ここしばらく聞く「人権教育のための10年」。名前は聞いたけどどんなものなのという方のために「国連総会決議」の内容と「国内行動計画」をつけて下に書き込んであります。目次ページにある「世界人権宣言」「国際人権規約」などと併せて読むとよりいっそう理解できるかも。みなさんも是非一度目をとうしてください。さて、国連総会決議では2005年までとされていましたが後に2004年と改められたことも併せてお知らせしておきます。
○人権教育のための国連十年(国連総会決議)
第四九回本会議 一九九四年一二月二三日 A/RES/49/184 国連総会は、「国連憲章」と「世界人権宣言」にこめられた基本的で普遍的な原則に導かれ「世界人権宣言」第二六条が、「教育は人間の人格の完成並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を指向する」と定めていることを再確認する。 「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)第一三条や、「子どもの権利に関する条約」第二八条など、「国連憲章」や「世界人権宣言」と同様の目的を定めた国際人権文書の諸条約を想起し、理論的次元とその実際への適用の両方にわたる人権に関する知識が教育政策のなかで優先的位置をしめるものとして確立されるべきだと勧告している国連人権委員会の一九九三年三月九日の決議1993/56を考慮する。 一九九四年三月四日の国連人権委員会決議1994/51を考慮する。この決議において人権委員会は、国連高等弁務官に対して国連人権教育の十年のための行動計画を諸目標の中に組み入れることを促すとともに、国連事務総長に対して経済社会理事会を経て第四九回会期国連総会に国連人権教育のための行動計画を提出するよう求めていた。 人権教育はたんなる情報提供にとどまるものではない。人権教育とは、あらゆる発達段階の人々、あらゆる社会層の人々が、他の人々の尊厳について学びまたその尊厳をあらゆる社会で確立するための方法と手段について学ぶための生涯にわたる総合的な過程であることを国連総会は確信している。 また、あらゆる年齢の女性及び男性の尊厳と両立しうる発展の概念に人権教育が寄与すべきことをも確信するものである。そのなかには、子ども・先住民族・マイノリティ・障害者など社会を構成する多様な人々への配慮が含まれなければならない。 人権教育を促進するべく、世界中のすべての地域において、教育関係者やNGO(非政府組織)、およびユネスコやILOやユニセフなどの国際機関によってなされた努力を考慮に入れる。 女性・男性・子ども一人ひとりが自らの人間的可能性を実現するために、市民的・文化的・経済的・政治的・社会的なすべての権利を認識しなければならないと確信する。 人権教育は、ジェンダーによる差別を除去し、女性の権利の擁護・促進を通じて平等な機会を保障するための重要な手立てとなると信じる。 ユネスコが一九九三年三月八日から一一日にモントリオールで開催した人権と民主主義のための教育に関する国際会議で採択された「人権と民主主義のための教育に関する世界行動計画」が、「人権と民主主義のための教育それ自身が人権であり、人権・民主主義・社会正義が実現される前提として不可欠のものである」と述べていることを考慮し、人権の領域における国連の教育・広報プログラムを適切にコーディネイトすることは、国連人権高等弁務官の責任であることを想起し、国連人権高等弁務官報告の第九四段落において、調和のとれたコミュニティ間関係、相互の寛容と理解、ひいては平和を実現するために不可欠のものであると宣言されていることを注記し、エルサルバドルにおける国連監視団やカンボジアにおける国連暫定機構を含む国連の平和社会建設作戦での人権教育の経験を自覚し、ウィーン世界人権会議において一九九三年六月二五日に採択されたウィーン宣言と行動計画、とりわけその第二章第七八〜八二段落を心にとどめ、
1 一九九三年一二月二〇日の国連総会決議48/127に込められた要請にしたがって 提出された人権教育に関する事務総長報告をよく理解して注記する。 2 一九九五年一月一日から始まる十年間を「国連人権教育の十年」と宣言する。 3 事務総長報告に組み込まれた「国連人権教育の十年行動計画、一九九五〜二〇〇五」を 歓迎し、諸政府から行動計画に対する意見や行動計画を補足する見解が寄せられることを 期待するものである。 4 諸政府から表明された意見を考慮に入れ、第三項で示された目的を達成するために、 事務総長に対して計画を提案することを求める。 5 あらゆる政府に対して、行動計画の遂行に貢献するとともに、非識字克服のための諸 活動をさらに高め、人格の完成並びに人権及び基本的自由の尊重を教育が指向するよう努 めることを呼びかける。 6 政府・非政府の教育関係機関に対して、行動計画において勧告されているように、とりわけ各国人権教育計画を準備しそれを遂行することによって、人権教育プログラムの確 立と実施に向け努力を傾注するよう強く求める。 7 国連人権高等弁務官に対して、行動計画の遂行をコーディネイトすることを要請する。 8 人権センター事務局および人権委員会に対して、加盟国や人権条約評価機関など適切な 諸機関、あるいは有能なNGOと協力し、人権高等弁務官が行動計画をコーディネィトす る手助けをするよう要請する。 9 事務総長に対して、人権教育のための任意基金創設を検討するよう要請する。この基金は、NGOによる人権教育活動への支援に関する特別条項を含み、事務局の人権センタ ーによって執行されるべきである。 10 諸専門機関や国連の諸プログラムに対して、それぞれの得意な領域で行動計画の達成 に貢献するよう求める。 11 国際共同体の構成員すべて、人権や教育に関心を寄せる政府間組織やNGOがこの決議に注目するよう、この決議を広く公表することを事務総長に要請する。 12 国際的・地域的(regional)・国内的NGO、とりわけ女性・労働・開発・ 環境、あるいはその他の社会正義を求める団体・人権擁護団体・教育関係者団体・宗 教団体・マスディアなどに対して、人権という観点から定型的(formal)・非 定型的(non‐formal)教育への関わりを強めると同時に人権センターと協 力して「国連人権教育の十年」を遂行することを求める。 13 現在活動している人権評価諸機関に対して、国連加盟国が人権教育推進にかかる国際的義務をどの程度はたしているかにとくに注目するよう要請する。 14 第五〇会期においてこの問題を「人権問題」という課題のもとに検討することを決定する。
コメント 一九九四年一二月二三日に「国連人権教育の十年」を宣言した国連総会での決議である。これに遡ること一年前にも、国連総会では人権教育の十年に関わる決議が採択されている。それを比べるとき、この決議は、@「国連人権教育十年」の期間を一九九五〜二〇〇五年と明確化していること、A女性の視点をより明確に打ち出していること、B具体的な行動計画の確立と遂行を諸機関・諸政府・諸団体に求めていること、などの特徴をもっている。 (訳・コメント 森 実〓大阪教育大学)
○国連人権教育の十年(一九九五〜二〇〇五)行動計画:人権教育―生涯にわたる学習
1 基準と概念 1 「国連人権教育の十年」は国際人権諸文書の規定、とりわけ「世界人権宣言」第二六条、 「経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約」第一三条、「子どもの権利に関する 条約」第二九条、「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」第一〇条、 「あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約」第七条、「ウィーン宣言」の第三三〜 三四段落、同じく「行動計画」の七八〜八二段落などに基づくものである。 2 これらの規定にしたがい、また、「十年」の目的に照らして、教育・研修・宣伝・情報 提供を通じて、知識や技能(スキル)を伝え、態度を育むことにより、人権文化(cul tureofhumanrights)を世界中に築くとりくみとして、人権教育を定義 する。 そして、人権教育が指向するのは、以下のことがらである。
(a)人権と基本的自由への尊重を一層強化すること。 (b)個性を全面的に開花させ、人権の尊厳を大切にする心を十分に育てること。 (c)すべての国民、先住民やよび人権・民族・エスニック・宗教・言語集団間の相互理解 と寛容、性的平等および友好関係を促進すること。 (d)すべての個人が自由な社会に効果的に参加できるようにすること。 (e)平和を守るための国連の活動を促進すること。
2 一般的指導原理 3 「国連人権教育の十年」は、この「行動計画」のTに示した定義と基準に従い、さらに「世界人権宣言」と「市民的・政治的権利に関する国際規約」および「経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約」、その他関連する国際人権文書に記されたあらゆる基準・概念・価値観が、できるかぎり幅広く組織され、理解されるようにすることをめざす。 4 「十年」のもとに行われるすべての活動にあたっては、国連が規定しているように、人権の中に市民的・文化的・経済的・政治的・社会的権利を含め、またすべての権利の不 可分性と相互依存性を認識して、人権教育への相互的アプローチをとる。 5 「十年」の目的を追求する教育は、学校教育や職業・専門教育を通じた定型的学習(f ormal learning)においても、また家庭やマスメディア、市民社会の諸 機関を通じた否定型的学習(informal learning)においても、すべ ての年齢層、あらゆる社会階層の男女が平等に参加できるようにする。 6 効果を高めるために、「十年」のための人権教育のための諸活動は、学習者の日常生活と関連づけたやり方で行われる。そして、人権を抽象的な規範の表明としてではなく、 自分たちの社会的・経済的・文化的・政治的な生活現実の問題としてとらえるような対 話に学習者を導くための手段や方法をさぐる。 7 民主主義の発展と人権が相互に依存し、相互に補完し合う性格をもっていることを認識し、「十年」のもとでの人権教育は、政治的・経済的・社会的・文化的領域におけるい っそう効果的で民主的な参加を実現することをめざす。また人権教育は、経済的・社会 的な進歩、および民衆中心の持続可能な発展の手段として活用される。 8 「十年」のもとで展開される人権教育は、ジェンダーに対する歪んだ見方や人種その他に関するステレオタイプと闘い、これから自由であるようにする。 9 「十年」のもとで展開される人権教育は、この行動計画やそのもととなった国際人権諸文書に唄われたあらゆる原則に従って、技能(スキル)や知識を学習者に提供すると同 時に、態度や行動にも積極的に影響を与えることをめざす。
