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18.高齢者の転倒予防 〜転んで寝たきりにならないために〜
  細木病院 整形外科長 長谷川 伸  
  (はせがわ・しん・・・高知医科大学卒、同大学院修了。整形外科専門医)
 「転んで手をつきました」「かやって尻もちをつきました」。これは、骨折したお年寄りの患者さんが、骨折された状況を説明する時によく話されることです。整形外科の外来には、このような高齢の患者さんが多く受診されます。転んだ方の2人に1人が骨折しているという報告もあります。
 たった1回転んだだけで、手足が不自由になったり、痴呆を生じたり、中には死に至ることもあります。高齢の方にとって「転倒」は、それまでの悠々自適の老後生活から一転して奈落の底に落とされる、大変恐ろしいアクシデントと言えます。

◎なぜ転ぶのか
 転倒された状況を詳しく聞くと、「足がもつれた」とか「ちょっとした段差につまずいた」などと話される方がほとんどです。そして「若い頃はこんなことはなかったのに」と付け加えられます。人はなぜ、年をとると転ぶのでしょうか。
 お年寄りの方はよく、「転んでケガをしてから急に体が弱ってしまった」と言います。この話からは、転倒したことが原因になってケガが起こり、その結果、体が弱って寝たきりになってしまう、と考えがちです。しかし、実は転倒は原因ではなく、結果なのです。
 つまり、”転倒するほど体が弱っていた”と考えるのが正しいのです。体の年齢的な衰えが少しずつ進行している上に、動脈硬化などの隠れた形の病気が拍車をかけ、そこに運動不足が加わって、いつの間にか2本の足で体を支えることができないほど体が弱った結果、人は転ぶのです。

◎どんな人が転びやすいか
 人の基本的な移動能力に「歩く」「またぐ」「昇って降りる」という3つの動作があります。東京大学大学院の武籐芳照教授らの研究によると、この3つの能力に衰えがあると、人は転びやすくなると言われています。この3つの能力を簡単に評価する方法として「健脚度」というものが考え出されました。
 これは@10b全力歩行時の所要時間(70歳平均で5.1秒)A最大一歩幅(脚の長さで割った値が70歳平均で135)B40a踏み台昇降ができない人、が明らかに多いということです。一度これらの運動能力を測定し、自分が転びやすいのか、そうでないのか調べておくとよいでしょう。

◎転ばないためには
 このように、転倒の原因である「体全体の衰え」を少しでも予防すれば、転倒も予防できるものと思われます。日頃からこまめに体を動かして、「健脚度」を上げることは重要なことです。また食生活に気をつけて、肥満や動脈硬化など隠れた形で進行する病気にならぬよう注意することも重要です。それから1日に1回はストレッチを行い、硬くなった筋肉をやわらかくし、転びかけた時に、スムーズに立ち直りの動作ができるようにすることも大切です。
 歩き方の工夫としては、目線は足下ではなく、やや遠くにおき、踵(かかと)から着地してつま先でしっかりと地面をけるとよいでしょう。こうすることで、つまずく機会はずっと減ります。
 バランス感覚を養う訓練としては、「つぎ足歩行」が良いでしょう。これは前足の踵と後ろ足のつま先が触れるようにしてゆっくりと歩きます。3歩以上続けることができる人は、転びにくいいわれています。最初はふらつくかもしれませんので、手すりなどがあるところで練習するのが良いでしょう。
 何歳になっても転倒とは無縁で、自分の行きたいところに行ける、健やかな老後を目指したいものです。

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