自律神経失調症漢方漢方薬

漢方薬剤師の情報発信


 40年にわたる自律神経失調症漢方相談の経験から、ありふれた情報ではない「独自な情報」を発信します。自律神経失調症の方々のお役に立てれば幸いです。

 このサイトは、私のメインサイトである「実正堂薬局ホームページ」およびブログ「免疫と治癒」から自律神経失調症関係の項目を集めたサイトです。がん、アトピーなど他の病気や、メインテーマである「免疫システム」、「治癒システム」については、メインサイトをご覧下さい。
 

薬剤師 実方 恒彦 1939年生まれ 
小田原市で漢方薬局 実正堂薬局経営
生体防御研究協会 前会長 
著書 「その健康でいいですか」(文芸社)
メールアドレス jissyoudou@nifty.com


 私の著書です。実正堂薬局ホームページの内容を加筆修正しました。お読みいただければ幸いです。(2004.3.1更新の「薬剤師の独り言」までを収載しています)。


Amazonでは、「なか見検索」により、全ての目次を読むことが出来ます。

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目次
自律神経失調症の症状

 検査では異常が認められないのに、不快な症状が続く場合、医者は自律神経失調症という病名をつけます。代表的な症状を以下に記します。

 神経 症状   イライラ クヨクヨ 不安感 頭痛 頭重 不眠 怒りっぽい 
             ゆううつ感 疲労感 肩こり 
 循環器症状   めまい どうき 息切れ 呼吸困難 胸圧迫感 手足の冷え 
 婦人科症状   更年期症状 生理不順 生理痛 のぼせ感   
 消化器症状   胃痛 便秘 下痢 腹張り ゲップ おなら  
 泌尿器症状   膀胱炎 残尿感 頻尿 
 耳鼻咽喉科   のどのイライラ 耳鳴り
 眼科 症状   目の疲れ充血 まぶしい 飛蚊症 
 皮膚科症状   脱毛 神経性じんましん 皮膚掻痒症

 単独で現れる症状もあれば、複数の症状が組み合わさる場合もあります一般的には胸、腹、脇の部分が「張る」ということが特徴で、そのため女性でブラジャーをするのが苦しいということを訴えます。

 また受けるストレスにより、これら症状が現れたり消えたり、「動く」ことと季節による変化が大きい(特に春が悪い)こと、旅行とかスポーツか楽しいことをしている時は、症状が出ないこと等が特徴となります。                     

 漢方ではこれら症状を「肝気欝結」とか「気滞」と言います。「肝」とは現代医学で言う「肝臓」とは少し異なり、昔から言われる「カンの虫」の「疳」とか「癇」という漢字に相当する意味ですが、「肝臓」の「働きの異常」も多少影響しているようです。

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「症状が不定」というのが自律神経失調症の特長です

 自律神経失調症のことを漢方では「肝欝気滞」、「肝気欝結」などと言います。「気」が「滞っている」状態です。「肝気」、「胃気」、「腎気」と言うように、内臓は「気」という一種のエネルギーによって動いていると考えています。「気」が「滞る」と、内臓にエネルギーが届かず、うまく動かなくなります。

 その中でも「肝気」とは、「肝」だけではなく五臓六腑の働きをコントロールする働きがあると同時に、情志活動の変化(喜、怒、憂、思、悲、恐、驚を七情という)を受けやすいという特長を持っています。

 ですから「肝気の滞り」の症状とは正に、ストレスを受けて全身のコントロールが乱れる、現代医学の自律神経失調症そのものに相当するわけです。

 ところで血液は血管、リンパ液はリンパ管を流れますが、「気」はどこを流れるのでしょう。漢方の理論を考えた古人は、物質ではない「気」は、血管のような物理的な 「管」を流れるのではなく、全身の皮膚表面に存在する、目には見えない「経絡(けいらく)」を流れると考え、実際に14の経絡を人間の身体にあてはめ、それに沿った点を「穴(けつ)」として、左右657に名前をつけ、鍼灸の治療点(つぼ)としました。
 以上のことを頭に入れて、表題にある「症状が不定」ということを、自律神経失調症の代表的症状の「めまい」「動悸」で考えてみましょう。