3 目的 10 「国連人権教育の十年」の目的には、次のものが含まれる。 (A)人権教育を発展させるために、あらゆる学校段階、職業教育、および定型的・非定型 的学習の場においてニーズを評価し、効果的な戦略を立てること。 (B)国際社会、地域(regional)、国、および地方(local)の各レベルで 人権教育を推進する計画を作成し、その推進のための力量を強化すること。 (C)人権教育教材を共同で開発すること。 (D)人権教育を促進するためのマスメディアの役割と力量を強化すること。 (E)さまざまなレベルの読み書き能力や障害をもつ人のために、できる限り多くの言語お よび言語以外のかたちで、「世界人権宣言」を世界中に広めること。
4 主要な関係組織 11 各国政府は、「国連人権教育の十年」のプログラムを実施するにあたって、積極的な役割を果たすべきである。そのため、人権教育に関する国内行動計画を作成したり、公教育制度の中に全国的な人権教育カリキュラムを導入し、また強化したり、人権に関する全国的な情報キャンペーン活動を展開したり、人権資料・情報・研修センターへ人々がアクセスできるように道を開いたり、さらには、人権教育に関連する自主的な基金や国際的・国内的な人権教育プログラムに資金面での援助を行ったりすべきである。 12 各国の人権機関、たとえば人権委員会やオンブズパーソン事務局、人権研究・研修機関などは、全国的な人権教育計画の作成と調整、実施にあたって中心的な役割を果たすべきである。 13 各国の非政府組織(NGO)、草の根組織、専門家組織、関心をもつ個人などが積極的に関与し、「十年」の目的達成を支援するように奨励すべきである。この目的のために、各国の諸組織による人権教育活動に対しては、国際的プログラムや政府などから全面的な支援が提供されるべきである。その方法としては、技術的な面での支援とともに、教育・訓練を行う。あるいは市民社会においてそれらの組織の役割を強化するために資金的な支援を行う、などのやりかたがある。 14 人権高等弁務官は、人権問題を扱う国連の最高担当者である。人権高等弁務官は、国連総会決議48/141にしたがって、とくに人権分野における国連の教育や広報活動に関連するプログラムの調整をはかる。 15 人権高等弁務官が政策の方向性と行動の優先順位を打ち出し、国連人権センターがその政策を遂行するという形で、人権高等弁務官と国連人権センターは一体となってとりくむ。 この点に関わって、国連人権センターはユネスコと協議の上、諸政府の要請に応じて人権に関する教育・研修・情報・奨学金・助言サービスのプログラムを引き続き提供する。 国連人権センターは、このような視点で、教員・警察・刑務所の管理者・法律家・裁判官・官僚・メディア・軍隊・NGO・選出された公務員、および一般民衆への啓発や研修を今後も重視する。国連人権センターはまた、国際公務員や開発プログラム担当者、平和維持活動関係者への人権研修を引き続き提供する。 16 国連人権条約監視機関、人権委員会、「差別防止及び少数者保護に関する小委員会」 など、国連のすべての人権機関と人権プログラムは、「十年」の期間中に自らに課せられ役割の一環として、政府や人権高等弁務官および他の人権教育関係者に適切な勧告を行うなど、人権教育の伸長を奨励する。 17 ユネスコは、教育、教育方法、人権に関するその長年にわたる経験にもとづき、またユネスコ協同学校やユネスコクラブ、ユネスコ人権講座や各国のユネスコ国内委員会など、独自のネットワークを通じて、この行動計画に示されたプロジェクトの計画・実施・評価において中心的な役割を果たす。したがってユネスコは、人権高等弁務官や国連人権センターと、この行動計画の実施にあたって緊密に協力しあうことになる。 18 同様に、人権教育活動に関与しているその他の国連専門機関や事務局、ならびにプログラム、たとえば国連児童基金(UNICEF)、国際労働機関(ILO)、国連難民高等弁務官事務局(UNHCL)、国連開発計画(UNDP)、国連ボランティア、国連環境計画(UNEP)、国連人権居住センター、社会開発・人道問題センター、国連大学をはじめとするさまざまな国連研究機関が、現時点における人権教育の力量を「十年」の目的達成に向けて全面的に調整し、動員するために、人権高等弁務官と共同することが望ましい。 19 人権分野で活動する政府間組織やNGOなど上記以外の国際組織は、人権教育分野の活動を継続・強化するとともに、「十年」の目的達成のために人権高等弁務官との協力関係を活用するよう奨励されるべきである。 5 対象となる集団
20 「国連人権教育の十年」のもとに実施される諸活動は、定型的教育(formal e ducation)と非定型的教育(non‐formal education)の 両方を通じて、できるだけ多くの集団や人々に、その目的を伝えられるように計画され る。 そのために、指導者研修などを通じて恒久的な力量を形成するようなアプローチが奨励 されるべきである。 21 一般民衆は、国際人権諸文書に示された権利と責任について啓発するための、広範囲に及ぶ人権情報提供の取り組みの対象となる。 22 「十年」に基づいて展開される人権教育にあっては、視聴覚教材やマルチメディア教材を推進力として活用し、さまざまな読み書き能力や教育経験、および障害をもった人々に対する人権教育についても効果的に実施する。 23 「十年」のもとで展開される人権教育活動では、女性・子ども・高齢者・マイノリティ・難民・先住民・生活困窮者・HIVキャリア・エイズ患者など、社会的に弱い立場におかれている集団にとくに焦点をあてる。 24 警察・刑務所の管理者・法律家・裁判官・教師・カリキュラム開発者・軍隊・国際公務員・開発プログラム担当者・平和維持活動関係者・NGO・メディア・官吏・議員など、人権の実現に影響力をもつ特別な立場にある人々に対する研修に特別な注意を向ける。 25 政府ならびに国際的援助機関やプログラムの支援を得て、学校、大学、専門教育・職業教育のプログラムや機関が、人権教育カリキュラムとそれにもとづく教材や資料を開発する。さらに、就学前・初等・中等・中学後・成人の各教育段階にそれらを導入するよう奨励し、支援するべきである。 26 NGO、労働者団体、雇用者団体、労働組合、マスメディア、宗教団体、地域社会組織、家族、自主的な情報・資料・研修センターをはじめとする市民社会のしかるべき機関が、人権教育を非定型的な教育プログラムに位置づけるために、政府ならびに国際的援助機関・プログラムの支援を得て、そうした非定型的教育プログラムを開発し、提供するよう援助し、支援するべきである。
6 調整と実施のための組織体性
27 人権高等弁務官は、国連人権センターの協力を得て、この行動計画の実施を促進し調整する。人権高等弁務官は、国連人権条約監視機関や国連憲章に基づく人権機関とこの行動計画に関して協議し、それらの機関によって作成された人権教育分野のあらゆる勧告を支援する方法を探るべきである。人権高等弁務官はまた、各国政府・地域組織・各国研究機関・専門機関・NGO・草の根団体・専門家組織ともとくに緊密に協議し、得られた情報をもとに、あらゆるレベルで達成された進展に関して、年次報告書を準備しなければならない。 28 国際的な調整の仕組みと同様に、国レベルや地方レベルでの行動が、人権教育の効果的推進に決定的に重要であることをふまえて、本校動計画は次のことがらを構想するものである。 (a)各国において、人権教育推進のための中心的組織を指名する必要がある。こうした中 心的組織としては、関連する政府機関、NGO、民間セクター、教育関係者からの代表を含む特別な委員会が考えられる。あるいはまた、オンブズパーソン事務局、国内人権委員会、国内人権研修・研究機関など、既存の関連機構・組織がその機能を果たすよう指名される場合もあるだろう。 (b)人権教育にとりくむ各国の中心的組織は、国内の人権教育に関わるニーズを把握し、 国内行動計画を策定し、資金を確保し、「国内人権教育の十年」の目的達成に関係す る国際的・地域的組織と協力し合って、ニーズ、展望、「十年」の目標達成に向けた 進展などを人権高等弁務官に報告する責任を負う。 (c)さらに、各国の中心的組織は、国際社会・地域の資源、情報、支援を、その国の地方 レベルや草の根レベルに届ける役割をはたす。 (d)各国政府は、研究、指導者研修、人権教育教材の収集・翻訳・普及、および会議・研 究集会・講座の開催にとりくむ力量をもった人権研修センターを国内に設立するよう 奨励される。また、すでにそのようなセンターが存在するところでは、その強化に向 けてとりくむ。 (e)国連をはじめとする国際機関、援助国政府、政府間組織、NGOを含む国際的なプロ グラムや諸活動は、「十年」の目的を達成しようとする各国の、あるいは地方の努力 を支援し、これらに対する刺激を与えなければならない。
7 実施プログラム
29 「国連人権教育の十年」の具体的な目的、またその目的を実現するための実施プログラム、そして各プログラムのフォローアップと評価の手段については、以下の通りとする。
