準・メルクル トークショー記録
インタビュアー:音楽評論家 奥田佳道さん
 
2001年9月8日土曜日・渋谷タワーレコード6階 15:00〜

*サイトをご覧下さっているファンの方にご協力頂きました。ありがとうございました。

 

(管理人注:Altusレーベルの斉藤さんより、ご挨拶が冒頭にありました。)
ただ今流れていますのは、昨日入荷したばかりの準メルクルさんの最新アルバムです。
Altasレーベルから発売されました2枚目のNHK交響楽団とのライブ版ドボルザークの「新世界」とバルトークを収録しましたこちらのアルバムです。
 
メルクルさんの近況について簡単なご説明と対談になります。では、お願いいたします。

(O:奥田さん、M:メルクルさん)

O:ご挨拶が遅れました奥田佳道と申します。
 改めましてメルクルさんのプロフィールをここにいる方に説明するのは大変失礼と思いますけれど、今回初めて発見なさった方もいると思いますので、彼のプロフィールを少し簡単に私なりに振り返ってみたいと思います。
 メルクルさんは、お父様はドイツの大変有名なヴァイオリニスト、ヨーゼフ・メルクルといって、ドイツではカルテッド等の活動でも大変活躍された方です。お母様は日本のピアニスト。
(メルクルさんは)今年お誕生日が来ると42歳です。(管理人注:メルクルさんは1959年2月のお生まれなので、すでに42歳になられています)
 そしてメルクルさんのお名前が音楽ファン、音楽関係者に一番広まりましたのは、
1994年から昨年までですね、ドイツにはご存じのように素晴らしいオペラハウスがたくさんありますが、フランクフルトからそんなに遠くないところにマンハイムという、モーツァルトの歴史等で大変有名な町ですが、マンハイムのオペラハウスの音楽総監督(GMD)を6年ほど勤められて、そこでワーグナー、リヒャルト・シュトラウス等の上演で、ドイツの音楽界に準・メルクルさんありという評判が大変広まりました。音楽総監督になりますと、さらにミュンヘンとかウイーンとかハンブルグとかベルリンとかいった、そのさらにランク上の劇場で音楽の客演をする機会が得られるのですが、私も実はたまたま旅行中にウイーンで93年だったか94年だったと思いますが、メルクルさんがウイーンの国立歌劇場でお振りになった「トスカ」を聴きまして、非常に好ましい衝撃を受けまして、それ以来劇場の関係者に、私は当時、Junさんとはドイツ語でJunをユンと読みますので、ユン・メルクルとはどういう指揮者なんだといってウイーン国立劇場のオペラの広報にいって、プロフィールをもらったら、半分日本人じゃないかといってとても親しみを持ってそれ以来聴き重ねております。
 そして、NHK交響楽団がドイツで活躍する準・メルクルさんの情報にいち早く反応しまして、1997年のサントリーホールでのコンサートにメルクルさんを呼びました。これがオーケストラのメンバー、サントリーのお客様にとって大変喜ばしい出来事となりまして、直ちにまたN響に来て欲しいということになりまして、98年の4月の定期演奏会でドン・ジョバンニの序曲、ブラームス=シェーンベルク編曲のあのピアノ四重奏曲のコンサートがありました。
 これが、実をいいますと、メルクルさんの日本での本格的なCDの
Altasミュージックから発売された第1段になって、2枚組のCDで今出ています。1枚目の方にはメルクルさんとN響のはじめての競演となりましたドビュッシーのサントリーホールでのCDですね。これが、これが大きな関係者の驚く以上のセールスになりまして、今回急きょ、これは音楽ファンの方の強力な後押しで、(メルクルさん自身は)現在、NHK交響楽団の定期演奏会に客演中で昨日もコンサートがあったのですが、(2001年1月N響Cプログラムの)このドボルザークの「新世界より」とバルトークの「ルーマニア民族舞曲」のCDが発売になりました。
 
バルトークの方は、今年の1月のサントリーホールでのライブ、ドボルザークの「新世界より」は1月のNHKホールでの土曜日のコンサートのライブがそのまま素晴らしい雰囲気で入っております。

 まず、N響との素晴らしい相思相愛ぶりについてメルクルさん自身のお言葉で、N響とのこの幸福な出会いを少し語っていただきたいのですが。

M:Good afternoon.こんばんは。
 
NHK交響楽団は私にとって特別なとても意味のあるオーケストラであります。今度の新しい録音でも聴いていただけると思いますけれども。その独特のスタイルを持っていると思いますけれど、私がその違う音楽に挑むとき、全く自分たちと違うスタイルに挑むときの理解の深さ、ルーマニアのオーケストラでないのにかかわらずここまでにルーマニア舞曲をデリケートにここにすごく献身的にこれだけの演奏をなしえるオーケストラであること、私自身とても感じたのは、私にとって近い特別なある意味でとても意味のあることであると思っております。