 「めまい」を起こす代表的な病気に、「メニエル氏病」というのがありますが、これは内耳の故障のために起こるとされており、明らかに「機械的故障」ですし、「動悸」を起こす代表的な病気に、「不整脈」というのがありますが、これは心臓の「刺激伝導系」の故障のため起こり、これも「機械的故障」です。ですから症状は「起こるたびにほぼ一定」になります。違いがあるとすれば、それは「個人の機械的故障の程度の差」であり、ストレスや季節などの環境の変化による影響はあまりありません。また始まると比較的長時間続きます。

 一方自律神経失調症の場合の「めまい」「動悸」は、内耳や心臓の刺激伝導系に「機械的故障」があるわけではなく、「機能的乱れ」があるだけですから、症状は似ていても、「現われ方」が大分違います。

 その違いをひとことで言えば、「不定」(一定ではない)ということが出来ます。多くはストレスを受けた時、季節、天候(温度変化、湿度変化、気圧変化など)などの環境の変化時に現れ、ストレスの度合い、環境の変化の度合いなどにより、症状に大きな違いがあり、かつ波のように変化します。

 「めまい」の場合には、「地震かな」と感じる程度で、かつ瞬間的なものや、「ふわふわ感」といった動揺感や、歩いている時、時には座っている場合でも「ふらふらして不安定で何かにつかまりたい感じ」とかが、数時間続く場合もありますが、「機械的故障」の場合の「天井がぐるぐるまわる」といった激しいものはあまりありません。

 また「動悸」の場合には、ふとした瞬間に始まり、「ここに心臓がある」という、心臓の「存在感」程度で、少しの時間横になったり、「気を静めている」と、いつのまにか消えてしまいます。「息苦しい」といった「酸素の不足感」を伴うことも多いようですが、何時間も続くということは、まずありません。また症状の程度は、救急車を呼ぶくらいの激しいものもありますが、「機械的故障」の場合との決定的違いは、病院に到着する前には、「ケロリ」としてしまうのが普通です。

 もうひとつの決定的違いは、自律神経失調症の場合の「めまい」「動悸」は、「楽しい」ことをしている時、趣味など何かに没頭している時には、ほとんど起きませんし、汗を少しかく程度の軽い運動をすると軽快します。

 このように、あたかも空気のような軽い気体が、ふわふわと時には速く、時には遅く、時には大きく、時には小さく、時には滞ったり、時には止まったり、波のように体の表面を動きまわっており、その動きが滞ったり、止まったしまった時に、体に不調が起きるということを、古人は観察していたのでしょう。そして「肝気」が滞った場合に起こる全身的症状を、「肝欝気滞」とか「肝気欝結」と名付けたのでしょう。

 そしてこの「滞り」を「動かせば」症状が軽快することを観察し、その手段として鍼灸、あんま等の物理的方法、草根木皮を使った薬物的方法(気を動かす「発散剤」などの漢方薬療法)を考案しました。

 自律神経失調症の方は、このようなことを理解し、ストレスをさらりと受け流す心のゆとりを持つと同時に、少し汗を流す程度の運動を心がけ、「気の滞り」を「動かす」、自分なりの方法を見つけ実行してください。

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春になると体調が悪くなる人

 漢方薬局は立春が過ぎると忙しくなります。まず花粉症が始まり、更に暖かくなり草木が繁茂し始めると、冬の間眠っていた色々な症状が目を吹き始めます。昔から「木の芽どき」といわれていた季節です。
 漢方理論に「五行色体表」というものがあります。

 上海中医学院編「中医学基礎」より一部改編して抜粋

 五行 五季 五臓 五腑 五官 五体 五志
  木   春   肝   胆   目  筋   怒
  火   夏   心  小腸   舌  脈   喜
  土  長夏   脾   胃   口  肉   思
  金   秋   肺  大腸   鼻  皮毛  悲
  水   冬   腎  膀胱   耳  骨   恐 

 これから理解出来るように、春には「肝」が旺盛に働きだすと同時に、疲弊しやすくなります。すると現代医学的な「肝臓」ばかりでなく、漢方で言う「肝」も影響を受け、各種のアレルギ−疾患(特にアトピ−、湿疹などの皮膚病)、眼科疾患(結膜炎など)、自律神経失調症などが芽を出し始めます。

 また新陳代謝が盛んになり各種の免疫疾患も頭をもたげてきます。
ということで春になると体調が悪くなるという方は、何らかの「肝」の異常を持っていると考えた方が良いと思います。