A:要素1―ニーズの把握と戦略づくり 目的 30 要素1の目的は、国際社会、地域、国、地方の各レベルで人権教育を促進するために、 ニーズを把握し、効果的な戦略を形成することである。 プログラム 31 人権高等弁務官は、国連人権センターの支援とユネスコの協力を得て、一九九五年に、 国際社会、地域、国レベルですでに実施されてきた人権教育プログラムや、主導的な取り 組みについて、予備的な調査と評価を実施し、その調査結果についての報告書を作成する。 32 予備報告書では、すでに行われている人権教育のプログラムおよび主導的な取りくみについて、入手できるあらゆる情報を考慮し、「国連人権教育の十年」の目的を実現する 上での問題点やニーズを明らかにし、「十年」の間にそのニーズに効果的に取り組むため の行動を提案する。 33 人権高等弁務官が予備報告書を作成するため、「十年」参加するに各国の人権教育にとりくむ中心的組織、国際的・地域的な組織、NGO、専門機関やプログラム、またその 他の関連組織は、それぞれ独自の評価と活動に基づいて、関連情報を人権高等弁務官に提供するよう要請される。とくに、人権教育に取り組む各国の中心的組織については、それぞれの国における詳細な評価を行い、人権高等弁務官に対して報告することが要請される。 34 調査と評価、およびその結果をまとめた予備報告書においては、国際社会、地域、国レベルでの、入手可能なさまざまなタイプの人権教育の教材の数や種類、すでに存在する 人権教育機関、センター、人権教育推進のための恒常的な中心的組織、各国における人権教育の研修を受けた教師の割合、小学・中学校・高校で人権教育のカリキュラムを持つ学校の割合、また専門的研修や非定型的教育プログラムにおける人権教育のとりくみの数やタイプなど、さまざまな内容を明らかにする。 35 予備報告書ではまた、すでに実施されている人権教育プログラムをさらに促進し、また新たなプログラムをつくり出すため、国連加盟国、NGO、その他の人権教育実施機関 がどのようなニーズをもっているかを明らかにし、「十年」の目的に貢献するとともに、その目的に関する提案を行う。 36 報告書ではまた、人権教育を新たな方向で発展させ、人権の価値を社会全体に効果的に広げるために、伝統的な教育以外の場における社会化プロセスの他の側面についても探 求する。 37 報告書には、人権教育にとりくむ各国の中心的組織、「十年」に協力する国際的・地域的組織、人権に関する既存の研究・研究機関やセンター、その他「十年」に取り組む協 力組織(パートナー)のリストを付け加える。また、人権教育に関わる政府あるいは民間 の教育機関や組織に対して、資金的・技術的支援を行う機関、組織、財団等の情報も提供 すべきである。
評価とフォローアップ 38 人権高等弁務官の予備報告書発行に続いて、人権高等弁務官と国連人権センターは、 ユネスコや他の国連機関、「国連人権教育の十年」のとりくみに参加する人権団体、地 域・国際的組織やNGO、資金を拠出した国の政府、教育者、その他世界中の専門家の 協力を得て、「十年」の計画立案のための国際会議を開催する。 39 会議では、人権高等弁務官の報告書を検討し、その提案の実施と責任分担のために、 詳細な計画を策定する。計画には実施予定表、地方、国、地域、国際社会の各レベルでの 実施機関の明示、予算、実行と資金獲得のための戦略が含まれる。 40 人権高等弁務官は、この会議の場を利用して、予備報告書と会議から生み出されたさまざまなプログラムに対する資金面での支援を訴える。 41 会議の結論は報告書にまとめ、これによって人権高等弁務官の予備報告書を補足するとともに、「十年」に参加するすへての組織や政府、ならびに人権教育にとりくむ各国の 中心的組織が入手できるものとする。 42 補足的な報告書を受けとった後、人権教育にとりくむ各国の中心的組織は、国内における人権教育実施のための詳細な五カ年計画をたてることが要請される。そして、その計 画の中には、対象となる集団、方法、予定表、予算と資金獲得戦略、中間年にあたる二〇 〇〇年に評価を行うまでのりくみを網羅するものとする。
B:要素2―国際的なプログラムとその力量の強化 43 要素2の目的は、国際社会における人権教育プログラムとその力量を強化することにある。
プログラム 44 人権高等弁務官による人権のための全体的な政策指針のもとで、国連人権センターは、 それぞれの具体的な対象者むけのハンドブックや研修マニュアルの作成など、人権教育分 野でのプログラム開発に関する活動を継続して推進する。国連人権センターは、人権とソ ーシャルワーク、人権と選挙、人権と予審段階での拘禁、人権状況の報告などに関するハ ンドブックやマニュアルが、幅広くいきわたるようにしなければならない。また、人権と 国家機関、人権と警察、人権と監獄、人権と司法、人権と軍隊、人権と憲法、人権と紛争 解決、人権と教師、人権とメディア、人権と議会についても、さらにマニュアルやハンド ブックを作成する。 45 国連人権センターは、人権分野での助言サービスと技術的支援プログラムの一環として、一般の人々や特定の集団に対して、人権教育に関係する技術的支援活動を引き続き促 進する。 46 国連人権センターはユネスコと協力して、初等・中等学校むけにモデルとなる人権教育カリキュラム、教育技術、教材を開発する。国連人権センターでは、人権の分野での助 言サービスと技術的支援プログラムの一環として、技術的支援を要請した国に対して協力 を行う際に、これらの教材を活用する。 47 各専門機関は、人権教育の分野でのとりくみを強めるとともに、人権高等弁務官および国連人権センターと協力して、それぞれの機関が権限を有している分野の人権に関係し た共同の教育活動を発展させるために、人権教育連絡調整担当官を指名することが要請さ れる。各機関は、人権高等弁務官が予備・中間・最終報告書を作成するのに役立つように、 人権高等弁務官に対して、実施したプログラムや開発された教材についての情報を提供する。 48 国連人権センターは、優先的な人権問題に関する、人権教育の概念、教材、方法を明らにするために、国際的なワークショップの開催を促進する。 49 国連人権センターは、世界人権会議のウイーン宣言と行動計画の趣旨にそって、平和維持活動に従事する者、国際公務員、開発プログラム担当者が、人権の基準・概念・方法 を、その職務の計画と遂行に統合することを支援するための活動を引き続き促進する。こ の目的のために、国連人権センターは、研修プログラムをそれぞれの対象集団ごとに開発 し、また国連の関連機関や部局と協力して、このようなプログラムをそれぞれの活動の中 に組み込むようにするべきである。 50 国連人権センターおよび関連する専門機関や国際的プログラムは、先端技術の開発と利用の可能性を追求する。これには、「国連人権教育の十年」にかかわる国際的プログラ ム、 人権教育にとりくむ各国の中心的組織、教育者、情報、研修センター間のネットワー ク形成を促進するための、電気通信網、電子メールのデータベース、データ交換などが含まれる。 51 国連事務総長は「人権教育のための国連任意基金」を創設されることが要請される。 この基金は助言サービスや技術的支援のプログラムという形で、国連人権センターが運営 し、政府機関やNGOが、国レベルで「十年」にもとづく人権教育の力量充実を支援する ために使われる。
評価とフォローアップ 52 人権高等弁務官は、その予備・中間・最終報告書において、これらすべてのプログラムの進展や推移について報告する。また同時に、各報告書では、各プログラムの目的を推 進するための提案を行う。従って、これらの各プログラム項目に関連のある国際的な組織 等は、最新の詳細な情報を人権高等弁務官に提供することを要請される。 C :要素3―地域におけるプログラムとその力量の強化 目的 53 要素3の目的は、地域における人権教育プログラムとその力量を強化することである。 プログラム 54 地域および域内小地域(subregional)の人権組織は、人権教育分野でのとりくみを促進するとともに、人権高等弁務官ならびに国連人権センターと協力し、その 各組織の活動地域において人権に関する教育活動を共同で促進するために、人権教育連絡 調整担当官を任命することが要請される。この担当官はまた、各組織を代表して、予備・ 中間・最終報告書作成のために、人権教育に関して実施されたプログラムや開発された教 材などを人権高等弁務官に報告する。 55 このような人権組織がまだ存在しない地域、もしくは域内小地域では、人権高等弁務官は、国連人権センターの協力を得て、適切な場合はワークショップを開催したり、技術 面での支援を提供することにより、このような組織の設立を後押しする。
評価とフォローアップ 56 人権高等弁務官は、予備・中間・最終報告書の中で、これらのプログラムすべての進展や推移について報告する。また同時に、各報告書の中でプログラムの目的をさらに前進 させるための提案を行う。そこで、これらのプログラムに参加するすべての国際地域組織 は、最新の詳細な情報を人権高等弁務官に提供することを要請される。 D :要素4―各国におけるプログラムとその力量の変化 目的 57 要素4の目的は、各国の人権教育プログラムと、その力量を強化することである。
プログラム 58 各国は、国際的な計画に示されている原則や目的を反映した人権教育行動計画の策定を要請される。それは、人権のための各国の包括的な行動計画の重要な構成要素になるだ ろう。 このような国レベルの行動計画は、その国や地方の関連団体等との協議の上で一九九五年 内に完成させ、その実行に向けた効果的な調整や協力を行うため、人権高等弁務官に対し て報告する必要がある。各国の行動計画では、幼児教育、初等・中等教育、高等教育、専 門教育機関、公務員研修、および一般市民への教育を含む非定型教育において、人権教育 を推進するための具体的目的、戦略、プログラムに示すものとする。人権教育に取り組む 国レベルの中心的組織は、定期的に計画の実施について再検討を行い、必要があればこれ を改訂する。 59 第二八項で示したように、全ての国は人権教育にとりくむ国レベルの中心的組織を決 め、ニーズの把握や国レベルの行動計画の策定、資金集め、及び人権高等弁務官との国際 的・国内的な連絡や調整をはかるものとする。 60 すべての国に市民が利用できる人権情報・研修センターを設置すること。すでにこのようなセンターが存在する場合は、国レベル、地方レベルでの人権教育を支援する力量を 強化するための具体的手段をとることを奨励する。このようなセンターの設置、機能強化 にあたっては、国際的・地域的なプログラムや組織が、資金や技術などに関する支援を行 う。各国は、人権高等弁務官に対して、予備・中間・最終報告書作成のために、このよう なセンターの存在、運営、機能、資源について、入手できる限りの情報を提供する。 61 各国の人権情報・研修センターは、人権教育にとりくむ中心的組織と協力し、とくに以下の任務を遂行する。 (a)人権と人権教育についての研究 (b)研修用教材を翻訳したり、文化的に適合する形で取り入れたりすること (c)専門家集団やコミュニティレベルの活動家に対する支援 (d)研修指導者を対象に、ジェンダーに関する意識化、および感性を高める研修を行うこ と (e)人権教育に関するプロジェクトづくりに関心のある生徒と教師のためのインタープロ グラムの企画 (f)人権に関する芸術、音楽、演劇などの文化事業の開催、および学術誌、一般書籍、視 聴覚教材の製作 (g)人権教育に関する、国内の専門家、および機関のリストの維持管理 (h)人権教育に関して、国際的な資金援助を受けて実施される技術協力プロジェクトの支 援 (i)人権教育に関することがらについて支援を求めている個人や集団に、相談の機会を提 供したり、出版物や教材を入手できるようにするなど、人権を広げるためのサービス を提供。 このようなサービスを提供するためのガイドラインや教材を形成するため、国レベル の情報・研修センターの要請に応じて、すぐれた力量をもった国際プログラムや組織 からの支援提供
