えせ同和行為は部落解放運動をはじめとする今までの取り組みを否定し、差別を助長する行為です
平成9年中におけるえせ同和行為実態把握のための アンケート調査結果について
法務省人権擁護局
1 調査の趣旨
「えせ同和行為」とは,「同和問題はこわい問題である」という人々の意識に乗じ,同和問題を口実にして,企業や官公署などに不当な利益や義務のないことを求める行為のことで,大きな社会問題となっている。 このような,「えせ同和行為」の横行は,同和問題に関する誤った差別意識を増幅し,政府,地方公共団体,民間運動団体等が永年にわたって努力してきた教育や啓発の効果を覆すものであり,到底これを放置することはできないものである。法務省は,こうした「えせ同和行為」の実態を把握するため,昭和62年以降5回にわたりアンケート調査を実施したが,その後の「えせ同和行為」の実態を把握するため,平成9年の1年間を調査対象期間として本年1月第6回目のアンケート調査を実施した。
2 調査の概要
今回のアンケート調査は,前回調査と同様,「建設業」,「製造業」,「卸売業」,「小売業」,「銀行業」,「農業協同組合」,「信用金庫・信用組合」,「生命保険業」,「損害保険業」,「運輸通信業」,「サービス業」及び「マスコミ業」の12業種を対象に,30人以上の従業員規模を有する全国の約27万事業所の中から(総務庁統計局実施の平成6年事業所名簿整備調査による。),前回調査時における業種別及び地域別の構成比率に基づき6,000事業所を等間隔抽出方法により抽出した。
なお,今回の調査より,従業員規模別による抽出において,それぞれの従業員規模区分間での抽出のバラツキをなくすため,すべての従業員規模区分で約2%の抽出を行った。アンケート調査は,往復郵送法で行い,3,735事業所から回答があった。
3 調査結果の概観
今回のアンケート調査の結果によると,回答のあった3,735事業所のうち,同和を名乗る者又は団体から違法又は不当な要求を受けた事業所は739事業所,その要求総件数は1,679件であった。被害率(要求を受けた事業所数を回答事業所数で除した比率)は,全体の19.8%となっており,そのうち,不法,不当な要求に応じた事業所は205事業所,応諾率(要求に対して,「全部」又は「一部」応じた事業所数を要求を受けた事業所数で除した比率)は27.8%を占めている。
前回調査(平成6年を対象)における被害率18.8%,応諾率26.6%との比較では,それぞれ約1ポイント上昇した。本結果は,全国の約27万事業所の中の3,735の事業所からの回答に基づく ものであることにかんがみると,全国における「えせ同和行為」による被害は相当数に上るものと予測される。したがって,本調査結果から,依然として「えせ同和行為」による被害が,今なお深刻な状況にあることがうかがえる。
(注)「被害」とは,同和を名乗る者又は団体から違法又は不当な要求を受けた場合をいう。 「応諾」とは,違法又は不当な要求に応じた場合をいう。
4 最近の傾向
前回と比較した「えせ同和行為」に関する新しい動きとしては,
1) 西日本では,ほぼ全域で被害率が急増していること
2) 大規模事業所で,被害率は急増したが,一方で応諾率は急減していること
3) 「機関紙・図書等物品購入の強要」による要求が依然多く,前回に比べ更に増加していること などが注目される。
5 自由意見等について
今回の調査においても回答者の多数から自由意見が寄せられた。その結果によると,「不況下にあって彼らの行動はますます巧妙かつ陰湿なものになっている」や「電話対応等には難癖をつけるが,出版物購入の話になると,お願いのような形にし,脅迫行為にならないようにしている」など,「えせ同和行為」の手口が巧妙になってきていることがうかがえる。
6 社会運動等を標榜する者からの不法,不当な要求
前回調査に引き続き今回の調査においても,「えせ同和行為」との関連が予想される社会運動等を標榜する者(えせ右翼,えせ政治団体)からの不法,不当な要求についての実情を把握するため,これらの者から不法,不当な要求を受けたことの有無についての質問を行ったところ,回答全事業所の21.9%(前回26.7%)がそのような要求を受けたとしている。
7 今後の取組
今回の調査結果からも,依然として「えせ同和行為」排除の啓発の必要性が高いことがうかがわれ,法務省としても,「えせ同和行為」を根絶するため,「えせ同和行為対策中央連絡協議会」を中心に関係機関等と連携をとりながら,今後ともねばり強く啓発を行う必要がある。
また,官公署を使い圧力をかけると言っておどされた事業所のうち,官公署から「適当に処理するよう指示された」とするものが26.1%(前回14.5%)あった。この点については,謙虚に受け止め,各行政機関に「えせ同和行為」排除のための指導を徹底する必要がある。