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微熱が出る人

 漢方薬局には時々「微熱が続く」といって相談に見える方がいます。
現代医学的に各種の検査をしても異常が認められず、医者から相手をしてもらえなくなった方々です。よく聞いてみると、微熱がきまって春とか秋という季節の変わり目に続きます。

 これだけ聞いてすぐ「ははー自律神経失調症だな」と気がつくのは、漢方薬の専門家です。体温は中枢神経(特に視床下部)により主にコントロールされていますが、その影響が自律神経にも及び、更に微妙にコントロールされています。交感神経が緊張すると心臓の鼓動がたかまる、骨格筋などの大きな血管が拡張するなどの、いわばアクセルをふかしたような状態になるわけです。

 もともと自律神経失調症の方は、心配症の場合が多いので、普通の方が気がつかない微妙な体温の変化が気になってしまうのです。そして体温計を常に手元に置き1日に何回も測定します。朝方は平熱だったのに夕方になると、熱っぽくなり37度を少し越すようになります。

 治療方法は特になく、(各種の検査で異常がなければ)1週間程ほうっておけば治ってしまうものです。一番良い方法は体温計で測らないことです。

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ブラジャーをつけることが苦痛な女性は要注意

 一般に女性は入浴、就寝時以外にはブラジャーをつけているのが普通です。ところがブラジャーや帯で胸を圧迫することが苦痛で、帰宅するとなにはさておき、ブラジャーをはずしてしまう女性がいます。胸の大小は関係ないようです。

 男性の場合にはあまり目立ちませんが、きつい下着や腹巻、ベルトなどで胸や脇を圧迫するのが苦痛だと言う方がこれに相当します。これは漢方の処方を決める上の大切な「証」の一つの「胸脇苦満」をあらわしていると言ってよいでしょう。

 現代医学的な肝臓の異常(検査値にあらわれなくても)を意味する場合もありますが、多くは漢方的な「肝」の「亢進」を意味します。すなわち「肝」の「働きすぎ」を示しています。「肝」はとかく「働きすぎる」傾向を持ち、車に例えると「アクセル」の踏みっぱなしの状態と言えるでしょう。

 これを現代医学的に見ると「交感神経緊張症」といって自律神経失調症の一つの症状です。ストレスに対して敏感に反応し、イライラしたり、怒りっぽくなったり、めまいや動悸、不眠を訴えたりします。さらにこの状態が続き「肝」が疲弊すると、「肝を巡る気」が滞り、「肝気欝結」(「肝欝気滞」とも言う)という状態になり、これらの訴え以外に逆にクヨクヨしたり、不安感や憂鬱感を訴える場合もあります。
                 
 したがって「最近ブラジャーがきつくなったな」と感じ始めたら、「何かストレスを受けているな」と判断し、なんらかのストレス発散の手段を講じたり、 「肝」の疲労を回復すべく、睡眠を十分とるなどの自衛手段を考えなくてはなりません。さらに上記の症状が始まったら、自律神経失調症の「前兆現象」と考えて、然るべき専門家に(ろくに問診もせずに精神安定剤を出す医者は最低)相談した方が良いと思います。

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のどの異物感を訴える人

 話している最中にのどを鳴らしたり、咳払いをしたりする方をよく見受けます。「何かのどに物が詰まっている」と訴える場合もあります。程度も軽いものから、あまりのつらさに、のどに「冷えピタ」を張り付けたり、「出来ればのどをもぎとってしまいたい」と訴える方もいます。

 のどの「がん」ではないかと咽喉科を訪れ、医者に「がんではない。そんなことをしても無駄」と言われても納得せずに、手術までして確かめてもらった方も現実に来店したことがあります。他人からは大したことはないように見えても、本人にとっては非常につらいものなのです。

 これも前項の「ブラジャーの嫌いな女性」に書いた場合と同じで、漢方薬の処方を決定する一つの重要な「指標」になります。漢方用語で「咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)」とか、「梅核気(ばいかくき)」と言い、江戸時代にはもっとくだけて「ヒステリー球」とも呼んだようです。意味は「あぶった肉」や「梅の種」がのどに詰まってしまったような感じを現わしています。

 甲状腺の異常で現れる場合もありますが、甲状腺の検査結果で異常がなければ「自律神経失調症」と片づけられてしまう場合が多いようです。治療の必要を認めない程度の軽い慢性甲状腺炎(機能亢進)と自律神経失調症との境界は、「あいまい」なものです。