評価とフォローアップ 62 人権高等弁務官は、これらすべてのプログラムについて、その進展や推移を、予備・ 中間・最終報告書の中に記述する。また、同時に各報告書において、目的達成に向けてさ らに前進できるように提案を行う。これらのプログラムに参加する各国の人権教育にとり くむ中心的組織は、最新の詳細な情報を人権高等弁務官に提供することを要請される。 63 人権高等弁務官の各報告書は、すべて人権教育にとりくむ各国の中心的組織が入手できるようにする。また、それらの中心的組織がその提案を考慮し、また報告書の中の他の 情報についてもこれを利用することによって、プログラムの開発を行ったり、あるいは資 金的、技術的な協力をどこに要請すればよいかを知ることにより、「国連人権教育の十年」 に関して他団体との連絡・調整ができるようにする。
E:要素5ーの目的は、地方におけるプログラムと力量の強化 目的 64 要素5の目的は、地方における人権教育プログラムとその力量を強化することである。 プログラム 65 人権教育にとりくむ国レベルの中心的組織は、地方やコミュニティでの人権教育の力量を育てるため、上記要素4でふれたリスト上のすべての地方、及びコミュニティ組織を 巻き込み、それらの組織がそのとりくみや資源の活用によって、地方の構成員に効果的な 人権教育を行えるようにすることをめざし、国際的な支援の確保も含めて協力を行う。 66 人権教育にとりくむ国レベルの中心的組織、及び資料・情報・研修センターの支援を得て、地方やコミュニティレベルの組織では、職業教育や成人教育、、識字教育、および 地方のNGOや家庭にサービスを提供することを通して、人権教育を実施できる態勢を整 えておく。 67 以上の目的のために、人権教育に取り組む国レベルの中心的組織は、定期的な相談事業、あるいは地方のグループや代表者との年次会合を開催し、またそれらのグループや代 表者に対して、国レベルでの評価や行動計画、プロジェクト、人権高等弁務官の報告書へ の積極的な提案を求める責任を負う。 68 地方やコミュニティレベルでの組織は、同時に「十年」の恩恵を社会のすべてのレベ ルと領域に行き渡らせるために、国レベルでの人権教育プロジェクトの実施にも、全面的 にかかわるべきである。
評価とフォローアップ 69 人権高等弁務官は、人権教育を地方に広めるための課題や進展について、その予備・ 中間・最終報告書において報告する。人権高等弁務官はその報告書の中において、これら の努力をさらにすすめるための提案を行う。これらのプログラムに参加する国レベルでの 中心的組織は、協力関係にある地方やコミュニティレベルでの団体の数や種類について、 また地方に対して行った支援、及び直面した課題や困難について、最新の詳細な情報を人 権高等弁務官に提供することを要請される。
F:要素6ー人権教育教材の共同開発 目的 70 要素6の目的は、効果的な人権教育教材を、うまく調整をはかりながら共同開発するとである。 プログラム 71 人権高等弁務官と国連人権センターは、人権高等弁務官が出す予備・中間・最終報告書と並んで、ユネスコや「国連人権教育の十年」を担うその他のすべての関係組織と協力 しながら、マニュアル、ハンドブック、カリキュラム、視聴覚教材、およびその他の教材 を含む入手可能な人権教育教材の最新リストを作成・発行し、そのリストの内容を定期的 に更新する。このリストには、関心をもつ団体や個人がどのようにすればそれらの教材を 入手できるかについての情報も掲載する。このリストは、できるだけ早期に、電子データ ベースでも利用可能にする必要がある。リスト作成にあたっては収集された教材は、国連 人権センターで管理し、関心をもつ関係者が要求すれば、利用できるようにするべきであ る。 72 ユネスコ、及びその他の国際的、地域的な組織や機関は、このような人権教育教材開発のためのとりくみを強化することが望まれる。その際、人権高等弁務官の上記リスト作 成の過程で明らかになった教材の抜け落ちに対し、また既存の教材に必要な改善を加える ことに関して、優先的な注意を向ける必要がある。 73 国際的、地域的なレベルで開発された教材は、人権教育にとりくむ各国の中心的組織および資料・情報・研修センターによる検討やコメントを受けることによって、より豊か になるだろう。また、国際的、地域的なプログラムによる資金的、技術的な支援により、 これらの教材を各国および地方の人権教育プログラムに提供し、翻訳や文化的適応、また テストや修正を行えるようにする必要がある。 74 各国の資料・研修センターは、全国的な、また地方の人権教育プログラムの開発に活用することができるように、これらすべての教材を提供されるべきである。また、人権教 育にとりくむ各国の中心的組織は、人権高等弁務官への報告において、この点でのニーズ を具体的に示す必要がある。一方、人権教育にとりくむ各国の中心的組織は、これらの人 権教育教材を、地方に根ざした団体、全国的な専門家研修プログラムおよびNGO、その 他「十年」を担う関係組織に提供する責任がある。 75 特別の対象者向けに新しい教材を開発する際には、この行動計画のTからXに示された基準、定義、指導原則、目的、対象集団に加えて、以下のことがらを検討する必要があ る。
(a)同僚によるプレゼンテーション 可能であれば、効果的な研修のために、実際的な指向性を持った専門家を活用すべきであ る。 大学教授や理論家のみで構成される専門家パネルではなく、人権教育を行うために、法律家、判事、あるいは警察官など、それぞれの関連分野の実務家を準備することを考慮すべきであろう。例えば、警察官が警察官と話し合うというように、同僚どうしで学習するアプローチを用いれば、「教授が学生に」という研修モデルよりも、多くの成果が得られるであろう。
(b)研修指導者の訓練と力量育成 対象となる人権コースの参加者は、研修コース終了後もその責任が継続するという認識のもとに選ばれる必要がある。通常の任務に戻った後も、自ら研修を継続し、あるいは研修の成果を広める責任を負う必要がある。こうして、提供された情報が関係機関全体に広められるので、研修コースの効果は数倍に拡大する。
(c)教育技術 「十年」のもとで開発されるコースはそれぞれ、特定の対象者の研修に効果的な各種の方法を紹介する部分を備えている必要がある。特に、プログラム参加者の積極的で熱心な参加を確実にするような、創造的で、相互作用のある教授方法を活用するための提案が求められる。そのような方法として、ワーキング・グループ(作業部会)、講演・討論、事例研究、パネル討論、円卓会議(ラウンド・テーブル)、ブレーンストーミング、シミュレーション、ロールプレイ、フィールド・トリップ(野外研究)、実習、視聴覚機器などを、その特定の対象者にとって文化的に適合した形で活用することがあげられる。
(d)対象者にあわせたやり方 一般に適応できるようなあいまいな原則をただ繰り返すだけでは、特定の対象者の実際の行動に影響を及ぼしうる可能性はほとんどない。実際、研修や教育が効果を上げ、少しでも役立つものとなるためには、警察官であれ、医療従事者であれ、法律家や学生であれ、その特定の対象者に合わせて、適切な形で提示する必要がある。従って、「人権教育の十年」の教育活動は、生活と距離感のある理論的概念よりも、その対象者が地域社会で担っている役割や日々の仕事に直接関係した基準に焦点をあてるべきである。
(e)実際的なアプローチ ある国の警察署で起こった違反を調査していた最近の議会委員会の報告によると、権力の濫用を示す証拠をつきつけられたときに警察の側が述べたことは、捜査方法についての理解を欠いていたこと、旧式のやり方で取り調べを行ったこと、また民主主義国家での捜査がどのように行われているかについて知らなかったことなどであったという。捜査のやり方を比較し、改善するために警察が望んだのは、民主主義国家において調査を行い、その捜査方法について観察することであった。このような報告は、二つの重要な点を浮き彫りにするが、これらのことは警察官以外の研修参加者にもあてはめて考えることができる。まず、拷問のように人権を著しく侵害する行為を正当化しようとすることは、それがいかなる根拠にもとづくものであっても、人権のもっとも基本的な基準に関する認識を欠いていることを示す。つまり、いかなる理由であれ、その様な行為を正当化することは不可能なのである。第二に、実際の警察官(また他の集団)は、規則が何であるかということだけではなく、それらの規則の制約のもとでも、職務をいかに効果的に遂行できるかを知りたいのである。このいずれであっても、それを無視するような研修のとりくみは、信頼もされず、効果をあげることもできない。従って、「十年」のもとでの教育のとりくみは、対象になる専門職の職務遂行にとって、その時点でもっともすぐれたやり方であるとして文献や専門家の提言が示しているような、つまり対象集団の職務遂行を促進する効果がすでに明らかにされている方法についての実際的な情報を含むべきである。
(F)基準の包括的な提示 「十年」のもとで開発されたコースや教材は、関連する国際的基準を詳細に提示する必要がある。そのため、関連文書や簡素化された学習資料を翻訳し、研修参加者に配布する必要がある。
(g)感性に働きかける教育 「十年」のもとで開発されたコースや教材の目標は、基準や実際的なスキルを伝えるだけにとどまらず、研修参加者自身が、意図的ではなくても人権を侵害するような振る舞いをする可能性をもっていることを気づかせるような演習を含む必要がある。例えば、参加者自身の態度、あるいは振る舞いの中に性差別や人種差別の要素が含まれていることを自覚させる効果をもった、よく設計された演習である。同様に、(例えば)女性に適用される基準の重要性は、いつも明白であるとは限らない。例えば、さまざまな国際文書において見かけられる「名誉を傷つけるような扱い」ということばは、女性に適用される際には、男性とは異なる実際的意味合いを持っているかもしれないし、あるいは文化によっても、異なった意味合いをもつ可能性がある。 (h)研修コースの設計と適用の柔軟性 普遍的な効果をもつためには、研修担当に単一の厳格な視点やアプローチを要求するのではなく、柔軟な利用を促すような形で研修コースが設計される必要がある。これらのコースは、研修対象者の中に存在する多様な幅を持った文化的、教育的、地域的、経験的ニーズや現実に適応できるものでなければならない。
