アイヌ文化の振興ならびに伝統等に関する知識の普及に及び啓発に関する法律
目的
第一条 この法律はアイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及び文化(以下「アイヌの伝統等とい う」)が置かれている状況にかんがみ、アイヌ文化の振興ならびにアイヌの伝統等に関する国民 の知識の普及及び啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という)を図るための施策を推進することによ り、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせてわが国の多様な文 の発展に寄与することを目的とする
定義
第二条 この法律において「アイヌ文化」とはアイヌ語ならびにアイヌにおいて継承されてきた音楽、舞踏、 工芸その他の文化的所産及びこれから発展した文化的所産をいう
国及び地方公共団体の責務
第三条 国は、アイヌ文化を継承するものの育成、アイヌの伝統などに関する広報活動の充実、アイヌ文化 の振興等に資する調査研究の推進その他アイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するため に必要な助言その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2 地方公共団体は、当該区域の社会的条件に応じ、アイヌ文化の振興等を図るための施策の実 施に努めなければならない
施策における配慮
第四条 国及び地方公共団体は、アイヌ文化の振興等をはかるための施策を実施するにあたっては、アイ ヌの人々の自発的意思及び民族としての誇りを尊重するよう配慮するものとする。
基本方針
第五条 内閣総理大臣は、アイヌ文化の振興等わ図るための施策に関する基本方針(以下「基本方針」と いう)を定めなければならない
2 基本方針においては次の事項について定めるものとする
一 アイヌ文化の振興等に関する基本的な事項
二 アイヌ文化の振興を図るための施策に関する事項
三 アイヌの伝統等に関する国民の知識の普及及び啓発を図るための施策に関する事項
四 アイヌ文化の振興等に資する調査研究に関する事項
五 アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に際し配慮すべき重要事項
3 内閣総理大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ北海道開発庁 長官及び文部大臣その他の関係行政機関の長に協議するとともに、次条第一項に規定する関係 都道府県の意見を聴かなければならない
4 内閣総理大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは遅滞無くこれを公表するとともに、 次条第一項に規定する関係都道府県に送付しなければならない
基本計画
第六条 その区域の社会的条件に照らしてアイヌ文化の振興等を図るための施策を総合的に実施するこ とが妥当であると認められる都道府県(以下「関係都道府県」という)は、基本方針に即して、関係 都道府県における文化的振興等を図るための施策に関する基本計画(以下「基本計画」という)を 定めるものとする。
2 基本計画においては次に掲げる事項について定めるものとする
一 アイヌ文化の振興等に関する基本的な方針
二 アイヌ文化の振興を図るための施策の実施内容に関する事項
三 アイヌの伝統等に関する住民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策の実施内容に関す る事項
四 その他アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に際し配慮すべき重要事項
3 関係都道府県は、基本計画を定め、又は変更したときは遅滞無く、これを北海道開発庁長官及 び文部大臣に提出するとともに公表しなければならない
4 北海道開発庁長官及び文部大臣は、基本計画の作成及び円滑な実施の内容の促進のため、関 係都道府県に対し必要な助言、勧告及び情報の提供を行うよう努めなければならない
指定等
第七条 北海道開発庁長官及び文部大臣は、アイヌ文化の振興等を目的として設立された民法(明治 29年法律第89号)第34条の規定による法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に 行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、同条に規定する 業務を行う者として指定することができる
2 北海道開発庁長官及び文部大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者 (以下「指定法人」という)の名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない
3 指定法人は、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その 旨を北海道開発庁長官及び文部大臣に届け出なければならない
4 北海道開発庁長官及び文部大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る 事項を公示しなければならない
業務
第八条 指定法人は、次に掲げる業務を行うものとする。
一 アイヌ文化を継承する者の育成その他のアイヌ文化の振興に関する業務を行うこと
二 アイヌの伝統等に関する広報活動その他の普及啓発を行うこと
三 アイヌ文化の振興等に資する調査研究を行うこと
四 アイヌ文化の振興、アイヌの伝統等に関する普及啓発又はアイヌ文化等の振興に資する調査研 究を行う者に対して、助言、助成その他の援助を行うこと
五 前各号に掲げたるもののほか、アイヌ文化の振興等を図るために必要な業務を行うこと
事業計画等
第九条 指定法人は、毎事業年度、総理府令、文部省令で定めるところにより、事業計画及び収支予算 書を作成し、北海道開発庁長官及び文部大臣に提出しなければならない。これを変更しようとす るときも同様とする
2 前項の事業計画書は、基本方針の内容に即して定めなければならない
3 指定法人は総理府令・文部省令で定めるところにより毎事業年度終了後、事業報告書及び収支 決算書を作成し、北海道開発庁長官及び文部大臣に提出しなければならない
報告の徴収並び立入検査
第十条 北海道開発庁長官及び文部大臣は、この法律の施行に必要な限度において、指定法人に対し し、その業務に関し報告をさせ、またその職員に指定法人の事務所に立ち入り、業務の状況若 しくは帳簿、書類その他の物品を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる
2 前項の規定により立ち入り検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請 求があったときにはこれを提示しなければならない
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならな い
改善命令
第十一条 北海道開発庁長官及び文部大臣は、指定法人の第八条に規定する業務の運営に関し改善が 必要であると認めるときは、指定法人に対し、その改善に必要な措置を講ずべきことを命じる ことができる
指定の取り消し
第十二条 北海道開発庁長官及び文部大臣は、指定法人が前条の規定による命令に違反したときは、そ の指定を取り消すことができる
2 北海道開発庁長官及び文部大臣は、前条の規定ににより指定を取り消したときは、その旨を 公示しなければならない
罰則
第十三条 第十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査 を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚 偽の陳述をしたものは、二十万円以下の罰金に処する
2 法人の代表者又は代理人、使用人その他の従業員が、その法人の業務に関し、前項の違反行 為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して同項の刑を課する
附則
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を越えない範囲内において政令で定める日から施行す る
第二条 次に掲げる法律は廃止する
一 北海道旧土人保護法(明治32年法律第27号)
二 旭川市旧土人保護法(昭和九年法律第9号)
第三条 北海道知事は、この法律の施行の際現に前条の規定による廃止前の北海道旧土人保護法(次 項において「旧保護法」という)第10条第一項の規定により管理する北海道旧土人共有財産(以 下「共有財産」という)が次項から第四項までの規定に定められるところにより共有者に返還さ れ、又は第五項の規定により指定法人若しくは北海道に帰属されるまでの間、これを管理するも のとする。
2 北海道知事は、共有財産を共有者に返還するため、旧保護法第10条第三項の規定により指定 された共有財産ごとに、厚生省令で定める事項を官報で広告しなければならない。
3 共有財産の共有者は、前項の規定による公告の日から起算して一年以内に、北海道知事に厚 生省令で定めるところにより、当該共有財産の返還を請求することができる。
4 北海道知事は、前項に規定する期間の満了後でなければ、共有財産をその共有者に対し、返還 してはならない。ただし、当該期間の満了前であっても、当該共有財産の共有者の全てが同項の 規定による請求をした場合にはこの限りではない。
5 第三項に規定する期間内による請求をしなかったときは、当該共有財産は、指定法人(同項に 規定する期間が満了した時に第七条第一項の規定による指定がされていない場合にあっては北 海道)に帰属する
6 前項の規定により共有財産が指定法人に帰属したときは、その法人は、当該帰属した財産をア イヌ文化振興のための業務に要する費用に充てるものとする。
(地方自治法・北海道開発法・文部省設置法の一部改正)省略
(法案提出理由・衆議院附帯決議省略)