 漢方ではこの症状を「肝気欝結」の一つと捉えています。「気剤」と呼ばれる「発散作用」のある薬物や、「利水剤」と呼ばれる「利尿作用」のある薬物が使われることから判断できるように、原因は「ストレス」にあり、物理的には咽喉部に何らかの「むくみ」があるという判断なのです。

 耳鼻咽喉科をあちこち巡っても良くならない症状が、漢方薬を使うと「あっけなく」解消されてしまい、「現代医学より漢方の方がすばらしい」と言わしめる代表的症状です。

 しかし何回も書いているように、漢方薬は「効かせる薬」ですから、良くなったと服用を中断すれば、しばらくして再発してしまいます。やはり根本的には 「治癒システム」、「免疫システム」の低下や乱れを回復させなければなりません。

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手足の先だけに冷えを訴える人

 寒さを感じる季節が来ました。「冷え症」の方には、いやな季節です。この「冷え症」というのは、現代医学が治療の対象としない症状なので(もっとも現代医学には、ビタミンE程度の治療法しかない)、漢方薬局に相談に訪れる方が多いのです。

 ところがこの「冷え症」という症状は意外に複雑で、単に「温める生薬」を与えれば良いというわけにはゆかないのです。漢方を良く理解していない医者や薬剤師が、「温める生薬」の代表である「附子(殺人事件で有名になったトリカブトの根)」を与えてしまって、副作用が出てしまったということをしばしば聞きます。

 漢方理論では、「冷え症」をいくつかに分類していますが、(詳しい分類は省略して)大きく分類して、(正確な表現ではないが)「本当の冷え症」と「うその冷え症」があります。この「うその冷え症」の中に、自律神経失調症の方の「冷え症」があります。

 「本当の冷え症」の方は、もともと温める力(陽気という)が不足しているため、外気温に関係なく、お腹や腰を中心とした全身に冷えを感じやすく、特に内臓が冷えているために、夏でも「冷たい飲物」を飲むとすぐ下痢をしたり、「気」が不足しているので、元気がなく疲れやすいという特長があります。(ホカロンをお腹や腰に入れたがる)
 「うその冷え症」の方の場合には、外気温が高い夏には、平気で冷たい飲物も飲めますし、「気」が不足しているわけではなく、単に「滞っているだけ」なので、「元気がない」「疲れやすい」といった症状を「強くは」訴えませんが、いざ冬に向かう頃になると、「手足の先(特に手の先)」を中心に「冷え」を訴え始めます。(ホカロンは手に持ちたがる)。(ただ実際には「両方の冷え症」が混じっている場合もあり注意が必要ですが・・・)。

 では自律神経失調症の方(ほとんどが交感神経緊張症)が、何で「うその冷え症」になりやすいかを考えてみましょう。それには「自律神経(交感神経と副交感神経)が内臓、器官に及ぼす影響」を考えれば理解出来ます。これらは高校時代の生物の教科書には、「表」や「図」で必ず出ているものなので、見ている方も多いと思います。また交感神経は、動物の「餌とり行動」とか「昼間に働く神経」、副交感神経は、「休息」とか「夜に働く神経」と覚えている方も多いと思います。

 では「冷え症」に関係する「血管」は、自律神経からどの様な影響を受けているのでしょうか。交感神経優位な「餌とり行動」とは、「素早い行動」が要求されますから、当然「血管」が「拡張」して「血行」を良くしているわけですから、冷え症の方は「交感神経を刺激して、血行を良くすれば良い」と単純に考えがちです。

 ところが血管に及ぼす交感神経の影響は、心臓や骨格筋に分布する「太い動脈」と、皮膚や粘膜、内臓などに分布する「細い動脈」とでは、全くの正反対なのです。もうおわかりになったと思いますが、交感神経優位では、「太い動脈は拡張」するのですが、「細い動脈は収縮」してしまうのです。「餌とり行動」のような場合には、皮膚、粘膜、内臓に巡っている血液さえも少なくして、もっぱら心臓、骨格筋に血液を集中させようとする「生物の知恵」なのでしょうか。

 これで自律神経失調症の方には、「手足の先だけが冷える」という「うその冷え症」が生まれやすいことが理解できたことと思います。したがって自律神経失調症の方の 「手足の冷え」には、単なる「温熱剤」を与えても「効かない」だけでなく「副作用が出る」ということになります。すなわち「交感神経緊張」を「ゆるめる」ことが、唯一有効な治療法になるのです。

 昔から「握手して手が冷たい人は、心も冷たい人だ」と言われています。「餌とり行動」とは、動物の「戦闘モード」でもあるわけですから、人間の場合には、精神的に 「他人を思いやる」という「心を暖かくする余裕」がないのです。常に「戦闘モード」のような政治家はどうなんでしょうかね?