(i)評価のツール 研修教材やコースは、研修前・後の評価のための、評価用質問紙のような演習を含む必要がある。これは、三つの重要な目的に役立つ。まず、コース開始前の質問紙は、適切に活用すれば、対象者の具体的な教育ニーズに合わせて、研修担当者が研修内容を修正することを可能にする。コース終了後の質問紙と評価セッションは、いずれも研修参加者自身が何を学んだかのかを確認し、「十年」のもとで提供されるコースの継続的な(決定的に重要)修正と改善を支援するものである。
評価とフォローアップ 76 人権高等弁務官は、その予備・中間・最終報告と並んで、あらゆる国際的、地域的組織や人権教育にとりくむ各国の中心的組織に、ここに示した利用可能な研修教材の最新リ ストを配布できるようにとりくむ。 77 人権教育にとりくむ各国の中心的組織、ならびに「十年」に参加する他の協力組織の報告書によって提供される情報にもとづいて、変化するニーズに示されるように、新しい 教材の開発と普及を奨励する必要がある。
G:要素7―マスメディアの役割強化 目的 78 要素7の目的は、人権教育を一層推進するために、マスメディアの役割と能力を強化することである。
プログラム 79 さまざまなレベルの読み書き能力をもつ人々、及び僻地で生活や仕事をしている人々を含む社会のあらゆるセクターに人権教育を提供する上で、マスメディアが重要な役割を果たしていることを認識した上で、放送や他のメディアの専門家は、「国連人権教育の十 年」において、人権に関する情報や一般市民向けの人権教育の視点をその職務に盛り込む ために、一層の研修と支援を受けるべきである。「十年」のもとで研修や技術的支援の提 供に関わるすべてのプログラムや組織は、このようなとりくみへの貢献を検討する必要が ある。とくに国連人権センターは、メディア向けに人権のマニュアルを作成し、そのメデ ィア研修活動を強めるべきである。 80 「十年」を担うすべての関係組織は、メディアとの接触において、その独立性と情報や表現の自由を十分に尊重しながら、一般市民向けに人権問題がとりあげられるように奨 励し、また人権についての情報やアイデアを提供し、人権に関する市民の対話を促進する ように取り組むべきである。 81 人権高等弁務官、及び国連人権センターとの協議により、国連広報局は、人権に関する国連のテレビ・ラジオの教育プログラム制作を大幅に増やす。同局はまた、人権をテー マにしたラジオ放送番組やビデオ、映画などを製作することも望まれる。 82 人権高等弁務官、及び国連人権センターは、国連広報局との協力により、人権に関する一般市民向けの広報や教育を推進するためのメディア諮問委員会を設立し、人権基準や 機構に関するマスメディアによる広報キャンペーンを発展させる。 83 人権に関する世界広報キャンペーンとの関係で、また関連するNGOや機関との協力により、国連人権センターはデータ表、調査研究、その他の人権に関する広報資料の出版 活動を強化する。また、例えば一九九五年の国連五十周年や一九九八年の世界人権宣言五 十周年のような公的な人権行事を組織し、あるいは参加する。人権高等弁務官はこれらの 行事が世界的にメディアで報道されるようにとりくむ。
研修とフォローアップ 84 人権高等弁務官は、その予備・中間・最終報告書において、国際社会、地域、国の各レベルで、人権問題に対するメディアの関心を高めるためのとりくみについて情報を提供 する。 人権教育に取り組む各国の中心的組織はすべて、それぞれの国内での人権問題に関する新 聞報道を検討し、その内容について人権高等弁務官に報告することが期待される。また、 国際的なレベルでは、同様の新聞報道に関する検討を、国連人権センターと国連広報局で 行う。
H:要素8ー世界人権宣言の世界的普及 目的 85 要素8の目的は、最大限可能な数の言語で、またさまざまな読み書き能力や障害をもつ人々にふさわしい方法で、世界人権宣言を世界的に普及させることである。
プログラム 86 人権高等弁務官、および国連人権センターは、ユネスコ、国連広報局、および国連広報センターとの協力により、世界人権宣言がどれだけの言語で発行されているのか、また絵や視聴覚、その他の形態で表現されているのかについて、世界的な調査を実施し、一九九五年から各加盟国において、世界人権宣言がそのようなさまざまな形で活用できるようにとりくむ。 87 上記調査結果にもとづき、人権高等弁務官はさらに他の言語で人権宣言を翻訳するための計画を作成する。その際、各加盟国の主要言語による翻訳が少なくともひとつ確保さ れること、また各国におけるさまざまな読み書き能力や障害をもつ人々に適した世界人権 宣言の音声版、あるいは他の形態で表現したものが、最低ひとつ確保されることを優先的 に考える。 続いて、これら以外にも、マイノリティ集団や他の民族の言語による翻訳、また異なった 読み書き能力や障害のレベルに対応した世界人権宣言を、それぞれ早急に作成する必要が ある。 88 人権高等弁務官と人権教育にとりくむ各国の中心的組織の調整により、また調査にもとづいてつくられた計画の従って、政府、各国のNGO、大学、研究所は、必要であれば 国際的な機関やプログラムの技術的、資金的な支援を受けながら、世界人権宣言を適切な 形態で翻訳、出版、普及することが求められる。このような国際機関やプログラムとして は、国連人権センター、ユネスコ、その他の国連機関、また国際的なNGOによる助言サ ービスや技術支援が含まれるが、人権高等弁務官によってその提供が奨励され、また国際 的な援助機関もこのような努力を支援することが望まれる。 89 一九九八年の世界人権宣言五十周年に際し、国際社会、地域、国の各レベルで、それ ぞれ大きな記念行事が組織され、世界人権宣言の諸規定についての普遍的な知識や理解の 重要性が強調されるだろう。国際的なレベルでは、人権宣言が確実に世界的に普及し、ま たすべての加盟国において、あらゆる教育段階の人権教育に有効に組み込まれるための戦 略を生み出すために、人権高等弁務官が世界人権宣言の普及に関する国際会議を開催する 予定である。地域機関や人権教育にとりくむ各国の中心的組織も、これに相応する事業を 展開し、国際会議の勧告に貢献するとともに、その実施に向けてとりくむことが望まれる。 評価とフォローアップ 90 人権高等弁務官が実施する調査の結果と一九九八年に開催される国際会議の報告書 は、それらが完成した時点で、すべての地域機関、人権教育に取り組む各国の中心的組織、 また「国連人権教育の十年」に関心を持つ他の関係組織に配布される。 91 すべての地域機関、人権教育にとりくむ各国の中心的組織、および「十年」に関心を持つ他の関係組織は、調査終了後の進展について、人権高等弁務官に中間報告(西暦二〇 〇〇年)と最終報告(同二〇〇五年)に必要な情報を提供することが求められる。報告内 容としては、実施された記念行事、利用可能な世界人権宣言の翻訳その他の形態による表 現、またこれらのプログラム要素の達成に向けた継続的なニーズや課題が含まれる。 92 人権高等弁務官はこれらすべての情報を中間、および最終報告にもりこみ、すべてのプログラム実施協力組織は、これらの報告に含まれた情報や提案に従って、そのとりくみ を再度方向づけする。
8 地球規模の中間評価 93 西暦二〇〇〇年には、「国連人権教育の十年」の目的達成に向けてどれだけの進展がなされたかについて、人権高等弁務官と国連人権センターが、「人権教育の十年」の他の すべての関係組織と協力して、地球規模の中間評価を実施する。人権高等弁務官は、この 評価結果を国連総会に報告する。 94 この評価報告は、国際社会、地域、国、地方の各レベルで、それまでに達成されたことについてのあらゆる入手可能な情報を考慮し、残された課題や不充分点を明らかにし、「十年」の残りの五年間にとりくむべき行動に関する提案を行う。 95 人権高等弁務官の報告書のために、「人権教育の十年」に参加している各国の人権教育にとりくむ中心的組織、国際的・地域的な組織、NGO、専門機関とプログラム、その 他の関心をもつ組織や人々は、その独自の評価や活動にもとづいて、人権高等弁務官に適 切な情報を提供することが求められる。とくに、人権教育に取り組む各国の中心的組織は、 自国において詳細な評価を実施し、その上で人権高等弁務官に報告することが要請される。
9 「国連人権教育の十年」のしめくくり 96 西暦二〇〇五年は、「国連人権教育の十年」の最終の年である。従って、この年は、 各国の行動計画実施を通じて、人権教育プログラムを全般的にに達成する目標年となる。 また、人権教育教材の包括的な収集を完了し、すべての加盟国にそれらを広く普及させる 目標年でもある。「十年」の終了までに、人権教育を推進するための有効な国家的力量が、 世界的に確保されていなければならない。
10 「国連人権教育の十年」のフォローアップ 97 「国連人権教育の十年」の終了後、人権高等弁務官は国連人権センターの支援により、 またユネスコと協力しながら、地方、国、地域、国際社会の各レベルでの人権教育の現状に関する最終報告を出す必要がある。この報告書において、人権高等弁務官はさまざまな分野に
おける進展について、できるだけ詳細に記述することが求められる。例えば、世界人権宣言がどれだけの言語に翻訳されているか、国際的・地域的な組織やプログラムによって開発された人権教育マニュアルやハンドブック、教材の種類と数、人権教育の研究機関、センター、あるいは各国で恒常的に設けられた人権教育のとりくむ国レベルの中心的組織の数、人権に関する研修をうけた各国の教員の割合、人権教育カリキュラムを採択した学校の数、そして専門分野や非定型的(non‐formal)、無定型的(informal)な教育の種類と数、などである。またこの報告書は、関心をもつ団体や個人が、どのようにすればさまざまな言語による世界人権宣言の翻訳や人権教育教材を入手できるかについても、詳しい情報を提供すべきである。 98 「十年」のもとで設けられた国、地域、国際社会の機構やネットワークは、人権教育分野での国際協力にとって、恒常的な推進・接触拠点として機能し続ける必要がある。そ して、人権高等弁務官と国連人権センターは、ユネスコと協力しながら、そのような機構 や人権教育にとりくむ国レベルの中心的組織の最新のリストを管理し、要請があれば情報 を提供できるようにすべきである。 99 「十年」のもとで開発された人権教育教材は、定期的に見直し、変化するニーズや現実に対応して、内容を補ったり、修正したりする必要がある。そして、できるだけ幅広く 利用可能な形で、引き続き提供されなければならない。 訳 : 森 実(大阪教育大学) 訳 : 阿久澤麻里子(山本登研究室嘱託調査員) 監訳: 平沢 安政(大阪大学)
