日本国憲法の現代的意義を学習し、2006年を振り返る


−−陵ケ岡・鏡山地域の三人よれば学習会(2006.12.15)−−


2006年12月15日(金)、月例の陵ケ岡・鏡山地域の平和学習会では「日本国憲法の現代的意義」について焦点をあてて学習を進め、また2006年を振り返りました。今回で「憲法講座」のテキストを使った学習は最終です。

 今回は「第13回〜最終回 日本国憲法の現代的意義」を学習しました。
 最初にテキストを読み合わせて、その後自由討議を行いました。
 学習では、次のようなことを学びました。
 *(小沢隆一「憲法講座」平和新聞1780-1783号に掲載されたものを要約しています)


◆第13回◆ 日本国憲法の現代的意義(1)  1990年代以降の改憲論

 この間の改憲の動きは、1990年代頃から強まってきたものです。

 1990年を境に戦争と平和をめぐる国際情勢は激変します。いわゆる米ソ「冷戦」が終結する一方で、湾岸戦争が勃発したのです。また、「冷戦」時代の政治的・経済的後ろ盾を失って体制が揺らぐなか、それまでに流入した大量の武器が使用されて悲惨な民族紛争や内戦が激化し泥沼化していく国や地域も現れました。

 湾岸戦争の引き金となったイラクのクウェート侵略は、今日の国際社会ではとうてい許されない蛮行です。ところがこの戦争は、自国の軍隊の指揮権を手放したくないというアメリカの手前勝手な思惑もあって、国連憲章にもとづく武力制裁ではなく、多国籍軍による作戦という形をとりました。武力行使をきびしく禁止している憲法九条をもつ日本にとって、そうやすやすと参加・協力できるようなものではなかったのです。

 結局、自衛隊は派遣されませんでした。ところがこの時から、「国際社会に後れをとった」、「一国平和主義は捨てよ」という攻撃が、憲法九条に対して向けられるようになったのです。

 1994年11月3日の読売新聞には、同社の改憲案が大々的に掲載されました。第一章の表題を「天皇」から「国民主権」に変える、人格権・環境権などの「新しい権利」も盛り込むなどの体裁をほどこしていますが、ねらいは憲法九条を変えて、自衛のための軍隊の保持、国際協力のための軍隊の提供をできるようにしようというものです。

 「新しい時代の憲法」、「国際協力を可能に」というふれこみで登場しましたが、日米の軍事同盟体制のもとでの軍事協力の強化が、こっそりと忍び込んでいます。

 財界による改憲の動きが経済同友会あたりを中心に始まったのも、90年代の特徴です。

 湾岸戦争は、世界中に経済利害をもつアメリカが同盟国に軍事的・財政的分担(日本はお金を払いました)を要求しながら戦われたという一面をもっています。日本の企業も、1980年代後半から急速に海外への工場移転や資本輸出するようになります。こうして安保体制の強化と自衛隊の海外派兵は、アメリカと日本の財界の共通の利益となりだしました。「憲法九条をかえろ」の声が双方から強まってきた背景には、こうした事情も潜んでいるのです。


◆第14回◆ 日本国憲法の現代的意義(2) 世紀の転換点でおきたこと

 20世紀から21世紀への転換の時期、1999年、2001年、2003年と一年おきに世界の平和と安全を脅かすことが起きました。NATOによるユーゴ空爆、「9・11」事件と米のアフガニスタン攻撃、そして米英のイラク攻撃です。そうしたなか、憲法九条の原則を掘り崩す法律・政治が次々に打ち出されてきました。それらは、今の改憲の動きの直接的な引き金になっています。

 アジアの日本では、「地球規模の同盟」をうたう日米新ガイドライン(1997年)にもとづいて、周辺事態法が制定されます。これによって、安保条約五条が定める日米「共同防衛」以外でも日米が軍事協力できる、具体的には米の軍事行動に日本が「後方地域支援」を行う仕組みが作られました。この年(1999年)の国会は、国旗国歌法、盗聴法、地方分権一括法、憲法調査会の設置など、今の改憲の動きに関わる法律を次々と成立させました。

 9・11事件をおこしたテロ集団をかくまっているとして、アメリカはアフガニスタンを攻撃します。ブッシュ大統領の「テロとの戦争」という呼びかけに応じて、日本ではテロ対策特措法が制定されました。ただし、これによって行われていることは、アフガニスタンから遠く離れたインド洋に展開しているアメリカ海軍に対する補給などの支援活動です。周辺事態法の「後方地域支援」を、テロ対策を口実に「日本周辺」以外にも拡大したものといえるでしょう。  2003年3月20日、米英は、世界の多くの国や人々の反対を押し切って、イラクに対する武力攻撃を開始し、フセイン政権を崩壊させました。国連憲章に明白に違反するこの攻撃の背景には、「先制攻撃の権利」、「敵性国家の政権転覆」を公言するようになった米ブッシュ政権の軍事戦略があります。

 日本政府は、すぐさまこの攻撃に支持を表明し、イラク特措法を制定しました。この法律では、「人道復興支援活動」の他にも、治安維持のための外国軍に対する「安全確保支援活動」も行うとしており、これは、占領行為への支援に他なりません。  こうした日本国憲法の平和主義の精神と憲法九条をふみにじる政策が、ここ数年積み重ねられてきました。しかし、なお超えられていない一線があります。それは、「海外での武力行使」です。憲法九条、とりわけその二項をかえようという動きは、その「限界」を突破しようというものなのです。