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「脳を取り出し、脳みそを水で洗いたい」という症状

 40年近く自律神経失調症の相談を受けていると、色々な「訴え」に遭遇します。最近表題のような症状を訴える方がいらっしゃいました。最初「めまいみたいな」と言っていたのですが、普通のめまいとは違うようでした。いろいろ問診をしていると、どうも「頭重」に相当するようなのです。ところが「頭が重い感じですか」とお聞きしても、「そうでもない」とおっしゃいます。なんとか私に説明したいと考えているうちに、表題の訴えが出てきたのでした。

 非常に「説得力のある表現」だと感心し、私にも感覚的に理解できました。今までもこの症状を多くの人に訴えていたのでしょうか。「めまい」だとか「頭重」では、表現できない「頭のもやもや」を、この表現に込めて訴えてくれたのです。

 このように自律神経失調症の方は、独特の工夫をして症状を訴えます。それだけ症状は複雑、微妙で多岐にわたり、健康な人には理解しにくいのです。

 もう一つ例を挙げてみましょう。娘さんが母親と一緒に相談に見えました。娘さんののどには「ひえぴた」と言うのでしょうか、冷却シップが貼られていました。訴える症状から咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)とわかりましたが、その訴えの表現が「異常」でした。普通この症状では「のどのいらいらとか異物感」程度の表現なのですが、彼女の場合は「のどをもぎ取りたい」というのです。

 つまり「のどのいらいらとか異物感」では到底表現しつくせない程度の、「極めて強い症状だ」というのを訴えたいのです。

 その他、胸部が「さわさわする」という表現、脇が「ぐしぐしする」という表現などは、なかなか理解することが難しい症状です。一般には「違和感」という言葉で表現され、我々はそのまま理解してしまうのですが、自律神経失調症の方には、「そんな単純な表現」ではなく、「この言葉以外には表現できない微妙な症状」なのです。

 これら以外にも、「足のすねの1点だけが冷える」、「車を運転している時以外、常にめまいがしている」、「半径1キロ以上遠くに、歩いては行けないが自転車なら行ける」、「鈍行電車は乗れるが、急行電車には乗れない」、「デパートなど奥行きのある建物に入れない」などなど、常識では考えられない訴えを経験します。

 これらは普通の人にとっては、単なる「変なこと」なのですが、本人にとっては日常生活にも支障をきたす「症状」なのです。単に「思い込みの強さ」が原因なのですが、これらも自律神経の乱れが引き起こす特異な症状のひとつです。

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慢性頭痛(頭痛持ち)と亀さん

 慢性頭痛は機能性頭痛とも呼ばれ、CTやMRIなどの検査で異常がみとめられず、生命に別状がないために、軽視されがちです。しかし定期的に薬局店頭に鎮痛薬を求めに来る「鎮痛薬常用者」の多くが、「頭痛止め」が目的です。慢性頭痛は、緊張型頭痛と片頭痛に分類されていますが、今回は前者について書いてみたいと思います。(片頭痛の一部もストレスが原因であると言われています)。
 亀さんは棒でつついたり、大声で驚かすと(ストレス)反射的に首を縮め、甲羅の中に頭部を隠します。この「首を縮める」という行為が、「継続的」に起こると、人間の場合肩こり、首のこり、頭痛が生まれます。生体防御の観点から見ると、この頭痛は「ストレスを受けていますよ」という警戒信号になるわけです。

 もう少し詳しく見ると、ストレスを受けて「首を縮める」行為(実際に首を縮めているとは見えない、筋肉の緊張くらいの程度であっても)を継続的に行なうと、頭頸部を包んでいる筋膜や腱膜が異常に収縮し、その結果首筋や後頭部に締め付けられるような痛みが現れるのです。女性の場合には、もともと首周辺の筋肉が細いために、慢性頭痛(頭痛持ち)になりやすいのです。