さて、上記の国連総会で決められた決議や行動計画を元に日本国内でも国内行動計画が立てられました。各自治体ではこれをもとにそれぞれ
の都道府県での行動計画を作成されています。しかし早くしないと2004年は目の前です。また日本の国内行動計画は上記の
国際的な行動計画より後退しているのはどうしてでしょうか。(コメント田畑重志)
○「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画
平成九年七月四日 人権教育のための国連十年推進本部 平成六年(一九九四年)一二月の国連総会において、平成七年(一九九五年)から平成一六年(二〇〇四年)までの十年間を「人権教育のための国連十年」とすることが決議された。 これを受けて、政治は「人権教育のための国連十年」に係る施策について、関係行政機関相互の緊密な連携・協力を確保し、総合的かつ効果的な推進を図るため、平成七年(1995年)一二月一五日、閣議決定により、内閣に人権教育のための国連十年推進本部を設置した。 推進本部は平成八年(一九九六年)三月一八日、第一回会合を開催し、政府として積極的な取り組みを推進していくことを確認した後、国内行動計画の策定作業を進め、平成八年(一九九六年)一二月六日に、「人権教育のための国連十年のための国内行動計画」(中間まとめ)を公表した。 その後、推進本部においては、中間まとめに対して各方面から寄せられた意見等に十分配慮つつ検討を進め、このたびの「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画をとりまとめた。 人権教育のための国連十年推進本部は、この国内計画に掲げられた諸施策の着実な実施等を通して、人権教育の積極的な推進を図り、もって、国際的視野に立って一人一人の人権が尊重される、真に豊かでゆとりのある人権国家の実現を期するものである。
(注)「人権教育」とは、「知識と技術の伝達及び態度の形成を通じ、人権という普遍的文化を構築するために行う研修、普及及び広報努力」と「人権教育のための国連十年行動計画」において定義されている。
1 基本的考え方 (1)冷戦終了後、東西対立の崩壊とともに、世界各地で地域紛争やこれに伴う顕著な人権侵害、難民発生など、深刻な問題が表面化した。しかし、一方で東西対立の崩壊は、国際社会全体での議論を可能とする環境を作り出し、人権に取り組む気運が高まった。 平成五年(一九九三年)には、世界人権宣言採択四五周年を機に、これまでの人権活動の成果を検証し、現在直面している問題、今後進むべき方向を協議することを目的としてウィーンにおいて世界人権会議が開催された。この会議は全ての人権が普遍的であり、人権が正当な国際的関心事であることを確認し、人権教育の重要性を確認し、人権教育の重要性を強調した点で重要な出来事であった。以後、国連としての人権に対する取組も強化され、平成6年(1994年)には人権問題を総合的に調整する役割を担う国連高等弁務官が創設され たほか、第四九回国連総会(平成六年<1994年>一二月)では「人権教育のための国連 十年」を決定する決議が採択された。また、平成七年(1995年)九月に北京で開催され た第四回世界女性会議においては、女性の権利は人権であることが明確に謳われるとともに、 人権教育の重要性が強調された。こうした動きは人権に対する国際的関心が結晶化したもの である。 人権の擁護・促進のためには、そもそも人権とは何かということを各人が理解し、人権尊重の意識を高めることが重要であり、人権教育は、国際社会が協力して進めるべき基本的課題である。
(2)人権教育の推進に当たっては、このような国際的潮流とともに、平成八年(1996年) 五月一七日の地域改善対策協議会意見具申に述べられている次のような認識を踏まえることが重要である。 「今世紀、人類は、二度にわたる世界大戦を経験し、平和がいかにかけがえのないものであるかを学んだ。しかし、世界の人々の平和への願いにも関わらず、冷戦構造のの崩壊後も、依然として各地で地域紛争が多発し、多くの犠牲者を出している。紛争の背景は一概には言えないが、人種、民族間の対立や偏見、そして差別の存在が大きな原因の一つであると思われる。こうした中で、人類は、「平和のないところに人権は存在しない」、「人権のないところに平和は存在しない」という大きな教訓を得た。今や、人権の尊重が平和の基礎であるということが世界の共通認識になりつつある。
このような意味において、二一世紀は「人権の世紀」と呼ぶことができよう。 我が国は、国際社会の一員として、国際人種規約をはじめとする人権に関する多くの条約に加入した。懸案となっていた「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(人種差別撤廃条約)にも加入した。世界の平和を願う我が国が、世界各国との連携・協力の下に、全ての人の人権が尊重され、あらゆる差別の解消を目指す国際社会の重要な一員として、その役割を積極的に果たしていくことは、「人権の世紀」である二一世紀に向けた我が国の枢要な責務というべきである。 (3)翻って我が国社会を見ると、依然として、様々な人権問題が存在している。また、近年、 著しく国際化、ボーダーレス化が進展している状況下において、広く国民の間に多元的文化、多様性を容認する「共生の心」を醸成することが何よりも要請される。このため、各種の啓発と相まって、人権に関する教育の一層の充実を図る必要がある。さらに社会の複雑化、個々人の権利意識の高揚、価値観の多様化等に伴い、従来あまり問題視されなかった分野においても各自化の人権が強く認識されるようになってきたことから、新たな視点に立った人権教 育・啓発の必要性も生じてきている。このような我が国の現状に鑑みると、「人権教育のための国連十年」は、全ての人種の不可分性と相互依存性を認識し、人権尊重の意識の高揚を図り、もって「人権」という普遍的文化の創造を目指すものであって、その異議は極めて重要である。
(4)この国内行動計画は、憲法の定める基本的人権の尊重の原則及び世界人件宣言などの人 権宣言などの人権関係国際文書の趣旨に基づき、人権の概念及び価値が広く理解され、我が国において人権という普遍的文化を構築することを目的に、あらゆる場を通じて訓練、広報、情報提供努力を積極的に行うことを目標とする。 また、人権教育を行うに当たっては、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する取組を強化するとともに、本十年の展開において、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人などの重要課題に積極的に取り組むこととする。 (5)さらに、我が国は人権分野でも国際社会において積極的な役割を果たして行くべきであ り、特に国連を始めとする人権関係の国際的フォーラムは重要である。そのためにも、我が国の国民の生活が深く他国の国民の生活と結びついていることを認識しつつ、人権教育の推進を通じ、他国・他地域の人権状況についても関心を深め、国内外の人権意識の高揚を図っていくことが必要である。また、本十年の実施に当たっては、国内的実施措置とともに、国際社会、なかんずくアジア太平洋地域の国々と協力・協調して人権教育を促進していくとの視点が必要である。
(6)また、人権の問題は、国民一人一人が人権の意識を高め、他者の価値を尊重する意識、態度の涵養が重要である。このためには、政府の果たす役割とともに、地方公共団体、民間団体等に期待される役割も大きい。 このため、地方公共団体、民間団体等がそれぞれの分野において、この行動計画の趣旨に沿った様々な取組を展開することを期待する。政府としては、この計画を実資するに当たっては、これらの団体等の取組、意見に配慮する。また、人権教育を広く国民各層に浸透させるため、様々な機会をとらえて「人権教育のための国連十年」の趣旨等を広める必要がある。
2 あらゆる場を通じた人権教育の推進 (1) 学校教育における人権教育の推進 学校教育においては、日本国憲法及び教育基本法並びに国際人権規約、児童の権利に関する条約等の精神にのっとり、人権教育を推進する。その際、依然として様々な人種問題が存在していることを踏まえ、初等中等教育においては、幼児児童生徒がすべての人の人権を尊重する意識を高める教育を一層充実する。また、大学教育においては、それまでの教育の成果を確実なものとし、人権意識を更に高揚させるよう配慮する。特に、以下の諸施策を積極的に推進する。 1 初等中等教育において、児童生徒の発達段階に則し、各教科、道徳、特別活動等の特質に応じながら、各学校の教育活動全体を通じて、人権尊重の意識を高め、一人一人を大切にした教育を推進する。なお、幼児期の教育においては、幼児の発達の特性を踏まえ、人権尊重の精神の芽生えを育むことに努める。 2 研究指定校による実践的調査研究や各種資料の作成等により、人権教育に関する指導内容・方法を充実させる。また、このような趣旨を実現するため、地方公共団体や学校による、地域や学校の実態に即した取組を一層促進する。さらに、教員等を対象とする各種研修や情報の提供等により学校における人権教育を支援する。 3 各大学における人権に関する教育・啓発活動について、一層の取組に配慮する。