O:メルクルさん現在の本拠といいますか一番活躍なさっているのは、伝統と格式を誇りますミュンヘンの国立歌劇場であります。夏には素晴らしいオペラのフェスティバルがあります。今年は、リヒャルト・シュトラウスの「バラの騎士」、チャイコフスキーの「スペードの女王」。これは夏の少し前にプレミエ、新演出の形で出されたプロダクションですけれども。今回、来週末NHK交響楽団の定期演奏会がありまして、もちろんミュンヘンで大活躍なのですが、その一方でウイーン国立オペラもメルクルさんを離さない状況でして、N響との演奏会が終わりますと、今度はウイーン国立歌劇場に行ってワーグナーのリングの序夜「ラインの黄金」が控えているという活躍ぶりです。
 「ラインの黄金」といえば、これはいうまでもなく東京の新国立劇場が今年から、
2004年にかけて「ニーベルングの指環」の新演出をキース・ウォーナーの演出で出しておりますが、この春に「ラインの黄金」が大変なセンセーション。これも新聞雑誌等で今年これを聴かずして何に感動するという批評が多数躍った上演でし。、来年の春にはリングの第一夜、リングとしては二番目になります「ワルキューレ」が新国立劇場で新演出で、日本とドイツの素晴らしいキャストで上演されます。

 現在オペラとコンサートの割合はどういうふうに位置づけていらっしゃいますか?

M:私自身キャリアの始まりはオペラでございました。助手から始まりまして、ピアノを弾いたり、チーフコンダクターと段々上がってきたわけです。ただ近年だたシンフォニー等の演奏会等の指揮もかなり機会が増えて参りまして、現在の段階は50%ずつといった割合でしょうか。

O:あの修行時代のお話を一つだけ伺っておきたいのですが。オペラ歌手というのは、大変皆さん自己顕示欲が強いですよね。メルクルさんがピアノを弾いてプローベを進めているときに非常に音楽的に皆さんの主張が激しく対立した場合、どういうテクニックでオペラのスタイルに皆さんまとめていくのでしょう。

M:Sometimesムズカシイデス
 
おっしゃるとおり時には難しいです。ただ、皆さんそれぞれ音楽家は自分のアイディアを持っていることはとても大事なことです。音楽性を持つということは非常に大事なことだと私は思っております。しかしまた声楽家の方々と私が仕事する時は、私がすることは作品全体についてお話しをするということ、他のいろいろな声やオーケストラとの関係でどういった関わりを持っていたらいいのかということをお話しします。そしてどうしてこうして欲しいかということを、例えば声楽家の方々へどうしても自分が歌うメロディーラインの方に目が行きがちなのですね。でも本当にいろいろなパートがでてくるのがオペラなんです。それが一つにまとまって一つのスタイルとなる必要性がそこにあるわけです。その辺りを皆さんにお話しして皆さんにわかってもらうようにしております。

O:オペラの話も沢山伺いたいのですけれど、今回この2枚のCDが音楽ファンの中で大変話題になっておりますけれど、あのブラームスのピアノカルテット、シャーンベルクのアレンジのものはいまだに、オーケストラのCDを聴いたファンに非常な奇跡的な名演奏だと語り継がれています。
 私今でも覚えています。1998年の4月29日のコンサートで、NHKはFMやBSで演奏会の生放送をするのですけれど、私、たまたまFM放送の休憩時間のおしゃべりをする当番でして、客席から放送室に戻ってきますよね。あまりに素晴らしくてですね。ほとんど涙、涙で、目の前に座ったアナウンサーの方から何かしゃべってくださいといわれても声が出なくて、「うっ、いやいや」みたいになってしまって、その後NHKにプロらしくないという、プロがそんなに感動してどうする、という非常な抗議をいただいた懐かしい思い出がありますが、今ご自分であのときの演奏をもう一度振り返っていただけますか。

M:あなたのお仕事の邪魔の原因となるようになってしまってごめんなさい。
 ただブラームスというのは、私にとって特別な作曲家です。非常に深いものがある作曲家だと思うのですね。先日のN響のステージでもオールブラームスプログラムを行いました。
 ブラームスは、私が本当に大好きな作曲家であると共に、このピアノ四重奏は非常に私にとって特別な作品ですね。これはとても舞曲的な楽しいハンガリー的な陽気な一面があると同時にとても深く深くそのなんとも絶望感という様な、人がこれから人生どっちに行ってよいのやらわからないような不安に襲われるような、そんな両方持ってるわけなんです。それをN響がとてもよく理解して、演奏してくださいまして、それは聴衆に伝わったと思っています。