 この様な頭痛は、最初のうちは外気に触れたり、運動をしたりすると、ストレスが発散されて、消えてしまう場合が多いのですが、鎮痛剤を常用するようになると、この程度のストレスの発散では消えなくなってしまいます。

 店頭に相談に訪れる慢性頭痛の患者の多くは、ストレスに鋭敏に反応してしまう、いわゆる自律神経失調症に属している方のようです。自律神経失調症は、漢方では「肝気欝結」という状態を指し、疏肝解欝剤を使って治療するのですが、慢性頭痛の多くがこの薬を使うと見事に軽快することからも「慢性頭痛ストレス説」は理解出来ると思います。

 ただし疏肝解欝剤を使っても(鎮痛剤のような常用による副作用は少ないが)根本的な治療にはならず、服用を中止すればまた頭痛が始まってしまうのは、いたしかたないのです。根本的には、自律神経を支配する中枢である、視床下部の「傷」(ストレスを継続的に受けると、神経伝達を行なう電気的信号が過剰になり、視床下部の細胞に一種の「傷」をつける)を治す必要があり、やはり治癒システムの修復が大切になります。

 多少つついても首を縮めないような「図太い神経を持った」亀さんになって欲しいと思います。

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くさいオナラとくさくないオナラ・・自律神経失調症とオナラ

 自律神経失調症の方は、胸脇部や咽頭部の張りを訴える場合が多い(漢方用語で胸脇苦満、咽中炙臠と言う)のですが、もう少し下の胃部、腹部に膨満感を訴える場合もあります。原因は、いずれも鍼灸医学で言う「経絡」に流れる「気の滞り」なのですが、消化器では、「空気」の流れも滞ります。これがオナラあるいはゲップになります。ちなみにオナラのことを漢方では「転失気」(「てんしき」、または「てんしっき」と読む)と言います。

 次に現代医学的にオナラを解説すると次のようになります。オナラのもとは、食べ物と一緒に入ってくる空気(70%〜90%)、腸内で発生するガス(発酵)、わずかですが血液中から腸内にしみだすガスです。主成分は、炭酸ガス、水素ガスですが、その他にメタンガス、アンモニア、硫化水素、揮発性アミン、揮発性脂肪酸などがあり、中でもインドール、スカトールといった名前が「有名」です。ガスは多量でなければ、腸から吸収されますが、吸収しきれなかったものが、オナラとなります。

 問題の「くさい」か「くさくない」かは、ガスの成分によって決まります。食べ物と一緒に入ってくる空気、腸内で発生するガスでは、炭酸ガス、水素ガス、メタンガスは、いずれも無臭です。それら以外のガスが、「くさい」原因となります。

 腸内で発生するガスの種類は、食べ物の種類、腸内の細菌叢により違います。いも、豆などの繊維の多い食べ物で発生するガスは、主に炭酸ガス、メタンガスで、いずれも「無臭」です。蛋白質(特に動物性蛋白質)、ねぎ、にんにくなど窒素、硫黄分の多い食べ物では、アンモニア、硫化水素、揮発性アミン、揮発性脂肪酸等が発生し「くさく」なります。また消化不良の場合には、さらに臭いがきつくなります。

 自律神経失調症の方は、交感神経が緊張状態ですから、上記の(空)気の滞りを起こしやすいだけではなく、消化器そのものの働きや消化液分泌が「抑制状態」ですから、「オナラ」が出やすくなります。

 さてこの場合のオナラは「くさい」でしょうか、「くさくない」でしょうか。答えは「一般的には、くさくない」です。ただし、交感神経緊張がひどく、消化器に異常があったり、腸管免疫システムが低下し腸内細菌叢が、悪玉細菌だらけになって便秘がひどい場合には、「くさく」なります。

 「一般的には、くさくない」原因は、自律神経失調症の方のオナラの成分には、圧倒的に「空気」が多いからです。この原因は「昼間の餌取り行動」である、交感神経緊張状態では、「早食い」「かまない」という「食べ方」と、急ぐあまり空気をのみ込んでいる場合が多いからと言えるでしょう。医学用語で「呑気症(どんきしょう)」(空気嚥下症のこと)という病気がありますが、たいていは自律神経失調症を伴っているようです。なお、ガムを噛む習慣のある方の場合にも、空気を無意識に飲み込んでいますので、オナラが出やすくなります。

