人権擁護推進審議会第40回会議議事要旨
1 日 時 200012年3月17日(金) 13時30分〜16時
2 場 所 法務省「第一会議室」
3 出席者
  (委 員)塩野会長、野中会長代理、大南委員、河嶋委員、庄司委員、鈴木委員、
       高島委員、塚田委員、寺澤委員、長谷部委員、深沢委員、宮崎委員
  (法務省)横山人権擁護局長、山舖総務課長、佐久間調査課長

4 議 事
(1)自由討議
   これまでの審議を踏まえて各委員から意見発表があり、それを踏まえて質疑・討議が行われた。発表者の意見要旨は以下の通りである。

A委員
 ○ 救済の対象となる人権は、教育・啓発の対象となる人権よりは狭く、ある程度個別具体的な形でとらえられるものでなければならないだろう。基本的には法的救済になじむものということになる。それ以外のものをどう救済するかもこの審議会の課題だと思うが、教育・啓発の場合より対象は限定されざるを得ない。
 ○ 法的救済は、第一義的には司法権を担当する裁判所の役目であり、そこでの救済の実が得られるような改善策をまず考えるべきである。日本の裁判の在り方にはいろいろな問題があり、何らかの改革が必要なことは広く認識されているが、もう少し利用しやすい制度に改善できるなら、それだけでも人権救済制度としてかなり有効に機能するだろうと思う。
 ○ 司法制度に相当な改善がなされたとしても、司法救済には限界があり、一つは簡易迅速性という観点、もう一つは違法とは言いにくいが社会的に不当な問題に対処する必要性から、それを補う何らかの救済制度はやはり要請されるだろう。
 ○ 人権委員会的なもの、オンブズマン的なものいずれにしても、かなり柔軟に活動できる制度が考えられるべきである。
 ○ どのような制度を構想する場合でも、最後の決着は裁判所で行われるということを常に見据えた上で考えられるべきである。
 ○ 司法で完全に救済できるとは思っていないが、裁判制度がもう少し利用しやすいものであれば、そもそも起きないような問題が相当あるのではないか。本来ならば裁判制度をきちんとすることにより解決できる問題が、こちらに持ち込まれるのは余りよくないと思う。まず裁判を最大限改善することから考えるべきである。
 ○ 独立行政委員会は、行政についてはすべて内閣が責任を負うとしている憲法の構成上どうかという問題があるが、独立性といってもいろいろあり、その程度により判断するしかないと思う。

B委員
 ○ 救済の基本的理念は、人権が人間の尊厳と平等並びに個人の尊重を基本的理念とすることを根本に据え、公共の福祉の尊重という理念の下に、すべての個人の幸福をできる限り実現するように努めることである。
 ○ 救済の対象は、司法及び行政上の救済の対象以外で、人権擁護の立場から救済を必要かつ相当とする問題であり、公務員、私人及び団体による人権侵害事案のすべてである。
 ○ 救済の措置は、実効性があり、国民から期待され信頼される救済措置を検討すべきである。
 ○ 実効性のある救済措置を講ずるには、迅速かつ正確に事実関係を把握し、これに基づいて有効かつ適切な判断をすることが必要となるので、我が国及び外国の制度等を参考にしつつ、国民が利用しやすく、かつ救済の実が上がる調査手続及び権限を定めるのが相当である。
 ○ 被害者救済を含む人権擁護に関する法律を作り、人権擁護の基本理念、救済の対象、救済機関の組織、救済の手続、調査権限、救済措置等を規定し、人権擁護委員制度についてもその法律の中に包含して規定するのが相当である。
 ○ 人権擁護の専掌機関として50年余り歩んできた法務省の人権擁護局(下部組織を含む。)を中心として、人権擁護局の組織・体制及び財政的裏付けを抜本的に強化、改善し、独立して職権を行使できる人権救済・擁護の機関として再構築し、人権救済を担当する中心とするのが相当である。
 ○ 人権擁護委員制度についても、人権擁護機関の附属機関ではなく、協力機関として、委員の選任その他事案に対する取組等についても抜本的に改善し、国民の人権擁護に役立てるよう考えたい。
 ○ 人権侵犯事案の調査救済を行う人権救済委員会を設置することが必要である。救済委員会は、再構築される人権擁護機関の下に各県連単位で設置し、人権擁護委員の中からも専門性を有し救済に当たるにふさわしい人を救済委員に選任してはどうか。