(2)社会教育における人権教育の推進 社会教育においても、日本国健保絵及び教育基本法の精神にのっとり、人権尊重の意識を高める教育が推進されてきており、今後とも、人権を現代的学習課題の一つとして示した生涯学習審議会答申(平成4年<1992年>7月等を踏まえ、生涯学習の振興のための各種の施策を通じて、人権に関する学習を一層推進していく。 特に、以下の諸施策を積極的な推進する。 1 公民館を始めとする社会教育施設を拠点とした学級・講座の開設、ボランティア活動の推進を図るとともに、大学の公開講座の実施等により、人権に関する学習機会を充実実させる。 2 人権に関する学習活動を総合的に推進するための事業を実施する。 3 非識字問題の解消を図る識字教育を充実するとともに、障害者等の学習機会を充実させる。 4 人権に関する学習活動のための指導者養成、資料の作成、学習情報提供・学習相談体制の整備・充実を図る。 (3)企業その他一般社会における人権教育等の推進 企業その他一般社会においても、人権思想の普及・高揚のための人権教育・啓発を推進しているところであるが、人権尊重の意識のさらなる高揚を図るため、特に以下の施策を推進する。 1 一般社会における人権教育の手法等に関する調査研究、人権教育に関するプログラムの開発及び人権擁護に関する施策について調査研究する。 2 一般社会における人権教育の手法等に関する調査研究、人権教育に関するプログラムの開発及び人権擁護に関するマニュアル、パンフレット、教材、資料等の作成を行い、これによる効果的な啓発活動を推進する。 3 世界人権宣言を始めとする国連人権関係文書の趣旨の普及・広報及びマスメディア活用を図る。特に世界人権宣言採択五十周年に当たる平成十年(一九九八年)には、記念式典を始めとする各種記念事業を実施する。 4 人権擁護委員を始めとする人権教育の指導者の育成及びボランティアの積極的活用を図る。 5 人権に関する情報の整備・充実を行い、一般市民が利用しやすい環境を整備する。 6 人権相談体制の充実により人権思想を普及・高揚させる。 7 財団法人人権教育啓発推進センターにおける、人権教育及び人権啓発を推進し、支援するための活動に対して、関係省庁はこれを積極的に支援する。 8 企業等に対して就職の機会均等を確保するための公正な採用選考システムの確立が図れるよう指導・啓発を行う。 (4)特定の職業に従事する者に対する人権教育の推進 人権教育の推進に当たっては、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対して、人権教育に関する取組を強化する必要がある。 それは以下のとおり特定の職業に従事する者に対する研修等における人権教育の充実に努める。 1 検察官 人権を尊重した検察活動を徹底するため、検察官及び検察事務官に対する各種研修における人権教育を充実させる。 2 矯正施設・更正保護関係職員等 ア 刑務所、拘置所、少年院及び少年鑑別所等の矯正施設における被収容者の人権の尊重を図る観点から、矯正施設の職員の各種研修における人権教育を充実させ、施設の監督職員研修に対する指導を行う。 イ 保護観察対象者並びに刑務所や少年院等矯正施設に在所中の者及び引受人等の尊重を図る観点から、保護司研修及び更正保護関係職員に対する人権教育を充実・徹底する。 3 入国管理関係職員 出入国審査、在留資格審査等の対象たる外国人及び入国者収容所等の収容施設における被収容者の人権の尊重を図る観点から、入国審査官、入国警備官等に対する各種研修における人権教育を充実させる。 4 教員・社会教育関係職員 学校の教員や社会教育主事などの社会教育関係職員については、各種研修、資料の作成等を通じ、人権に関する理解・認識を一層向上させる。 5 医療関係者 医師、歯科医師、薬剤師、看護婦、理学療法士、作業療法士等医学関係者を育成する学校や養成所における人権教育を拡充する。 6 福祉関係職員 ア 民生委員・児童委員に対する人権に関する研修を充実させる。 イ ホームヘルパーや福祉施設職員に対する子ども、高齢者、障害者等の人権に関する研修を充実させる。 ウ 社会福祉施設職員及び介護福祉士等の養成・研修に対し、人権意識の普及・高揚が図られるようその教育研修の内容を充実させる。 エ 保母養成施設など児童福祉関係職員養成所における子どもの人権についての教育を充実させる。 7 海上保安官 法の励行に関わる海上保安官の人権を尊重する知識の涵養を図るため、海上保安大学校等の教育機関の学生に対する人権教育、海上保安官に対する階層別研修における人権教育を充実し、質の向上に努める。 8 労働行政関係職員 労働基準監督署職員及び公共職業安定所職員については、各種研修の場を通じ、人権に関する理解・認識を一層向上させる。 9 消防職員 消防大学校において、消防職員に対し、人権教育を実施する。 10 警察職員 人権を尊重した警察活動を徹底するため、「警察職員の信条」に基づく職業倫理教養の推進、適切な市民応援活動の強化を始めとする被疑者、被拘留者、被害者の人権への配慮に重点を置いた職場及び各級警察学校における養育訓練を充実させる。 11 自衛官 防衛大学校・各自衛隊の幹部候補生学校等における各教育課程での人権教育を推進する。 12 公務員 すべての公務員が人権問題を正しく認識し、それぞれの行政において適切な対応が行えるよう各研修における人権教育を充実させる。 13 マスメディア関係 人権問題に関してマスメディアが大きな影響力を有していることに鑑み、マスメディアに従事する関係者において人権教育のための自主的取組が行われることを促す。
3 重要課題への対応 人権教育の推進に当たっては、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人等の重要課題に関して、それぞれの固有の問題点ついてアプローチとともに、法の下の平等、個人の尊重という普遍的な視点からのアプローチにも意する。 (1) 女性 女性の人権に関しては、昭和五四年(1979年)一二月、第三四回国連総会で「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」が採択され、近年の国際会議においてもその重要性が大きく取り上げられている。 平成五年(1993年)六月にウィーンで開催された世界人権会議で採択された「ウィーン宣言及び行動計画」において、男女の平等な地位及び女性の人権、特に女性に対する暴力の根絶が打ち出され、同年一二月には第四八回国連総会において、「女性に関する暴力の撤廃に関する宣言」が採択された。さらに、国連環境開発会議や国際人口・開発会議、社会開発サミットでも女性の人権の重要性が強調された。 平成七年(一九九五年)九月に北京で開催された第四回世界女性会議で採択された「北京宣言」において「女性の権利は人権である」と謳われ、「行動綱領」では、「女性と健康」、「女性に対する暴力」、「女性の人権」、「女性とメディア」、「女児」等、一二の重大問題領域が設定され、具体的な提案が提案された。 国内的には、平成八年(1996年)七月、男女共同参画審議会から「男女共同参画ビジョン・二一世紀の新たな価値の創造・」が答申され、同年一二月には、男女共同参画推進補本部において、「男女共同参画二〇〇〇年プラン・男女共同参画社会の形成の促進に関する平成一二年(二〇〇〇年)度までの国内行動計画・」が策定された。 これらの動向及び「男女共同参画二〇〇〇年プラン」を踏まえ、以下の取組を進める。 1 男女共同参画推進本部を中心に、男女共同参画社会の形成に向けて政府一体となった取組の一層の推進を図る。 2 政策・方針決定過程への女性の参画を拡大するため、政府が率先垂範して取組を進めるとともに、企業、各種団体等に対し協力要請を行い、社会的機運の醸成を図る。 3 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革を図るため、人権週間、婦人週間等多様な機会、多様な媒体を通じ、国民的広がりを持った啓発・広報活動を展開する。た、女性の権利に関係の深い国内法令や、女子差別撤廃条約、第四回世界女性会議「行動綱領」等の国際文書の内容の周知に努める。 4 雇用における男女の均等な機会と待遇の確保等のため、啓発等を行うとともに、働くことを中心に女性の社会参加を積極的に支援するための事業やその拠点施設の整備を実施する。 5 農山漁村の女性が農林漁業・農山漁村の啓発に対し、男性とともに積極的に参画できる社会を実現するため、農林漁業や農山漁村社会でのパートナーである男性を含めた家庭及び地域社会において農山漁村の女性の地位向上・方針決定への参画促進のための啓発等を実施する。 6 性犯罪、売買春、家庭内暴力等女性に対するあらゆる暴力の根絶に向けて、厳正な取締りはもとより、被害女性の人権を守る視点から、事情聴取等を被害者の希望に応じた性別の警察官が行えるようにするなど、必要な体制を整備するとともに、事情聴取、相談等に携わる職員の教育訓練を充実する。 7 外国人女性の人権を守る観点から、入獄管理等に携わる職員に対する人権教育の充実を図る。 8 性の表現や暴力の表現が女性の人権を侵害している現状を改善し、女性の人権を尊重した表現を行うよう、また、方針決定の場に女性を積極的に登用するよう、メディアの自主的取組を促す。 9 家庭、学校、地域など社会のあらゆる分野における男女平等を推進する教育・学習を充実させる。また、女性の学習・実践活動を通じた社会参加を促進する。 10 我が国のイニシアティブにより国連婦人開発基金(UNIFEM)内に設置された「女性に対する暴力撤廃のための信託基金」に対して協力する。 11 女性に対する人権侵害の発生を防止するため、人権尊重の意識の普及・高揚を図るための啓発活動を充実・強化するとともに、人権相談体制を充実させる。 (2)子ども 基本的人権の尊重を基本理念に掲げる日本国憲法及びこれに基づく教育基本法、児童福祉法等の法令ならびに国際人権規約、児童の権利に関する条約等の国際条約の趣旨に沿って、政府のみならず、地方公共団体、民間団体、学校、家庭等、社会全体が一体となって相互に連携を図りながら幼児児童生徒の人権の尊重及び保護に向けた取組を推進する。 特に、以下の諸施策を積極的に推進する。 1 学校教育において、幼児児童生徒の人権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育指導や学校運営が行われるよう、児童の福祉に関する条約の趣旨・内容を周知する。 また、社会教育においても、同条約の内容・理念が広く理解され、定着されるよう、公民関東における各種学級・講座等を開設し、学習機会を充実させる。 2 いじめは、児童生徒の人権に関わる重大な問題であり、その解決のための真剣な取組を一層推進する。また、児童生徒一人一人を大切にした個性を生かす教育、教員に対する研修の充実、教育相談体制の整備、家庭、学校、地域社会の連携、学校外の様々な体験活動の促進など各種施策を推進する。 3 いじめ問題、虐待の防止など児童の健全育成上重大な問題についての総合的な取組を推進するとともに、児童の権利に関する啓発活動を推進する。 4 犯罪等の被害に遭った少年に対し、カウンセリング等による支援を行うとともに、少年の福祉を害する犯罪の取締りを推進し、被害少年の救出・保護を図る。 5 児童売春、児童ポルノ、児童売買といった児童の商業的性的搾取の問題が国際社会の共通の課題となっており、我が国としても、児童の商業的性的搾取の防止等について、積極的に取り組む。 6 子どもの人権を守るための「子どもの人権専門委員」制度を充実・強化するとともに、電話相談を含めた人権相談体制を充実させる。 7 保育所保育指針における「人権を大切にする心を育てる」ため、この指針を参考として児童の心身の発達、家庭や地域の実情に応じた適切な保育を実施する。 (3)高齢者 高齢者が安心して自立した生活が送れるよう支援するとともに、高齢者がそれぞれの経験力を生かし、高齢社会を支える重要な一員として各種の社会的な活動に参加できるための条件の整備を図る。 1 学校教育においては、高齢化社会の進展を踏まえ、主に社会科や道徳・特別活動において福祉教育を推進する。 2 高齢者の学習機会の体系的整備ならびに高齢者の持つ優れた知識・経験等を生かして社会参加してもらうための条件整備を促進する。 3 高齢者と他の世代との相互理解や連帯感を深めるため、世代間交流の機会を充実させる。 4 「敬老の日」の行事を通じ、広く国民が高齢者の福祉についての関心と理解を深める。 5 高齢化が急速に進行している農山漁村において、高齢者が精神的、身体的、経済的、社会的な面において生涯現役を目指し、安心して住み続けられるよう支援する。 6 高齢者が長年にわたり培ってきた知識、経験等を活用し、六五歳まで現役として働くことができる社会を実現するため、六〇歳定年の完全定着、継続雇用の推進、多様な形態による雇用・就業機会の確保のための啓発活動に取り組む。 7 虐待その他高齢者に対する人権侵害の発生を防止するため、人権尊重の意識の高揚を図るための啓発を行い、人権相談体制を充実させる。