 一方「くさい」オナラが出やすい方は、要注意です。食べ物にもよりますが、普段から「くさい」オナラが多い場合には、腸内細菌叢が「悪玉細菌」で一杯になっている証拠で、便秘症がひどいか、消化不良状態が続いている筈です。。悪玉細菌が一杯ですと、免疫システムの前線基地である、「腸管免疫システム」が、異常になっていますので、体のために良くないガスが吸収されやすいだけでなく、食べ物と一緒に腸内に入り込んだ「異物」が「認識、排除」されずに体内に侵入し、色々な免疫疾患の原因にもなりやすいのです。ひどい場合には、ガスが腸から吸収しきれず血液中に戻され、肺にまで送られ「くさい」呼気になることさえあります。

 オナラを我慢するとどういうことになるでしょう。血液中に戻されたガスは、ほとんど有害ガスで、肝臓に負担をかけます。そのために我慢するくせが続けば、糖尿病、高脂血症、動脈硬化、脳卒中、心臓疾患の原因にさえなりかねません。

 余談ですが、手術後の「最初のオナラ」が歓迎されるのは、麻酔により麻痺した腸が動き出し、「麻酔事故(昔はまれではなかった)がなかったという証拠」になるからなのです。

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自律神経失調症と「がん」

 私の学生時代、自律神経失調症という病名を耳にすることはめったにありませんでした。この病気は、テレビの普及以後の「高度経済成長」と同じカーブを描いて増加していると思われます。すなわち「競争社会」が生んだ病気とも言えます。

 一方がんについても同じカーブを描いて増加しています。2004年からスタートした厚生労働省の「第3次対がん10か年総合戦略」の添付資料に、「主要死因の推移」のグラフがあります。「主要死因は感染症からがんを含む生活習慣病へ移行」という注釈つきで、各種疾患の全死亡に占める割合が示されています。

 それによると1955年には約10%であった「悪性新生物(がん)」が、2000年には約30%に増えています。心疾患、脳血管疾患も増えていますが、増加率では、がんがトップです。

 自律神経失調症という「病気」が、「病気ではない病気」だけに、厚生労働省の統計に出ることはないのですが、がん、心疾患、脳血管疾患の増加とは、無関係ではない気がします。それをはっきりと「がんの原因は交感神経緊張症だ」と言い出したのが、安保徹教授です。

 自律神経システムは、免疫システム、内分泌システムと共に、お互いに関連し合って働き(免疫のトライアングル)、治癒システムがそれらを支えているというのが、生体防御システムです。したがってストレスにより自律神経システムが乱れれば、免疫システムも乱れ、その極致である「免疫不全状態」になれば、「がん」も生まれるであろうことは、当然考えられてきました。

 しかし自律神経失調症の患者には若い方も多く、彼らにはこの病気が「老化病と考えられるがん」に結びつくというイメージは沸きにくいと思われます。私自身、安保理論が発表され、「がんの原因は、交感神経緊張症だ」と断言されるまでは、自律神経失調症の方に、「家族のがん既往歴」などの問診もしないし、「がんとの関連」についての注意をお話することもしませんでした。

 この理論を知ってから、「がん」の相談に見える方に「家族のがん既往歴」(「がん」の発症には、遺伝的要素も大きいと思います)と共に、「ストレス既往歴」をお聞きすることにしました。すると安保教授が著書に書いているように、がん患者には、「ストレス(交感神経緊張)を長期間かつ強度に受けていたという経験」を持っている方が多いことに気付きました。

 「自律神経失調症の方は、そうでない方に比べ、将来がんになる可能性が大きい」とは、まだまだ仮説の段階であると思いますが、少なくとも「長期間かつ強度のストレス」を受け続けることは、ストレスを受けていない方に比べれば、「可能性が大きい」とは言えると思います。

 「高度経済成長」が終わり「競争社会」から「格差社会」に入ろうとしています。ストレスの種類も、今までとは多少違うものとなっているようですが、「交感神経緊張」を強いることは同じです。

 「自律神経失調症漢方治療と生体防御システムの維持は、最高のがん予防策」であることを、認識していただけたら幸いです。

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自律神経失調症と起床時頭痛

 自律神経失調症の方には、慢性頭痛や片(偏)頭痛といった症状を持っている場合がたくさんあります。そして漢方薬と治癒システムの修復によって、回復することをたくさん経験しています。(私のHPの「慢性頭痛と亀さん」を参照して下さい。)

