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答申を読む
人権擁護推進審議会第28回会議議事要旨
1 日 時 平成11年7月21日(水)
13時30分〜16時30分
2 場 所
法務省「第一会議室」
3 出席者
(委 員)塩野会長、野中会長代理、相川委員、市川委員、大南委員、河嶋委員、鈴木委員、高島委員、立石委員、寺澤委員、野崎委員、深沢委員、宮崎委員
(法務省)横山人権擁護局長、幕田総務課長、林人権啓発課長
(文部省)太田和社会教育課長
(総務庁)平井地域改善対策室長
4 議 事
(1)答申案について
○ 答申案に対して寄せられた意見は、それぞれ大変貴重な意見であり、あるいは、自らの心情を吐露したような意見もあった。しかし、審議会において議論すべき重要な論点が抜け落ちていたとか、また、我々の視点がそもそもおかしかったというようなことはなかったと考えている。
○ 「国民を始め地方公共団体等各実施主体に責任を転嫁しており、国の責務を明確にすべきである」という意見が寄せられているが、答申案には、国の責務について記載している。また、全体の記述についても、国の役割を明記した後に、国がなすべき施策はこうであるということについて議論を重ねた。さらに、審議会の提言を踏まて、「政府が速やかに所要の行財政措置を講ずることを望む」と述べている。
○ 国民については、答申案では、「国民一人一人が自分自身の課題として人権尊重の理念についての理解を深めるように努めることが肝要である」などと述べているが、これはまさにこうあってほしいということを示しているのであって、国民にその責任を押しつけているわけではない。
○ 地方公共団体を始めとする人権教育・啓発の実施主体についても、答申案では、「それぞれの役割を明確にし、その役割に応じて相互に連携協力して、総合的かつ効果的に人権教育・啓発を推進していく必要がある」とした上で、それぞれの役割について述べ、連携方策を提示しているのであって、責任を一方に押しつけているということはない。
○ 「3 今後の人権教育・啓発の重要性」で述べている記述の全体は、別の箇所で述べた方がいいという趣旨の意見を踏まえて、この記述は、「第3 人権教育・啓発の総合的かつ効果的な推進のための方策について」の冒頭に移動したいと考えている。
○ 「全省庁にまたがる総合的な推進体制の整備を明確に盛り込むべきである」、「人権教育・啓発の所管省庁は総理府、来るべき内閣府とすべきである」という意見が寄せられているが、答申案では、各省庁の所掌事務を踏まえた上で、「法務省、文部省が中心となって、その所掌事務との関連で人権にかかわる啓発活動を行っている府省庁等と協力して、それぞれの教育・啓発活動についての情報を交換し連携するための方策を協議し、人権教育・啓発の総合的な推進を図る連絡協議体制を整備することが肝要である」ということを盛り込んでいる。このように人権教育・啓発は関係行政機関が十分に連携協力して取り組んでいくことを答申案にも明記しているところである。
○ 人権教育・啓発に関する行財政措置に関する意見も寄せられているが、「審議会が提言する具体的な施策の実施のために、政府に対して所要の行財政措置を講ずることを望む」ということを、既に答申案の「おわりに」のところで盛り込んでいる。
○ 「地方公共団体に対して行財政支援を明確に盛り込むべきである」という意見も寄せられているが、単に「地方団体に財政支援が必要である」というふうに書くことは、審議会の答申としてはなかなか難しいというところがある。しかし、具体的な施策を通じて、例えば「人権啓発地方委託事業の推進」といったような事柄は、実質的な意味で地方公共団体に対する財政的な支援となるものと理解しているし、答申案で使われている「支援」という言葉の中には、地方公共団体に対する財政措置というものがあってしかるべきであると考える。
○ 法的措置に関する意見については、「答申に盛り込むべき」という意見が多かったが、その大部分が、どのような内容の法的措置が必要であるかということについては必ずしも明確ではなく、単に「人権教育・啓発に関する法的措置を答申案に盛り込むべきである」といったものであった。そのほか、「国の責務」、「行財政支援」、「総合的推進体制の整備」といった内容を盛り込んだ法的措置が必要であるという意見もあったが、いずれも人権教育・啓発だけの問題として、これらの事項を、これだけ特化して法文化するということについての納得のある説明は見当たらなかった。
○ 審議会においては、これまでの会議で、答申に盛り込まれた諸施策については、いずれも行財政措置で十分対応が可能であるという認識であったので、今までの結論を変更しなければならないというような意見は、どうも見当たらなかったところである。
○ 「差別の実態、国民の意識、人権教育・啓発についての施策の状況など現状の認識が不十分である」あるいは「差別や偏見の原因究明がされていない」といった意見が寄せられているが、審議会としては、これまで各種人権課題に関して団体等からヒアリングを受け、審議会に寄せられた意見についても目を通してきた。また、多くの委員の方々にもプレゼンテーションをしていただき、また、法務省、文部省、総務庁等から人権教育・啓発についての施策等について行政説明を受けた。これらを通して差別の実態、国民の意識あるいは人権教育・啓発についての施策などについての現状認識に努めてきた。そういった現状認識の上に立って、差別や偏見の原因についても審議会においてかなり精力的に、こういった角度からはどうか、こういった原因ということはどうだろうかということでいろいろ議論したと考えている。
