PC−FAXアダプタをつくろう

今回は実用工作第二弾です。(といっても昔作ったものの紹介ですが。)

いまでこそモバイルプリンタなどという商品が比較的メジャーになってきていますが、それでも出先でプリントアウトを行うのはちょっと億劫です。訪問先にプリンタはあってもネットワークプリンタだったり、ローカルプリンタでも適当なケーブルがなかったり。はたまたケーブルもみつかったとしても、ドライバディスクがなかったり、ディスクがあっても自分のモバイルPCにはCDやフロッピードライブがなかったりと、二重三重の障害が待ち受けています。

比較的確実なのが、PCのFAXモデム経由で訪問先のFAXにFAXを送る方法。ただ、この場合も、目の前にあるFAXにわざわざ電話をかけて送信する、という理不尽を感じてしまいます。
そこで登場するのが今回のFAXアダプタ。PCのモデムと、FAXのLine端子を本アダプタ経由で接続することにより、電話をかけずにFAXに印刷できるようになります。これはどんな働きをするかといいますと、FAXに対して実際には電話線がつながっていなくてもつながっているかのように思い込ませる、ということをします。


どうやってそれを行うか書く前に、電話のしくみを簡単に説明しましょう。

家庭の電話機には、電話局の交換機からの信号が一対の電線を通じてやってきます。通常、この電線(回線と称します。)には約48Vの電圧がかかっておりまして、受話器を置いた状態では回路がつながっておりません。ところが、受話器を上げると回路がつながります。この時、48Vの電池のつながった一対の電線の反対側に600オームの抵抗をつないだと同様な状態になります。(Fig. 1)

Fig. 1

Fig. 2

電線自体の電気抵抗が0なら、600オームの抵抗をつなごうがつなぐまいが家庭の電話線のところでの電圧は48Vのままで変わらないですが、実際には電話局の側ですでに抵抗が直列に入っている上、局から家庭まで何kmもの距離があるので電線自体にもかなりの電気抵抗があることになります。したがって、600オームの抵抗をつなぐと、流れた電流 ×(局側の抵抗+電線の電気抵抗)分の電圧がロスして、(オームの法則ですね。)600オームの抵抗の両端には6から9V程度しか電圧が現れません。(Fig.2)

FAXや電話器の側ではこの電圧を監視して居て、6V程度の電圧に成っているときには「受話器が上がっている、すなわち電話局とつながっている。」と判断しています。この状態で電話局経由で電話の相手から「ピーッ」というFAXの信号(CNG信号といいます)を受信すると「あ、相手がFAXを送ろうとしている!」と認識してFAX信号の受信/画像の記録を始めます。
ところが、電圧が48Vのまま(受話器を置いた状態)だったり、電圧がかかっていない(電話線を外した状態)状態だったりすると、たいていのFAXは上のCNGが入ってきてもFAX受信状態にはなりません。PCのモデムとFAXのLine端子を直結しただけだと、この「電圧がかかっていない」状態に相当しますので、PCからいくらFAX信号を送っても応答しないという訳です。

「あれ?うちのFAX、受話器が付いていないけどちゃんと受信するよ?」という方もいらっしゃると思います。この辺が電話/FAXのややこしいところで、これは、FAXが自動着信のモードに設定されている場合はこうなりまして、電話局からの呼び出し信号(16Hzのパルス信号)を検出すると、FAXが勝手に自分自身の中で「受話器を上げる」作業を行うからです。「受話器を置いた」、600オームの抵抗が電話線につながっていない状態でも、交流のパルス信号である電話の呼び出し信号は検出できるので、こういう動作ができるのです。(Fig. 3)

Fig. 3


さて、話を元に戻します。上で述べたことを逆手にとって、FAXのLine端子に対して6〜9V程度の電圧を与えてやると、FAXは自分が電話回線につながっていて、かつ「受話器が上がっている」と錯覚するわけです。そこにFAXの信号をモデムから与えてやると、電話がつながった相手側のFAXから信号が送られてきたと思い込んで受信を始める、という訳です。
本格的にFAXを「ごまかす」のであれば、48Vの電圧を与えた上で、疑似呼び出し信号を発生するような回路を準備して、FAX自身に呼び出しに応答して着信させる(内部の「受話器」を上げさせる)方が確実ですが、実際は、ただ6〜9V程度の電圧を与えるだけで充分です。

実際にどうやって電圧を与えるか、という方法については、簡単な話で電池をつないでやればOK。ただし、ただ電池を繋いだだけだと、電池自身は交流信号(音声信号やFAXの信号は交流です。)に対しては大きなコンデンサとして働いてしまうので、肝心の信号がFAXに伝わらずに電池を通してショートされてしまいます。(Fig. 4)そこで、交流信号が電池を通過しないようにブロックする必要があります。

Fig. 4

Fig. 5

「直流は通すけど交流は通さないもの」、といったらもうお判りですね? そう、コイルです。電池と直列にコイルをいれてやれば良いのです。もっとも、普通の単純なコイルで低周波から高周波までの信号をまともにブロックしようと思うとかなり大きな部品になってしまいます。そこで、製作したFAXアダプタではコイルの代わりにトランスを使って、通ろうとしている交流信号自身に信号を打ち消させて、直流分だけを通すようにしています。(Fig. 5)

で、この回路を元に作ったのが下の写真です。使用したのはトランスとモジュラージャックと電池用のスナップ、あとはケースだけ。私は、あとから長さの調整が効くようにジャックを使いたくてユニバーサル基板に組みましたが、市販のモジュラーケーブルを途中で切ったものを利用して作っても良いと思います、というかそのほうが簡単ですね。肝心のトランスですが、インピーダンスが600オームで1:1のものを利用します。そこのポイントさえ満たせば、どんなものでも良いのですが、私は山水のST-71というタイプのものを使用しました。

Photo 1 アダプタ外観

Photo 2 中はこうなってます

以上、説明したように、部品さえ手に入ればご覧のように簡単なはんだ付けだけでできます。夏休みの工作で、ぜひお試しください。

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