O:私達音楽ファンはメルクルさんの練習の風景というのはですね。まあ、なかなか拝見できないのですが、百戦錬磨のN響を前にしてですね、メルクルさんはどういう練習をいつも心がけていますか。
 例えば昨日とおとといのブラームスのプログラムでもいいですし、この新世界のことでもいいのですが。N響との練習というものを少し音楽ファンにシークレットの部分を少し教えてください。

M:(私の印象は)NHKだけでなくて日本のオーケストラ全体に言えることなんですけれど、とてもまじめで非常に練習熱心であるということです。とてもよく聞いてくれますし、私の話したことをすぐに理解するだけでなく、すぐに演奏に移すという、そういったところが非常にすばらしいですね。私が出しているメッセージを即座に理解し、それを素早く、それも素晴らしい形で演奏してくれるという、そういう意味で私は日本のオーケストラと一緒に仕事をすることは大好きです。
 特にNHK交響楽団というのは、伝統的にドイツ音楽との深い関わりをもったオーケストラです。そういう意味で、何か私が仕事しているとき同じ共通項言語を持っているようなそんな感覚を持ちます。日本独特の音楽に対して、そういった徳のようなものと、そして私自身の持つドイツ音楽との非常に接点というものがそこに見えます。

 最初に秘密は特別ありませんよと言ってしまったのですけれどあえて申し上げますと、これはとても大切なことなのですけれど、NHK交響楽団というのは非常に技術的に素晴らしいものを持っていらっしゃる。だから私が実際にテクニックやそういったことに何一つ指示とか指導する必要性が全くないんですね。即座に、もっと深い内面的な要素に入ってゆくことができる。なぜこのように演奏して欲しいのか、どうしてこういう表現して欲しいのか、具体的なところを私がお話しすると、直ぐさま理解して、そういった内面的な感情といったものの表現に移ることができる。そこがあえて言うならば私たちの関係の秘密といったところでしょうか。

O:もう皆様ご存じかと思いますが、世界中に若い素晴らしい指揮者が沢山でてきている中で、ちょっと批評家風に申し上げますと、メルクルさんの音楽は若い方がただこう情熱に任せて、あるいは自分の主観をただ歌い上げるだけでなくて、音楽の様式美であるとか、交響曲のスタイルとか、格調であるとか、気品であるとか、オーソドックスという言葉、時々この言葉はネガティブな意味にも使われますが、そうしたスタイリッシュな良さを持っているという点では、世界の若手指揮者の中では最も私は信頼すべき音楽家だと思っております。今回の新世界、それから先程のバルトークのルーマニアダンスにしましても、非常にこう、ある部分が素晴らしいというのは非常に簡単なのですけれど、曲全部で40分位、昨日私も夜中に新世界を聴いて、聴き終わったときに、「いやぁ、これだよねこれこれ」といって感動できるのが、メルクルさんの音楽だと私、思います。このNHK交響楽団とのブラームス、彼は2番の演奏をしたのですが、終わったときにお客様が心を開ける演奏なのですね。メルクルさんはドイツでピアノをカール・エンゲルというピアニストに師事なさってですね、その後、アメリカへ留学されてミシガン大学でグスタフ・マイヤーというこれは有名な指揮の先生についていらっしゃいます。こういったプロフィールはよくお手元のCDとか解説であるのですが、重要なことは多分彼は個人的にチェリビダッケから非常に音楽家としての精神を学んでいる。その他実践的な指揮のテクニックというものであるとかは、例えばタングルウッド音楽祭で小澤征爾さん等からも教えを受けていると思うのです。指揮者として、音楽家のどなたからか何か音楽家の精神を学んだとかという、やはりチェリビダッケの影響は強いですか。

M:私のインスピレーションの源は何と言っても作曲家です。彼らの深い深い音楽の中に何があるのかということを掘り出してくるのが私の仕事だと思っております。小澤征爾さんやバーンスタインといった素晴らしいそういった方々からの影響はございますけれども、私にとってもう一つ欠くことのできないのは、これは長所とも短所ともなりうることかもしれませんが、どこの決まった一つだけの文化にだけ属しているということでないこと。つまりドイツの文化、日本の文化をそれぞれ持っているため、そのためドイツ文化に対してもなぜこうなのかどうしてこうなのか、なぜこうでなくてはいけないのかという問いかけは常にすることができます。まあ、そういったことと日本の心といったところでしょうか。