(4)障害者 障害者のライフステージの全ての段階において全人間的復権を目指すリハビリテーションの理念と、障害者が障害のない人と同等に生活し活動する社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念の下に、特に次のような施策の推進を図る。 1 障害者の自立と社会参加をより一層推進し、障害者の「完全参加と平等」の目標に向けて「ノーマライゼーション」の理念を実現するための啓発・広報活動を推進する(障害者の日及び週間を中心とする啓発・広報活動等)。 2 障害のある子どもに対する理解と認識を促進するため、小・中学校等や地域における交流教育の実施及び交流会の開催、小・中学校の教員等のための指導資料の作成・配布、並びに学校教育関係者及び保護者等に対する啓発事業を推進する。 3 精神障害者に対する差別、偏見の是正のため、地域精神保健福祉対策促進事業に基づき、ノーマライゼーションの理念の普及・啓発活動を推進し、精神障害者の人権擁護のため、精神保健指定医、精神保健福祉相談員等に対する研修を実施する。 4 障害者の社会参加と職業的自立を促進するため、障害者雇用促進月間を推進し、全国障害者雇用促進大会及び身体障害者技能競技大会を開催するとともに、情報誌の発行等事業主を始めとする国民年金に対する啓発活動を推進する。 5 障害者に対する差別や偏見を解消するため、人権尊重の意識の普及・高揚を図るための啓発活動を充実・強化するとともに、人権相談体制を充実させる。
(5)同和問題 同和問題に関する差別意識の解消を図るに当たっては、地域改善対策協議会意見具申(平成8年<1996年>5月17日)を尊重し、これまでの同和教育や啓発活動の中で積み上げられてきた成果等を踏まえ、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育・人権啓発として発展的に再構築し、その中で同和教育を人権問題の重要な柱として捉え、今後とも、この問題に固有の経緯等を十分に認識しつつ、国際的な潮流とその取組を踏まえて以下の施策を積極的に推進する。 1 同和問題に関する差別意識の解消に向けた教育及び啓発に関する事業については、「同和問題の早期解決に向けた今後の方策について(平成8年<1996年>7月26日閣議決定)」に基づき、次の人権教育・人権啓発の事業に再構成して推進する。特に教育に関する事業については、学校、家庭及び地域社会が一体となって進学と学力の向上を促進する内容をも含むものとして推進する。 ア 人権問題啓発推進事業 イ 小規模事業者等啓発事業 ウ 雇用主に対する指導・啓発事業 エ 教育総合推進地域事業 オ 人権教育研究指定校事業 カ 人権教育総合推進事業 キ 人権思想の普及高揚事業 2 隣保館において、地域改善対策協議会意見具申(平成8年<1996年>5月17日)に基づき、周辺地域を含めた地域社会全体の中で、福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティセンターとして、総合的な活動を推進する。 3 今後の教育及び啓発の中で同和関係者の自力向上という目標を重視するともに、えせ同和行為の排除を徹底する。また、同和問題についての自由な意見交換のできる環境づくりを推進する。さらに、教育の中立性を確保する。 (6) アイヌの人々 アイヌの人々に対する取組に当たっては、国民一般が、アイヌの人々の民族としての歴史、文化、伝統及び現状についての理解と認識を深め、その人権を尊重していくことが重要であり、その視点から特に以下の施策に取り組む。 1 平成8年(1996年)4月の「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇話会」報告書の趣旨を尊重して、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」に基づき、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という。)が置かれている状況等に鑑み、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策を推進する。 2 学校教育におけるアイヌの人々の人権についての教育は、社会科等において取り上げられており、今後とも引き続き、基本的人権尊重の観点に立った教育推進のための教員の研修を充実させる。 3 各高等教育機関等におけるアイヌ語やアイヌ文化に関する教育研究について、取組に配慮する。 4 生活館において、アイヌの人々の生活の改善向上・啓発等の活動を推進する。 5 アイヌの人々に対する人権侵害の発生を防止するため、人権尊重の意識の普及・高揚を図るための啓発活動を充実・強化するともに、人権相談体制を充実させる。 (7) 外国人 今日、我が国社会は、諸外国との人的・物的交流の増大に伴い、外国人をめぐって様々な人権問題が生じている。 そこで、外国人に対する偏見・差別を除去するため、特に以下の施策を推進する。 1 外国人に対する人権問題の解決を図るため、外国人のための人権相談体制を充実させる。 2 外国人に対する差別意識解消のための啓発活動を推進する。 3 定住外国人に対する嫌がらせや差別事象の発生を根絶するための啓発活動を推進する。
(8) HIV感染者等 1 HIV感染者 ア 世界エイズデーの開催や、エイズに関するパンフレットの配布、各種の広報活動を通じて、エイズ患者やHIV感染者に対する偏見・差別を除去し、エイズ及びその感染者への理解を深めるための教育・啓発活動を推進する。 イ 学校教育においては、発達段階に応じて正しい知識を身に付けさせることにより、エイズ患者やHIV感染者に対する偏見や差別をなくすため、エイズ教育を推進し、教材作成及び教職員の研修を充実する。 ウ エイズ患者やHIV感染者に対する誤解・偏見や差別意識を持つことのないよう、エイズに関する理解の促進のための学習機会を充実させる。 エ 職場におけるエイズ患者やHIV感染者に対するご回答から生じる差別の除去等のためのエイズに関する正しい知識を普及する。 2 ハンセン病 ハンセン病については、平成8年(1996年)に「らい予防法」が廃止されたところであるが、ハンセン病に対する差別や偏見の解消に向けて、ハンセン病資料館の運営、啓発資料の作成、配布等を通じて、ハンセン病に対する正しい知識の普及を推進する。 (9)刑を終えて出所した人 刑を終えて出所した人に対する偏見・差別を除去し、これらの者の社会復帰に資するための啓発活動を実施する。 (10)その他 以上のほか、人権に関するその他の課題についても引き続き、偏見・差別を除去し、人権が尊重されるための施策を推進する。
4 国際協力の推進 我が国は人権教育の分野での国際協力においても積極的な役割を果たしていくべきであり、そ の推進に当たっては、必要に応じ国連人権高等弁務官、国連人権センター等とも連携していくこととする。
1 国連総会、国連人権委員会における「人権教育のための国連10年」に関する取組に貢献する。 2 国連に設けられた「人権分野における諮問サービス及び技術的援助のための自発的基金に協力し、これらの基金を用いて国連人権センター等が開発途上国に対して実施する人権教育関連のプロジェクトに寄与する。 3 我が国からの開発途上国に対する人権教育関連の協力を引き続き推進する。 4 我が国において国際的な人権シンポジウムを開催する。特に人権教育をテーマとすること、世界人権宣言採択50周年に当たる平成10年(1998年)には同宣言をテーマとすることを検討する。 5 本国内行動計画については、国連人権高等弁務官に報告する。
5 計画の推進
(1) この計画を実施するため、政府においては、人権教育のための国連10年実施本 部を軸として、行政機関相互の密接な連携を図りつつ、総合的な施策を推進するとともに、各省庁の施策の実施に当たっては、本校行動計画の趣旨を十分踏まえることとする。また、「人権教育のための国連10年」の趣旨等について様々な機会をとらえ周知を図る。さらに、本行 動計画の施策の積極的な推進等を通じ、人権教育・啓発を総合的かつ効果的に推進するための体制のあり方についても併せて検討する。
(2) 本行動計画の実施に当たっては、人権擁護施策推進法に基づき法務省に設置された、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を図るための教育及び啓発に関する施策の総合的な推 進に関する基本的事項等を調査・審議する人権擁護推進審議会における検討結果を反映させる。 (3) 様々な差別意識の解消を図り、すべての人の人権尊重の意識を高めていくためには、地方公共団体その他の公的機関、民間団体等の果たす役割が大きい。このことに鑑み、これら の団体等が、それぞれの分野において、本行動計画の趣旨に沿った自主的な取組を展開することを期待するとともに、本行動計画の実施に当たっては、これらの団体等の取組や意見に配慮する。 (4) この計画の推進状況について、定期的にフォローアップを行い、その結果を施策の推進に反映するとともに、この計画自体を必要に応じ見直す。