 ところが「nikkeibp.jp健康」2005年10月20日号にこんな記事が掲載されました。(サイトは消えてしまいますので、あえて全文引用しておきます。)  

 朝起きたときに頭が痛い――。そんな症状に悩んでいる人は、うつや不安など心の問題を抱えた人が多いことが、欧州5カ国で実施された大規模調査により明らかにされた。

 これは、英国、ドイツ、イタリア、ポルトガル、スペインという欧州5カ国に住む15歳以上の男女1万8980人を対象にした電話による聞き取り調査の結果。詳細は、昨年1月に米国の権威ある内科専門誌の「Archives of Internal Medicine」誌に掲載された。

 以前から、片頭痛や緊張型頭痛の発症・経過に、不安や抑うつなどといった心理的な要因も関与していることが指摘されており、この調査結果も、そうした傾向を裏付けたものと言えよう。

 聞き取り調査は、米国精神医学会によって随時改訂されている「精神障害の診断・統計の手引き 第4版(DSM-IV)」に従ったもの。質問項目は、頭痛の有無に加え、心理面で何か悩みがないか、などといった内容を含んでいた。

 調査の結果、慢性的な起床時の頭痛を抱えている人は、1442人(7.6%)に上ることが分かった。内訳をみると、「毎朝」頭痛がある人は全体の1.3%、「頻繁に」頭痛がある人は4.4%、「ときどき」という人は1.9%だった。「ときどき」という人まで含めると、13人に1人が朝の頭痛に悩んでいることになる。しかも、こうした頭痛は、平均42カ月間続いていた。

 さらに、朝起きた時の頭痛に悩んでいる人は、そうでない人に比べ、心理面での問題を抱えている人が多かった。

 最も強い関連がみられたのは、「不安」と「抑うつ」の程度で、朝に頭痛がある人のうち、この両方とも“病気”と診断されるレベルまで高かった人は28.5%に上り、頭痛がない人の5.5%と明らかな差があった(「頭痛持ちの日本人は約3割」参照)。抑うつのみが“病気”レベルの人は21.3%で、こちらも、頭痛がない人の5.5%と比べ、明らかな差があった。

 また、睡眠に関する問題を抱えている人も、起床時の頭痛がある人で多い傾向がみられた。

 「不眠」を訴える人の割合は、朝の頭痛がある人では17.1%、ない人では6.9%だった。このほか、約25時間周期で睡眠と覚醒を繰り返すはずの「サーカディアンリズム(概日リズム)」が狂ってしまう睡眠障害がみられた人も、朝の頭痛がある人で20.0%、ない人で7.5%となっていた。

 今回の調査結果では、うつ病や不眠が起床時の頭痛の原因なのか、それとも結果なのかは明らかではない。だが、頭痛がない人との差をみるかぎり、何らかの関連があるとは言えそうだ。朝起きたときに頭が痛くて気分が優れないという人は、一度病院を受診したほうがよいかもしれない。(小又 理恵子=健康サイト編集)

 少し脱線しますが、以前から日本の漢方書に「中年以後の早朝ないし午前中の頭痛には○○散」といった記載があります。(私のHPの「日本の漢方の不幸」参照。)そしてこの記載が一人歩きして、漢方をあまり理解していない薬剤師や医者が、「中年以後の早朝ないし午前中の頭痛」と言えば、誰にでも疑いもなく○○散を処方しているようです。

 今回の欧州5ケ国の調査は、電話調査とはいえ2万人という大規模疫学調査ですから、大いに参考になります。「朝起きたときに頭が痛い――。そんな症状に悩んでいる人は、うつや不安など心の問題を抱えた人が多い」ということは、自律神経失調症の方とも言えます。

 起床時ということは、睡眠という副交感神経支配状態から、交感神経支配の状態へ、一気に変わる時間帯ですから、この「切り替え」がスムーズに行かない自律神経失調症の方には、脳の血管系にも変調が起こり、頭痛が生まれるのではないかと思います。

 なおこの記事の最後にある「朝起きたときに頭が痛くて気分が優れないという人は、一度病院を受診したほうがよいかもしれない。」というのは頂けません。痛み止めや向神経薬の洗礼が待っています。

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