隠し味として働く天然の機能性素材
「隠し味」このことばは料理を作る際にしばしば聞かれることばですね。ふだんは決して自分自身が前面に主役として出ることはありませんが,見えない部分で自分の役割をしっかりと果たして主役を引き立たせています。
私たちの身近な所でも,この隠し味のような働きをしている人々がたくさんいます。そして,こういう人たちのおかげで輝いている学校が全国にどんどん増えています。
今回は,隠し味のような働きをしている「粘土」を素材として取り上げ,学用品から薬まで,ふだん気づかないところでお世話になっている粘土の不思議な働きにスポットを当ててみることにします。
スメクタイトってどんなものなの?
スメクタイトは,粘土の中に含まれている粘土鉱物のことです。1962年の北アルプスにある焼岳の噴火によって降った火山灰や泥流の物質を分析したところ,細かい粒の大半が粘土鉱物のモンモリロナイト(スメクタイト)であることがわかりました。その後の調査で,霧島新燃岳,草津白根山,北海道有珠山,木曽御岳山などの噴出物中にもあることがわかりました。(ちょっとむずかしいことばが出てしまいましたね)・・・・・「粘土鉱物の世界」日本粘土学会編 1997年 株式会社KDDクリエイティブより。
100万分の1oの薄い層が,ナトリウムやカルシウムなどのイオンや水をはさんで,本のように重なった結晶からできています。
このスメクタイトを水に入れると,本のように重なった層はバラバラにはがれ,様々な向きに結びついてゲル(化粧品などに見られるジェルのような状態)と呼ばれる状態になります。しかし,その結びつき方は弱くて,振ると水のようにサラサラのゾルの状態になります。そして,このゾルとゲルの変換は何回も繰り返すことができます。
粘土についてあなたはどんなことを知っていますか?
粘土についてのこれまでの体験といえば,油粘土・紙粘土・小麦粉で作ったカラー粘土で遊んだことがあると思います。
また,陶器の材料となっている粘土〔陶芸家は素地(きじ)と呼んでいます〕を触った経験を持っている子どももわずかですがいます。でも,崖などに露出している天然の粘土を触った経験となると非常に少ないと思います。
最近では,野外で遊ぶ子どもが少なくなったり,飛び降りて遊べるような崖は危険であるということから(実際に崖で穴を掘り,中で遊んでいて土砂が崩れて死亡した例があります)残念ですが,柵などがあって近づけないようになっていたりするため,天然の粘土に触る機会は全くといってよいほどなくなりつつあるのが現状です。
こんな現状であるからこそ,きちんと大人がついておもうぞんぶん遊ばせてあげることができたらいいなと思います。
身のまわりで,粘土はどのようなものに活用されているか知っていますか?
粘土といえば,すぐに思い浮かぶのは茶碗などの陶器でしょう。でも,それ以外では粘土が活用されている例はあまら知られていません。
しかし,実際に粘土は料理の隠し味(見えないところで,そのものの持っている持ち味を出すような働き)のような形で実に様々な場所で使われているのです。
たとえば,化粧品のファンデーションやパック剤,子どもたちが使う物では,鉛筆の芯や絵の具などがよい例です。
鉛筆の芯は,粘土の分量が多くなると,Hや2H・4Hのような堅い芯になり,粘土分を少なくするとBや2B・4Bといった絵のデッサンをしたりするときに使う柔らかい芯になります。
トンボ鉛筆のホームページが参考になるでしょう。
http://www.tombow.com./kids.html
絵の具などでは,水に溶かした時に液だれしないようにするために活用されています。
また,室内で飼うペットのするオシッコを固めたり,臭いを閉じこめたりするためにも使われていたり,台所で使う金物を洗うときの「クレンザー」のほか,洗濯用洗剤にも入っています。
さらにびっくりするのは,歯磨きの材料や薬に混ぜられていたり,入浴剤やトリートメント,ローションなどにも活用されているのです。
なんと,今日歯を磨くのに使ったチューブの中には粘土が入っていて,私たちは毎日歯磨きをしているのです。(チューブから歯ブラシに出すときに,たれないようにするためという理由もあります)
(問い合わせ先:(株)粘土科学研究所 TEL:03−3686−6306)
最近では,台所では液体の中性洗剤が重宝がられているようですが,粘土はセッケンにも含まれています。もともと「スメクタイト」という粘土鉱物の名前はギリシャ語で,日本語の意味はセッケンを意味しています。
家庭用品の中で,表示されている成分の中に,「ケイ酸塩鉱物」とあったら(メーカーはどのような粘土鉱物が含まれてるかは,企業秘密として公表していません)粘土が含まれていると考えられます。
『しずかたま〜る』を作ろう!!!
スメクタイトという名前は子どもたちにとってむずかしいので,「しずかたま〜る」というネーミングにしてみました。これは,静かに置いておくとかたまるということから,ドラえもんに登場する「しずかちゃん」とをいっしょにしてみました。(これは,私が「ドラえもんのぽけっと」という地域の科学サークルを行っているところからきています)
少しでも子どもたちの抵抗感を少なくする意味からも,ネーミングということは大切な要素です。
【準備】スメクタイトを手に入れる
【手順】3%の濃度の溶液を作る
【使い方】ゾル・ゲルの状態を観察する
【チャレンジ】濃さを変えてみる−何に使えるでしょうか−
3%の濃さの時,ゾル・ゲルの状態をくり返して観察することができますが,濃くすると固まって動きませんし,薄すぎると,ゆるすぎて固まりません。この濃さの変化に挑戦してみましょう。
家族で実験を楽しみましょう
−おじいちゃんとおばあちゃんの出番です−
天然の粘土にさわって遊んだ経験の少ない子どもたちのために,多少郊外に遠出をしてもぜひ粘土の感触を体験してもらいたいと思います。
きっと子どもはツルツルな感触を感じたり,思ったより手が汚れないことがわかったり,逆に,乾くとボロボロになって手が白くなることに気がつくと思います。
おじいちゃんやおばあちゃんはぜひお孫さんを焼き物の生産地に連れて行ってあげてください。陶芸家はいとも簡単に粘土で形を作ってしまいますが,これがなかなか難しく,思ったようにできないことや,どのような行程で作られていくのかを体験させるのもよいでしょう。大人だけでなく,子どももきれいに焼き上がったものを見て,製作する楽しさを感ずることでしょう。
水に浮く陶器の開発
平成7年に滋賀県立信楽焼窯業試験場で水に浮く陶器が開発されました。この陶器は,信楽焼の粘土に中空樹脂フィラーと呼ばれる非常に軽いプラスチック状のものを混ぜて焼いたものです。その後,この方法は改良され,現在では中空樹脂フィラーの代わりにフライアッシュバルーン仮焼体というものを用いています。
この陶器の応用としては,瓦にしたりすると非常に軽いため,建物への負担が少なくて済み,地震の際に倒壊を免れることに役立つなど応用範囲が広くなります。
また,家庭からの排水路などに設置すると,濾過フィルターとしての役割を果たすので,汚れた水を浄化することも可能です。