◆最終回◆ 日本国憲法の現代的意義(3)21世紀を拓くその輝き

 1990年代に展開したグローバル市場経済は、国際的には、先進国と発展途上国・旧社会主義諸国との間の経済格差を広げ、また一国内でも、産業や労働・福祉・教育などでの所得再分配政策を縮減・修正することによって、不平等を拡大しました。

 フランスのジャーナリストのイグナシオ・ラモネ氏は、次のように指摘します。

 「地球上の60億人のうち、かろうじて5億人がゆとりのある生活をしているのに対して、55億人が不如意のなかに暮らしている。……今考えなければならないことは、世界を変えるため、新自由主義的な見方と異なった未来を構想することだ。10億人の住民が繁栄のなかで暮らす一方、他の10億人が残酷な悲惨のなかに生き延びているような地球に満足することなどは、もはや問題外である」(イグナシオ・ラモネ(井上輝夫訳)『21世紀の戦争』以文社・2004年pp.203-4)。

 このラモネ氏の問題提起に、私たちは何を考えどう答えたらよいでしょうか。

 第一は、歴史に学ぶことです。人類は、二十世紀後半にようやく世界全体を包括する普遍的な国際社会を成立させ、戦争のない平和な国際社会と社会保障・社会福祉の充実による人権と民主主義の発展を、その不可分の共通課題とする段階に、苦難の末ようやくたどりつきました。この到達点に至るまでの人類の苦難と努力の歴史を、私たちは決して軽んじてはなりません。

 第二に、にもかかわらず、今日の国際社会は、多国籍企業の経済支配を大国がその強大な軍事力・政治力を用いて支援する不平等なグローバル市場経済がはびころうとしており、それは、いま平和と福祉の国際的な実現を妨げる最大の元凶になろうとしています。

 現在、日本国憲法に加えられている攻撃の焦点は、まぎれもなく九条です。同時に改憲派は、多国籍企業の支配に都合のよいように、基本的人権や議会制民主主義・地方自治のしくみをかえようとしています。

 第三に、こうした動きに対抗する上で大事な視点は、平和と人権・福祉、民主主義を統一的に実現していくことです。日本国憲法は、この統一的視点をみごとに盛り込んだ憲法です。この憲法を私たちが二十一世紀の羅針盤として守り続けていくことは、全世界の人々の希望を実現することに貢献するはずです。

 「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」(憲法前文の一節)。


◆話し合いの中で◆


 学習会の話し合いの中では、主に次のようなことが話題になりました。以下、要旨を述べます。

○憲法9条と共に、25条の生存権も合わせて大切。「平和」に(表向き)反対という人はいない。しかし、「だから侵略されないように憲法を変えて自衛軍を持つ」という論も成り立つわけだから、いくら「平和が大切」と言っても、その「平和」は、人々の「人権保障」「生活保障」「幸福追求権保障」と結びついた「平和」でなければならない。そういう意味で、憲法9条と共に、25条を大切に守ることが大切だ。

○今日(12月15日)の国会で、防衛庁が防衛省になり、教育基本法が改悪された。昔イスラムで「剣かコーランか」と言って支配を拡げていたという歴史があったが、今の日本はまさに「暴力と教育」で政府いいなりの国民にしようとしている。恐ろしい時代に逆戻りしないかとても心配している。

○国保料も値上がった、自立支援法で障がい者も負担が増えた。今年は国民にとっては苦難の年だった。2006年は、日本の進路が大きく曲がった節目の年として記憶されるのではないか。

○それだけに、国民との矛盾を深めている。「国民保護法」も各県で具体化されているらしいが、ある県は「核攻撃をされたらどうするか?」ということで、「風上に逃げろ」とか「雨ガッパを着ろ」とか言っているらしい。これで国民が「保護」できるはずがない。結局こういう「防災訓練」繰り返していって、「有事」事態に国民を慣れさそうとしているのだろう。

○「戦争は最大の消費」と言われる。戦争でもうけようという者が裏で暗躍しているに違いない。しかし、軍事費などその負担は全部国民にかかってくる。日本がこのままの道を歩めば、これからもっと税金が上がり、福祉も教育も予算が削られてくるだろう。

○今のマスコミはひどすぎる。防衛庁の省への「昇格」や、教育基本法の改悪の問題点などほとんど報道しないから、国民には何が何だかわからない。日本の将来に関わる重要な問題が、ほとんどの国民がよく知らないままに、どんどん決められていっている。今日(12月15日)も、国会の最終日ということで、教育基本法がどうなるかと気をもんでいたが、ほとんどのテレビが報道していなくて、情報が最後までわからなかった。夕方、6時頃になってはじめてニュースで「決まりました」と。「それはないで」と思った。本当なら一日ぶっ通しで国会中継をやってもよいくらいだったのに。

○みんなは「戦争」って遠い国の話だと思っているが、実際は日本は今、戦争をしている。イラクへの航空自衛隊の派遣は今も続いているし、飛行機で米軍兵や物資を輸送している。戦争の兵站(へいたん)活動をやっているのだ。また民間人だって、航空機や船舶の整備などで戦争に協力させられている。

○そんなことをほとんどの国民は知らないか、事情をわかっていない。まさに政府は国民に対して「寄らしむべし、知らしむべからず」だ。

○最近聞いた講演で、ある人が、これからの日本について「高度支配社会」という表現を使っていた。これは、一方で共謀罪や監視カメラなどで異端を見つけ排除する監視社会化を進めると同時に、一方では教育やマスコミ操作を通じて、国民を「洗脳」していく社会だと言う意味だと思った。さいきんの「ヤラセ質問」なども、情報操作の舞台裏が露呈したものだと思う。そんな社会にさせないように、また騙されないようにしっかりと学習をして行きたい。

 次回は2007年1月26日(金)に学習会を行う予定です。 【A】