O:日本の心というのは我々日本人は時々わからなくなるところがあるのですが、どういうところが、メルクルさんの中でのジャパニーズブラッドはどんなところで感じるのでしょうか。

M:実は前にもちょっと申し上げたのですけれど、非常にまじめで努力で勤勉であるというところ、というのが日本人的な部分というのはあるかもしれませんが、私の中にもあるかもしれません。
 そして日本人とドイツ人というのは非常にただ表面的な上側だけでなくて、もっと深くにあるものが何なのかということ、例えば音一つに関しても単純に美しいとか大きい音と捉えるのではなくて、その音がどういう意味を持つのか、そこにどういったものがあるのか、どうしてそういった形になったのかというところまで掘り下げていくことが日本人にもドイツ人の中にもあるわけです。日本人の中に。それから日本文化の持つ独特の洗練されたとても繊細な文化といったものでしょう。そういったものを日本は持っていますね。そういうものを持って私は日本の心というわけですね。

O:メルクルさん、この後N響が終わってウィーンへ行ってワーグナーの「ラインの黄金」がありまして、そしてこれは大変伝統的な上演なのですが、ミュンヘンの大晦日に上演されますJ・シュトラウスの「こうもり」、これをメルクルさんが12月31日にバイエルンの国立オペラで任される。これはもうサバリッシュやクライバーの伝統を引き継ぐのはこの人だというミュンヘンが言っているようなものなのですが。もう決めたようなものだと私は勝手に思っているわけですが。
 そして来年ボストン響の定期演奏会でメンデルスゾーンの交響曲の第3番「スコットランド」を指揮されて、そして「ワルキューレ」が春にあります。そしてミュンヘンで来年5月だったと思いますが、ヤナーチェックの「利口な女狐の物語」というメルヘンあふれる素敵なオペラがありますが、そちらのプレミエも控えているという。まさにドイツ、アメリカ、日本でオペラとコンサートの両輪で活躍をはじめた方で、私達、特に日本のファンにとっては、このように素晴らしい指揮者と、少しセンチメンタルな言い方ですけれども、同じ時代を歩んで行けるというのは本当に楽しみなことだと思います。そして今日熱心なファンの方がお見えになっていますので、私はメルクルさんにこの機会にこれを聞きたいんだ、これを聞かないと今日は帰れないんだという方は是非挙手をしていただくなり、そこで立ち上がっていただくなり、していただければと思いますが。いかがでしょうか。

.:なぜN響の定期公演になぜシェーンベルグ(ブラームスの編曲)を取り上げたのですか。

M:大体こういったコンサートのプログラムはオーケストラの事務局側との話し合いで決まるものですけれども、この作品に関しては私自身からとてもやりたいということで申し出ました。といいますのは、ブラームスという作曲家を見るときにこのシェーンベルグの編曲の作品を通してみるというは、私にとっておもしろい味方だと私は思っているからです。ブラームスは、バッハ、ベートーベンといった流れを汲んだそういった影響を受けて作曲した、作曲家ですね。彼をシェーンベルグといった後の世代である側からみた解釈したブラームスという形で見るということ。それを現代の我々が聞くといういみで非常に興味深い味方だと私は思ったわけです。非常にシェーンベルグはブラームスを現代的な形で解釈している。しかし、現代的解釈をしても今でもブラームスはどんなに新鮮で新しいものをあの時代作っていたかということを、かえって目の当たりにすることができるという、そういった意味で、私はこのプログラムを是非取り上げたいと思いました。

O:確かメルクルさんはこのブラームス=シェーンベルグのピアノ4重奏曲はミュンヘンフィルとのコンサートでも指揮なさっていませんか。お好きな作品?

M:大好きな作品の一つです。

Q:リハーサルの様子は先程うかがって分かったのですが、オーケストラと歌手とのリハーサルの始まる前ですね、メルクルさんがどのような準備をなさっているのでしょうか。新しい作品をする場合どのようなことを、例えば本を読んだり、その様子がうかがえたらと思います。

M:非常にシンプルです。もう何でもあらゆるインフォメーションを手に入れます。そして音楽学者のように本当に一音ずつ一小節づつ、もうつぶさにスコアを全部見ます。
 そして技術的にここら辺が難しいといった単純な見方から、音楽的な要素まで全てをそこで見るだけでなく、さらには本も読みますし、時にはレコードも聴きます。ちょっと今ポイントカード(管理人注:メルクルさんはタワーレコードのポイントカードをポケットから出して客席へ向かって見せていました)が見えたと思うのですけれど、こちらのトークショー始まる前に早速、私、レコードを見まして買うという、常にそういう形でどんなインフォメーションも私にとって助けとなります。
 あらゆるものを全部私の中に取り入れてそれらが一つになって、準備ができたという形になります。でも何といっても一番大事なことは、スコアをしっかり見ること、なぜ作曲家が何を言いたかったのか、なぜそのように書いたのかということが大切だと思います。