○ 「同和問題の実態として、現在では差別意識は根深くない」という意見が寄せられているが、ヒアリングや委員の発言を通して審議会として得た認識は、やはり答申案の記載のように、同和問題に関する差別意識は地域により程度の差はあるものの依然として根深く存在しているというふうに言わざるを得ないと思う。
○ 「人権に関する国連の勧告や国際条約が踏まえられていない」という意見が寄せられているが、答申案では「国の内外から意見がある」ということを指摘した上で、注を設けて、若干の情報を提供している。これらの勧告等を踏まえた議論もなされているものと考える。
○ 「審議会設置の経緯が反映されていない」という意見が寄せられているが、これについては答申案の「はじめに」のところでかなり詳細に述べているし、委員の間でも、この点についての共通認識ができているのではないかと考える。
○ 「公権力による人権侵害が審議対象から外されている」という意見が寄せられているが、人権という観念は公権力との関係で論じられてきたという面が強いことは事実であるし、また、この指摘の点は大変貴重なものと理解している。しかし、そもそも諮問が「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深める」ということになっており、これを前提にすると、答申全体のトーンとの関係で、公権力との関係に立ち入った説明あるいは立ち入った議論をすることはなかなか困難ではなかったかと考える。ただ、公権力との関係を無視しているわけではなく、答申案では、「公的制度や諸施策」について触れらている。また、公権力の担い手である公務員が職務行為を遂行する際に人権尊重の精神を持つことは非常に大切なことであり、公務員の研修の充実ということを答申案に盛り込んでいるところである。なお、人権尊重の理念に対する正しい理解が定着してくると、公権力との関係でもこれは意味を持ってくるということで、単に民民との関係だけではなくて、公権力との関係にもこういった人権尊重の理念に対する正しい理解がはね返ってくると考えている。
○ 「被差別者の立場や視点を踏まえる必要がある」という意見が寄せられているが、答申案では、「他人の痛みが分かる、他人の気持ちが理解でき、行動できるなどの他人を思いやる心が重要である」という記述を、このことを意識して書いたと考えているところである。
○ 「人権問題を思いやりで解決できるととらえていることは問題がある」という趣旨の意見が寄せられているが、単に思いやるだけではなく、行動できるということが重要であるということを答申案の記載の中にも盛り込んでいる。
それから、「人権問題や差別問題の解決を行政による上からの人権教育・啓発で可能なごとく描き、教育・啓発万能論の立場をとっている」という意見もあった。しかし、審議会における議論においても、人権問題や差別問題の解決には制度の検討も必要であるという意見があったし、それから、「おわりに」に記載してあるように、すべての人々の人権が尊重される平和で豊かな社会の実現には、人権が侵害された場合における被害者の救済を欠かすことはできない。今回の答申案は人権教育・啓発に関するものであり、その施策や在り方について踏み込んで書いており、だからといって教育・啓発だけやっていれば人権問題は解決するのだなどということは当然思っておらず、もとより委員方にいてもそういうことではないと理解している。
○ 「答申案が、国民の内心・意識への働きかけを強化する方向を打ち出している」という意見が寄せられているが、答申案では、「人権教育・啓発は、国民一人一人の心の在り方に密接にかかわる問題であることから、その性質上、押し付けにならないように留意する必要がある」ということを述べており、このあたりは十分注意を払っている。
○ 「民間運動団体の自主的活動に対する理解が不十分」との意見が寄せられているが、「人権啓発上有意義な様々な取組が行われている」、「人権擁護の分野においては、公益法人やボランティア団体などが多種多様な活動を行っており、今後とも様々な分野で人権教育・啓発の実施主体として重要な一翼を担っていくことが期待される」と記載しており、民間運動団体の自主的活動に対しての理解は十分示していると思う。
○ これまでの会議において、教育・啓発については立法措置は不要だとしても、今後の被害者救済措置に伴う立法措置にリンクしていく可能性を残しておく必要があるのではないかという趣旨の意見が委員の間から出された。この点に関しては、「今後の被害者救済の調査・審議においては、被害者救済制度の法的枠組みにも検討が及ぶことが考えられる。その際、被害者救済を行う組織等との関係で、人権教育・啓発も議論となることが予想される。その場合には人権教育・啓発に関することであっても議論をシャットアウトすることはしない、議論していただく」というふうに整理していたところである。ところで、人権教育・啓発に関する法的措置を答申に盛り込む必要があるという趣旨の意見が各方面から寄せられているといった現状にかんがみると、審議会においてこうした整理をしていることを今の段階で各方面に明確に理解していただく必要があるように思う。そこで、会長談話という形で答申の公表とあわせて明確に表明してはどうかと考えている。内容的には、審議会において何度か説明したことであり、これを整理したもので、特に新しいことを述べているものではない。