C委員
 ○ 人権とは、人が生まれながらにして持っている権利とされ、法人の享受しているような経済的権利や子どもの権利は含まないという議論もあるが、アカデミックに考えて取り上げないというのは、生産的ではないし、法律家としても悪い議論になる。
 ○ 人権侵害の類型としては、家庭や公的な施設における虐待、差別、外国人に対する警察官の暴行などの公権力による人権侵害などがあるが、一括りにして救済の措置を作ることは難しく、グルーピング等が必要になると思う。
 ○ 救済の方法としては、裁判所による例えば民事訴訟等の司法的救済をまず考えるべきである。民事訴訟制度はいろいろ問題点は指摘されているが、適正手続が保障されたフォーマルな手続であり、民事訴訟制度に問題があるからといって、ADRを多用しようというのは尚早である。まず、現行の民事訴訟制度のどこを改善すればいいか考えた上で、なお限界があるところについてそれ以外の救済方法を考えていくべきではないか。
 ○ 時間、費用がかかる、手続がフォーマル過ぎて利用しにくいなどの問題点は、民事訴訟制度に内在する問題であるということもあるが、民事訴訟制度が適正に機能するための基盤整備の問題に由来する問題もかなりあると思う。例えば、時間の問題は法曹人口の増員により、費用の問題は民事法律扶助により、かなり解決できるだろうし、利用しやすい制度という点では、例えば、フォーマルなものをぎりぎりまで簡略化した少額訴訟手続などにより改善が図られている。手続の中で削ぎ落としていける部分があれば、人権救済にふさわしい形に変えていくことも不可能ではないと思う。
 ○ 現在の民事訴訟制度に内在する、改善あるいは克服が難しい問題点としては、第一に、それが個別救済であるということである。人権救済は多かれ少なかれ個別的にならざるを得ないが、必ずしも個別救済のみが可能な形態ではないのではないか。例えば、合衆国のクラス・アクションは、不特定多数人に適用される差別的行為についてその適用を受ける一人が代表して訴訟を起こし、勝訴すれば、同じような立場にある人にも同じ効力を及ぼすという制度である。人権救済は、個別救済では限界があると思う。
 ○ 第二に、民事訴訟制度は、当事者自治が原則であり、被害者が申立てをしない限り、手続を開始したり、手続を援助することはない。合理性はあるが、救済の局面からは、問題もある。例えば、自立的判断能力が不十分な未成年者等については、法定代理人が代わって訴えを起こすことになっているが、家庭内暴力事案等においては、法定代理人が加害者である場合もあり、枠組み自体が機能しないという問題がある。また、公的施設での虐待では、被害者が申し立てることは難しいし、家族にもわかりにくいので、内部告発を待つことになり、個人のイニシアチブに期待していたのでは人権侵害を察知することさえ難しいという状況がある。
 ○ 第三に、被告に対する十分な手続保障をするための適正手続の要請がある。必要なことではあるが、迅速な対応は非常に困難である。公開原則は憲法上の要請でもあり、公開だからプライバシー侵害が不可避的に生ずるわけではないのではないか。例えば、当事者名を仮名にする、つい立てを立てるなどの方法もある。しかし、職場や地域での差別等では、当事者が出訴を躊躇するという面はあるだろう。
 ○ 今後の検討課題としては、民事訴訟制度によっても救済できないもの、救済が困難なものをどうするかである。第一に、個別救済や個人のイニシアチブに期待していては救済できない、あるいは適正手続の要請があるため迅速な対応ができないという点を克服するため、被害者に代わって提訴権限を持つ機関を設置することが考えられる。提訴権限が頻繁に行使されるかはともかく、究極的にはそういうことができるということは重要ではないか。権限行使のためには、調査権限等が必要である。
 ○ また、少なくとも虐待のようなかなり切迫している状況では、仮処分等の民事訴訟制度を利用することもできなくはないが、現に暴力行為がなされているものを差し止めるというようなことには限界がある。そのあたりのことができるような行政救済も考えていった方がよい。
 ○ 民事訴訟以外の救済手続については、人権侵害の類型ごとに考えていくことが必要である。マスメディアによる人権侵害については、自主規制機関による内部での審査ということも重要であるし、差別類型については、比較的身近なところで相談に行ける機関も考えられる。
 ○ 説得をして人権侵害をやめさせることができるなら、それが一番いいと思う。ADRと一括りにしたが、調停、あっせんなどいろいろな手法により救済を考えていくことも一つの可能性として考えられる。
 ○ 公開原則についても一定の対処は可能だが、当事者公開については考えられていない。職場での問題について雇用主との関係をこじらせたくないという被害者もあり得るので、民事訴訟以外のルートがあってもいいのではないか。
 ○ 民事訴訟以外の救済手続はいろいろあり、行政窓口のようなものも入るだろう。行政窓口を前置するというやり方もあるが、そのメリットは、本人が表沙汰にしたくないということ以外にも、同種事例を大量に扱うことにより、類型ごとの対応の仕方などが蓄積できるというメリットがあると思う。
 ○ 当事者に代わって提訴権限を持つ機関の設置のイメージとしては、海外の制度が一つの手懸かりとなるほか、実定法上、人事訴訟において、検察官が提訴できるという制度もあり、そういう制度も考えられるのではないか。
 ○ 児童虐待に関する情報収集については、秘匿特権を与えることなどにより一般からの情報収集を促進することができるのではないか。通告義務を課すことについては、かえってマイナスの効果を生む場合もあり得るので、慎重な検討が必要である。
 ○ 立入調査等に関する裁判所の令状の要否については、原理からいえば、令状を必要とすることが基本だと思う。令状をもらうのに時間的な問題があるならば、簡易な方法を考えることになると思うが、令状なしにどんどん立入りができるというのは問題があると思う。

(2)日本弁護士連合会による説明
   日本弁護士連合会から「弁護士会・日本弁護士連合会による人権擁護活動について」レジュメ(別紙)に基づき説明がなされた。

(3)その他
  次回会議の開催予定について
    第41回会議   4月4日(火)
           議題 自由討議


― 以 上 ―

(2000年4月3日 文責 法務省人権擁護局総務課)

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