 日本に来ますと本当に嬉しいととても光栄に思っております。といいますのは、こちらに伺いますと、NHKのオーケストラの皆様と演奏会を、そして新国立劇場で東フィルの皆さんとオペラという、素晴らしい演奏の機会に恵まれるだけでなく、非常に素晴らしい音楽の伝統というものを日本は持っていらっしゃいます。音楽に対する深い理解と知識、これを演奏する側だけでなく、聴衆の皆さんも非常に私が伝えたいというメッセージをとてもよく理解してくださって、本当に東京に日本に来るたびに本当に素晴らしい経験をさせていただいております。私自身本当にこちらに来るのはいつも嬉しいことなんです。

Q:音楽についてとドイツについてあまり知らないのですけれど、私は食べることは好きで、会席料理をいただくと日本人でよかったと思います。長年修行した板前さんが季節を考えて美しく心を込めて作ってくれた料理を五感をフルに使っていただくのは幸せです。日本人でよかったなと思っています。ドイツにおける感動は私は知らないのですけれど、教えていただけたら嬉しいです。
 
あと、メルクルさんの音楽には日本的なものを感じるのです。それが何かは私の中で答えは出ていません。
 
先日「ラインの黄金」の音楽演奏が「ドイツ的ではない演奏」という人が日本にいたのですけれど、ドイツ的とはどういうことなのでしょうか?ということなのですが、重厚さ、重厚な音楽がドイツ的なのか、別の人はドイツの森のイメージと言っているのですけれど、ドイツのことわからないのでイメージが全くできません。ドイツ人でなければわからないものがもしあるのでしたら、音楽におけるドイツ的なものはどういうものかありましたら、ヒントだけでも教えていただけたらと思います。

M:難しいです。言葉にして全部お答えするのは大変難しい質問なので、あえて私の考えを一つを言わせていただきたいとお取り下さい。
 私、演奏というのは個人個人がするものなんですね。ですからその人その人によっての個性があって、独自性、主体性によって変わってくるということです。つまり、日本で例えば私がドイツの音楽を演奏するにしても、N響なり東フィルというのは全部日本人の演奏者なのですね。そうするとまた違うものになってくると思うのです。でもだからといってドイツ的であるためにドイツのオーケストラのまねをする、コピーをする必要は全くないというふうに私は思っております。例えばドイツ人の方を取り上げても、ドイツ人だという人を全部並べたときみんな同じかというとみんな違うわけです。それぞれみんな違う。そういう意味で自分のスタイルをもつというのはとても大事だと思います。もちろんその作品の持つ背景的なもの、どういた意味を持つ作品かという、その作品に込められたもの、そういったインフォメーションを知ることはとても大事なことです。しかし、それの先に日本のオーケストラが演奏しようと思ったときに、それを自分たちのスタイルで演奏することをしてはじめて、世界的に意味のあるオーケストラとして認められるんじゃないかというふうに私は思っております。

O:私達、日本のオーケストラ、N響等は放送でも、NHKホールに行っていつでも聞けるよ、という雰囲気がとかくありがちですけれども、何か私はメルクルさんによって私達身近なところにも素晴らしいオーケストラがあったなということを逆に教えてもらったような思いが致します。

 N響、そして新国立劇場は、メルクルさんを一番重要な指揮者の一人として定期的に招聘して、彼が新しいものをやりたいといえばそれをアクセプトするという姿勢を作る、というように伺っておりますので、私たち音楽ファンと致しましては、彼と一緒にこう同じ時代の空気を吸って音楽の喜びを分かち合う関係でありたいなとおもいます。

 実はですね、この素晴らしいCDの、from the new worldという素晴らしい横文字が入っているわけですけれども、お買いになった方だけ見て下さい。from the new wordになっております。

M:一番いい結論と致しましては、もし本当に気に入っていただけるのなら、今度誤植のないCDを発売します、そしてもう一度買っていただくと。そうすると両方手に入るという、素晴らしい解決策じゃないかと思います。(笑)

O:メルクルさんどうもありがとうございました。

 

管理人注:この日のサイン会では奥田さんのアイデアが元になって、メルクルさんはCDにサインをお願いした人に対して、誤植を訂正して「l」を追加してくださっていました。