますますおいしそう。
 「じゃあ、どうぞー」。試食スタートの号令もかき消えそうな勢いで、お箸とお皿が配られて、料理に群がりました。おからコロッケ、豆乳ゼリー、揚げ玄米一口おにぎり、干しからいも、昆布のつくだに、くずもち…。味噌につけて食べる生のウド、塩もみしてゴマとゴマ油で和えただけのキュウリ、こんなのが八十数皿ズラリ。少し離れた農村から参加の女性は「うちのあたりとはまた料理が全然違う」。
 農村の食卓で、普段何気なく口にしてる食べものは、実は出所も確かでバラエティー豊か、そしてこんなにおいしい…ということを、みんなで噛みしめて再確認するこの催し。単なる“グルメ”でない味わいでした。次回は十月下旬を予定。問い合わせは愛林館=0966(69)0485、 http://www7.ocn.ne.jp/~airinkan/

(2004年5月18日掲載)

 

 こだわりの手づくり豆腐
 今回は、福岡市内へGО! “手づくりトーフとこだわりの品”の「わが家」が開店。築百年以上の木造家屋の一角を自分たちで改装した、四坪弱の小さなお店です。お豆腐はオーナー・藤井真紀子さんの手づくり。
 この手づくりのお豆腐、一度買って三日後、たまらず五パック買いに行きました。トロンとなめらか、大豆のやさしい味がひとくち一口重なります。
 聞けば、「原材料のこだわりは半端じゃない」のです。阿蘇産の大豆・フクユタカと、天草・通詞島の天然にがりだけ…。その原材料にまつわるストーリーは、とてもここに一言では書けません。「わが家のトーフ」は二百グラムで二百十円。賞味期限は翌日まで。発送はしていません。
 他もこだわりの品が。知る人ぞ知る無添加ドレッシング、天然塩、天然にがり、黒糖、お茶、しょうゆなど、どれも澤谷さんが自宅で愛用する品々。脱OLした近くの農家・箱島智子さんの無農薬野菜も時々販売しています。野菜は何があるかはその日次第。
 近所のおばあちゃんが友達を誘って来てくれるのがうれしい、とスタッフで義妹の陽子さん。真紀子さんは「いろんなこだわりのものを、もっと紹介していきたい」と話してくれました。
 「わが家」=午前十一時〜午後七時、日曜休。福岡市東区馬出五ー十二ー八、092(633)3524。

(2004年6月15日掲載)

 

 本物の体験を大事にする宿
 ずっと行きたかった民宿、大分県耶馬溪町の「渕の上」に泊まりました。お客を近所の酪農家へ牛の乳搾り体験に案内している宿。実はこの宿のご主人・江渕稔さんのある会合でのこんな話が、長い間私の印象に残ってたのです。
 「乳搾りは最初、お客の都合に合わせて、朝食後に案内した。ふだん搾る時間と違うので、牛も嫌がるし農家にも面倒をかけた。ある時、牛と農家に合わせて朝六時に行った。すると自然な乳搾りができてお客の感動が深まった。農家のおじさんとお客とのおしゃべりが弾んだ。お客向けに準備した体験じゃなく、本物じゃないとだめなんだな、と思った」。
 その話に感動したくせに、私は乳搾りを次回にまわして宿の温泉につかり、スッポンを食べてのんびりしました(後日肌がいい感じに!)。食卓にのぼる野菜は、無農薬野菜。おかずも「なつかしいおばあちゃんの味」と、リピーターのお客が多いそうです。
 夏は宿の裏で川遊びができます。野生のスッポンがとれることもあるとか。私は次に行く時には、牛と、今回お留守だった“看板娘”のおばあちゃんにも会いたいと思います。一泊二食で六千四百五十円、スッポン料理は追加で三千二百円。乳搾り体験は牛乳付きで千円から千五百円(人数に応じて)。体験は予約時に相談を。
 「渕の上」=0979(56)2511。

(2004年7月13日掲載)

 

 眺めのいい農家レストラン
 今回は、ドライブ途中で立ち寄りたいお店です。熊本県小国町・農家のカフェレストラン「菜園の風」は、なだらかな丘の上に立つ一軒屋。南向きの窓からは遠くに阿蘇五岳がズラーッと見えて、絶好のビューポイントです。
 パスタの食事ができるのですが、実は、この店で見逃せないのは野菜。というのも、オーナーで料理人の河津円幸さんは野菜づくり三十年のベテラン農家。使う野菜のほとんどは、横の畑で河津さんが育てたものです。
 ある日、サラダを食べてビックリしました。見たこともない茎の赤い葉、ゴマ味のする葉、ぴりっと辛い葉、いろんな葉っぱがお皿にぐるりと並べられて、つやつや。一つひとつしっかり味がして、野菜のパワーが体に入ってくる感じです。「作り方もあるし、それに、今朝採ったばかりだもん」と笑う河津さん。さすが野菜のプロ。
 メニューのサラダは、その時どきで中身が違います。畑の中身が季節とともに変わっているんだから、それも当然のこと。「いわゆる野菜の旬でなくて、その時期うちの畑でとれた一番できのいい野菜を出している」そうです。
 ここはプリンもおすすめ。ジャージー牛乳で手づくりしています。できれば平日にのんびり行って、風に吹かれてみて。気持ちいいです。場所は、ファームロード沿い。
 「菜園の風」=0967(48)0837、木曜休み。

(2004年8月10日掲載)

 

 子どものように育てた卵

 佐賀県三瀬村の竹炭職人・小野寺睦さん、亜希さん夫婦が自然卵養鶏も始めたと聞き、出かけました。
 風も通る放し飼い鶏舎はにおいもしません。「子どもを育てるのと同じ。トリも食べものも含めた“環境”が大事ですよね」と小野寺さん。鶏フンは、鶏舎の土壌に含まれる菌で分解されて無臭になるそう。エサは添加物・抗生物質なし、遺伝子組み換えなしの原料を自家配合します。
 実は、トリが来た最初の半月、鶏舎内にテントを張って小さな子どもと家族四人でトリと一緒に寝たことも。トリと自分たちが互いに慣れるため、周囲のケモノから守るため、それに「トリはどんな気持ちなのかなぁと思って」。
 小野寺さんの「平飼いのびのび自然卵・旅をする木」、「このお店で使ってもらいたい」と強く願うところにドキドキしながら自ら営業することも。福岡市大名の「手打ち蕎麦 やぶ金」で、だし巻き卵など卵メニューで味わえます。
 卵かけごはんにすると、違いがよく分かります。私もペロリ。早く次を注文したい! 十個五百二十五円。贈答用はソバ殻詰めで二十個千二百六十円から。卵を洗わないので殻を覆う膜を壊さず、菌が入らず長持ち(1カ月たっても黄身が指でつまめるほど)。送料別途で通販可。支払いは代金引換で、代引き手数料は小野寺さんが負担。
 問い合わせ・注文は「旅をする木」小野寺さん=0952(56)2181。

(2004年9月7日掲載)