モノクロビデオはいかが?

久々の趣味の工作コンテンツは、今日、電気屋さんを歩いていてふと思いついたもので、皆さんのお持ちのカムコーダーや据え置きビデオについているS映像信号端子を利用して、お手軽にモノクロ映像を作ってみよう、という内容です。

ちょいと接続ケーブルに細工をすることによって、カラーで録画された画像をモノクロに変換してしまってダビングできるようになる、というものです。「工作」というのも憚られるようなことですけど。まあ、最近のカムコーダーは進んでいるので、こんな細工などしなくても本体にモノクロで再生する機能くらいあるのかもしれませんが、その辺には敢えて目をつむって話を進めましょう。(笑)


コンポジットビデオ信号のおはなし

さて、どうやってその細工を行うか書く前に、ビデオの映像信号と、S映像端子について簡単に説明しましょう。

もともと、アナログカラーテレビの映像信号というのは、カラー放送以前のモノクロテレビ放送との互換性もあるため、ひとつの電気信号の上に大きく分けて3つの情報が重畳されています。すなわち、

  • 輝度信号
  • 色信号
  • 同期信号

の3つです。同期信号はさらに画面一枚一枚を同期させる垂直同期信号と走査線一本一本を同期させる水平同期信号とにわけられます。具体的にはFig.1に示したようなカラーバーのテストチャートはどのような信号になっているかというと、Fig.2のようなものなのです。

Fig. 1

Fig. 2

Fig.2で、下半分のグラフが最初の走査線5本分程度を見渡したもので、上半分は、走査線一本分を拡大したものです。ある直流電圧レベルより電圧が低い部分が同期信号として利用されており、逆に高い部分は明るさを表す輝度信号として利用されます。これらは、カラー放送以前の白黒放送の時と同じで、互換性が保たれています。

鋭い方はもうお気づきかと思いますが、色のついていない部分は信号がはっきりとした一本線になっているのに対して、色があるところはやたらワサワサした信号になっていますね。これが色を表す信号成分で、モノクロ放送時代にはなかったものです。

水平同期信号の直後に挿入されているのがカラーバーストと呼ばれる部分で、約3,58MHzの周波数の信号なのですが、これが色の基準の役割を果たしています。このカラーバースト信号に対する色信号の位相のずれ加減により色合いを、また色信号の振幅の大きさの違い加減により色の濃さを、それぞれ表しています。

このように、ビデオの信号の中には輝度、色、同期などいろいろな情報が複合していることから、この状態の信号のことをコンポジットビデオ信号(複合映像信号)などと呼ばれることがあります。

テレビやビデオでは、このコンポジットビデオ信号を入力されると、これからそれぞれの情報を分離します。まず、同期信号成分を取り出した後、輝度成分と色成分に分けます。Yが何の略なのか理由はわからないのですが、輝度信号のことをY信号、色信号のことをC(クロマ)信号と言いますので、このプロセスのことをよくY/C分離、などと呼んだりします。よくビデオのカタログを見ると「4Mbitメモリ搭載のデジタル三次元Y/C分離」などと書いてありますが、これのことなのです。

テレビにおいては、同期信号からCRTの電子ビームの走査のタイミングを作りだし、輝度信号から電子ビームの強さを調整、色信号からは赤、緑、青のそれぞれの蛍光体に当てるビームのバランスを調整する、というような利用の仕方をします。

さて、このコンポジットビデオ信号ですが、例えばレーザーディスクなどでは、記録情報量に余裕があるので、この信号をこのまま(コンポジット信号のまま)盤にベースバンド記録してあるのですが、ビデオテープへの記録では記録可能な周波数幅に限界があるため、色信号と輝度信号とを分けた後、輝度信号は5.4MHz〜7MHzのFM信号として、色信号を629kHz程度の低い周波数に変換してテープ上に記録しています。したがって、見かけ上、輝度と色とは別々に記録していることになります。

従来は、映像信号端子といったら黄色のピンジャックしかなく、ビデオで折角別々に分けて記録した輝度と色の信号をまた元通りにくっつけてテレビに入力、テレビの中でそれをまた輝度と色に分けて...と、非常に無駄なことを行っていました。ビデオからビデオにダビングするときも同様で、これが画質低下の原因のひとつとなっていました。

14、5年前でしょうか、S-VHSやED-Betaなどの高画質ビデオが開発されたことに伴って、この辺の見直しが行われました。その結果登場したのがS映像端子です。Sが何のSかについてはSuperのSだとか諸説ありますが、私はSeparateのSではないかと思っています。なぜかというと、S端子は何をしているかと考えるとその理由は明確です。ビデオからテレビ、ビデオからビデオなどに対して、Y信号とC信号を別々に独立して伝送しているからです。

Fig. 3をご覧下さい。これはS端子のピンアサインです。装置側のジャック(メス側)端子の絵ですので、ケーブル側のプラグ(オス側)の場合は左右が対称になりますのでご注意下さい。

それぞれの信号を観察したのが、下のFig.4、Fig.5です。Y信号側には同期信号も含まれていることがわかります。

Fig. 3

Fig.4

Fig. 5


肝心の細工は?

さて、話を本題に戻します。勘の良い方はもうお気づきだと思いますが、C信号の側の信号線を切ってしまえば、残ったY信号は、白黒ビデオ信号に他なりません。具体的な細工の仕方としては、

  • S映像ケーブルのC信号端子のピンを折ってしまう。
  • 同じくC信号の電線を途中でカットしてしまう。
  • 同じくカットした部分に、スイッチをつけてON/OFF可能にする。
  • S映像ケーブルのY信号端子からの電線にコンポジットビデオ信号用のRCAピンプラグをつないで、Sでないビデオ端子の方に接続する

などいろいろ考えられます。興味がありましたら一度お試しください。

余談ながら

以上の話からお分かりのように、別にS−VHSだからS端子がついている、必要だ、という訳ではなく、ノーマルのVHSテープにダビングする様な場合にもS端子を利用した方がY/Cの混合・再分離のプロセスが省けますので画質劣化が大幅に減ります。是非活用されることをお勧めします。S−VHS機やED-Beta、Hi-8の様な高画質のものほど、S端子を使わないとその真価が発揮できない、というだけで、ノーマルのVHSや8mmテープで効果が無いわけではありません。

ただ、先ほどカタログを見てわかったのですが、最近の低価格VHS Hi−Fiビデオには一切S端子がついていないのですね。コストダウンのためだとは言え、なんとも情けない限りです...。

ということで、今回のコンテンツはこれでおしまい。

(それにしても、最近は絵が少なくて文字ばかりで申し訳無いです。)

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