○ 今回出される答申に盛り込まれた施策を想定する限り、法的な措置を取り立てて必要としないと一応確認されてきたが、これは逆に考えたら、今回出される答申は、人権教育・啓発の施策について、法的措置をしない程度の答申だ、こういうふうに読んでもよいのか。
○ 理解の仕方として、審議会は法律的な改正をしない程度の審議しかしなかったのではないかというような理解であれば、これは誤解であると思う。いろいろな議論を積み重ねて、結果をもう一度振り返ってみた場合に、法的措置を採らなくても実現可能であるという認識に達したということである。
○ 教育・啓発ということをもっと突き詰めて、極めて考えたときには、本当に法的な措置を必要とするような場面というのは当然見えてくるはずだが、そこまで議論や審議が至らなかった、そのように考えたいと思う。
○ この審議会の審議を含めて、あらゆる提案をしていただいた上で、これをいろいろ取捨選択してこういう形にまとめてみたところ、現段階においては、法的措置をしなくても、行財政措置で実現可能であるという施策が浮かび上がってきたということである。
○ 答申案には、「人権擁護事務として人権啓発を専門的に担当する機関として、法務省人権擁護局及びその下部機関である法務局・地方法務局と人権擁護委員が設けられ」という表現になっているが、他の省庁にも様々な啓発事業があるので、ここで「専門的に」という表現を使うと、誤解を招くのではないか。
○ 人権擁護委員の制度論については、救済の問題とも密接に関係があるので、選任、組織等を含めては、諮問第2号で議論するというふうに考えている。
○ 人権教育や啓発の推進に当たっては、地元との密着度が非常に高いということで、地方公共団体の果たす役割は大変重要であろうということは認識している。地方公共団体として、地域に密着した人権教育・啓発を積極的また効果的に推進するためには、行財政措置が必要であると考えている。また、将来的には、その裏づけとなる法的措置が必要であろうというふうには考えている。
○ 我々は、どのように有効に人権教育・啓発を進めていくかということの内容を検討することが中心であって、それを行財政措置でするか、法的措置でするかということは、本来はそれを受けとめた政府なり国会が考えていただいていいことなのではないだろうかと思う。我々が検討した結果から見ると、検討した内容は特に法的措置は必要としないのではないかという一つの評価を我々は下したということなのではないかと思う。このような観点からすると、我々は、「所要の措置を望む」ということだけを言えばいいのではないかと思う。
○ 審議会としては、行財政措置で十分対応は可能であるということを考えているのであるから、「所要の措置」ということでは、審議会は何を考えているのか、もう一つわからないというところもあるので、「行財政措置を講ずる」ということをきちんと書いたということである。
○ 答申案では、「政府が速やかに所要の行財政措置を講ずることを望む」と述べているが、この「速やかに」というのは、具体的には、来年度の予算から取り組んでほしいという非常に強い趣旨で述べている。
○ 審議会の提言を踏まえて行われる人権教育の具体的な施策は、非常にユニークな施策が展開されると予測がつく。これまでにない人権教育・啓発の施策が考えられていくことを期待している。
○ 答申案で述べている「高齢者や障害者と触れ合う」ということは、幼稚園から高等学校すべての校種にわたって学習指導要領の中に盛り込まれているので、その趣旨は十分酌み取って指導していく方向付けはできているのではないかと思う。
○ 「被差別者の立場や視点を踏まえる必要がある」という意見が寄せられていることを受けて、答申案では、「他人の痛みが分かる、他人の気持ちが理解でき」という文言でその趣旨を述べているとしているが、その程度のレベルのものではないだろうという認識はやはり持つべきだろうと思う。
○ 「この答申では、公権力との関係でも人権に触れていないけれども、諮問第2号の人権救済を議論するときに、今度の答申を前提にした人権救済機関ということでは、公権力との関係が抜けてしまう危険がないのだろうか。そういうことがないように」という意見が寄せられているが、諮問第2号で公権力の行使が出てくるのはむしろ当たり前だと思っている。
(2)その他
○ 答申案の修正について
本日の意見を踏まえた答申案の修正については、会長に一任された。
○ 会長談話について
会長談話の公表、その概要について、会長から説明がなされ、了承された。
○ 次回の会議の開催予定について
第29回会議 平成11年7月29日(木)
― 以 上 ―
(平成11年8月3日 文責 法務省人権擁護局総務課)